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異世界で、エース達と我が道を。  作者: RedHawk8492
第1章 腰を下ろすために
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23話 AT教団

銃火器や乗り物でドンパチするゲームであるAoAに、一つだけ宗教が存在する。崇拝するためには技術が必要だが、崇拝することができれば、公式から称号が貰える宗教だ。

その宗教を崇拝できているプレイヤーは、AoAの中でも極一部。毎日2-3時間ほどプレイして、月一度程度の割合でも戦場でマッチングすれば運がいい。ちなみに自分は4年間のプレイにおいて、野良試合では数回しか会ったことがない。



誰が呼び始めたかは知らないが、その称号を持つ者は「AT教団」として知られている。AoA内部においてあまりにもその呼び名が定着したため、称号の名前そのものが「AT教団」に変更されたことは記憶に懐かしい。



自分の軍隊である8492で言えば、タスクフォース000のメンバーは全員がこの称号を持っている。その他には第一歩兵師団団長のディムースと、戦闘機乗りであるはずのオメガ11だ。


マクミランは称号を授与された1番目の人物で、AT教団の教祖とまで呼ばれている。命中率は9割を超え、狙撃任務がない時は、歩兵のくせして制空権を奪還できるほどの腕前らしい。歩兵で制空権奪還とか、パワーワードが過ぎませんかね。

そしてオメガ11に関しては更にひどく(誉め言葉)、イジェクト後に携帯ロケットランチャーで他航空機を撃墜することもしばしばだ。何故コクピット内にそんなものを携帯しているのかは知らないが、両者とも頭がおかしいのは変わりない。武器本来の使い方を間違えている。




ところで、AT教団とは何か。


ATの略語はAnti Tank、つまり対戦車兵器だ。AT教団とは、それを扱う集団を意味する。元々は対人だろうが対空だろうが対潜だろうが対戦車ミサイルもしくはロケットランチャーでゴリ押しするプレイヤーを意味するのだが、称号持が設定されてからは少し意味が異なっている。


変更後は次の意味だ。「誘導能力が乏しい対戦車ミサイルを長距離誘導して、航空機に命中させるヘンタイ。」うん、何をやってるか分かりやすい。


対戦車ミサイルは、その威力と引き換えに誘導能力に乏しいのが、ゲーム及び現実の仕様である。特にゲームにおいては顕著で、比較的近距離の対人に使っても当たらないぐらいだ。


AT教団が使う対戦車ミサイルはワイヤー誘導で、照準を覗いている間、照準中央に向かって飛行を続けるミサイルだ。ロックオンは不可能で、ミサイルの飛行速度の遅さと相まって、航空機相手に使うものではない。

それゆえに、距離が離れる程、相手の移動速度が速くなる程、命中難易度は青天井に跳ね上がる。ほぼ手動と同じ条件で、1㎞先の3次元上で、点と点を合わせるような作業と思ってもらっても過言ではない。


しかし彼等は、そんな条件だろうと何故か当然のように命中させるのである。その他、RPGなどの無誘導兵器を航空機に命中させる偏差射撃能力も要求されるため、実質、特殊部隊よりも敷居が高い。



「ってな感じで、この二人が作戦を遂行する。」

「つまり今この場所は、奇人変人の安売り市場ということですね。」



仏頂面で最適なツッコミをありがとう、ハク。自分も、なんでコイツ等が楽しそうにしているのか理解できるから困っていたんだ。安売り会場なら仕方ないな。テンションが上がって楽しくなるよね、わかるわかる。



……そう言うことに、しておこう。当てるのが趣味とか、そんなこと言い出さないだろうな。うん、たぶん。



現在、マクミランとディムースがFGM-172 SRAWマーティン(近距離)・プレデター(対戦車ミサイル)を担いでスタンバっている。やる気だ、こいつら。


FGM-172 SRAWは「普通の兵士」が使うと近距離対戦車ミサイルに分類されるのだが、この二人(AT教団)が使えば中距離地対空ミサイルになる。AT教団の称号を持つ者とは、そういう連中だ。


作戦内容は、こうだ。爆発しないように設定したミサイルをFGM-172 SRAWから射出。斥候である翼竜に直撃させ、撤退させるというものだ。立案は昨日の夜の就寝直前で、作戦協議は2分で終了。カレーを食ってご機嫌だったマクミランが言い出しっぺで、ディムースがノリノリで続いてきたようだ。楽しそうで何よりです。

しかし、万が一でも騎乗者に当てないよう気を付けて欲しい。発射するミサイルは爆発しないものの、直撃すれば人間は死ぬだろう。



《イーグルアイより各部隊、斥候と思われる翼竜2騎が接近中。方位2-8-0、高度600、距離4500。総帥、そろそろ目視距離に入ります。》



どうやら斥候が来たらしいが、見えん。相手は4.5㎞先にいるのだ、見えないのも当然か。

高倍率の双眼鏡で覗くと若干程度だが確認できたけど、未だ米粒以下だ。時間がたつにつれ、徐々にその影が大きくなる。



「大尉、もうちょっと引きつけます?」

「そうだな、距離2500で撃つぞ。」

「距離2500、了解。」



ディムース少将とマクミラン大尉は、簡単な打ち合わせを行っている。互いに構えたうえで、照準は覗いたまま応対している。ちなみにマクミランは大尉なのに少将のディムースが敬語を使っている理由は、ガルムやメビウスと同じく名ばかり役職であるからだ。元となったゲームにおけるエースの役職に合わせているのである。

携帯ランチャーとはいえミサイル発射時は後方への衝撃波が凄まじいため、自分は念のため、誰も後ろに居ないことを確認する。とりあえず今のところ、発射準備はOKだ。



「そろそろか、合図は任せるぞディムース。」

「了解。……今です、対戦車ミサイルを相手のゴールにシュ「おい馬鹿やめろ。」」



突然危ないことを言い出したディムースに、条件反射で釘を刺す。思わず馬鹿と言ってしまった。

危ない危ない、落ち着こう。先程のテンションを維持しては、こちらが超エキサイティングしてしまう。


……あれ、マクミランがディムースを睨んでる。怖い。



「……今度余計なことを言うと口を縫い合わすぞ。」

「お、オッケイ……。」



……モリゾー、説教だろうがその台詞もダメだ。そしてディムース、オッケイは震えながら言う台詞じゃぁないだろう?

気を取り直して、合図と共に対戦車ミサイルが発射される。射出者がランチャーのサイトを覗きながら誘導を行い、20秒ほど飛行した。



うーわ……何度か見たことがあるが、ホントに命中させやがった。しかも距離1100m地点で直撃、やってることはヘンタイだ。

2発とも、それぞれの翼竜に直撃。慌てた斥候が逃げ出したようだ、徐々に遠ざかっている。多少のダメージは与えてしまったがコラテラルダメージだ、この点は仕方ない。



あれ?

モリゾーが、いつの間にかM82A3対物スナイパーライフルを取り出している。ってソレ持ち上げて構えるものじゃないだろ、銃口が斜め上に向いてるぞ。それよりも何するつもりだ。騎士にしろ翼竜にしろ、12.7x99mm装甲貫通弾が当たったら間違いなく死ぬぞ。あと既に有効射程外だろ。



「ちょっとマクミラン。殺しちゃイカンぞ、忘れたのか?」

「心配いりませんよ総帥、そっちじゃない。」



ガッシャンという、明らかに「銃じゃないだろ」と言わんばかりの重低音なコッキング音が耳に響く。男子なら憧れるような、カッコイイ金属音だ。


数秒後に響き渡る、M82の発射音。コッキング音もそうだが、凄い音だ。離れているのに腹に響く。

発射音は、2回繰り返された。ところで何を狙ったのか知らないが、あの数秒で弾道計算を終了させ狙いを定めたということか、凄まじいな。


そして、1㎞ほど先で爆発する対戦車ミサイル一発。更に一発。元々戦車を破壊するために作られた砲弾なだけあって、爆発の規模も凄まじい。その光景は、ハッキリと確認できた。



「今日で帰るんだろ?立つホーク跡を濁さず、ってな。」

「ナイスショット、ですが詩人すぎるでしょ大尉。ともかく総帥、ミッションコンプリートです。」



……あー、理解した。翼竜に直撃して落下していく対戦車ミサイルを、M82で狙撃して打ち抜いたってわけか。不発弾処理ね。今更だが、こいつぁマジモンのヘンタイだ。おい000の隊員NPC、そんなに尊敬した目でモリゾーを見るんじゃない。あダメだこれ汚染されてる。



000の状況は埒が明かないが、これにて撤退準備は整った。あと数時間もすれば、隣国の翼竜部隊がやってくる。そして数日もすれば、新たな統治者が、この地を収めることになるだろう。どんな輩が来るか知らないが、エンシェントが相手している国だから勇者よりはマシなはずだ。

自分達と一緒に居るAT教団以外は撤退準備を終えており、順次輸送車両に乗り込み出発していく。こちらも10分ほどで後始末を終え、あとから来たヘリコプターに乗り込んだ。南に飛ぶと街があるので目立つため、東側から洋上に離脱する。思い返せばこの世界に来てから一月ほどしか経っておらず、なんともアッサリとした結末だ。


その日の晩、夢に女神さんが現れる。約束どおり、今後は自分の好きなように暮らしてもらえればOKとのことだ。

とはいえ、討伐した勇者のようなことをすれば、再び刺客が送り込まれるだろう。そんなことをするつもりは無いが、一応は注意しておくか。


さて。明日からは、どんな目標を見つけていこうかな。

一章が終了しました。続きは……まだ方向性が定まっておりません。なので不定期投稿になるかと思います。シリアスな状況でキャラ特色を出す戦闘と、ほのぼのコミカルな日常を両立できるよう頑張ります。

評価も(四捨五入で)100ポイントを頂き、恐れ多い限りです。今後ともご愛読の程、宜しくお願い致します。

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