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異世界で、エース達と我が道を。  作者: RedHawk8492
第1章 腰を下ろすために
23/205

20話 シルビア王国開放戦~真面目な第一歩兵師団団長~

【視点:三人称】

市街地での交戦も5分ほどすると、ディムース少将はストライカーにて少しの距離を移動する。移動先の場所は、さきほど住民が出てきた防空壕だった。



「聞いてくれ!我々は城下町に展開する勇者軍を排除した!今からこの区域は貴方方のものだ!!」



第6地区を掃討した歩兵隊を指揮する彼は、ストライカーのハッチを開けて、飛び出していた住人に声を荒げる。もちろん馬頭ではなく鼓舞するためのものだ。解放が近いことを住民に知らせ、こちらの勢いをつけるためである。

その意図は、現地住民に伝わった。今まで中に居た人も騒ぎを聞きつけ、防空壕の前は、あっというまに人でごった返す。予想以上の勢いに、彼も少し困惑するほどだ。



「本当か!?あの暮らしから解放されるのか!?」

「いいぞニーチャン!どこの国の者か知らんが、そのままアイツ等を叩き潰しちまえ!!」

「凄いわ!あなたたちは一体なんなの!?」

「あんたたちは大歓迎だ!そして消え失せろ勇者軍!二度と戻ってくるな!!」

「出ていけ!勇者の軍は出て行っちまえ!!」



住民の皆が興奮し、一部が寄ってくるが、現在は絶賛戦闘中。しかし、情報が必要なのも事実である。



「兄さん、聞いてくれ!あの建物の地下に盗賊のアジトがあるんだ!制圧できるか!?」



吐出してディムースに要望したその男性の顔は、恨みと言う言葉に満ちていた。過去に何か、耐えられないことがあったのだろう。夢かと思うほどに強力な軍隊がこの地に進軍している今日は、積年の恨みを晴らすチャンスというわけだ。



「わかった、制圧を誓う。他の場所にも拠点があるなら情報が必要だ、集められるか?」

「本当か!?ここの連中の情報をかき集めれば9割以上は揃う、待っててくれ!」

「わかった。ここに部下を数人置いておくから言ってくれ。危ないから、皆は下がって居るように!」



会話が終わると、男性は防空壕へと走っていった。他の住民も後退し、いつでも壕へと避難できるようにしている。ディムースからすれば、願ったりかなったりな流れだ。敵の施設の場所が分かるならば、それに越したことはない。



「お前、なんでこんなところに居るんだよ!」



突然と声を荒げる住民男性の横に、同じ年代の男性がいた。どうやら知人のようだが、ここに居ることに対して相当驚いている。相手の男性が、避難と言う名目で防空壕に監禁されていたことを、知っていたのだろう。



「馬鹿野郎、第3地区も解放されたんだよ!鐘の音を聞いて皆が飛び出してきている、そこかしこでお祭り騒ぎだ!!」

「あんたらも聞いたのか?第2地区や第8地区の解放も時間の問題らしいぞ!」

「マジかよそれは目出度い!だったらコレは解放の鐘だ!誰か知らんが、もっと鳴らせ!!」



鐘の音を聞いてから住民のテンションも高く、次々と防空壕から飛び出しアルファ連隊に手を振っている。歓声は空気を割らんばかりに肥大しており、低空飛行から発せられるジェットエンジンの音にすらも負けていない。




ちなみに、鐘を鳴らしている犯人はホークである。




西門から侵入した戦車部隊に混じり、歩兵隊と共に銃撃戦で戦線を突破。魔法が効かない故に結界も容易く突破し、聖堂の鐘を鳴らしているのだ。

出撃前まで得ていた衛星の映像で聖堂を発見した彼だが、屋上にある鐘には人一人来なかった事にも気づいていた。街のシンボルといえる大きさの割りに鳴らされないのは何か理由があると考え、こうしてたどり着いたのだ。



「空は完全に制圧、地上の制圧率は6-7割ってところか。現在の被害は車両の部分破損が2つと……例によってイジェクトしたベイルアウターの機体か、戦果としても十分だ。」



黒いフード付きのコートが、戦闘機の風圧で揺れている。夕日を浴びつつ鐘を鳴らしながら、空と地上の光景を見つめていた。女神との約束が果たされ、今は仕上げの真っ最中だ。敵兵と言う名の多くの人が殺されているが、必要な対象故に仕方ない。命が消えるのが、戦争の道理だ。



「……しっかし何度見ても、ホントみんな強いなぁ。」



彼にとっても正直なところ、魔法がある世界だけに成功すると確信ができなかった、今回の作戦行動。蓋を開けてみれば狙撃の一発で勇者は片付き、その後の開放戦も圧勝だ。残る憂いがあるとすれば、今戦っている仲間の安否ただ1つ。何もできない彼は、せめて陽動にと、この場の鐘を鳴らしに来ていたのだ。

結果として現地住民が活気付き、様々な現地の情報が寄せられている。特に潜伏地の情報は大きく、虱潰しに探す必要が無くなった。そのため、戦力の分散も発生していない。軍隊にしては少数精鋭である8492にとっては、まったくもって理想的な状況だ。


空を覆う戦闘機の群れの機動も大人しくなり、残すは各地に散らばる盗賊や騎士のアジトだけだ。それとは裏腹に、一部の個所は、圧倒的に慌ただしくなっていく。



《本部!本部!こちら南地区防衛隊!!敵軍の攻撃で第12、第23、第25、第38、第59騎士団の27,800名は全滅!南門からの大通りを占拠されて裏通りも制圧されています!奴等を止められません!もう無理です!!》

《こちら翼竜隊の指揮所です!敵精鋭部隊の攻撃で戦力のほぼ全てを消失!5匹いた古代龍や邪人国からの増援も全てやられました!!制空権を完全に奪われまています!もう数秒も持ちません!!》

《西地区より報告、魔導兵器はすべて破壊され防衛線が完全に突破されました!敵の軍勢が王宮前の広場に雪崩込んでいます!至急増援を!!》



「な、なんだこのザマは……あれだけ居た我等の部隊が、一刻も経たずに壊滅だと……。」



魔導無線から次々と寄せられる惨敗の報告を聞き、勇者軍の司令塔は混乱を極めていた。誰もが顔面蒼白に成りながらも全力で脂汗を流しており、何か手は無いかと模索し、報告される状況に絶望する。



「コーナーに潜んでいるぞ、スタングレネード投擲!」



その王宮2階にて、敵軍であるI.S.A.F.8492の部隊が既に差し迫っていることを彼等は知らない。手練れの騎士団が、ものの数秒で無力化されるなど、考えもつかないことなのだ。

一瞬の光線と共に発せられる大音量の音圧に、騎士たちの三半規管が麻痺状態になってしまう。その隙をついてディムース少将率いるアルファ歩兵連隊が雪崩れ込み、フロア一帯を制圧していく。



「クリア!次は2つ先のコーナーに注意しろ!」

「「「アイ・サー!」」」



一度も迷わず止まることなく各フロアを制圧しているのだが、これはSR-71ブラックバード偵察機であるビッグアイ部隊、及び偵察ヘリ部隊であるシャドー隊の功績だ。

上空を手練れのブラックバード偵察部隊6機がメインで受け持ち、側面をシャドー隊や低空飛行のグローバルホークがカバーする。制空権を確保したがゆえに可能な荒業であり、翼竜を残したままでは、できなかった芸当だ。それら全てが、持てる装備を駆使して偵察や状況報告を行い、眼前の状況をデータ化する。


その情報はタイムラグ無しでジェラルド・R・フォード級1番艦であるフォード1のCICに転送され、専門兵により各地上部隊が必要な情報に変換される。そして現地の司令塔に伝達され、活用されることとなる。I.S.A.F.8492において昔から行われてきた制空権奪取からの索敵活動と集中管制は、この世界においても多大な効力を発揮しているのだ。

敵からすれば、魔力も使わずに自身の奇襲や待ち伏せが読まれたことに驚きながら、命を落としていることだろう。それには当然、理由があった。これらの支援があるおかげで、8492の地上歩兵部隊は、敵の位置が手に取るようにわかるのだ。



《ディムースよりフォード1、城の3階フロアまでを制圧した!》

《了解、こちらでも確認した。4階フロア正面に注意、扉の向こうに立てこもっている。熱源探知及びレーダー・イメージングからするに、12名全員が敵の騎士兵だろう。3名が扉の向こうで構えている、残りは左側の壁際だ。》

《了解した、各機の支援に感謝!工兵、ドア・ブリーチャー用意!》



そう言うとディムースは工兵部隊を呼びつけ、彼らは指向性爆薬をセットする。扉や薄い壁に取り付け破壊が可能なプラスチック爆弾で、ドア及びドアの反対側(至近距離)を吹き飛ばす装備だ。この世界のドアは木製のため、効果は十分である。



「Set!」



ホテルの羽毛布団に飛び込んだときのような音と共に、野球の1塁ベース程の大きさの爆薬がセットされ、隊員全員が数秒待つ。ちなみに薄さは1類ベースの半分程度だ。


そして爆発した瞬間、指向性の方向である扉の後ろにいた騎士3名が絶命した。その瞬間にディムースと直属の配下の数名がHK417、HK416のホロサイトを覗きながら突撃し、残りの騎士を無力化していく。

ディムースが持つHK416から放たれた10発の5.56㎜弾は、寸分の狂いなく5人の額に命中。着弾点の肉を炸裂させ、その生命を奪い取った。



「クリア!」



一言だけ発した後は確認を行う隊員を残し、他の大隊と共にすぐさま次のフロアの制圧だ。次々と制圧が実行され、残りの部屋が減っていく。



「よし、この廊下の先うおっ!?」



とあるフロアを目の前にした窓際の廊下で、目の前から複数の弓矢のようなものが飛んでくる。間一髪で物陰に回避しながら、ディムースはマガジンを換装する。



「リロード!しかし奴等め、屋内で弓矢とは形振り構わなくなってきたな!」

「隊長、チラっと見えましたが奴等交代で弓撃ってましたよ!この距離ではスタングレネードも届きません!」

「わめくな、問題ない!」


《ディムースより火力支援要請、攻撃位置はレーザーで指定する!壁ごとやってくれ!!》



その言葉の数秒後、状況が一変する。ズドォォォンという轟音と共に、王宮4階の壁が吹き飛ばされた。対戦車ヘリから射出されたAGM-114ヘルファイア対戦車ミサイルが、一瞬だけ行われたレーザー指定地点に向かい、側壁に命中。弓兵軍団ごと、その存在を粉砕したのだ。



《シューター1-1よりディムース、「おかわり」は必要か?》

ナァィス(Nice)...》



彼は、穴の開いた側壁からヘリを見る。パイロットのドヤ顔に対してニヤリとした表情を見せ、挨拶は終了。抵抗が無くなった王宮廊下を駆け抜け、アルファ歩兵連隊は王宮内を進軍していく。




そして、4Fの最後のフロア。目の前にあるのは、敵軍の指令室のみとなる。




情報量が多いこのエリアの敵兵を皆殺しにするわけにもいかず、最後はドア・ブリーチャーと同時にスタングレネードを投擲し強硬突入。明らかに騎士と思われた兵士は全員射殺。残った敵の将校クラスを全員縛り上げ、この戦闘の幕が閉じた。

街に散らばった旧クーデター軍や盗賊の拠点が残っていたものの、大半数が住民からの情報により制圧された。場所は不明ながら未だいくつか残っているとの情報があったが、それも片付く。指令室の人間を尋問したことにより、残りの全ての拠点地点が発覚したのだ。



これにより、晴れてシルビア王国は解放される。

前代未聞の速攻だ。戦闘開始から2時間程度の時間でもって、完全な制圧を迎えることとなった。





今回の解放戦争は、のちの歴史資料に「シルビア王国に降りた怪鳥」と題されて、後世まで語り継がれることとなる。

戦闘パート終了です。各パートでやっていることは単純なのですが、それでも文章にするとなると難しいですね…。

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