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異世界で、エース達と我が道を。  作者: RedHawk8492
第1章 腰を下ろすために
22/205

19話 シルビア王国開放戦~空飛ぶイボイノシシ~

【視点:三人称】

空を飛び交う、I.S.A.F.8492所属の航空機。



無敵と言われた勇者軍や邪族軍の翼竜隊・ドラゴン隊を片っ端から大地に叩き落し、一瞬のうちに制空権を奪い去った。戦争に関してド素人な人物が見ても進軍してきた地上勢力は優勢であり、逃げ惑う勇者国の兵士の姿が多々見られる。

制空権確保後に飛来したラーズグリーズ、アーサー、イエロー隊が邪族国からの増援を足止めし、ストライク隊がドラゴンに空対空爆撃を実行する。ゲーム内でホークが作った対地上攻撃用F-22の部隊が、しっかりと活躍している証でもある。これがB-1ランサーなどの大型爆撃機ならば、ドラゴンに接近する前に回避されているだろう。


最悪、逆に落とされる事態まで想像できる。数を用意できて燃料の問題がないならば、超音速爆撃機の方が都合が良いことが多いのだ。

数に物を言わせたゴリ押しの上に連携まで取れているとあって、ドラゴンですら数秒で絶命する密度の攻撃となっている。翼竜隊の騎士も、戦闘機軍に対して攻撃を命中させることができていない。



《グリフィス1よりイーグルアイ、シルビア王国上空の敵部隊を全て撃墜。アルファ歩兵連隊の足が遅れているな、支援に回る。南門内側をGBU-39にて攻撃する、最適なストライクコースを転送しろ。》

《了解……そうだな、方位2-7-0より進入しGBU-39で攻撃せよ。ストライクコースを算出した、HMDヘッドマウントディスプレイに割り込んで表示する。到着したルデール隊は、グリフィス1の航空支援に随行せよ。》

《グリフィス1了解した、トップアタックでGBU-39を使用して攻撃する。》

《こちらルデール1了解。交戦空域到着後、3番機と共に機銃掃射を実行する。》



空中管制機から情報が転送され、南門で足止めを食らうアルファ歩兵連隊の姿が確認できたグリフィス1。どうやらA-10Cに乗るルデール隊も接近中の様子だが、あと1分弱はかかるようだ。

グリフィス1が空から見るに、第一歩兵師団の車列は大渋滞の状況だ。敵も数に物を言わせたバリスタや魔法弾を用い、道に多数の大穴を空けている。穴の深さは1mほどあり、車両部隊にとっては影響が大きい。

結果として南門から400mほど先でストライカーが足止めされ、敵はバリケードの向こうに籠城していた。流石のスライカーも、大穴相手では進めない。南門ごと吹き飛ばそうにも民家が近いため、行えない。砲による攻撃では、効果範囲が広すぎるのだ。



「ディムースより全部隊、威嚇射撃を緩めるな!緩めればバリスタが向かってくるぞ!」

「隊長、南門内部に一発だけでもブチ込めないんスか!?明らかに人間じゃない奴も混じってますよ!」

「絶対にダメだ!105mmや120㎜砲の衝撃で吹き飛んだ城壁が民家に命中するだろ!今の俺達は戦線を維持だ、わかったら敵のケツに鉛球をお見舞いしてやれ!!」

「イエッサ!『メビウスとガルムの奴は空に居るんだろうな』とホザいてる連中はどうします!?」

「嘘でもいい、メビウスとガルムの二人が上に来ていると言っておけ!」

「イエッサ!!」



この距離に最適な武器であるM14 EBR-RI狙撃ライフルを持つディムースは8倍率のスコープを覗き込み、防壁の上に陣取る兵士を狙撃している。かなりの距離があるので、静止目標以外は偏差射撃だ。AoAの中でも上位ランクの彼が持つ腕は凄まじく、命中率7割を超える7.62x51mm NATO弾が敵兵士の部位を吹き飛ばし絶命させる。

しかしながら、攻撃の手数が足りていない。射程距離の長いHK417アサルトライフルを持つ兵士が援護射撃を行うも、流石に遠距離用の装備なしで300mの距離、更に厚い石柵があるため胸より上しか狙いが定まらない相手は辛いところがある。そのためM249ライトマシンガン兵含めた重機関銃部隊が一人につき毎分100発の弾丸をばら撒き制圧射撃を行っているのだが、命中率は二の次のため、このままではジリ貧だ。まず先に、こちらの弾薬が尽きるだろう。


ディムースを筆頭に狙撃部隊こそ敵を少しずつ排除しているが、一向に減る気配を見せていない。それどころか増援が到着し、防衛ラインが厚くなる。更には南門のすぐ内側にも魔動兵器が立ちはだかり、魔術師部隊と共に遠距離攻撃で抵抗している。味方のヘリ部隊は制空権確保前に現場を離脱しており、まだ戻ってきていない。

バリスタの脅威が排除できないため、8492としても穴に蓋をする工兵を展開できない。装甲車ですら当たり所が悪ければ走行不能になる攻城兵器を、歩兵が防ぐことはできないのだ。


そこで、航空隊の彼等の出番と言うわけだ。交戦開始から15分ほどしか経過していないが、ホークの予想通り、既に制空権は確保されている。



《警告、グリフィス1がストライクコースに侵入。バリケードにGBU-39が投下された、着弾に注意。》

《こちらルデール1、味方視認、敵確認。方位1-0-0より攻撃コースに進入、GAU-8にて城壁の敵歩兵を排除する。》

《ルデール3目標確認、550メートル。方位角0-9-0よりルデール1に続く!》



小範囲に精密攻撃を行えるGBU-39爆弾を投下したグリフィス1に続き、対地上攻撃では圧倒的な火力を持つA-10Cウォートホッグを操るルデール隊が遅れながらも交戦空域に到着。

そのうち1番機と3番機が、「駆け付け一杯」とばかりに東部より進入し、東西に伸びる南の城壁上部に沿って機関砲を掃射。高さ数mの土煙を残して門を守る軍団を『蒸発』させ、味方の士気を最大限にまで高めさせた。



《ホッホーウ!ナァァイス!》

《イェェェイ!》

《うるせぇぞイボイノシシィ!ハッハァー!》

《イーグルアイよりディムース。飛行隊が複数の地上ターゲットを排除、状況報告はBDAを待て。》



放たれたのは、強力ゆえに非常に重量と大きさのある機関砲だ。いくら強力な機関砲とはいえ、他の航空機には搭載できない代物でもある。物理的、そして飛行力学的に、搭載することができないのだ。大型の航空機ならば無理やり搭載可能だが、そんな運用をするならばGAU-8以外に適任な武器は多い。


しかし、あえてソレを航空機に積むために生まれた怪物こそが、ルデール隊が操るA-10なのである。どこかの技術者は、決して、A-10にGAU-8を搭載したワケではない。GAU-8を搭載するために、A-10という航空機を作ったのだ。

これほど互換性のない機関砲を積んだA-10だが、ミサイル全盛期の時代に機関砲というローテクで居場所を取る程に、対地攻撃に特化した性能だ。A-10の機首についている機関砲『GAU-8アヴェンジャー』は、30x173mmを誇る対装甲用焼夷徹甲弾、PGU-14/B(弾頭重量425g)を発射する。


連射性能も毎分3,900発と、他の戦闘機に積まれている20mm機銃とは桁違いの性能を誇り、その弾丸「1発」の威力は「炸裂手榴弾の数個分」。使用される弾丸一発の大きさを分かりやすく表現すると、細長い500mlのペットボトル。その弾頭には、425gの劣化ウランが使用されている。

着弾地点からの有効攻撃範囲は4mもあり、その範囲にいたならば、人間の肉体は原形を保てない。着弾地点に居なくても掠れば肉片となり、死んだと認識する前にあの世逝きだ。




―――無論。直撃ならば、肉片になることすらも許してはもらえない。文字通り、存在そのものが蒸発する。




その力を示すように、着弾地点はクラスター爆弾が爆発したかのような炸裂音と煙、衝撃波に包まれる。煙が晴れたあとに現れた姿は、無残なものだ。城壁は上半分ほどが崩れており、既存の美しさは微塵も残っていない。直撃していないというのに防壁の下部は抉れ、震度3程度の地震でも発生すれば崩れ去ってしまいそうだ。

これらの原因が爆弾ではなく、機関砲であるが故に質が悪い。味方にとっては天使であるが、敵にとってはその実、悪魔以外の何者でもない。着弾地点では生命が消え去り、生き残るという選択肢を許さない。兵士は身に着けていた鎧の金属を少しだけ残し、存在が消え去った。


騎士が誇る、錬鉄の職人の手で作られた鉄の鎧程度では、この武器を前にしては紙切れと同じである。掠れば砕かれ、鎧の役目を果たすことなく、防具としての役目を終える。現在地上で無双しているM1戦車部隊ですら、この機銃の前では棺桶に他ならない。それほどまでに、GAU-8が持つ火力は圧倒的なのだ。

着弾による炸裂音が響く中。「ヴオオオォォォ」という、重厚な発射音が木霊する。発射された弾丸が音よりも速いため、発射音が、着弾音のあとから聞こえてくるのだ。「放屁のような発射音が聞こえたら生きている」という下品な言葉が実在しているのだが、まったくの事実であるところが、何とも奇怪な話である。



エース部隊によって作られる戦闘の状況は、止まることなく変化する。再びアヴェンジャーと思われる着弾音と発射音が聞こえ、門の状況が一変した。



《ルデール2よりディムース、シルビア王国外部から奇襲をかけていた敵地上兵を排除。南門付近はクリアだ、オーバー。》

《ディムースより飛行部隊、航空支援に感謝!南門を抜け、このまま市街地へと進軍する!》

《グリフィス1よりディムース。必要なら何時でも呼んでくれ、ルデール隊も待ってるぞ。》

《ハハハッ、頼りになる天使達だ!俺たちの上に落とさないなら大歓迎だぜ、デリバリーの用意をしていてくれ!》



冗談を飛ばすディムースだが、ここは戦場真っただ中だ。業を煮やした空中管制機から、お叱りが飛んでくる。



《ディムース少将、早く大通りを制圧して王宮前広場に向かえ!オメガ11がイジェクトレバーを持ちながら、敵騎士団と戦っている!》

《グリフィス1からイーグルアイ、あいつは気にするなイジェクトレバーを持っていれば無敵だ!この前なんて高度3万フィート(≒9000m≒ジェット旅客機の巡航高度)からイジェクトしても生きてたぞ。騎士兵程度、奴になら問題ないさ!》

《あの野郎、そんな高度からイジェクトした事があるのか!?そもそも護身用の拳銃はどうしたんだ!?》

《拳銃の維持費が勿体ないってのと、鹵獲すれば十分だから持ってないんだとよー。》

《クソッ、狂ってやがる!!》



どこぞのベイルアウターのせいでイーグルアイの口調が乱れており、管制も乱れている。絶賛仕事放棄中だ。


それを気にせず南門を抜けたストライカー部隊が、剣を持って対抗してくる騎士や盗賊の部類を機関銃で排除する。精巧な作りを誇る鉄の鎧も、7.62mmや12.7mm機銃を前にしては心もとない。

事実、機銃による攻撃を防げていない。着弾したそばから弾丸が貫通し、数発命中する頃には鎧は粉々だ。撃つ側の弾の消費速度も尋常ではないが、敵が無力化される速度はそれ以上だ。様々な軍勢が立ちふさがるが、文字通り溶けている。


大通りに入ると、後方を警戒していたM1戦車部隊のグリズビー機甲部隊が前に出てくる。ストライカーと共に重機関銃で敵兵士を薙ぎ倒しながら、バリケードすらも強硬突破して進んでいく。

その結果、車列はあっという間に南門から宮殿まで伸びる大通りを占拠。M1戦車や装甲車による火力支援を受けながら、第一歩兵師団が裏通りを制圧していく。



《グリズビー1-1よりブラボー1-1。サーマルレーダーが反応を示している、前方左のコーナーに気をつけろ。》

《了解、索敵支援に感謝。》



ブラボー1-1のハンドサインと同時にスタングレネードが投擲され、7.62mm弾を放つHK417の発砲音と同時に盗賊の呻き声が発せられた。

悲しい現実が1つ。戦車や航空機が発する轟音にかき消され、最後の言葉すら誰にも聞こえていないのだが。



《ビッグアイ3よりブラボー1-1、そのエリアにある裏路地の角という角に盗賊らしき人影が確認できる。ポイントは順次、携帯している端末のMAPに表示していく。機甲部隊に先行してもらいつつ、裏道ではスタングレネードを使用した方が良いだろう。》

《了解したビッグアイ3!グリズビー、頼りにしてるぞ!》

《ハッ、それが戦車乗りの役割ってもんだろ?空の連中の索敵支援があるなら、怖いものなんて微塵もネェ。行くぞテメェ等、先陣を切るのは俺たちだ!歩兵隊に指一本触れさせるなよ!》

《1-2、了解!》

《1-3、ラジャー!》



大通りから一本外れた通りをM1エイブラムス3両が先行し、12.7mm重機関銃で大まかなクリアリングを行っていく。さすがに主砲を使うと一帯が吹き飛ぶために使用できないが、この世界相手の人間には12.7mmで十分だ。

魔法攻撃らしきものも飛んでくるが、ホークが召喚した彼等や兵器は、全てに魔法無効のパッシブスキルが適応されているため通用しない。一応は物理ではあるが、弓兵となると尚更である。いくら熟練の弓兵とはいえ、ライフルを相手にしては話にもならない。


戦車が入れない細い裏通りはコーナー死角からの不意打ちが用意されているため、アルファ6の部隊はスタングレネードを投擲しながら確実に制圧する。事実、ブラックバードから報告があったとおり7割の道角に敵が潜んでおり、事前の指示がなければ、いくらかの被害を受けていたはずだ。




西門を抜けた一部の部隊と、南側を突破した部隊が合流。それぞれの火力が薄いところに、増援部隊が送り込まれた。

市街地の制圧もほぼ終わり、この戦闘も終盤を向かえることとなる。

南門防衛兵士「首都防衛ミッションで制空権取られた上にA-10の5機編隊が攻撃してくるクソゲー」

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