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異世界で、エース達と我が道を。  作者: RedHawk8492
第10章 フーガ国
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13話 ドラゴンが見た蹂躙・空対空

 時刻は、アイガイオンが現れる少し前に遡る。



「チッ、いいところで無線範囲外になりやがった。おい聞いたか副操縦士?総帥、俺のハクが~だってさ。忘れかけた頃にかっこよくなるんだよな、いつもあのぐらい強気でもいいのによ」

「そうですけどね……あんまりからかってると、まーた照れ隠しでペナルティくらいますよリーダー?」

「背面飛行訓練は勘弁してほしいぜ……」



 フーガ国南東、距離にして約80㎞。交戦区域を迂回するようにオスプレイ一機が超低空を飛行し、進路を西北西へととっている。

 前方にはイエロー飛行中隊、後方にはガルーダ隊と空対空の護衛も申し分ない。電波を中継するUAVの配備が間に合っていないため電波到達区域の範囲外となっており、この3部隊以外において無線封鎖の状態となっている。



「ところで旦那さんは無線の通りですが、心境はどうですかね若奥様?」



 そして、そんなフォーカス6-1のオスプレイに乗るのはフーガ国の3名だ。シリアスな場面ながらも先の言葉を直接耳にしてほんのりと頬を染めるハクは、蒸し返されている故に追い打ちを受けている。



「……ハク様。このような場面ですが、ご結婚おめでとうございます。御円満のようで、我ら一同感激の極みに―――」

「え、えーっとですね……」



 そして、何故か涙を浮かべるケストレル国王の直衛兵3名。照れ隠しと小恥ずかしさが同時に芽生える彼女の耳に、テイルローターとジェットエンジンの音が嫌に響く。

 それを操る彼等にとっては戦争ではなく戦闘らしいが、どちらにせよ戦っている際の雰囲気には程遠い。地上部隊もよく見せていたお気楽な光景に、ハクは不思議な安心感を抱いていた。



《イエロー13より各機。2時方向、距離2000に敵飛行部隊。数は30、翼竜とドラゴンだ。フォーカス6-1に近づけさせるな、取りつかれる前に落とすぞ》

《イエロー4、了解。援護につくわ》

「っと、どうやらイエローが交戦を開始したようだ。揺れるかもしれない、全員席についてくれ」



 機体の隅で丸まっていようかと彼女が考えたタイミングで、状況が動いた。先行していた護衛機であるイエロー飛行中隊が、敵邪国の航空部隊との交戦を開始したらしい。

 無線から会話が聞こえるも、フォーカス6-1からイエロー飛行隊の姿は見えない。雲が視界を邪魔しているということもあり、彼女達が考えるよりも遥か先で戦っているのである。


 イエロー飛行隊がどこで戦っているかは分からないハクだが、その戦闘があって自分たちは無事に飛行で来ているということは把握できる。見えないところで戦う仲間の無事を祈りつつ、把握できる状況を直衛兵に説明した。


 自然と全員の視線が、自然と機体前方の窓の向こうへと移っていく。コクピットと呼ばれる操縦席から見る景色は、ドラゴンになって飛んでいる時とあまり変わりがない。自分の力を一切使っていないところが、4人にとっての大きな違和感と言えるだろう。

 電車のロングシートのように向かい合わせで設置されているコクピット座席の後方にある側面窓からは、横を流れる風景がよく見える。違和感もあってかややソワソワとした態度を見せる3名は、この戦いの行方が気になって仕方がない。



《イエロー13よりフォーカス6-1、海抜高度6000-8000m(地上からは2000m)で交戦中。高度を落とせ、流れ弾に気をつけろよ》

《了解、支援戦闘に感謝》

《こちらイエロー4、高度6000からイエロー3がK-77Mを発射。敵ソラの脅威残り8、翼竜じゃなくて明らかにドラゴンよ。イエロー2、支援に回って》

《イエロー2了解、空対空爆撃を実行する。各機、ボムの炸裂範囲に気をつけてくれ》



 交戦開始時に居た敵は30、それが2分程度で残り8。ハクからすれば、相変わらず考えられないような速攻だ。直衛兵も理解が追いついておらずハクに状況説明を訪ねてしまっているが、どう説明したものかと彼女も迷ってしまい言葉が出ない。

 十数秒後には一帯を制圧した報告が届いてきて、3名を更に混乱させる。比較的強者と言われている邪族国のドラゴンが秒殺されるなど、こちらも前例が無いことだ。


 フォーカス6-1は木々の僅か上の飛行を続け、山脈が間近に迫っても高度を上げる気配が無い。極限まで低空飛行を続けて遠方からの目を回避し、当初の予定通りの進路を維持している。

 その甲斐あってか、今のところは敵部隊からの攻撃もない。そして山脈を突破し、僅かながらフーガ国が目視圏内に入った。



「警告、方位0-1-0。対空レーダーに新たなunknown、低空低速の飛行物体……大きいな、魔導飛行船というやつか?」

「動きも穏やかですし敵地上部隊の上空です、可能性は高いですね。隊長、高度を下げましょう」

「そうだな、木の上を飛ぼう」



 コクピットでそのように会話したフォーカス6-1は再び高度を下げ、言葉通り木々の上を飛んでいる。あと数メートル低ければ接触するだろう、本当に低空だ。

 そのタイミングで背後から真横に現れる、『鳥』と呼ばれる2機の戦闘機。ハク達が乗る機体の左前、側面窓から良く見えており目と鼻の先を飛行している。F-15E戦闘機のカスタマイズ機、AGM-88Eミサイルランチャーで武装した空対地攻撃仕様だ。



《Focus6-1, this is Garuda1. We're flight of two F-15s, eight AARGMs for the section. Standby for SEAD, over.》

 フォーカス6-1、こちらガルーダ1。2機のF-15戦闘機で飛行中、(2機で合計)8発のAGM-88Eで攻撃する。効果判定を頼んだぞ。


《了解したガルーダ、飛行船相手に命中なんざ目を瞑ってても余裕だろう。あの4隻の魔導飛行船は邪魔だ、やっちまえ!》



 未だ英語は理解できないハクだが、何かしらの連絡を行っていることは読み取れる。無線が切れた直後、フォーカス6-1が返事を返していたのは確認できた。

 そして、返事に対する回答が届くのに時間はかからない。ガルーダ1は安全装置を解除し、空対地ミサイルの使用を選択する。発射時の“お決まり”と共に、無線にて攻撃を宣言した。



《Good tone, good tone. Fox3, Fox3.》

 発射、発射。フォックス3、フォックス3。



 フォックススリーとの言葉と同時に2機のF-15戦闘機から「ミサイル」と呼ばれる投擲物8つが切り離され、一瞬の落下後に、炎を吐きながら途轍もない加速を見せる。

 数秒で豆粒サイズになるミサイルを追うようにガルーダ隊の2機もアフターバーナーを焚いて急加速し、左方向に傾斜して、合計4本の細い雲を作りながら離脱上昇していく。両者の姿は、数秒のうちに見えなくなった。


 投擲物は一直線に魔導兵器に向かい、目標に対して寸分の狂いなく着弾する。空対空ミサイルとは比較にならないほどの爆発が発生し、衝撃はフォーカス6-1のパイロットも感じ取れる程だ。

 それを感じると同時に、フォーカス6-1は高度を上げた。数秒遅れで爆発音が機内でも聞こえたが、エンジンの轟音下ですら聞こえるとなると相当の衝撃だということが伺える。現に、着弾地点を中心にした周囲の木々が突風に対抗するように動いていた。



 直撃を受けた魔導船は浮力を保てないようで地面へと叩き落され、平原へ展開する自軍の中央に墜落している。地上部隊の損害も軽微とは程遠く、一個中隊ほどが逃げ遅れの犠牲となっていた。

 光景を目にして流石に表情を険しくしたハク達だが、パイロットからすれば見慣れている光景だ。悲惨な状況を横目にすることもなく、フォーカス6-1は上空を飛び越えていく。



《Good kill, good kill. 流石だなガルーダ隊、空対地ミサイルの全弾命中を確認》

《Focus, you're clear all the way. Good luck. Out.》

 道は開けたぜフォーカス。幸運を、アウト。


《Focus6-1, copy. 支援攻撃に感謝、あとはコッチの仕事だ》



 進路を邪魔していた魔導飛行船は、息を吸うように排除された。魔導船から放たれる魔導弾と呼ばれる魔法攻撃は鮮烈であり、例えドラゴンであろうとも苦労する兵器である。

 それが、たったの一撃だ。そもそもにおいてミサイルによる戦いの概念など想定されておらず、これほどまでの遠距離からの攻撃。かつ、目で追うことすら精一杯である程に超高速である攻撃には対応する暇も無い。



「こ、これほどの遠距離からの攻撃……会話を聞くに、魔導飛行船を撃破したのですか。なるほど、先制して大きな脅威を無力化する戦術ということか」

「マスター率いる軍隊は、今のような超遠距離戦法を得意としています。相手の射程外から猛烈な速度で必殺の一撃を叩き込み、基本として攻撃者は安全圏に留まる一撃離脱の戦法。一撃の威力や命中率も非常に高いのは明らかですが、この点は攻撃兵の錬度故です」

「な、なるほど……」



 感心している近衛兵だが、状況は瞬く間に変化している。ガルーダ隊やフォーカス隊にとっては、この遠距離攻撃は珍しくもなければ日常だ。それを示すかのように、魔導船を全て撃墜したというのにパイロット達は物静かなものである。

 輸送機は高度と速度を上げて敵集団の頭上を高速で通過し、フーガ国の部隊の駐屯地に向かって飛行している。少しだけ減速しつつハッチが開かれ、投下用意が整った。



「ハクさん、これで良いんですよね?止まるとそちらの軍隊に攻撃されかねないから、停止は出来かねます」

「問題ございません、感謝しますフォーカス6-1。私たちは、この高さから飛び降りても問題ございません」

「了解。外堀は総帥率いる蹂躙部隊に任せるとして、王国に取り巻いている敵部隊にお気をつけて。5秒後に飛び降りるとドンピシャですよ。4、3、2、1……」



 最適な降下場所まで指示されたとあって半信半疑であった彼女だが、機内からでは外が見えづらいため指示に従う。そのあとに直衛兵が続いたが、タイミングが少し遅れたので着地地点は少々異なる所になるだろう。

 結果として、彼女は面白いほどに友軍の前方付近へと降り立つことができた。あの速度で飛行しながら降下場所を判断できるフォーカス6-1に驚き尊敬の念を抱いたが、驚きは輪をかけることとなる。



「なんだえっ!?ハ、ハク王女!?」

「っ、ハクなの!?」

「お、お母様!?」



 彼女が地面に降り立つと、偶然にも己の母親の近くだった。力が戻ってから顔を合わせるのは初めてであり、娘の力がっ戻ったことに気づいたのか彼女も少し目を丸くして驚いている。

 ハクと似て玲瓏な声は、気品と凛々しさを備えている。かつて彼女が焦がれた王女の姿は戦場に在り、体力を回復するポーションが壊滅に近い今、兵士を治療するために自らが赴いていたのだ。魔力が大きく制限されているとはいえ、それでも回復魔法が使用できるのはハクと同じ古代神龍故の自力である。周辺には軽症~重症未満の兵士が数名いるが、その甲斐もあって今のところ被害は軽微な程度で留まっていた。


 しかし、だからと言って過去を消せるわけでもない。両者ともに顔を見合わせて言葉が見つからず、周りの兵士もかける言葉が見つからないようだ。


 その空気は、耳をつんざく轟音と共に払われる。2機のF-15戦闘機、ガルーダ隊が、ハク達の降下完了を確認するかのように上空を通過していく。蓋を開けてみれば本当に確認することが目的だったために、轟音は次第に小さくなっていった。



「あれが……話に聞いた、『鳥』なのですね」



 その姿を地上に居た全員で見送った後、戦闘機の姿が消えた時にハクの母親が呟いた。誰が伝えたのかは不明なれど、『鳥』の話はフーガ国においても度々話題に上がる程。

 しかしその事実は人族の誰かが『鳥』と呼び始めただだけで、一般名称は戦闘機。使用方法さえ学んで身体が耐えられれば、誰にでも扱える道具の類である。



 そしてそれらは『鳥』という生易しいものではなく、ドラゴンを超える怪鳥だ。フーガ国の戦闘員がドラゴンの姿になった上で束になってかかろうと、到底ながら抗える集団ではないことはハクが痛いほどに知っている。



 目視不可能な超長距離からミサイルと呼ばれる強烈な投擲を放ち、音の2倍という未知の速さで空を駆ける乗り物だ。最大速度の場合は目で追うだけでも精一杯であり、飛行高度もドラゴンの想像を遥かに超えた領域にあると言って過言は無いだろう。

 そんな乗り物を操るのは、過去において世界大戦の状況をひっくり返した英霊クラスが複数名。もしくはそれに準ずる者であり、故に最強と呼ばれている軍でもある。


 先ほどの交戦も、空を制するとは文字通りの表現だ。圧倒的な蹂躙を思い返すだけで味方だというのに冷や汗が流れそうになるハクは母親に対して言葉を残すと、味方が展開している最前線へと駆け出すのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 待ってました!更新お疲れ様です! しれっと空対空爆撃してるの流れが自然過ぎて違和感どっかいきましたw
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