12話 フーガ国防衛戦~俺は攻撃を行う!(全員)~
「了解!」で文字数が増える(笑)
“兵は神速を貴ぶ”という言葉があるが、それは部隊の展開においても同様のことが言えるだろう。新たに加わったデルタ小隊はすぐさま準備を整えると、現場指揮官のディムースが指示を出す。
「ディムースより地上部隊、小隊ごとに行動始め。デルタ小隊、ついてこい!」
「了解!」
「了解!」
「リョッカイ!」
「了解!」
「了解シマシタ。」
なぜか部隊長以外の一般兵まで返事を行う小隊と共に、ディムース達も進軍を開始する。どう頑張ってもふざけているようにしか見えないものの実力は本物であり、現にクリアリングに関しても一切の死角がなく、装甲が薄い空挺車両も安心して進軍できている。
それでも彼等が居る場所は敵陣地の真後ろと言うことで敵本陣に近いこともあり、色々と置き土産は残っていた。伏兵なりアサシンなり種類は様々だが、その程度は優れた偵察能力の支援もあって歩兵でも余裕をもって対応できている。
集団は偵察から排除まで、全くの無駄が無い。敵は成層圏から見張られていることなど想定していないため、索敵の成果は一段と高いのだろう。
それを表すかのように、歩兵部隊は敵HQの200m手前まで安全に接近できていた。流石に相手の地上部隊も彼等の接近には気づいており、傍から見ればてんやわんやの状況であることが見て取れる。時既に遅い点に気づいていないのが問題だが、残念ながら指摘できる者も居ないのだ。
「ディムースより各隊、前方にバリケードを発見!」
地上部隊が更に進むと、100m地点に対応不可能なものが出現する。後方から本陣への攻撃を遮断する目的と思われるバリケードで、大型で強固なものだ。
木造と鉄のような金属が混じっており、いやらしい強度となっている。流石の銃火器と言えど、組み固められているために突破とならば難しい。
恐らく携帯用の対戦車ミサイルでも、10発は撃ちこまないとビクともしない程のものがある。この先何があるかわからないためミサイルや戦車砲は温存したい地上部隊だが、そうなると何かしらの支援攻撃が必要だ。
《戦車砲支援を要請する!》
《海軍の支援を要請する!》
《上空援護機を要請する!》
《……こちら、くーちゅーかんせーきいーぐるあい。でるたほへいしょうたい、へ。支援が必要な気持ちは分かるが、同時に喋るな。》
《おい、どうするイーグルアイ。こっちで処理しておくか?》
そもそも、今回の戦闘において海軍は来ていない。呆れた2機の空中管制機が、エアストライクにするかストライカーの砲撃支援にするかで手短に意見を交わしている。
今後の近接戦闘を想定してストライカーの砲弾は温存、そして今回の作戦に海軍は同行していない。消去法の結果としてエアストライク以外には在り得なく、空軍を管轄しているゴーストアイは攻撃機の選定に入った。
《ゴーストアイより全部隊、到着したハンマー隊に飛行ルートを転送した。ハンマーが敵HQバリケードへの攻撃ルートに入った、戦闘機部隊は支援に入れ。》
《Hammer1, 2, visual enemy. Interring targets, wait 10 second.》
こちらハンマー1、ハンマー2、対象を視認した。敵脅威を排除する、10秒待て。
《了解!》
《了解!》
「じゅうびょおおおう!」
支援要請に反応したのは、空中管制機とA-10を操るハンマー隊だ。例によってソックリな日本兵ボイスにネイティブな英語が応答しており、傍から見た違和感は凄まじいものがある。
そしてネタを拾って”10秒”と叫んでいるディムース君ウルサイヨとホークが呟いていると、邪国の国旗を掲げた魔導兵器が出現する。視認可能範囲だが合計3両、歩兵だけでなく車両が相手するにも脅威となるだろう。
《ホークよりハンマー隊、航空支援要請地点を送る。敵陣地奥から魔導兵器が出現、排除してくれ。》
《Hammer3 to 5, copy that. Immediately attack ordinate proceed.》
ハンマー3~5了解しました。強襲地点の座標を受信。
《Hammer1, targets affirm. Strike in your overhead, stunning for targets. 》
ハンマー1目標補足、上空を通過しターゲット(バリケード)を排除する。
《Hammer2, Guns, Guns, Guns.》
ハンマー2、射撃開始!
そのため、彼は独自判断で航空隊に任せることを決定した。射撃命令を受けて最初に突っ込んできたハンマー1及び2が、GAU-8を掃射してバリケードを破壊。
後続の3~5番機は、魔導兵器に対してAGM-65対戦車ミサイルを複数発射し無力化した。近接弾ということもあって両者共に着弾音が凄く、歩兵部隊の腹に響いている。
《Impact on target. Proof for immediately attack, BDA follow.》
対象に直撃。強襲成功だ、効果判定を待つ。
《イーグルアイより歩兵部隊。ハンマー隊が敵魔導兵器とバリケードを排除、前進せよ。》
《了解!》
《了解!》
「ぶっ壊したぞ!」
「見たか!ブリキのオモチャめ!」
GAU-8で精密射撃、という離れ業もI.S.A.F.8492におけるエース部隊ならば朝飯前。もちろんトリガーハッピーではなくバースト射撃のようになっている点は仕方ないが、一撃離脱でもって、確実に目標を排除している。
ともあれ、A-10部隊は邪魔になっていた敵のバリケードを排除。これで地上の歩兵隊が進軍できる。ブラックバードから状況が入り次第、行動を開始しようとホークは判断し―――
「突撃ィ!!敵陣地を攻撃せよ!!」
「殺れるもんなら殺ってみろ屑共、来てみろ!」
「行くぞ、旗を取りに行けぇ!」
「敵の歩兵がいたぞ!」
「皆殺しだあああああぁぁぁぁぁ――……」
「「「バイノハヤサデー」」」
気づいたら、ハイエルフ護衛隊以外の全員が消えていた。
《イーグルアイより地上部隊。ドミネーションやコンクエストじゃないから旗は無いぞ、間違ってもフーガ国の国旗を取る真似だけはするんじゃないぞー。》
《了解!》
《了解!》
《了解シマシタ!》
ディムースまで『皆殺しだ』などとドップラー効果の叫びを行いながら同じノリで突撃しており、その影響で今回の選抜部隊にまで感染している。シリアスなのは000だけのようであり、オスプレイからの狙撃支援お疲れ様。と、ホークが内心で呟いたタイミングだった。
《ダボォキィィィル!》
《モモモモモンスタァキィィル!》
期待したホークだが、そこは似たベクトルの戦闘狂。無線からの言葉を聞いて、「ダメだコイツ等も紅茶キメてやがる」と呟き肩を落とした。ディムース達についていった自分の眼前に出てきた8体を一瞬で倒しているので文句の付け所は無いのだが、色々と言いたくなるものである。
とりあえず止まっているわけにもいかないので、彼とハイエルフ集団も単独ながら進軍する。戦いながら前進している先行組みにはすぐに追いつき、スコープ付きのHK417を取り出して援護射撃を開始する。
バトルライフルであり7.62x51mm NATO弾を使用するHK417の反動は、ハンドガンとは比較にならない程に強力だ。それでも単発セミオートならばある程度は扱えるのが彼の腕前。
ともかく、敵魔導士と思われる軍団に自由をさせないことが目標である。牽制としての役割に徹していた。
「おっ!総帥、随分と扱いがお上手になりましたね!」
「社交界のお世辞かよ!見様見真似だ、牽制ぐらいにはなってるだろ!」
「サー、真面目な話ですが中堅程に扱えていますよ!十分です!」
ディムースと軽口を言い合い、彼は敵の部隊を潰していく。以前と比べるとHK417も使えるようにはなったが、もちろん本職からすれば半人前だ。ディムースは愛銃であるM14 EBR-RI狙撃ライフルのトリガーを次々と引いていき、7.62x51mm NATO弾を射出している。
戦闘規模が大きすぎて個人個人の効果判定はなされないが、ディムースの目線と銃口を見ていればほぼ全てが命中していることはホークにも見て取れる。
対地上レーダーに動きがあったのは、しばらくしてからだ。左右距離100m程の位置に敵の弓兵部隊が展開し、進軍中の地上部隊に照準を合わせている動きを見せている。
それにいち早く気づいたのはAWACSではなくホークであり、しかし矢に対する全体的な防御手段が無いと判断。すぐさま全部隊に報告を行わなければならないと考え、無線を発した。
《至急。ホークより歩兵部隊、左右方向に敵の弓兵部隊を《敵の潜水艦を発見!!》》
《《《《《ダメだ!!》》》》》
《ダメかぁ……。》
ホーク渾身のジト目が、彼を射抜く。流石にはしゃぎ過ぎたと反省し、ディムース は ちいさくなる を つかった ! ▼ しかし効果がなかった。
弓兵発見の報告をしようとした瞬間、横に居たディムースが潜水艦を発見してデルタ小隊が応答しノルマ達成。弓兵に対しての反応が凄かったのだが、これはシルビア王国解放戦で冷や汗をかいたことによるものだ。
ちなみに、デルタ小隊の全員が「ダメだ」と反応した一連の流れはテンプレートに匹敵する。この小隊が動いている場面では、これらの言葉による連携はかかせない。というのが定説となっている。
とはいえ真面目な話、こんな陸地に潜水艦なんぞが居るわけがない。
ちなみに、敵の潜水艦を発見⇒ダメだ!の流れには理由がある。元となったゲームにおいては、台詞こそあったものの、用意されたのは陸地ステージだらけだった。潜水艦発見は全く使われない台詞だったため、この2つの台詞がセットでネタになっているのである。
真横で聞いていたホークはネタ元を知っているだけに、呆れて表情に力が入らない。一方で発言元の彼らは非常に真面目な表情だ。
表情を崩さないメンタルの強さはすさまじく、すぐさま部隊を散開させて車両部隊が左右に砲撃を叩き込む。敵も少数部隊だったためか、地上部隊に被害が出る前に片を付けた。
《戦場に出ない者は卑怯者だ! 戦場に出ろ!!》
《隠れる前にぶっ殺せ!!》
「敵襲ー!敵襲ー!!」
「な、なんだこいつら!?フーガ国の竜人じゃねぇぞ!!」
《この野郎くらいやがれ!》
《国に帰りやがれ!》
「後方の防衛線が破られた!前進するぞ!」
「歩兵隊がやられた!退避ー、退避ー!!」
「退避ったって、目の前は本陣だぞ!?」
そんなこんなで、なんやかんやをやり取りしているうちに歩兵隊が敵の本陣に到達。
序盤、航空隊が見せていたシリアスさはどこへやら。まるで祭りが終わって酒が回った際に起こる乱闘騒ぎの形相だ。
《なぁ、イーグルアイ。なんで奴等は銃を持っているのに、近接戦闘に持ち込んでいるのかな。》
《イーグルアイよりホーク総帥、メイトリクス大元帥より緊急入電です。「誠に大変申し訳なく極限まで遺憾ながらノー・コメント」、とのこと。》
随分と素早い入電ですね。とボヤきながら、ホーク達は本陣の一歩手前で待機中。攻略に関しては、既に突っ込んでいるバーサーカー連中で事足りるだろうと考えていた。
そんなノリの集団が来るものだから、野営地のバリケードを破壊された敵軍団は混乱している。8492兵士の装備が装備なので、人族なのかどうかすら認識できずに混乱に拍車をかけていた。
布陣の動きを見るに、統率は皆無と言える程。攻撃は収まらずディムースは敵の司令官がいると思わしきテントに突撃し、制圧を――――
――――行おうとし、幕を開けた瞬間の待ち伏せの攻撃が炸裂した。
しかし彼も近接戦闘には慣れており、この程度なら回避できる―――
――――と判断したタイミングで、掛け声と共に後ろから12.7x99mm装甲貫通弾が飛来。オスプレイから行われたM82A3による精密長距離狙撃は、ディムース曰く「弾道完璧ビューティフォー」。
お陰様で待ち伏せ攻撃を行った者の首から上は木っ端微塵に吹き飛んでおり、指令所と思われるテントの中は阿鼻叫喚だ。その場に居た敵兵士が一斉に武器を捨て、芋づる式に降伏することとなる。
某ウイルスまだ収まりそうにありませんかね……書いている暇がががが




