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異世界で、エース達と我が道を。  作者: RedHawk8492
第10章 フーガ国
201/205

10話 フーガ国防衛戦~Moby-Dick~

――――全部、あの3文字のウイルスのせいだ。

 ガルムが叫んだ瞬間、7発の巡航ミサイル“ニンバス”が交戦空域に着弾。上昇中だった敵の魔物たちの半数近くを、一瞬にして飲み込んだ。

 先程からホークが待っていたモノは、コレだ。超長距離から放たれた長距離巡行ミサイルであり、発射元はガルムが言い放った“アイガイオン”と呼ばれる巨大な航空母艦である。


 形式名をP-1112、航空重巡洋艦であり呼び名はオリジナルと同じ“アイガイオン”。AoAではMoby-Dick(白鯨)なんて呼び名をつけていたプレイヤーも居たが、このアイガイオンは最上級仕様であるため濃い灰色だ。


 航空重巡洋艦、と言う名の空飛ぶ航空基地、つまり空飛ぶ街。マンタのような形状をしている全翼機で30発もの大型ジェットエンジンを搭載し、最大巡航速度は時速780kmにも達する。

 全翼、全長共に約1km。マンタが口を開けたような開口部に500m程の滑走路を2本持ち、尾っぽ部分からアプローチして着艦、前部エレベーターにて胴体部分に格納される構造だ。整備完了後は後部エレベータで持ち上げられ、口から飛び出すように離陸することで運用される。戦闘機の格納も行うことができ、整備を受けることも可能な設備が整っている点が、文字通り空母と言える運用だろう。


 航空母艦と言う括りで表現されることもあるとはいえ、そこは航空“重巡洋艦”。40mmレーザー近接防空砲が多数搭載されており対空戦闘も熟すことができる代物だ。近距離から放たれたミサイルの迎撃や、敵航空機への攻撃を行う強力な電子支援も搭載されており、最前線まで出てくる運用も可能なのだ。超遠距離からは、巡航ミサイルのニンバス。近距離からは、膨大な対空火砲でもって制空権確保も可能という、飛び抜けた性能を発揮する。

 アイガイオンは編隊により運用され、4機の全幅500m級超大型随伴機が居る。こちらは攻撃専門と電子支援専門の2機ずつに分かれ、互いに空母ではない。アイガイオンは巨大な質量故に機動性が乏しく近接戦闘に弱点を抱えおり、運用時はこれら5機での編隊としての運用が主である。



 ニンバスとは、大型VLSから放たれる長射程巡航ミサイルの名称だ。アイガイオン背面のVLSに多数搭載されているミサイルで、空中艦隊による航空優勢の確保の一翼を担う武装である。ミサイルには特殊な炸裂弾頭を搭載しており、強力かつ広範囲な弾幕で超遠距離からの戦域制圧を可能とする。

 射撃管制から発射までをアイガイオン単体で行うことが可能で、ニンバスの着弾空域への誘導は、アイガイオンより管制を受けるUAVもしくは味方戦闘機により実行。アイガイオンの高性能レーダーによって探知された敵部隊は、艦隊に接近する前に、ニンバスの弾幕によって排除されるという攻撃手順になっている。


 なお、そんな戦術もエース級部隊には通用しないのが玉に瑕。そのためAoAでは数分もあれば叩き落される艦隊であり、大半のエースパイロットから「置物」と言われるほどに不遇なユニットとなっていた。


 しかし、この世界・この場面においては状況が違う。圧倒的な射程と範囲火力によってもたらされる、多数目標戦闘への適正度合いは計り知れない。これは、エースと言えど戦闘機部隊が苦手とする状況だ。



《こちらPJ!ニンバスだ、多数の巡航ミサイルが空中で炸裂している……敵の飛行集団が、一瞬で消えちまった!》

《ゴーストアイより全機、後方より味方艦隊が接近中!アイガイオンだ、頼れるぞ。ニンバス第二波接近、炸裂範囲をレーダーに表示する。》

《こちら重巡航管制機アイガイオン、長距離攻撃にて援護する。マーカードローンはオールアクティブだ。ニンバス、及び電子支援が必要な場合は教えてくれ。“ギュゲス”や“コットス”もスタンバイしている。》

《損傷を受けた機体はすぐに戻ってくれ、アイガイオンは空飛ぶ航空基地だ。艦載機以外の機体でも、いつでも整備できるぞ!》



 攻撃専門の随伴機はP-1113、P-1114。ギュゲス1、ギュゲス2と呼ばれている。船舶で言うところの、護衛艦のような立ち位置だ。

 航空重巡洋艦アイガイオンの随伴機。全幅400mにも達しているとはいえ、アイガイオンと一緒にいると小さく見えるのは目の錯覚が引き起こす現象である。防衛型のコットスとは違い攻撃型で、コットスとは装備も大幅に違っている。12発の大型ジェットエンジンを搭載し、空母を護る随伴艦のような役割を果たすのがギュゲスというわけだ。


 防御型はP-1123、P-1124。コールサインはコットス1、コットス2。ギュゲスとは真逆の防御型で、電子支援装備を主としている。搭載エンジンは10発で、味方航空機やミサイルの能力向上にも役立つことができる、裏方ながらも非常に重要なポジションだ。



《シュトリゴンリーダーよりアイガイオン。ニンバス第二波の着弾完了後、速やかに作戦行動へ移る。ジェントルマンがこれだけ集まるとは、壮観だな。》



 そして、セットで仲間になる艦載航空隊のシュトリゴン飛行隊も交戦空域に到着。これにて、攻略部隊が全て揃ったというワケだ。

 劣勢からの逆転劇というわけでもないのだが、ホークは無駄にテンションが上がっている。もっとも表面上では相変わらずのポーカーフェイスであり、言葉も落ち着いて普段通りだ。


 ミサイルで処理しきれない敵航空部隊は消え去っており、残りの数は戦闘機部隊でも十分に対処できる量になっている。釣り上げの効果は十分に発揮されており、この程度の残り数ならば、十分に迅速に処理できる程度のものだ。

 条件が揃い切れば、始まることは1つである。軍の主はゴーストアイに了承を貰って無線機を取ると、全部隊に指示を出す。



《ホークより全軍。いつも通りに、ただし加減無しで行ってもらおう。フーガ国を襲う敵部隊を、殲滅せよ。》

《ゴーストアイ了解しました、ガルム0とメビウス13が交戦を再開!》

《こちらネメシス、鬼神と死神に続く!》

《シュトリゴン隊、行くぞ!》

《クロウ隊、交戦!》

《ラーズグリーズ、Engage!》

《グリフィス各機、一気に攻めるぞ!》

《アーサー各機、Engae!》

《Omega-11, I'm ejecting!》

《サタン隊イジェえっ!?ま、またかよオメガ!おい敵陣地ド真ん中の真上だぞ大丈夫かよ!!と、とりあえずサタン隊各機、交戦始め!》



 ホークが「いつも通り」、とは言ったものの。今ここでイジェクトする必要があるのかと考えると、100人中99人からNoという回答が返るだろう。残り一名は、本人であるオメガ11に他ならない。

 どんな状況だろうと所構わずイジェクトするベイルアウターに慣れたつもりのホークだが、こうして“される”とシリアスな感情が一瞬で吹き飛んでしまう。それが彼の戦闘スタイルだと分かってはいても、異端なものは異端なのだ。


 せめて搭載しているミサイルの一発でも打ちこんで居れば、数光年ほどの距離を譲って考えが理解できるだろう。イジェクトが前提のために搭載数が極端に少ないのかは本人の知るところだが、AIM-9XもGBU39も、しっかりと積んでいるのだ。

 そんな“お土産”を抱えたF-22は、当然ながら現段階では被弾すらしていない。そのままマッハコーンを発生し、地面に向かって一直線に進んでいる。そして、衝突寸前で水平飛行へと戻っており――――



「ろ、ロードキルかよ……。」



 光景を見ているフォーカス1-1のパイロットの顔色が悪くなる。オメガ11が行った攻撃方法は、落下の加速で超音速を維持したF-22戦闘機による轢き殺しだ。地面すれすれで水平に戻るよう機体調整を行っており、F-22が飛び続ける限り、その機体は殺戮マシーンと化すこととなる。

 そしてトドメに、軍団の端にあったテントの密集地帯に衝突。搭載していた爆弾に引火して大爆発が発生し、即席の建物複数が使用不能となった。B-1ランサー並の空爆範囲を一掃しており、敵の陣形を完全に崩している。これらの影響で敵軍の大半の足が停止しており、結果としては多大な効果判定を与えていた。


 傍から見ればふざけているとしか思えない光景がどれ程までに高等技術を詰め込んだ内容であるかは置いとくとして、オメガ11が空中を漂っていることは事実である。ひとまず彼の下側、テント群の脇を掃除するよう命令を出し、アーサー隊が機銃掃射を実行した。

 また、敵の将校クラスを数人ほど確保したいと言うのもホークの考えとなっていた。お誂え向きに拷問の類は得意であり、首謀者・参加者を含めて様々な情報を引き出して一網打尽にする計画である。



《ホークより全軍、現在時刻付けで指示を追加する。敵の将校クラスが居る可能性があるテントは歩兵部隊が制圧する、可能な限りエアストライクの対象外としてくれ。》

《むっ。それは失礼を、総帥。》

《歩兵部隊に追加指示だ、投降兵の殺傷は緊急時を除き禁止とする。あと航空隊が支援に回るから、オメガ11はできるだけ滞空時間を稼いでくれ。》

《了解。しかし、この連中と飛んでみると空が狭いな。》



 当の本人はどこ吹く風であり、至って平常運転そのもの。敵集団のド真ん中に着地する降下ルートだというのに、まったくもって気にしていない。それどころか、味方戦闘機と魔物の交戦を対岸から見物しているかのようだ。

 しかし、彼の言うとおり空が狭い。AoAのサーバー対抗戦ですら出撃させなかった60機以上の制空戦闘機と依然残っている400近くの敵飛行物体によるドッグファイトだから、無理もない話である。自分が居たら邪魔だったろうなと、オスプレイに乗ったことを内心で褒めているホークも居た。



《ゴーストアイより状況報告。敵残存航空部隊の3割数を撃墜、攻撃を続行せよ。》



 そして相変わらずの速攻劇であり、開始から1-2分ほどで残りの3割を撃墜した模様。F-15C(2040C)の部隊が初手で凄まじい撃墜数を記録しており、単騎のはずのガルムとメビウスが猛烈な勢いで追い上げを見せている。撃墜競争やってんじゃないんだぞと、ゴーストアイも思わず呟いてしまっていた。

 敵の航空部隊は様々な形の魔物に加えて翼竜から古代龍、魔導船のような飛行物体と幅広い。それでもI.S.A.F.8492の航空隊は適材適所に兵装を使い分け、瞬く間に空を制していった。



《ネメシス隊が対地支援空域を確保、敵HQ攻撃のため空挺車両を降下させる。ストライク隊、ポイントチャーリーを確保せよ。》

《了解したイーグルアイ、ストライク各機はGBU-24を投下する。》



 あっというまに、空挺車両を投下する空域は確保できたようだ。残りは地上の安全だけである。

 これよりストライク隊が空挺車両の降下地点を掃除できると判断したホークは―――



「―――ん?GBU-“24”……?」



 聞き慣れない数値に、それを使用した場合の結末を想定していた。



「総帥、GUB-24を見るのは初めてですね。」

「あー、AoAでも使わなかったから、そうだね。ところでストライクが持ってるGBU-24の中身はMk.84(2000ポンド爆弾)だけど、あんなの投下して空挺車両の着地場所は大丈夫なのかな。」

「あっ……いや、無理じゃないですか?アースドラゴンの時に使われたBLU程ではありませんが、小さい家が埋まるぐらいの大穴空きますよ、それ。」

「だよねー……。あ、オメガがロードキルした所があいてるね。そこを機銃で掃除してから車両を落とすとして、横に空爆を要請しよう。」



 破壊力については、いつものGBU-39の比ではない。高層ビルすらも一撃で崩壊させる威力を持った空対地爆弾だが、今回の作戦においては威力が高すぎるのである。

 ゴーストアイにより、GBU-24を持つ部隊はゴーレムの排除に充てられる。一方でホークは一息ついていたサタン隊のF-35C、10機編隊を呼びつけ、25mm機関砲による機銃掃射を要請した。


 この25mm機関砲はGAU-22と呼ばれる形式であり、簡潔に纏めるとA-10についているGAU-8アヴェンジャーから発展した形式となっている。F-22やF-15が搭載しているM61A2、20mm機関砲とは、全く異なるシステムだ。

 いくらGAU-8を元にした発展型とはいえ、弾丸や用途の違いがあるためにGAU-8と比べると非常に弱い威力となっている。また、連射速度もM61A2に劣るが精度・威力で言えばM61A2より上であり、機銃掃射に打って付けの代物となっていた。


 お誂え向きに敵部隊がゴッソリと消えている地点がある。部隊を再編成するために一時的に移動した結果、その場所が手薄となっていたのだ。

 なお、これはご存知オメガ11の功績に他ならない。傍から見ればふざけた行動であり開始早々イジェクトするのがセオリーとなっているのだが、なぜか彼が取った行動は作戦行動に優位に働くのである。それが考えて行っている行為なのかどうかは不明だが、ホークが作戦行動を指示するには十分な結果を残していた。



《ホークよりC-130パイロット、空挺車両の投下場所の変更を指示する。オメガ11がロードキルを行った付近が手薄だ、サタン隊の機銃掃射完了後に投下しよう。》

《了解です総帥、投下コースを修正します。》

《ホークよりサタン各機、聞いていたと思うが投下コース上に機銃掃射を頼む。アサルト隊はその横にGBU-39による空爆を実行し敵を排除、空挺車両の投下を支援してくれ。》



 無線連絡を受け、直接的な命令は出ていないもののイーグルアイはすぐさま攻撃コースを計算。瞬時にデータ化し、サタン隊のHMDに割り込んで表示する。

 ホークがイーグルアイに指示を出していないのも、その信頼があってこそである。なお、もし攻撃コースの指示がなくともサタン隊ならばやってのけてしまう事は口に出さない方が良いだろう。



《サタン隊、了解しました!HMDにて攻撃コースを受信、行動を開始します。》

《アサルト隊、ウィルコ。アサルト各機、攻撃目標を確認。目視確認で攻撃を遂行せよ。》

《アサルト2、ラジャ。》



 了解の言葉の十数秒後、それぞれの空対地攻撃が実行される。別地点に投下されたMk.84の破壊力は予想通りに圧倒的で、5つほどの巨大なクレーターが残るだけとなった。

 アサルト隊は20機のF-22から構成される大編隊であるため、GBU-39を使用して月の表面でも再現するのかと言わんばかりの爆撃が実行されている。いくら空挺車両の部隊もエースとはいえ、空爆地点の荒地に空挺車両は下ろせない状況が出来上がっていた。



《ゴーストアイより各部隊へ、複数のMPS1128空挺車両が投下された。戦闘機部隊は、車両の着地までを援護せよ。》



 爆発が収まったタイミングで、4機のC-17から8両の空挺車両が投下された。外観はホークもよく知る地上用対歩兵戦闘車両、8つのタイヤが特徴的なストライカーと同一である。MPSとは、ストライカーシリーズにおける空挺用車両の意味合いだ。

 今回の作戦で投下された車両の兵装は半数で別れており、M2:12.7mm重機関銃にM68A2:105mm戦車砲を積むM1128MGSタイプと、MK.19:40mm擲弾発射器を積むM1126ICVタイプだ。オリジナルと比較してサスペンションを強化、若干の装甲の減少を図るなどして空挺用途に改造した車両となっている。現に、搭載兵装の関係でどうしても重くなるM1128からは、本来ついているはずの7.62mm機関銃のM240と6連装の煙幕発生装置が削除されていた。


 それでも、歩兵とは比べ物にならないほどの火力を備える戦闘車両である。着地後にはただちに工兵によってエンジンが始動され、最前線へと切り込むために行動を開始した。


アイガイオンはACE-INF仕様ということで。流石に金ぴかは無いかなーと灰色としました。

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