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異世界で、エース達と我が道を。  作者: RedHawk8492
第10章 フーガ国
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7話 前代未聞

いざ本番となった際のエース達のお気楽さ加減はエスコンあるあるですね


「お、おい何だこれ!ちょっと待て、この出撃情報は本当なのか!?」



佐渡島(仮名)夜遅く、日付が変わろうとしていた頃。休むことが無い航空管制塔にて業務をしていた男性は、コーヒーからくる尿意を催すついでに長く続いた”オマケ”を処理して、再び管制室へと戻ってきた。

管制塔の一番上、展望台のようになっている管制室には、多種多様なレーダーと専用の機械と共に、各々の管制官が使用するスペースが設けられている。そこに置かれていた翌朝の出撃情報を見た先ほどの管制官は、思わず声を上げてしまっていた。



「悪いが冗談言ってる場合じゃないぞ。飛行隊の全員、今までにないぐらい殺気立ってたって噂だぜ。」



すると、管制室に居る繁忙時のアシスタントが声を掛けた。今現在は一人の管制官でも処理できるぐらいに非常に暇であるために、持ち場を離れすぎなければ、I.S.A.F.8492においては問題のない行動である。

その点はどうでも良いことだとしても、紙に書かれている内容は全く持って本当か疑いたくなる程のものだ。I.S.A.F.8492空軍に所属する全ての名が揃うなど、文字通りの前代未聞の事態となっている。



「マジかよ、聞いたことがないぞ。しかも今回の敵さん、聞いた限りだが徒歩で平原や山間部辺りを進行中だろ?こっちが加減する要素が1つもないぞ、嬲り殺しにならねぇか?」

「残念だが、それが戦争ってもんだ。AoAですら誰も味わえなかったI.S.A.F.8492空軍の本気を知ることができるんだ、ありがたみを感じて死ねってもんだ。」



そう答えるアシスタントの威圧感は、凄まじいものがある。目は完全に座っており、まるで戦闘中の兵士そのものと言っても過言ではない程だ。とはいえ、そんな顔になるのも当然の事である。



「……お、おう。お前も空気に飲まれてるな。」

「雑用含めた全部隊に、総帥直々の戦闘命令が出ているんだ。これに応えないなんぞ、8492の兵士として失格だぜ。」

「……ちょっとまて、俺は何も聞いてないんだが?」

「トイレでケツの20mmをぶっぱなしてた頃だろ。わかったら行動開始だ、気を抜くなよ!」

「当然だ!」



その対象は管制室だけではなく、彼が言うように部隊・部署の垣根を超えて全員が同じである。ホークの言葉は今や全部隊の末端にまで届いており、諸々の事情で直接は聴いていなかった隊員にも伝染していた。



もちろん、伝達される対象はハイエルフ達を守る警備兵も同じである。かつてない程に一欠けらの油断も隙も無い程の警戒態勢に、警護対象であるハイエルフや狐族も、何事かと騒ぎ立てていた。

到底ながら声を掛けられる状況ではなかったものの、種族長となるリガルが思い切って聞いてみる。するとフーガ国を守るための出撃が決定したというビッグニュースが飛び込むこととなり、更には、その前線にホークが行くという内容も混じっている。

本来の指揮系統ならばホークは基地から高みの見物となるのだが、今回ばかりは勝手が違う。彼も最前線において臨機応変に指揮を発することが決定していたのだ。


そこまでの情報がハイエルフ側にもたらされると、ホークを守るためにハイエルフ一同は近接護衛を申し出ることとなる。文字通りの盾となる覚悟を、全員が抱いていた。

流石に現場兵士による判断はできない案件であるために、直属の隊長から元帥クラスへとボールが渡る。そこから伝えられた連絡に対しホークも「コマの種類は多い方が良い」と考え「5名迄」という返答を行い、情報が戻ってきたハイエルフ側では人選が行われていた。


結果としてはリュックとリーシャ、そしてリーン。残り二人は、兄妹に続いて最も腕の立つ男エルフ2名が選抜されていた。男3名は円陣を組んで雄叫び一発気合を見せており、リーシャとリーンは力強い視線を交わして頷いていた。

現場に赴く総帥を、敵の攻撃から守り切る。5人の目的は1つ、共通であった。



もっとも、円陣を組んだ数秒後の話。



「そんな場面ってあるのかな?」と無邪気な子供が呟いた一言で、全員が「そういえば」と内心で呟く。直接的な戦いを見たことはなけれど、I.S.A.F.8492がどのような集団であったかを思い返していた。



==================



そして全員が睡眠をとり、朝が来る。佐渡島(仮名)の空軍基地はアイドリング状態のジェットエンジン音が響き渡り、地上車両が慌ただしく駆け抜ける。

日勤・夜勤の垣根を超え、全作業員が何らかの作業を行っている。格納庫前や誘導路には所狭しと戦闘機が並んでおり、各々が離陸の順番を待っている。



《ガルム0離陸。アーサー飛行隊、滑走路34Rへの進入を許可する、続けて順次離陸せよ。全機、離陸後は空中管制機ゴーストアイの指示を受けよ。これは演習ではない。繰り返す、これは演習ではない。》



佐渡島(仮名)、I.S.A.F.8492空軍基地。3本ある滑走路がフルで使用され、”鳥”が次々と滑走路を滑り、羽ばたいていく。管制業務は過去最大の忙しさを見せているが、それでも事故どころかヒヤリとする場面が起こらない点は、彼等もエース級故の力技だ。

見上げた空の半分程を覆う曇り空には、じきに夏が訪れることを感じさせる厚めの綿に似た雲が泳いでいる。そんな雲をハイレートクライムで突っ切ったガルムゼロは、指定地点へ進路を取ると、先行していた己の軍の大編隊に追いついた。



《こちら空中管制機ゴーストアイ、フーガ国の防衛任務に上がった各機に告ぐ。スクランブルにより状況が混乱している。これより臨時に緊急編成を実施する、部隊別に指示に従え。》



毎度お馴染み、AWACSからの無線指示が各部隊に飛んでいる。今回の出撃において、空軍を担当する管制機はゴーストアイだ。イーグルアイは、自然と地上部隊を管制することになる。


緊急編成と言っても離陸は部隊単位でやっている上に、作戦の都合で部隊の組みなおしという事態になることも対象外。あくまで、役割分担がダブりそうなところを整理する意味合いだ。

例えば、1部隊で制空任務を行えるところに2部隊が行っても効率が悪いだけである。そのような事態を回避するためであり、もしくは1部隊では足りないところに、他部隊を随行させるという調整内容になる。


編隊の下を飛行し追い抜いたガルムは高度を上げ、編隊の最前列へと割り込み、後続と少し距離をあけて編隊に加わることになる。とはいえこれは定位置であり、他の部隊もガルムが来ることを見越してスペースを空けていた。



《追いついたなガルム0、交戦規定により到達空域までは2機編隊以上が必要だが貴君は寮機を欠いている。……ああ、そう言えば君達も迷子だったな。》



オメガに負けず劣らずのダミ声ながらも、すっとぼけたイントネーションで無線を飛ばすゴーストアイ。もともと”コレ”を考えていたかの如く、口元を釣り上げていた。

呼ばれると確信した二人は、やはり編隊の下方から移動し上昇を開始する。似て非なる2機のステルス機は、ガルムが乗るADFX-01の背後やや下の位置へと同時に迫っていた。



《よし。メビウスとオメガ、君達はガルム隊に臨時編入だ。それぞれ2番機・3番機に就け。》

《こちらメビウス、了解。》

《Omega-11, I'm ej...roger that.》



そして、それは対象も同じである。いつもは単独部隊な3人は空中管制機の意図を読み取ると、酸素マスクの下で口元を吊り上げるのであった。

約一名ほどセオリー通りの癖を垣間見せるも、返答は正常通り行えたようで実際にイジェクトを回避している。その後は双方が機体を滑らせ、ガルムの左右下方でデルタ編隊を組み上げた。一時的な編隊ながらも空軍1個2個ならば余裕で蹴散らしてしまう、最強の飛行小隊のできあがりである。



《では自分はガルム……1になるのか?ともかくガルム0、援護位置に付こう。今回は演技無しだ、状況報告もしっかりしていけよ。》

《了解したが、ホーク総帥のためだ演技無しは当然だろう。それにしても、1番機がゼロだとややこしいな。》



軽く鼻で笑って自分の事を口にする。もともと編隊行動を想定にしていない仲間となるメビウスは、思わず軽く溜息をついてしまった。



《人のことは言えないが、ややこしいのはお前のせいだろ。》

《ガルムにメビウス、何番だろうと変わりはせん。いつも通りに行くぞ。》

《オメガ、お前の”いつも通り”は信用できん。メビウス、御守はしておけよ。》

《空に居るベイルアウターの御守など、総帥ですら無理だろう。》

《……酷い、いや失礼な話だ。俺も、流石に御命令が出れば従うぞ。》

《ホントかよ。》



今回ばかりは実戦において無言を解除しているガルムやメビウスのように、流石にホークがベイルアウト禁止命令を出せば従うのがオメガである。今現在ではイジェクト禁止の指令は出ていないが、今後もし出ることがあれば、その点については安泰だろう。なお、例によって他の者は半信半疑である。

そんな無駄話をしているうちに、こちらも例によってゴーストアイからお叱りの言葉が飛んでくる。流石に今回ばかりは命令に従うと、一糸乱れぬ大編隊は北方向へと進路を進むのであった。

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