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異世界で、エース達と我が道を。  作者: RedHawk8492
第10章 フーガ国
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5話 森に住まう集団

《至急、至急。第二拠点CICよりホーク総帥。》

《こちらホーク、どうかしたか。》



地を照らしていた太陽が、そろそろ夕陽になろうかという頃。静寂を切り裂く連絡信号と共に、状況は開始された。報告は3匹のドラゴンが一直線に接近中であり、うち一匹の背中に人間の姿に成っているエンシェントドラゴンが居て血を流しているという内容だ。

ホークは間髪入れずに佐渡島(仮名)で待機するスクランブル部隊に指示を出す。本来ならばエドワードの管轄になるが、事情が特殊なためにホークが指揮を執っているのだ。


今回の担当部隊は第二機動艦隊所属のレッド隊、F-35Cが4機で構成される準エース級の飛行部隊だ。まずはじめに飛び立った2機はすぐさま機種方位を北に向け、ドラゴンとヘッドオンするように距離を詰める。

第二拠点からは拡声器を積んだ一機のオスプレイも離陸しており、奇しくも最初にエンシェントドラゴンを迎え入れた時と似たような状況だ。そしてやはり、その時と同じ流れが再現される。


誘導される先が佐渡島(仮名)か第二拠点かの違いはあるものの、大差はない。西日が傾きつつあるなか、オスプレイに誘導されて、ケストレル国王の直衛兵はヘリポートへと着陸した。

周りに居るのは、見慣れない棒を持った謎の人間と鉄の箱。草木に身を包んだ者も居る。先ほどはけたたましい音量でエンシェントドラゴンの名を呼ばれて、目の前の人相がケストレル国王の説明と合致しているために指示に従ったものの、どうにも警戒心が拭い切れない。



しかし、近づいてきた集団の中で一人の女性を見た瞬間に警戒心など吹き飛んでしまう。かつて己が命を賭けて守ると誓った対象の1つ、ハク王女が直々に出迎えを行ったためである。

その横にホークと衛生兵が続き、全員がエンシェントの怪我を確認した。ホークはかつてのダンジョンで得ていたポーションを用意しており、使い方を知っているハクが応急処置の名目で簡単な治療を行っていた。


拾っていた物がよほど効果の高いものだったのかと考えるホークの前で、みるみるうちに外部的な傷が塞がれていく。実のところは彼女自身も即席で放てる最大の治癒魔法を使っているために、このような効果となっているのだ。

ストレッチャーで運ばれるエンシェントに付き添い、治療室の前で見送る一行。外傷からするに「なんとかなるか」と安堵していたホークやマクミラン達だが、精神的な不安からか、白い竜は最悪の事態を脳裏に描いてしまっていた。



「マスター……」



静寂にすらかき消されそうな声で己の夫を呼びながら、彼女はホークの右手を両手で包む。オークキングやSランクの魔物、ひいてはExランク冒険者が放つ強力な一撃すらも容易に受け止める程に強い手が、今では彼が手を離すだけで崩れ去りそうなほどに心もとない。表情に力は無く、ただ己が今この場において無力であることを自覚している。

しかし、そうは言っても何か行動を起こしたいが故に生じたのが先ほどのやり取りだ。言葉はなけれど、眼前に居る最も頼れる者に対し、己の第二の親を救って欲しいと請いている。



「……任せておけ。マクミラン、ハクを来客の元へ。」

「イエッサ。ハクさん、こちらへ。」



表情は険しけれど、最初の一言は優しく返し。司令官としての座った声で、彼はマクミランに指示を出す。小さく、しかしハッキリとした声で了解の返事を返し、タスクフォース000は彼女を場から連れ出した。

そこに残るは、怒りとも何とも言えない感情の青年である。白い背中を見送って治療室を見据えたタイミングで扉が開き衛生兵が出てくることになり、どうやら意識を取り戻して容体も安定しているとのことだ。


とりあえず治療室に運んだものの傷はしっかり塞がっており、やることが無かったと口に出すのは衛生兵の隊長である。酸素マスクと点滴が装着されているが、命に別状はない様子だ。ホークも、肩の荷が下りたと言った様子をしている。

ただし出血と体力低下が著しく、1日、2日での復活は難しいとのことである。念を入れてしばらく治療室で休んだ後、一般病棟のエリアに移される計画が説明された。ホークの顔を見たエンシェントはいつものごとく無駄話を開始するも、その声は弱々しい。



「くたばる前に……もう1年も前の事か……。ハクの、明るい顔を見れて良かった……。ホーク殿……ハクを、頼んだぞ……。」



その無駄話の2つ目。彼はいつもの冗談を言うかのごとく、ケラケラと笑いそうな口調で言葉を発する。誰が見ても無理をして声を発しているようにしか見て取れないのだが、その点を隠す気力もない様だ。



「……では問うがエンシェント。貴様が運ばれてきた時、ハクの顔を見ることができたか?」

「なっんじゃ……と?」

「……。」



ストレッチャーで運ばれる際の視点などから予測されたホークの言葉だが、どうやら見えていなかった点については正解のようである。しかしながら、あの顔を見たのは自分だけで十分だと葛藤する。

あえてエンシェントには伝えず、自らも「思い出したくも無い」と言わんばかりに眉間に力を籠める。そして、あの表情を二度と自分の前で出させてはならないと決意した。


恐らくエンシェントが死んだ際に彼女が抱く悲しみは、勇者に能力を封印されてフーガ国を追い出されたときと同じ程。それに匹敵する度合いの悲しみを、再び背負わせてはならないと腹に括った。


その時の情勢を想像するホークの眉間に、自然とシワが寄っている。総帥の立場であることを忘れ、今すぐにフーガ国に迫る敵に殴りこみに行ってしまいそうな感情を露にしていた。

エンシェントドラゴンとは、ハクにとっては、当時の情勢における波乱の中で自分自身を庇ってくれた第二の親。そしてホーク達からすれば、1年ほどの交流期間ではあるが、気軽に様々な事項を相談できる、仲間に近い存在だ。



それほどの存在を、よりにもよってI.S.A.F.8492のシマで死なせることは許されない。各々やるべきことは多い状況だが、この考えは自然と、隊員全員の共通となっていた。



「……くたばってみろエンシェント。例え、冥府の果てだろうが追いつめてやる。」

「ふぉふぉふぉ。おぬしの怒る顔は、初めて見る……。しかし、それは困るのぉ……ゲホッ……それでは冥府が、滅んでしまうわい……。」



縁起でもない言葉を残して医療班に後を託すホークだが、そんな状況になることはあり得ないと確信しているからこそ、エンシェントの先ほどの言葉に怒っているのだ。老兵もその点は感じ取っており、申し訳なさそうな顔をして大人しくなっていた。

そして彼の部下は、司令官が今何を欲しているかを見抜いている。ホークが部屋のドアから出たタイミングで情報を扱う隊員がスタンバイしており、既にフーガ国上空で作戦行動を開始しているビッグアイ偵察部隊や偵察衛星から得た状況を、歩きながらに説明していた。


そのままとある建物の地下にあるCICに入ると、各軍の元帥クラスが集結している。敬礼にて出迎えられながら、ホークは担当員から作戦に関する初期の立案を受けていた。

彼なりに推測したアレンジが多少入るものの、基本としては立案通りの内容でGOサインが出されている。とはいえ、どうやらホークはその内容を”命令”として出す予定は無いようだ。



手持ちに成り得る主力のカードは、全てがジョーカーと言える程。他の軍隊から鬼やら死神やら言われているエース達の実力は、トランプゲームで言うところのソレに匹敵する程のモノがある。

故に戦いとなった際に負ける気はしないが、同時に、負けることは絶対に許されない。ただ部隊が生き残るだけではなく、作戦としての勝利が絶対に求められる戦いが、幕を開けようとしていた。


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