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異世界で、エース達と我が道を。  作者: RedHawk8492
第9章 とある国の王都
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もう一人の騎士とDランク

エスパーダ隊が西へと飛び去った翌日。町ではお祭り騒ぎの余韻が残っており、朝から酒を浴びている者がチラホラ見受けられる。今日までならば、そんなだらけた生活も許されるだろう。

ヒートアップした町を鎮めるかの如く、前日は打って変わってときおり若干の小雨模様。雨脚は弱く地面を軽く湿らせる程度のために、物流やへの影響は最小となっていた。



「で、朝っぱらから何用かな?」

「恐れながら。シルビア王国の騎士、アルツと申します。今までご挨拶が遅れましたこと、申し訳ございません。」



ホーク達が朝食を終えたタイミングで宿の扉を開いた、一人の騎士、なお顔以外はフルアーマー。するとすぐさま片膝をつき、まるで王を相手にする時のような重厚さでもって、椅子に座ったままのホーク一行に挨拶を行った。


ハクの姿を見て本人と確認したものの、身分を公にしていないことを知って接触を控えていたとのことである。エスパーダ隊が居なくなった今、こうして挨拶に訪れたわけだ。

謝罪の言葉はハクに向けられたものであり、ホークもそれは読み取っていた。言葉通りに単に挨拶が遅れたことに対して謝っているのだが、これは謝罪を向けられた本人が言葉を返すべきであろうと判断し、ハクに視線を向けていた。



「構いませんよアルツ殿。私は5年前よりただの町娘、貴方より位は下でございます。」

「そ、そんなことは!あれはケストレル国王の身を案じて出された苦肉の決定です、私は到底」

「ケストレル国王の決定です。フーガ国に住まう私は、下された内容に従わなければなりません。」



珍しくヒートアップするアルツを、ハクが治める。凛として口に出された言葉の中身は騎士である彼には痛いほど響いており、どれだけ抗っても覆せない内容であることを身にしみて感じていた。



「……ねぇリーシャ。ハクさんって、何者?」

「無礼極まりないと怒った理由はそこよ、ハク様はフーガ国の元王女よ。」

「ふえっ!?い、いえ確かに名前は同じだけれど、ホークさんの奥さんってそんな御身分だったの!?……ですかっ?」



驚きの表情を隠せないリーンに、ハクは柔らかな微笑みを向けている。そういえば言ってなかったと呑気な顔をして相槌を打つホークは、アルツのためのお茶を注いでいた。

そんなお茶を出されたアルツも、この冴えない男が夫だったとは知らなかった様子だ。どう見ても実力的には良くて下位レベルであり、最強の剣士の横に並ぶには程遠い存在である。


しかし、ハクが出している答えは肯定だ。それを見たアルツも機械のような動作になってしまっており、コップの位置まで頭を下げて両手で受け取っている。

お茶を渡しておいて立たせたままも宜しくないので、ホークは椅子に腰かけるよう促した。やたらとカクカクと動いているアルツは一息つくと、シルビア王国の現状を話し始めた。


とはいえ、これはハクに対する報告だ。かつて支配された国の今がどうなっているか。勇者から解放され、生活水準は日に日に向上していることや、鳥を探し回っているが未だ見つかっていないなど、内容は様々である。

今回の遠征も鳥の出現情報があったから来たものの、未だ手掛かりは無いらしい。目の前に当該集団が居るとは微塵も思っていないために本気で残念がっているのだが、ホーク達は事実を言うわけにもいかないのが実情である。



その他、捉えた霧の盗賊団が処された現状などの情報を提供してもらい、アルツは頭を下げて去っていった。どうやら彼も、明日には帰路に就くようである。


アースドラゴン騒動で帰っていった他国の使者も戻ってくる気配がなく、東の果てにある小さな町を騒がせた鳥騒動も、これにて一段落となるだろう。労働基準監督署があったならばすっ飛んで来そうなほどに対応に追われた冒険者ギルドも、また平和な日々に戻ることとなる。



そして、翌朝の太陽が顔を出し切った時間帯。久々に早朝から呼ばれていたタスクフォース8492は、整列する職員に出迎えられ、ギルドの受付に集っていた。



「それでは本日より、タスクフォース8492をDランクに昇格致します。これでダンジョンへ赴けるようになりますが、くれぐれもご注意ください。」



そして彼等もDランクとなり、受付嬢が言うように正式にダンジョンへの挑戦権を得ることとなった。帰省前のアルツも昇格祝いに参加しており、拍手と簡易的な飲み物程度だが、その場に居た者全員が彼等の昇格を祝っていた。

なお、町の防衛などの有事の際には衛兵などに協力する義務も生まれているのだが、町が彼等を昇格させた狙いはこちらである。もちろんホークもその真意を見抜いているが、どちらかと言えばダンジョンへの挑戦権が重要と判断しての選択だ。明らかにソワソワしている戦闘狂集団の内心は、オモチャを見つけた子供と変わりない。


ギルド支店長の乾杯の音頭と共に、各々が木のジョッキに口をつける。軽い拍手の後、ホークは口を開いた。



「乾杯の後で口に出すのもなんだが、タスクフォース8492として、その決定を受け取ろう。これからも、ティーダの町と良い関係を続けていければと思っている。」



乾杯の後は、彼お得意の政治的な発言だ。関係のために双方が努力するという内容であり、上下を決めるのではなく、対等に有る事を強調している。

もっとも、拠点とする町の選択権はタスクフォース8492にあるために、どう頑張ってもギルドが上に立てないことは双方が理解済みだ。そのために、”思っている”というこの発言でタスクフォース8492に対するギルドの対応がより一層のこと慎重になるのだが、これもホークの思惑通りとなっていた。



まるで重役の情報を扱うかのような慎重さで動いていたギルドだが、この時の対応が正解だったと胸をなでおろすのは、もう少し先の話である。

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