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異世界で、エース達と我が道を。  作者: RedHawk8492
第9章 とある国の王都
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20話 軍として

日付は数日流れ、ティーダの町。もはやタスクフォース8492貸し切りと言って過言ではない宿に、彼等とエスパーダ隊が集っている。

護衛としてついてきたルームの部隊も王都へと戻っており、明確な目標がなくなったホーク達は簡単な依頼を消化して過ごしている。流石にエスパーダ隊が同行する内容でもないために、彼女たちは町の警備をしている表向きの裏で、ホークに習ってドッグファイトの演習を行っていた。


この日はティーダの町の領主が交代となった正式な日らしく、町を挙げてのお祭り騒ぎ。元領主の配下だった騎士一行と新領主も全員揃って謝罪に来ており、住民たちも歓迎ムードで対応していた。

もちろん、国王の御前でドンパチやらかし、自国民に対し剣を向けると言う暴虐を知った激おこ国王な状況で元領主が無罪となるはずもない。例に漏れず懲罰の対象となっており、具体的に言えば死刑だ。



祝い事ということで、タスクフォース8492としても新領主と町にして物品を献上している。しかも物品がコッソリとくすねていたコカトリスしかも3羽と椀飯振舞のために、住民たちのテンションも最高潮だ。なお、どこにどうやって保管していたかを尋ねることが厳禁なのは公然の決定となっている。

町用の2羽を前回同様に焼き鳥方式で焼いており、今回は領主の騎士も参加している。前回食べ損ねた至高の肉がどのようなものかを噛み締め、あまりのおいしさと住民の気遣いに涙するのであった。



なお、この宴にホーク達は参加しておらず宿の一室で談笑モードとなっている。あくまで新領主と住民の絆を深めるイベントであるために、他人が居ては邪魔なのだと判断していた。今回の騒ぎでタスクフォース8492とお近づきになりたかった新領主は残念がっていたが、表向きには二の次の用事であるために仕方ない。



「まーたヴォルグがケツに棒きれ突っ込まれても困るからねぇ。」

「そ、そんなことがあったのですか……。」

「主様、それはお忘れ頂きたく……。」

「で、自分が少女にタックルされれば完璧―――――」



突如としてホークが持つ無線機から、甲高い一定の電子音が、そこそこの音量で鳴り響く。この音に一番反応して無線機を取り出したのは、他ならぬ彼自身だ。

そして、お茶らけた表情で話をしていたディムースも同様である。I.S.A.F.8492出身者全員の目に力が入り、ホークの顔を見つめていた。


その姿は傍から見ても尋常ではなく、何が起こったのかを質問したい周囲だが、声を出してはいけないと本能的に察している。答えは自然と出してくれると、周囲の人物を信じていた。

実はこの音、冗談抜きで緊急事態が発生した際にホークへと伝達される、文字通りの緊急性の高い無線なのだ。内容としては洒落にならないモノの類であり、過去に使われたことは片手で数える程度である。



《至急、至急。佐渡島(仮名)CICよりホーク総帥。》

《こちらホーク、聞こえている。》

《報告いたします。つい今しがた、北邪人国より非常に大規模な軍団が進行を開始。進軍方位1-2-0、ですが事前に捉えている北邪人国の斥候の動きに沿うならば、ポイント・アルファで0-9-0へ。更にポイント・ブラボーで0-1-0へ転進。南方の山脈を超え、南及び東側から、フーガ国へと進軍するルートです。》



ざわついていた場が、一瞬にして静まり返ってから十数秒後。先ほどから続く突発的な出来事の連続に、エスパーダ達3人の思考回路が追いつかない。

ホークという人物の無線から出てきている言葉が本当ならば、すぐさまエラルド皇帝へと報告するべき内容だ。しかし現在、北邪人国が動いたなどという情報は、どこからも上がってきてはいないのだ。


当然だろう。斥候の類は常に彼女達の付近に居るものの、情報の伝達速度が違いすぎる。このままティーダの町に居れば5日後には動力切れ寸前の人形の如くクタクタとなった斥候から報告が届いていたのだが、その結末を知る者は斥候の仲間のみである。



《了解した。フーガ国の兵力は伝えているだろう、数の差は。》

《……約、20倍。魔物の軍勢がほとんどで魔導兵器も見受けられますが、コレは地上の軍勢のみです。後方で準備中と思われる空軍が出れば、数の差は更に。》



言いづらそうに間を空ける情報担当の兵士だが、必要な情報はハッキリと答えている。進軍速度が続けばの話だが、早くて20日後にはフーガ国の警戒網に引っ掛かるだろうとの内容であった。

文字通り、大規模な遠征である。その様子は偵察衛星からでも鮮明に捉えられており、一国を制圧するのに十分な数が揃っているように見受けられた。



「エスパーダ達は自国に戻った方が良いだろう。関連性は知るところではないが、ディアブロ国がいつ動くか分からんぞ。」

「は、ハッ、ご配慮ありがとうございます。この御礼は、必ず。急ぐぞ!」

「「応!!」」



驚愕の表情を見せるエスパーダ隊だが、相変わらずの冷静さを見せるホークが懸念事項を思い起こさせる。彼の言うことは道理であり、万が一に備えることと目標の大半は達成しているために、エスパーダも戻ることを選択した。

エスパーダの声と共に3人は駆け出し、宿の扉を閉める際に僅かに頭を下げるエスパーダ。それ程までに急いでおり、グローバルホークにて状況を見ていた兵士も、飛び去る翼竜を報告していた。この間にもしっかりと無線機を回収しており、抜け目のない点がホークらしいところである。



「総帥。エスパーダ隊に続くわけではありませんが、我々もすぐに帰還し」

「いや、我々は傍観者だ。」

「えっ?」

《CIC、無線を各所に繋げてくれ。》

《了解しました、お待ちください……OK、全部隊に繋がります。》


《ホークより総員に告ぐ。つい先ほど、北邪人国が軍勢を移動させる動きを見せ始めた。目標は恐らくフーガ国だろう。しかし誇り高きフーガ国の国王は、自らの国でもって脅威と対峙することを選択した。我々I.S.A.F.8492はその決定を尊重し、受け入れることを伝えている。以上だ。》


「ですが―――」



―――だって、奥さんの国が。そう言いたかったディムースだが、ホークの決定は絶対であることと先程の言葉で念押しされたために、これ以上を口に出せない。

思わずハクを横目見るも動揺すらしておらず、ディムースの意図の気づいた彼女も首を静かに横に振るだけである。色々と質問を投げたかった周囲だが、声を出せる者は居なかった。


本当ならば、ハクの心境もディムース達と同等である。今すぐにでも駆け出して、フーガ国へと迫る脅威を排除したいと考えている。

また同時に、様々な制約が状況を束縛していることも理解できる。ここで制止を振り切っていたのが昔の彼女だが、精神的にも思考的にも成長した今となっては、それが愚行である事を身に染みて感じ取っていた。


これらの件もあるが、彼女がディムースの意見に同調しない本当の理由。他ならぬホーク自身が、今すぐにI.S.A.F.8492の全勢力を派遣したいことを、誰よりも彼女が知っているからだ。

そう明かしてくれたのは、ハイエルフを救助した夜に彼がベッドに沈む間際。ケストレル国王の帰国から間髪入れずにハイエルフの救助とドタバタしていたためにホークが伝え損ねていた、彼の本音である。



I.S.A.F.8492の持つ力が強大すぎる故に国を相手に下手に動けないことも、今の彼女なら容易に分かる内容だ。「彼等がシルビア王国を解放した際にも、全力には遠かった」など、誰に説明しても信用してもらえないだろうと想像し、軽く苦笑してしまう。

ある者は畏怖を抱き、またある者は最大の敬意をもって接するであろう戦闘集団。構成される各々の隊員が持つ考えはあるだろうが、ホークの指示は絶対である。その統率もまた完璧であり、しばらくすると、全員が何事もなかったかのようにいつもの調子に戻っていた。



いつかは、彼が動いてくれる。ハクにとってはそれだけで、何よりも効く心の安定剤代わりとなっていた。



============



「―――了解。ではコレは?―――了解、ゴーレムの類か。強度と移動速度を考えると、念を入れて空対地ミサイルを使用するべきだろう。」

「それではガルーダ隊の特殊兵装は、GBU(爆弾)ではなくAGM-88E(空対地ミサイル)に換装させておきましょう。アーサー隊の2040Cの半分も、同様にしておきます。」

「そうだな、どこまで広げるかは課題になるが―――まずは詳細分析を続けるぞ。だが動きは早い方が良い、その2部隊の換装指示だけ発令しておいてくれ。」

「イエッサ。この二部隊はスクランブル待機の部隊に組み込まれていますが、どうしますか?」

「有事だ、第二機動艦隊にも協力してもらおう。F-35ならば、初動の役割としても十分だろう。」

「了解、対応します。」



I.S.A.F.8492、第二拠点の一室。偵察衛星およびビッグアイ偵察部隊によって丸裸にされた敵の地上戦力に対し、ハイエルフと狐族の数名が招集され、詳細な分析が行われていた。


なお、本日の日付は北邪人国が進軍した翌日の話。時間にして12時間も経っていない状態である。

なぜこれほどまでに迅速な対応ができたかというと、ガルムとメビウスも参加した”タスクフォース8492昇級おめでとうパーティー”終了後にホークへともたらされた報告内容に、エンシェントドラゴンが居なかったとの内容があったためだ。


無類の日本酒好きとなった彼は、宴に関しては皆勤賞レベルの参加率を誇っている。それがパッタリと姿を現さなくなったために、何か起こるのではないかとホークが想定し、初期レベルながら警戒態勢を敷いていたためだ。


とはいえ、今回オブザーバーとして参加している狐族やハイエルフからすれば、そんなことは知る由もない。何をどうしたらここまで鮮明な、しかも真上からの風景が映し出された紙が作れるのか冷や汗が生まれる現地住民一行だが、今はそんなことを気にしている余裕は無い。1つの危険要素の漏れも無いように、注意するべき魔物や魔導兵器の類を虱潰しに探している。


実際の偵察活動に参加したことは初めてとなるハイエルフと狐族だが、場の雰囲気が、まるで違う。普段は気さくな雰囲気を振り撒いている隊員の誰一人として、容易に話しかけられない気配を醸し出していた。

その目は座り、普段の柔らかな表情など欠片も無い。同時に無駄な情報も一切なく、各々が持つ力を発揮できるよう適切に動き、中隊長格が適切に指示を出している。



時間は飛ぶように流れ、夕飯時には差し入れという名目で片手で食せる軽食が用意された。「気軽に食べてくれ」と残された言葉と全く釣り合わないおいしさは、一口食べれば恐ろしい程の手間がかかっていることが読み取れる。

こんなものを出されては、嫌でも気合が入るというものだ。そんな感想が顔に出てしまったのか、ふと目の前の隊員と目が合うと僅かに口元を釣り上げている。



―――嗚呼、なるほど。実際の戦闘は行っていないが、これが自分たちの戦いなのだということが、よくわかる。さしずめ、先ほどの食事は兵糧と言ったところだ。


自然と全員の顔が座り、少しの危険因子も漏れなくI.S.A.F.8492の隊員に伝えてゆく。まさか地上戦力が丸裸にされているとも思わない北邪人国の地上部隊は、圧倒的な戦力差による勝利を確信して進軍を続けるのであった。

傍観者で終わるかどうか…

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