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異世界で、エース達と我が道を。  作者: RedHawk8492
第9章 とある国の王都
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13話 焦がれる舞い

複数の誤字脱字報告を頂きました。お手数お掛け致しました、ありがとうございます!

「さ、次はいよいよ対空攻撃だ。あっちの船だ、鳥と違って実際に攻撃するから見ると良いぞ。」



驚きと感心の連続で言葉が出ないまま、3人は左後ろを指さす隊員の先を見つめている。この人物もアメリカ1所属のF-35Bパイロットであり、鳥の操縦士であることをエスパーダに説明していた。

彼が指さしたのは平たくはない比較的小型の船であり、円形の外側を航行している船である。初めてイージス艦を見るエスパーダ達でも、似た、というよりは全く酷似した形の船は、周囲にも数隻が居ることを確認できている。


とは言えソレは、イージス艦と呼ばれる海上において最強の盾。ミサイルランチャーによる飽和攻撃や弾道ミサイル迎撃システムを搭載するなど、艦隊にはなくてはならない役割を担っているのだ。



《攻撃対象、CIC指示の目標。敵ターゲット群距離4500、レーダーに捕らえております。》

《対空戦闘を開始する。後部甲板VLS、ハッチ開け。》

《アイ・サー、後部ハッチ開きます!》

《後部甲板VLS、RIM-162ESSM発射シーケンス開始。ブルー隊を援護するぞ、ファイア!!》



声があった瞬間に、エスパーダ達は思わず耳を塞ぐ。鳥の発艦など比べ物にならないぐらいの轟音と共に船が煙に包まれ、VLSランチャー1門につき4発搭載されている艦隊空ミサイルが次々と射出されていた。

上昇中こそ目に見える速度だが、ロケットブースターが切り離されてからの加速は段違い。あっという間に海の向こうに消えていき、それを使用している艦隊もまたエース級のため、相手が超エース級でもない限りは現れる結果は1つだけだ。



《ターゲット群を全て排除、オールクリア!》

《おいちょっと待てペラルタ、全部落としたらブルー隊の訓練にならんだろ!》

《はは、残す数を指定しなかったのが問題だな。》

《ブルー1よりCIC。おい、どうすんだよ。このまま艦隊を敵にして実戦の戦闘訓練か?防空任務だ、対艦ミサイルは積んでねぇぞ。》

《こっちは良いぜ、護衛艦の連中も訓練になるだろう。》

《イーグルアイより各艦、上にオメガ11が来ているぞ。》

《えっ。》

《あっ……。》


《……Omega-11,eng》

《ストップ、ストップ!演習中止、中止だ!!》



ベイルアウター特有のカミカゼを阻止するために実践訓練は中止となったものの、艦隊空攻撃による迎撃訓練としては全ての課題をクリアしている。翼竜騎士の機動は実際の2割増しで想定されているのだが、それでもペラルタ1は全てを落としてしまっている。

空対空と艦隊空ミサイルの違いはあるもののミサイルが着弾する瞬間を見たことのあるエスパーダ隊は、未だ開いた口が塞がっていない。あの攻撃はこう行われるのかと、仕組みは理解できないものの関心に浸っていた。


先程の仮定が事実ならば、40の翼竜騎士を、あの船1隻で落とせると言うことだ。そして全く同じ見た目の船は5隻いるために、結果としてどうなるかは想像に容易い。

それに加えて”鳥”が出張ってくるとなれば、戦局は猶更のこと容易く傾くことも容易に想像できる。無線交信でギャーギャーと言い合う風景をアメリカ1の隊員が笑いながら聞いている状況とは釣り合わないほどの実力だ。


しかしエスパーダ達は、彼等が単にチャラけているだけではないのだなとすぐに気づく。詳細は不明だが上空の索敵範囲は80㎞にも及んでおり、水中に居るらしい魔物にまでその視界が届いていることは定期的な報告で読み取れる。

演習とは言えやるべきことはキッチリとやっており、更に実戦に発展しかねない水中にまで気を配れた上で、更にこの余裕が生まれているのだ。彼女達が知る洋上はもちろんのこと、実際に危険地帯を歩く陸上の演習ですら、これ程の余裕は生まれない。



そんなことを考えていると、先ほど発艦したブルー隊が上空を低速で通過する。いつか彼のエスコートを受けていた際に現れた機体と似ていると、エスパーダ達は考えていた。

思わず、その姿を追ってしまう。そんなエスパーダに、ふと横の隊員が声を掛けた。



「どうかしたか?」

「あ、いや。とある”鳥”の乗り手を思い出して。……が、ガルムという者は、来ているのだろうか。」



言われたパイロットは、キョトンとして、エスパーダを見据える。エスパーダは思わず、部隊が違うのかと困惑した表情を見せた。

しかし。ニヤリ、と。パイロットは、確かに口元を歪ませた。



「ああ、確かに部隊は違うがI.S.A.F8492最強のパイロット、ガルム少佐だな。運が良い、今回は彼等も居るぜ!」

《イーグルアイよりガルムゼロへ。近接対艦攻撃の防空演習を実施する、敵性UAVを撃墜せよ。》

「っ!!?」



突如として空気が弾け、突風が吹き荒れる。荒れる風と音に抗って僅かに目視できたそれは、何度も夢見た蒼い翼。

ペラルタ1の頭上100mほどから垂直に上昇し、ヨーを使って機動を変えたことによる細い2本の雲を引きながら。第一機動艦隊へと向かってくるUAVに対し、I.S.A.F.8492屈指のエースが牙を向いた。


敵の数は5、バトルフィールドは艦隊から僅か500m先で展開される防空戦闘である。艦からの支援は電子支援のみと言う状況で、ガルムはUAVの群れを落とさなければならない。


とはいえ、結果としては朝飯前に全機撃墜に終わることとなる。実際に機銃やミサイルは発射しないものの、平均して15秒に1機という、相変わらずの化け物じみた戦果記録を叩き出していた。

機銃やミサイルの射線上に相手を出すように飛びながらUAVに背後を取られようが、絶対に被弾しない、かつ射線に出すための飛行ルートから外れない。音を超える世界において針の穴に糸を通すかの如く行われる芸当は、その道を進む者ならば惚れ惚れしてしまう程に美しい。


現にエスパーダ達の横に居たF-35Bのパイロットも、テンションが上がりっぱなしだ。遠目で見ているだけでも、彼がいかに離れ業をやってのけているかがよくわかる。

背中に焦がれ、夢見、それを実現するためにどれほどの努力が必要かと絶望し。それでもパイロットにとって、彼とは。I.S.A.F.8492の鬼神ことガルムゼロとは、子供の頃に見ていたヒーローそのものなのだ。



「スライスバック……!」



思わず声を上げてしまう、いつか彼の口から説明してもらった戦闘飛行技術。高度と引き換えに膨大な加速力と機動変更を得ることができるものの、操縦士に大きな負荷のかかるマニューバだ。

しかし、そんなの関係ねぇ。と言わんばかりに、眼前では超高速領域からのスライスバックが決まっている。実戦経験のあるエスパーダは、見ているだけで吐き気を催しそうであった。彼はそのまま、UAVの1つに撃墜判定を与えている。


機銃を知らないエスパーダ達も、ガルムが敵の延長線上に出ないことと、敵を自分の延長線上に出すことを両立させていることは認識できている。そして、それがどれほどまでにハイレベルな芸当であるかということを考え、鳥肌が止まらない。

翼竜と鳥、性能と言えば相棒の翼竜に失礼だが、差がある事は否定しようも無い事実だ。しかし自分たちが鳥に乗ったところで、アレを再現できると言い張る勇気は微塵も無い。


旋回・減速・加速。基本ともいえるこの3つが、完全に理想のタイミングで行われているが故の結末。彼の飛行を目にした3人は、幼い頃に見た翼竜騎士の姿を思い出した。

自分達では見上げるだけの空を舞う姿に、どれほど憧れた事だろう。夢中になって、時折空を飛ぶ姿を、どれほど夢中に、真剣に追いかけただろうか。


空を飛ぶ、という表現ではなく、舞うように滑る戦闘機動。翼竜と鳥とは違うものの、根底にある「相手を落とすための飛び方」というのは、両者ともに変わりない。

そんな目的の下に生まれる戦闘機動を、美しいと感じたのだ。問答無用で魅了される彼の動きから、片時も目を逸らせない。届かぬとは分かってはいるが、いつかは自分もああなりたいと、翼竜騎士なり立ての頃の我武者羅な気持ちを思い出す。



《敵性UAV更に接近。方位2-6-0、数20、距離1200。メビウス13が到着した。ガルムゼロ、ブルー隊も援護に入れ。》

「I.S.A.F8492最強の二人だ、よく見といた方が良いぜ!」



言われなくても!と、エスパーダは思わず口元を歪めて反論してしまう。新たなバトルフィールドは、偶然にもペラルタ1のすぐ横の頭上で発生することとなった。


いつか聞いた、もう一人の鳥。メビウスサーティーンの名を掲げる戦闘機が、方位0-9-0から襲い掛かる。20と言う敵の数に対してデータ上でADMMを発射して注意を逸らし、数機を撃墜しつつ時間を稼いだ。

そこに合わさるのは、先ほどの鬼である。傍から見ても分かる程に一糸乱れぬ完璧なコンビネーションでもって、次々とUAVを撃墜判定に持って行った。ガルムとメビウスの包囲網から漏れたならば、ブルー隊によるAIM-120Dの餌食となっている。


結果として再びものの数分で戦闘が終了し、2機は編隊を組んで大空を遊泳飛行中。速度も時速400㎞程までに落ちており、イーグルアイからの指示を待っていた。



その後の演習も無事に終了し、ガルム、メビウス、オメガの3機は編隊を組んで南へと離脱する。その後、艦隊の姿が見えなくなったころ合いに東方向へと進路を取った。


余韻が木霊するなか、エスパーダ達も簡易的な演習に参加するなどしてコミュニケーションを深め、帰路に就く時間となる。今回の遭遇で、3人が得た”鳥”に関する情報は多大なものだ。

しかしホークからの許可を得ていないために、無断で口にすれば鳥一行の反感を買うことは目に見えている。結果としては報告NGの回答が返されるのだが、「海に鉄の船が浮かんでいて、そこに鳥がいた」など相手にもされないような内容であるために、3人の中でも色んな意味で「仕方ないよね」という結論に達している。


そんな3人が乗る艦隊は、陸地が見えるギリギリのエリアを航海中。来た時よりも北側の位置でアメリカ1から飛び立ち、3人はカタリナ王国へと進路を向けるのであった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] いまのところ演習しか見せ場がないからねぇ 今後のホークの活動内容によってはわからないけど [一言] ”鳥”だったり「鳥」だったりカッコがなかったりその辺は文脈で変えてるのかな??
感想一覧
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