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異世界で、エース達と我が道を。  作者: RedHawk8492
第9章 とある国の王都
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10話 御前の喧嘩

翌日、日が昇り切ったころ。一行は王城前に案内されて城前で全形を見上げており、例によってデカくゴツいとはホークの弁。実際のところシルビア王国のモノより二周り程大きく、装飾も非常に凝ったものとなっている。白に近い灰色が、背景の山々に映えていた。

高度11000メートルを部隊内部で交代しながら旋回飛行している、今現在はライダー3の無線から「105mm打ち込んでも耐えるかな?」と言った会話が無線越しに各々の耳に聞こえており、I.S.A.F.出身の全員が不安げな顔に切り替わっている。一発だけでも誤射でありタスクフォース8492も巻き添えを食らうことは必須なうえに、そもそも無線を切り忘れてるのが問題だ。


とはいえ、AC-130が搭載する主砲の威力を知らないハクや姉妹兄妹夫妻は暢気なものである。アレ凄い、コレ凄いと城内の装飾に興味を示しており、会話を聞いた兵士達も若干のドヤ顔で鼻高々だ。

ホーク達が別室に通され10分ほどすると、迎えの兵士がやってくる。騎士よりも豪華な鎧を着けており、実用性と言うよりは見栄え優先と言った様子を出している。武器に関しても一定の実用性はあるものの、同様だ。


彼等に案内され、ホーク達は装飾の凝った大きな観音開き扉の前で待機する。1分ほどで合図と共に扉が動き始めるものの、開くのにも1分ぐらいかかっているのではないかと思う程にゆっくりだ。なぜに合わせ扉ではなく観音開きにしたのかと、ホークは内心で疑問符を抱いている。



そんな扉の向こうにある部屋は、今までで最も絢爛豪華。50m程の長さのレッドカーペットの先に5段ほどの階段があり、その先にある豪華な椅子。

そこに座っているやや強面の人物こそが、カタリナ国の国王だ。レッドカーペットに沿って重役らしき一行が並んでおり、全員がタスクフォース8492に視線を向けている。



「王の前であのような服とは、冒険者の位が知れていますなぁ。」



騎士の先導に従ってレッドカーペットを歩くホーク達にテンプレ的人物も小言を吐き捨てるが、何かと難癖付けたくなる年頃なのだろうとホーク一行は総スルー。彼と一緒に居ることで、全員の煽り耐性スキルが向上していた。

そうは言っても、全くの無反応ということはない。左後ろを歩くハクの眉毛がピクリと動き、何かしら気にしているだろうなとエスパーしていたホークは、正面を見たまま小声で釘を刺していた。



「一々あんなの気にしてたら、おかわり5杯しか食べられないぞ。」



ホークの背中を貫く、物言わぬ大きな気配。名実ともにそこまで大食いではない彼女は、過去最大のジト目でもって彼の背中を射抜いている。

今宵の飯は豪勢じゃないとだめかー。と内心で苦笑するホークは、妻に余計な気を背負わせずに済んだことを満足していた。


しかし、そんな呑気な考えもすぐに消え去る。彼等の入場に合わせるかのように、国王の横にドラゴンらしき生き物が入ってきたのだ。フェンリルを連れるタスクフォース8492に対し、「こちらにも古代龍が居るんだぞ」とけん制するために外交官が用意した代物だ。

これは以前にハクが説明した、人間に飼われているドラゴンの類である。古代龍とはいえシルビア王国解放時にも相手したことがあるうえに、今現在はヴォルグ夫妻、そしてハクが居るために、タスクフォース8492が警戒心を抱くことはなかった。全員が「なんかいる」程度の認識である。



セオリーと違って全く驚かないレッドカーペット沿いに入ってきた一行を舐めまわすように見て、ドラゴンの目が、見開く。突然と頭を下げ始め、何度か上下に往復させる動作を行っている。

ホークの目線から見ても、明らかにハクに対してヘコヘコとしている様相だ。図体と立ち位置的にどう頑張っても古代龍の方が目線が上になるだけに、「私が下です」と必死にアピールしている精一杯の頑張りである。


爬虫類って汗かいたっけ?と真面目に考えるホークだが、自身の妻は汗をかくために「ドラゴンはそうなんだろう」と勝手に納得していた。なお、そうは言ってもハクがドラゴンとなった姿の際は不明である。

と呑気なことを思った矢先、古代龍が目に力を入れることとなる。何故、人間風情が古代神龍様の前に居るのかと言わんばかりに、ホークを睨みつけていた。



(この方は、私の夫であらせますが。何か言いたいようで?)



ハクの念話とは別に思わず「何か?」と言いたげに目線を返すホークだが、その瞬間に、古代龍は豆鉄砲を食らったような顔になってしまう。

先程に増して勢いで脂汗を流しながら、凄まじい勢いで顎を床にぶつけながら、頭を下げる動作を繰り返している。「縦に動くメトロノームかな」と呑気に考えるディムースだが、おかげで場は混乱状態だ。


あの古代龍とあろう存在が、明らかに動揺を見せている。かつてない状況に、ほとんどの者の動作が停止してしまっている。

それを見て慌てる飼育係と重役のご一行。国王も家臣の一名を呼びつけている。恐らく先ほどの視線に対してハクが念話で何か言ったなと判断したホークは、やれやれと言わんばかりに軽く溜息をついた。



=====



数分して事態は落ち着き、国王から「よくぞ参った」や「城下町で楽しんでいってくれ」などのセオリー通りの言葉。そして、食糧問題の解決や盗賊退治に関する謝礼の言葉が贈られる。特別扱いするつもりは無いがその逆も然りで、とにかく敵対しないように第一手を打ってきている内容である。

それに対するホークも言葉を受け取る旨の発言をしており、騎士の一件を表ざたにしていない。これにはルームも一安心という表情を見せており、ホークへ感謝の念を示している。謁見は、そのまま無事に終了した。


しかし、そうは簡単に終わらないのがタスクフォース8492の結末だ。事態は、ホーク達が帰ろうとしたタイミングで右斜め後ろ、ようは入り口側から飛んできた声である。



「ホークとやらに物申す。即刻ティーダの町を離れ、我等カタリナ国の傘下に入れ。」



広い謁見の間に響く、フガフガとした声。声的からするに入り口でイチャモンをつけてきた輩だと、タスクフォース8492の面々は判断していた。ホーク以外の全員が振り返り、入り口側に視線を向けている。

もちろんその発言があった瞬間、場は静まり返っている。誰かが唾を飲み込んだ、そんな音も聞こえるほどだ。


……あーらら、空気が凍っちゃった。と、ホークは前を見たまま呑気に考える。そして後ろに居る皆様の機嫌が明らかに悪く、彼が振り返らなくても分かる程だ。国王の後ろでは、約一名の気配を感じ取った古代龍もアワアワとした表情を見せている。

相変わらず煽り耐性の高いホークは、今の発言をさほど気にしていない。会話内容は各基地に無線中継されているから、あまり部下たちの機嫌を損ねないで欲しい。という程度の認知レベルである。



「貴様、何を言うか!ホーク殿ご一行は賓客であるぞ!」



流石にこの流れは非常に悪く国王の考えにも反すると判断した政治担当の高官クラスが、相変わらず悪口を叩く貴族に言葉を投げつける。とはいえ、その内容も妥当なもので、ほとんどの出席者が内心では同意していた。

大手を振って同意できないのは、彼が地方の領主という非常に高いランクだからである。彼こそがティーダの町に剣を向けた領主であり、2度3度にわたる攻撃を潰され、タスクフォース8492を目の敵にしているのだ。



「そこの貴様、次に口を「ハイちょっと待ったヴォルグ君」はい主様。」



短気は損だ良くないぞと言いたげに、彼は振り返るとヴォルグの言葉を遮った。以前に失言をしているだけに、ヴォルグもすぐに口を閉ざす。

自分を思ってくれているが故の発言であることはホークも理解しているが、この手の場面では彼が戦うバトルフィールドである。そして、口喧嘩となれば最適な人材だろう。



「逆に貴方に質問するけれど、この国の軍隊か騎士団か分からんが、ソレを解散しろと言われたならば、どうするか。」

「話にならぬ、できるわけがなかろう。」

「答えは出た、その発言はこちらにも当てはまる。仮にも王の場に立つなら、発言の結果程度は考えてはいかがだろうか。」

「ハッ、この状況で何ができるというのだ。」



この状況とは、警備とはいえカタリナ国の騎士に囲まれている状況であり、その本拠地という点だ。タスクフォース8492のメンバーからすれば、誠にお目出度い思考である。

実際に今この場に居る面子だけでも、数秒で血祭りにあげることができるだろう。上空にはAC-130も居るのだから城外の敵も問題ない。チラっと国王を見るホークだが、なんとも無表情と言える顔で様子を見ていた。



「いや普通に考えようよ。自分が気の短い人間だったら……聞いてると思うけど、そこのフェンリルに攻撃命令を出してるよ?君等、それ止められる?」



首だけを曲げて近くにいた勲章多数の兵士に問いかけてみるホークだが、どうやら聞いていないかった様子である。ギョっとした表情を見せたかと思えばルームに視線を向けるも、無慈悲に彼の首は上下に動いていた。それを見て、勘弁してくれと言わんばかりに全力で首を横に振っている。

そして「何言ってんだコイツは」と口走りそうな勢いで、問題発言を行った家臣を睨んでいる。相手の立場が上とはわかっているが、そうでもしなければ腹の虫がおさまらない。


問題発言を行った家臣の横の重役らしき人は、「どうしてくれるんだ……」とでも言いたいような顔をしている。横を向いて手を頭に当て、冷や汗を流しながらため息を付いていた。胃潰瘍が先か10円ハゲが先か、どちらにせよ精神的に大ダメージを受けている。

一方で国王は、真剣な眼差しで問答を聞いていた。その心境で何を考えているのか、今現在ではホークも読み取れないでいる。



「しかし、ホーク殿は攻撃の指示を出さなかった。何かしらの理由があると見るが、良ければ教えてくれぬかの。」

「後ろに並ぶEランクの使えぬ部下も拾ってやると言うのだ、悪い話ではあるまい。」

「貴様は黙っておれ!近衛兵!!」

「双方口を噤めい!!」



ホークの発言を促しているために、国王は怒号を飛ばす。流石は鶴の一声と言ったところで、一瞬にして静まり返った。2-3歩足を踏み出した近衛兵の部隊が石造のように固まってしまい、どうすればよいのかとアタフタする彼等が一番の被害者だろう。



「……国王、今この場でこちらの考えを述べておく。自分がどうこう言われようと何も思わないし、それで仲間が動きそうならば自分が抑える。」



ホークはあくまで険しい表情は出さず、口調もフレンドリーに答える。この点は自分自身が受ける問題であり、言葉通り何とも思っていないのが実情だ。

しかし、この先は話が別である。王が相手だろうと殺気を込めて強く言うべきだと判断し、その気配を感じ取ったのか、国王の表情も真剣そのものだ。



「だがオレの仲間を侮辱するならば話は別だ、次があるならば容赦はしない。前に立たせる人選は吟味してくれ。また、こちらとしても喧嘩を吹っかけにきたつもりは微塵も無い。事前に嘘偽りなく申告したが観光ついでの王都訪問だ、その程度の認識は摩り合わせておけ。」



「今この場での用件としては以上だ」と、ホークは会話を切り上げる。この件に関しては本当にそれ以上話すことは無いというのが彼の本音であり、目を閉じて言葉を終えた。

常識外の言動をする人ってどこにでも居ますよね……

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