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異世界で、エース達と我が道を。  作者: RedHawk8492
第9章 とある国の王都
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7話 道中の仕事

南に居る熱帯低気圧が1008→1006hPaと徐々に台風化してきている現状。

もう台風は要らないです…

「国の騎士の斥候、いい仕事してますね~。」



天気が変わってやや曇り空の下を時速40㎞ほどで走行中の、L-ATVの荷台。兵士用の簡易的な椅子に座りながらモニタで周囲を偵察する兵士が、どこぞの鑑定士のように呟いた。

一行を乗せた2台は前を走る騎兵を追い、やや斜めに並んで並走中。路面は乾いており、やや土煙を上げながらの走行だ。



「呑気に言ってないで説明しろっつーの。」



そしてさっそく、他の隊員からヤジが飛んでくる。半笑いが起こるなかで彼が言うには、斥候のような役割の騎士が前方500mほど先までの魔物を的確に処理しているらしい。

詳しい内容は不明だが高度800m付近に居るエスパーダ隊とも連携しており、彼女達も時折地上に攻撃を仕掛けているようだ。


もちろん無線などのシステムは使用していないために、互いのサインを見抜かなければ内容を把握することは不可能だ。今回では斥候とエスパーダ隊は魔法を使って遣り取りしているために、タスクフォース8492にとっては猶更のこと不明となる。

L-ATVの横を走るM1128ストライカーMGSの車内では、マールとリールがその会話を聞いている。魔法に長ける者ならば距離次第では盗聴の類も可能であることをホークに説明しつつ、車内にて何事も無いことを祈っていた。



一行は野営を行い、旅路2日目。天候は曇りであり、日差しは時たま僅かに顔を出す程度である。

昼食を挟んで予定通りに道を進んでいた一行だが、ここで偵察部隊から思わぬ報告が寄せられた。



《至急。総帥。方位3-2-0、距離4000。集落と思わしきエリアが炎上中。延焼エリアからするに放火の類。建物状況からするに、発生からあまり時間が経っておりません。》

《了解。ヴォルグ、内容は聞いていたな。我々の方が足が速い、道を空けることも合わせて伝えてくれ。ハクレンはエスパーダ隊に連絡、攻撃は行わずに上空よりほかの延焼地点が無いか捜索するよう伝えろ。》



さっそく新装備の出番となり、ヴォルグは騎兵隊の前に出てルームへと伝達する。同時にハクレンはエスパーダ隊に魔法で方位と距離、ホークからの指示を知らせると、3人はバンクを取り加速した。

同時に騎馬隊が端に寄り、空いた道を2台の車両が加速しながら突き進む。時速は70~80㎞に達し、騎兵隊からその姿はすぐに見えなくなった。UAVのもう片方を用いて事前に道路状況をチェックできるからこそ、これほどの速度が出せるのだ。


直線とはいかないものの、一行は道を経由して目的地に接近中。UAVの映像はストライカーの内部でも視認できており、盗賊らしき集団が町を襲い終えた様子が確認できた。

タスクフォース8492が全速で向かっているものの、時すでに遅し。敵の実力は不明なれど、昼間という意表を突いた奇襲は、老人たちに逃げる時間を与えなかった。既に、何名かの息は絶えている。


数人いた衛兵は既にやられ、隊長命令で逃げ延びた数名は散り散りになった住民たちを集めようと走り回っている。とはいえ魔物に襲われないよう周囲警戒も兼ねているために、効率は非常に悪い。

UAVの映像越で確認できるのは、盗賊の類の連中が30名程。集まって戦利品と思われる乱雑に積まれた物資を漁っており、村人と思わしき姿は見られなかった。そのため彼は、すぐさま攻撃体制に入ることを決定する。



《ホークより偵察班、逃げた住民に対しては3機目のUAVで広域スキャンを行う。まずは敵を排除するぞ、正確な位置を知らせろ。》

《了解、端末に随時送信します。》

《総員、近接戦闘態勢。火力に任せて突っ込む、殿は任せろ。》

《こちらディムース、総帥の攻撃開始と同時に停車します。各位、飛び出すタイミングのブルーオンブルーに注意。》



=========



「……なんだ?」



家屋が燃える音に混じる、聞きなれない音。キャタピラー3126・直列6気筒7.2Lディーゼルターボエンジンが発する音が近づくものの、それが死神と知る術はない。

死角。燃え盛る炎とその熱気で姿を隠しながら、M1128ストライカーMGSが炎上中の建物の陰から飛び出した。


時速70㎞で盗賊が集うすぐ横に突進するホークは、高精度の照準支援システムにモノを言わせて主砲を旋回。僅かコンマ数秒で、照準は整った。

そしてブレーキをかけると同時に、間髪入れずに砲身から飛び出す105x607mmの榴弾。盗賊の群れを切り裂いて直線上と射線の周囲に居た者を薙ぎ払い、奥で炎上中の家屋に着弾した。なお、この一撃で、盗賊の数は半分にまで減っている。


まだ生きている盗賊の集団は突然の出来事に呆然とするも、何が起こったかを考える時間は無い。目の前で仲間が倒れ行く姿は、コンマ数秒後の自分自身の姿だ。

そして、現れた鉄の箱は、敵だ。呆然としたものの条件反射的に剣を抜こうとした瞬間に、彼の意識も潰えることとなる。


次に照準が向けられるのは、車内から照準可能なM240C 7.62mm同軸機銃。放たれる7.62x51mm NATO弾は、例え鉄の鎧だろうと容易に貫通し命を奪う。

毎分700発程で盗賊の身体を切り裂き、同時に後方より放たれたM82の50口径弾とM14-EBRの7.62mm弾が、逆サイドに居た集団を仕留めた。ちなみに盗賊リーダーは、ディムースがヘッドショットを決めている。


最初に榴弾が射出されてから現在まで、僅か3秒。偵察部隊が報告した完璧な敵の位置情報は、最良の結果をアシストしている。最初の一撃で盗賊リーダーを吹き飛ばさなかった状況も、この情報をもとに作り出した状況だ。

見慣れた光景といえばそうなのだが、リュックが近接戦闘範囲に入った時には既に戦闘が終了している。それほどまでに、タスクフォース8492が展開する戦いは、常識を打ち破る代物だ。



一戦が終わって展開中のUAVで確認するも、どうやら追手は居ないようである。ホークは一度車両を下りて、山賊のリーダーと思わしき人物の所持品をスカベンジして胸についていたバッヂを回収し、ストライカーに乗って炎上中の街を探索する。

すると片隅に、焼けていない人を発見した。遠目で見るに農民の格好で、まだ微かに息がある。UAVの反応も敵性ではなくフレンドの青色を示しており、彼は追いついてきたハクの警戒の下、ストライカーを下りて老人に近づいた。



「お願い、します……妻の、仇を……仇を……!」



ホークの接近に気づいて、壁にもたれ掛り血みどろで願いを乞う初老男性の命は、風前の灯火だ。その彼に対してホークは立ったままで、全く動揺せずに目を向けるも、先ほど回収した1つの物資を差し出して語り掛ける。



「奴等は我々が打ち取った、逃げ延びた住民たちの行方も全て分かっている。常に妻を想う老騎士よ、案ずることは無い。」

「……。そう、か……そうか……。」



盗賊のリーダーのバッヂを見せると、初老の男性は微笑んだのちに息を引き取った。ハクのヒールで外傷を治そうにも既に体力はなく、手遅れの段階である。


「ありがとう。」それが、長年を生きた彼が残した言葉だった。なんともいたたまれない最後を見届け、ハクは眉間に力が入る。

結果として街が全滅してしまったわけだが、それでもホークが悲しみの表情を見せることは無い。すぐさま部隊に指示を出して戦闘態勢を解除し、警戒体制に切り替える。


他の分隊も周囲を警戒しつつ、損害の規模を調べている。国の騎士が到着したのは、全ての戦いが終わってからだった。



======



「なんということだ……開拓の町が、クソッ。」



惨状を見た若い騎士は、思わず心の内を呟き横の木を殴ってしまう。国のために新たな土地を開拓していた者が住まう村が襲われると言う、政治的には最悪の格好だ。

また、国のためと思いこの地に来て労働に励んでいた住人達の気持ちを想うと、騎士達も心が痛む。


しかし、いつまでもショゲては居られない。逃げ延びた住民たちを集め、安全な地点にまで輸送することが重要だ。

国の騎士がタスクフォース8492から指示された方角に向かうと、逃げ延びた住民たちが必ず居ると言うホラー染みた内容が発生しているが、今はそれを気にしている余裕は無い。エスパーダ隊も誘導を手助けし、結果として生き延びた者は全員が無事であった。


若者の生存率も9割以上と、まさに不幸中の幸いである。方角も分からず飛び出し、そのまま魔物に襲われるか盗賊に追われるのかと怯えていた住民にとって、騎士達が近づいてきた時の心境はいかばかりのものだっただろうか。

老人を中心に何名かは命を落としたものの、全てを集め終えた騎士は住民を連れて、炎上中の村へと戻ってきた。その一角には謎の鉄の箱2つと2頭のフェンリルが居り、集まって何かを話している様子だ。



「あー、やっぱり。やっちまったな、いくつか壊れてるね。」

「そりゃ、至近距離で105mmぶっぱなしてますからねぇ……。」



一行が見たのは、口元に手を当てて悩む人物を中心に集う集団。一人だけ帽子の種類が異なっており、周りの者が敬意を払って接していた。

騎士や住民たちが話を盗み聞くに、どうやら盗賊が集めていたものをいくつか壊してしまったようである。大きいキャリアカーなどは、軸からボッキリと折れていた。


とはいえ、そんなことは些細なものだ。方法は不明ながらも、占拠していた盗賊を排除して村を奪還するという、英雄張りの内容をやってのけている。

この点の見せ方も、ホークの思惑通りとなっていた。フェンリルの件を知っている国の騎士からすれば、一連の攻撃はフェンリルによるものだと自然と納得してしまっている。そのために、未だ銃の類による手の内は見せていない。



今回の件の対応として、騎士の6割程度がこの場に留まることで決定する。近くの町へ住民たちを護送するなどの任務を終えたのち、王都へと帰還することで決定となった。

ホーク達は、変わらずそのまま王都へと向かうことになる。まるで戦闘など無かったかの如く、タスクフォース8492のメンバーは車内で陽気に振舞うのであった。


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