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異世界で、エース達と我が道を。  作者: RedHawk8492
第9章 とある国の王都
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5話 ワンコの皮を脱いじゃったオオカミ

「大変すーばらしいステキで聡明盛大な計画ですね~。なーにーを勝手に自分の正体カミングアウトしちゃってんのかな~この白毛玉ワンコはー????」

「ちゅ、ちゅい……もふしゅぃ、もふもふあぅゎぅゎもぅしゎくぇござい」



弾道ミサイル張りの問題発言が投下され、場から言葉という言葉が消えて数分後。タスクフォース8492の周囲に、いつもより3歩ほど距離が空いて市民たちや騎士達が集っている。

問題の白いワンコは両頬を手でつねられ、柴犬張りにびろ~んと伸ばされ、上下に動かされ。まるで飼い主と駄犬とのやりとりが、そこに再現されていた。



「で、ですから主様、そこの子供が」

「申し訳ございませんフェンリル様!!」

「何卒、何卒お許しを!!」


「ほーう?見ての通り行いを全力で謝罪するティーダの町の市民、ましてや君を慕って接した幼い子供に責任を押し付けるのかー?」

「ぐっ……で、ですので主様、いや、しかし、しかしですね……。」



かの伝説的で凶暴な魔物、フェンリルに迷惑を掛け失礼を働いてしまったと子供を抱きかかえて涙ながらに謝罪一辺倒な子供一家3人。そんな一家に味方するホークは、にこにこ顔でヴォルグと目線を合わせて問答中。


なお、ご機嫌斜めである。こうなっては、流石のガルムとメビウスでも手に負えない。二人とも腕を組み、時折ハクとも目線を合わせてホークを止める手立てがないことを確認し合っていた。

彼が見せるこの表情は、100%、やっちまった側に責任がある時だ。いかなる言葉を並べようが全て手順や状況にのっとったぐうの音も出ない正論中の正論で返され、冷や汗を流しながら謝り倒す以外に道がないのである。


現にヴォルグも全てを言い返されて言葉が底をつき、ハクレンに助けを求めている。しかし「無理、無謀。」と言わんばかりの冷たい視線が、そこにはあった。

彼女としても、主であるホークの計画に亀裂を入れてしまった今回の件については弁明の余地がない。夫が申し訳ないとの態度を見せており、直接関係はないものの妻としてできる最大のことをしているのだ。



一方で、住民たちからすればそんなことは関係ない。「あの」フェンリルを相手にホークが行っている行動とヴォルグが見せている反応は、本当ならば前代未聞である。今現在の状況的にどう見てもタスクフォース8492の白い犬がフェンリルとは納得できない市民達だが、先ほどの氷の世界もフェンリルが行ったならば納得だ。

ということで、一応はタスクフォース8492の白い犬っぽい奴はフェンリル、ということで周知されている。しかしこうなると、何故フェンリルとあろう者がここまでホークを慕っているのかが謎となる。タスクフォース8492が抱える謎の風呂敷は、既にキャパシティーオーバーだ。



住民たちがどうこう考えを巡らせているうちに、ついにヴォルグの剣も折れる。首を垂れ、ホークが言う問いに対して「申し訳ございません」や「猛省しております」の嵐となっている。やっぱりフェンリルには見えないと思う、住民一行であった。

その機械のような問答も終わると、ホークは踵を返して住民たちに数歩近寄る。そして、事の全てを正直に告白した。



「さて各々方。聞いたと思うが、そこの二頭はホワイトウルフではなく紛れも無いフェンリルだ。偽っていた理由は察してもらえると思っているが、どれほどの事情があろうと偽りに変わりはない。我々タスクフォース8492は、今回の件に関して処罰があれば受ける覚悟がある。」



発せられた言葉が一番響いたのは、他ならぬヴォルグである。言われて気づいたがホークが行っていたのは詐欺の一種であり、偽りの内容を正として住民たちに報告していたのだ。

それが公になると言うことは、何かしらの謝罪を行わなければならない。その程度は、野生だったヴォルグでもわかることだ。


急遽開かれた住民たちによる話し合いだが、結果としてタスクフォース8492が罪を背負うことはなかった。町への貢献度からしても、妥当な決定だろう。議論の際に、国の騎士も住人を諭す方向で話を行っていた。

とはいえ、騎士達も何かと必至である。万が一にも機嫌を損ねたタスクフォース8492が牙を向けば、国を挙げてフェンリル二体を相手することになるからだ。優秀な冒険者は何人かを抱えている国であるものの、そうなれば結果は見えている。


町としての決定に感謝の言葉を述べるホークだが、住民たちも「気にしないでくれ」と談笑モードだ。騎士達も輪に加わり、「これが伝説的なフェンリルか」と、視線がヴォルグ夫妻に向けられている。

そして、これからもホワイトウルフということで接するようにと、町の権力者が住民たちに働きかけている。この配慮にも、ホークは感謝の念を示していた。


しかし、そうウカウカもして居られないのも実情である。話を変えたホークが先ほど捉えた領主の騎士のことを思い出させると、全員の表情が強張った。


そののちに意識を取り戻した領主の兵士を拷問した国の騎士だが、自分達の手に負えない事態であることを認知した。兵士曰く、当時、領主は酒に酔っていたらしいものの、領主直々にティーダの町への攻撃命令を出していたのである。

それだけでも一大事だが、怪しい商人から買ったと話すどす黒いオーブで魔物を操っていたことも判明する。そのようなものが存在するとは、未だ世間一般では認知されていない。



「総帥、第二拠点と連絡がつきました。邪人ならば魔物を使役することができるようですが、あのようなオーブは使いません。そのため、マールリール姉妹も知らないモノのようです。」

「ってなると、最近の技術かな。まーた例の勇者絡みな気がするんだけど、どうだろうねぇ。」

「自分も同感です。もはや亡霊ですね。」

「ある意味で生霊か。」

「言えてます。」



通信担当と共に苦笑しつつ溜息をつくホークだが、その推察は正解だ。黒いオーブは、つい最近に壊滅した霧の盗賊団、ワーラが使っていたものと同じである。

ロトが言うにはオーブの力は非常に弱まっており、もう効力を発揮できないだろうとの解釈である。これはカタリナ国で分析されることとなり、騎士たちが預かっていた。


身内に思わぬ敵がいた領主の騎士は、流石に自分たちの主に疑問を抱いている。暴君故にやや無理のある要求を配下の町に出していたこともあったが、仕事と割り切れば許容できる範囲だ。


しかし今回は、誰が見ても明らかな「攻撃」である。場合によっては自分たちの出身の町、家族が暮らす町に向けられていたかと思うと、彼等も怒りという感情が芽生えてくる。

一応ながら彼等を見張っている国の騎士だが、既に不要と言えるレベルだ。今の領主の騎士達が発する士気は最悪で、どんな命令が出ようとも従わない雰囲気を醸し出している。


住民たちもそれを感じ取り、若干ながらも同情してしまってヤジを飛ばす気力が起こらない。国の騎士団の斥候が報告へと戻っているので、ひとまずそれを待つことで町全体が決定した。



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そんな決定となった時点で町から東門から出ていたタスクフォース8492は、そのまま東方向に進行中。とりあえずガルムとメビウスを佐渡島(仮名)に返すべく、フォーカス隊との合流地点へと向かっていた。予定時刻からは3時間ほど遅れているものの、伝達済みであるために問題ない。

それよりも、出かける際に国の騎士から言われた内容がホークを悩ませていた。早い話が「王宮に来てくれ」という内容であり、先に手を付けられないようするためエスパーダ隊が「彼等は関係ないだろう」と食って掛かっている始末である。どちらにせよ行くかどうかはホークが決めることを知っているエスパーダだが、念には念をというやつだ。


また、行くとなった場合は容姿的に問題である。タスクフォース8492において、その対象は少なくない。



「マスター、失礼します。恐れながら、大きな町では猶更の事、黒目黒髪黒服は目立つかと……。」

「あーそこは大丈夫。ってか、そうなるとマクミランもダメじゃん。」

「えっ。」

「いや無理でしょ。大尉、それ目立ってないと思ってたんですか?」

「うん。」



何故か少年張りのイントネーションで答える最強の狙撃手の反応で噴き出す第二・第三分隊の面々だが、目立つことは事実である。ハクですら、未だに隠れる場所を間違えてる服という印象なのがギリースーツだ。

とはいえ、「目立つ・目立たない」の基準がホーク達とは違うのも、また事実。例を挙げれば、ハクやリュック・リーシャの服装はそこまで珍しいものでもない。このグループは容姿が良いので、別の意味で目立つだろう。


そのために第二・第三分隊の服装ならば、そこまで目立たないだろうというのが結論となっていた。議論には出てこなかったが、ヴォルグとハクレンを見た方がよっぽど違和感が芽生えるだろう。

結論として「何とかなるんじゃないか」程度にまとまった答えが出たタイミングで、フォーカス隊のオスプレイが飛来する。相変わらずの低空ギリギリ飛行で着陸すると、マールとリールが紙袋を携えて降りてきた。



「総帥様。本部しーあいしーより、お荷物を預かってまいりました。」



ホークが受け取ったのは、ディムース達とお揃いの森林迷彩な軍事用衣類。防弾チョッキは無いものの、防刃対策がしっかり施された代物だ。今までの黒バージョンより1kgほど重くなっているが、防御力は倍以上に仕上がっている。

同じ迷彩柄のブーニーハットもついており、黒髪を隠すために一役買うことに成るだろう。偵察用UAVの端末を出し入れしやすくするための工夫など、彼のためのワンオフ品となっていた。


オスプレイのハッチを閉じてささっと着替え、彼はフィット具合を確認している。P320などを所定の位置にセットし、数分で準備を整えた。

なお、今の彼は昼食時と違って中々にご機嫌だ。なんだかんだと気にしていた黒服から解放され、心機一転の心境である。



試しに補修用の生地をリュックが斬ってみるも、全くもって刃が通らない。何気に初めて防刃の効果を見たマールとリールは、興味津々で説明を乞うのであった。

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