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異世界で、エース達と我が道を。  作者: RedHawk8492
第9章 とある国の王都
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3話 さまざまな騎士

一点を見つめるタスクフォース8492の面々を見た住民は互いに顔を合わせ、何かあったのかと不安になる。たまたまそこに居たシビックが何事かとホークに尋ね彼が答えを返したところ、住民たちの表情が一斉に暗くなった。

こうなれば、今度は逆にホークが質問する側となる。UAVで得た騎士の情報を住民に伝え、知っている情報があるなら提供して欲しいと呼びかけた。


騎士の中に見えた旗の紋様からするに、ホークの予想通り領主お抱えの騎士のようである。領主が居る町との距離を聞くに先ほどの騎士が呼んだわけではなく、既に近くで待機していたようだ。

馬にまたがりガチャガチャと鎧が擦れる金属音を鳴らしながら、狭い道で隊列を組みながら騎士達は前進する。駆けるとまではいかないが速足で接近しており、その数も20-30ほど。


それが与える威圧感を理解しているはずだが、彼等は上乗せするように高圧的な態度を見せている。門兵に対しても常に上から目線であり、馬から降りてからは馬の世話を門兵に押し付け、ヅカヅカと町の中に押し入っている。

鎧を鳴らし、剣や槍を見せつけるように携えて。前回の隊長よりも更に豪勢な鎧を着こむ男を先頭に、銀色の集団が市街通りを鎧袖する。



鎧の足音が近づくにつれ住民たちも彼等に気づき、自然とタスクフォース8492の後ろに足を向ける。エスパーダ達やアルツも空気を読み、住民たちと一緒に後ろに回っていた。

陣形は自然とホーク達が先頭に成り、彼は自分の仲間を見渡した。



「第二・第三分隊に命令、近接戦闘配備。先に手を出すことは禁止するが、戦闘となる場合は容赦するな。我々の命、次に住民の命を優先せよ。」

「「「「「ハッ。」」」」」



返事を行う第二・第三分隊はやや陣形を変え、各々の銃火器のセーフティーを解除する。腰撃ちの態勢を取り、トリガー部分に手をかけた。

周りからすれば黒い杖らしきものを構えた一行だが、それはとても不思議な光景である。魔力を感じるわけでもなければ詠唱が始まる様子もなく、何をしているのか見当がつかない。


そんな様子を見たリュックとリーシャは「だよね」と言いたげな表情で住民たちに同意している。一部ではざわめきも見られる程で、二人としては苦笑するほかなかった。

とはいえそんな表情も数秒で、ガルムとメビウスを守るために、ヴォルグ夫妻と共に近接警戒を行っている。ホークに対しては例によって最強の剣士が専属配備についているために、万が一の不安も無いだろう。



十数秒もすると騎士達が到着し、自然とホーク達と対峙する。拳2つほど足元の間隔を開き右手の甲を腰に当てる姿勢をしているホークは、騎士が相手でも敬意を払う素振りを見せていない。

静かながらも明らかな挑発であり、この仕草が結果として大ダメージを与えてしまう。町へ行くたびにどこの衛兵も住民もヘコヘコと頭を下げることが定石となっている彼等にとって、ホークの行動は、一発で堪忍袋の緒が捩じ切れるものだったのだ。



「……何様のつもりだ。」



喧嘩と言っても住民たち前で殴る蹴るなどを行うわけにもいかないのは、互いにとって周知の事実。そのために言い争いが始まるも、この手の喧嘩には慣れているホークからすれば些細なものだ。



「その言葉はそのまま返そう。ゾロゾロとしゃしゃり出て来たうえで何用か。」

「領主様の命令だ。既に聞いているだろう、コカトリスを渡してもらおうか。」

「既に聞いたと言うのもこちらのセリフだ、欲しければ金を用意し並べと言っただろう。後ろに居る3名からその程度の報告すら上がらないのか?ならば、なんとずさん極まりない。」



溜息をつきながら、ホークは目を座らせた表情で答える。あからさまな煽り文句に一部の隊員は笑いがこみあげたが、喉元で押さえた。腹を抱えて笑いたいものの、笑えば何をされるか分からない住民も同様である。

騎士は騎士でホークの言葉に対して剣を抜けば、己がずさんと公言するようなものである。かと言って初回の3名の騎士とのやり取りも事実でもあり、先程の対応もあって何かしら言葉を吐きかけたい彼等からすれば、ホークの言葉に対して黙っているのも癪である。



「……Eランク冒険者風情が。盾つくとどうなるか分かってるんだろうな。おっと。我々が集まらなければ対峙できないのか、という言葉はやめてくれよ。これが通常編成なんだ、いつもと変わりない。」

「案ずるな、現場の兵士が部隊単位で行動する程度のことは理解している。それらの盾ごと噛み砕くだけだ、人数に差があろうとも支障は無い。」



にやつきながら葉っぱを掛けようとする騎士の隊長格だが、そもそも相手に火がついていないので無駄である。ホークは座った眼のままの表情で、ただ事実だけを述べている。


この言葉を最後に、状況が動き出す。後ろに居た若い騎士の数名が耐えきれずに剣を抜き、連動して第二・第三分隊の面々の手にも力がこもる。

とはいえ、隊長格はそこまで馬鹿ではない。先に剣を抜くことがどういうことかを把握しているため、すぐに治めるよう命令を発した。



「待てい、待てーい!!」



騎士達が剣を抜いた数秒後、地鳴りと共に静止する声が近づきつつ聞こえてくる。領主の騎士を相手しながらもUAVにて接近を知っていたホーク達は見向きもしないが、騎士たちは声に釣られて顔を向けた。

そして、血の気が凍る。接近してきた集団もまた騎士であり、国が抱えている直属の騎士。それもよりによって、国王直属の超精鋭部隊の紋様棋を掲げていたのだ。


そんなエリート達からすれば、現在の状況は理解できる度合いを超えている。地方領主とはいえ、自国の騎士が国民達に向けて武器を構えている状況に他ならない。

国民の群衆の先頭に立ち明らかに出で立ちが異なる者のうち、数名は武器らしきものを持っているが、後ろに集う国民達は丸腰だ。老若男女問わずの集団を相手に対し、騎士が見せる行動としては最悪なものである。


更に厄介なのが、ランスを扱う者ならば大抵が知っている西の猛者、エスパーダと思われる人物が群集側に居ることだ。更に目を配れば近隣国お抱えのアルツという精鋭騎士も居り、下手をすれば戦争に発展する状況だ。

そして領主の騎士たちと同じ感想だが、先頭に立つ集団は騎士を相手にしても少したりとも怯んでいない。馬上から先程声を張り上げたガタイの良い老兵は、手早く考えを纏めると再び口を開いた。



「ワシはカタリナ王国カタリーナ王直属の騎士、ルーム!後ろは部下の一個騎士団だ!とにかく双方落ち着けい!そこの騎士共、民を相手に何事か!即刻剣を収めよ!!」



鶴の一声で、領主の騎士たちは剣を収める。僅かに足に力を入れていたタスクフォース8492の面々も、各々の切っ先を下ろした。

何があったのか説明せよと声を張る老兵に対し、住民の数名が声を上げて事情を説明する。蓋を開ければ何ともくだらない理由を聞いて、国王の騎士たちは頭を抱えて項垂れていた。


確かにコカトリスが貴重であり階級者が喜ぶことは事実である。しかしそれならば、領主よりも先に国王へと報告し献上するのが正規ルートだ。そして現在、そのような事前連絡は届いていない。

これは明らかに領主の独断による騎士の行動であり、行政的にも何かと波乱が起こる案件となる。こうなってはルームの手には負えず、議会の類に委ね裁きが下ることになるだろう。


また、コカトリスの件はさておき、少なくとも国外の勢力となるエスパーダ隊とアルツ騎士に対し、己の国の不甲斐なさを見せつけてしまった形である。この2組が国民側にて小競り合いを傍聴して居たことも、理由を聞けば納得できる。

正義と呼ぶには大げさだが、戦うための理由が住民側にあるのは明らかだ。俗に言う悪者は、誰が見ても領主の騎士達となっている。



「前回のオークキングの時もその前もだが、遅れながらも国の騎士が来てくれることには感謝している!だが現実がこれだ!アースドラゴン以前に、身内の問題をなんとかしろ!」

「そうだ!今こいつらが剣を向けているタスクフォースは、深刻だった食糧問題を解決してくれたんだぞ!そんな彼等に剣を向けるんじゃねぇ!」



誰か青年が叫んだこの言葉を皮切りに、そうだそうだと同調の声が広がってゆく。こうなっては、直接関係がないとはいえ彼等がケジメをつけなければならない状況に発展していた。



「住民の方々、申し訳ない。同じ騎士として、不逞の行動を謝罪する。」

「だから貴方たちじゃねぇだろ、そっちの連中が彼等に剣を向けたことを」

「ホークより全部隊。戦闘配備を解除、警戒配備に切り替えろ。住民各位、我々は有象無象を気にすることはない。これでどうだろうか。」



まぁ、ホークさんがそう言うなら。誰かが呟いた言葉に賛同するように、住民たちの熱気も冷めてゆく。ホークはこれで、国の騎士一行に軽い貸しを作った形だ。

命令を受け、タスクフォース8492の戦闘員も己の武器を下に向ける。それを確認したルームは馬から降りると、ホーク達の元へと歩み寄った。



「お目にかかる。ホーク殿、でしたか。お言葉添えには感謝する、しかしどうか、警戒も解いてはくださらぬか。奴らはワシ等が抑えると確約する。」

「言葉通りだ、我々がそこの騎士共を相手することはない。しかし老兵、それ以外ならば話は別だ。」

「はっ?」



そう言うとホークは、領主の騎士がやってきた方角にある丘を見据える。何事かと彼に注目する周りに目もくれず、しかし目に力を入れたまま言葉を発した。



「方位3-1-0、距離2000、数40程度。接近中の魔物らしき群れを相手する。総員、近接戦闘配備。」

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