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異世界で、エース達と我が道を。  作者: RedHawk8492
第8章 様々な欲望
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11話 女子?会

エアコンが壊れました(血涙)

その後、彼女は心行くまま「2種類の美味しさ」を堪能した。今は食後のワインに舌鼓を打ちながら、余韻に浸っている。途中から合流してきた3名の女性隊員と合わせて、軽い女子会のような状況になっていた。

どこでエンカウントしたのかリーシャとその知人までが拉致られており、少々困惑した様子で食堂を見回していた。いつもは身内で食事を取っているハイエルフにとって、I.S.A.F.8492の食堂とは未知の場所となっている。


今日は晩餐会のためにメニューが絞られているものの、初日のハクの如くハイエルフ3人は固まることとなる。唯一、リーシャが知っていたサンドイッチを彼女が知人に説明し、ハイエルフは全員がサンドイッチセットとなった。

片手で持てるサイズで具材は卵、ハムレタスチーズ、油少な目のツナに加えて鳥そぼろがあり、ボリューミー。小麦香る食パンと相まって、3人は虜となってしまっていた。例によって目を光らせる古代神龍約一名だが、既に食べたことがあると知ると眼力を弱めていた。


新たにやってきた女性隊員もハイエルフの3人に釣られてサンドイッチセットを注文しており、片手でつまみながら長閑な会話に耽っている。セットということもありドリンクは砂糖の入ったカフェオレが用意されており、甘未に関しても抜け目がない。

I.S.A.F.8492の女性隊員とこの世界出身者4名がテーブルに向かい合って分かれて座っており、ハイエルフ勢はハクの隣に座る際に恐縮しっぱなしであった。一応ながら古代神龍であり王族であるため、本来ならば敬意を抱く相手である。



「それにしても、ハクちゃんといいリーシャちゃん達といい、相変わらず顔立ちからスタイルから肌質から整いすぎよ。羨ましい。」

「それで化粧は無しでしょ?」

「ずるいよねー。」



そんなの関係ねぇと言わんばかりに、女性隊員はマシンガントークで勝手に盛り上がっている。

容姿を褒めつつも妬み全開な言葉攻めに返す言葉もなく、4人は苦笑して逃げる他なかった。そのジャンルでは自分達が格上とはいえ、特に意識してませんと言えるはずもない。


とはいえ、そんな気楽なノリで羨ましさのオーラを発する女性隊員も、ハイエルフ程ではないが整った顔である。それに釣られて、またもや男性隊員がやってきた。

先程と同じく椅子に隠れたハクの姿が見えずに「合コンやろうぜ」的なノリで仕掛けてきた男隊員は、面子を見て自分の発言を取り消していた。そんな彼に対し、女性隊員は「何よ」と素っ気ない態度を見せている。


男隊員の言い訳に女性隊員がツッコミを入れていると、新たな来客がやってくる。炊飯部隊から「8492の馬鹿共が失礼を」という名目で、サービスのスイーツが届けられた。



「やるわね炊飯部隊、女子会にはピッタリだわ。」

「そりゃどーも、隊長の力作だ。さっきのコース料理とは関係ない、ガッツかずに味わってくれよ。」



ハクが好きなイチゴを贅沢に使用したタルトの一種であり、炊飯員の彼はイチゴのワインゼリータルトと呼んでいる。ハイエルフを除いて強気が多い集団とはいえ、彼女達も甘いものには目がないのが実情である。

集団の外で食事をしており会話が聞こえてきた部外者男性隊員は「女 子 ?」と疑問符が芽生えかけているが、口に出すと色々と恐ろしい事態になるために胸の中にしまい込んでいた。


女性とは、何歳になっても乙女なものである。らしい。何歳から女子を卒業するかという真相は、ホークですら触れたがらない内容だ。彼曰く、総帥の立場でも色々と危険らしい。


対象となっている今回の集団としては割とどうでもいい内容であり、女子会真っ最中の8人は元気にタルトに舌鼓を打っている。主役のイチゴにタルトの食感とゼリーの爽やかさが合わさり、夏手前にはぴったりのスイーツに仕上がっていた。

ただ甘いだけでなく果実の酸味とワインの風味も生きており、大人向けの味である。ハクは器用にフォークで切り分け、味をかみしめながら一口サイズを食していた。



「それにしても、作法と言いホントに躾がしっかりしてるわね。そのままテーブルマナーの教本に使えそうなぐらいよ。」

「だよね、ほんとに。」

「曲がりなりにも、元王女でございますので。」



今となっては、彼女は自分自身の経歴を気にしている様子はない。むしろ、「元王女だから当然です」と言いたげな若干のドヤ顔を見せている程だ。



「でも王女ってなると、男関係は結構厳しく育てられたんじゃない?総帥のお相手とか大丈夫なの?」

「グフッ!」



口にタルトを含んだ状態で「お相手」の意味を履き違えたハクは、気管にタルトの破片を詰まらせかける。手を口に当て横を向いてケホケホと咳き込み、リーシャに背中を撫でられていた。大ダメージである。

しかし、彼女と同じ意味で捉えた隊員は他にもいる。フォローと注意喚起のために、強めの言葉をかけることとなった。



「……ちょっと、こんなトコで何聞いてんのよ。」

「……あんたたち、どんな意味で捉えてるの?私は料理とか洗濯とか家事全般のことを」

「「言い方がおかしいでしょ!」」



この点においては、ツッコミを入れた隊員2名に正義がある。言葉選びとは、大事なものだ。



「は、ハク様は、ご兄弟などはいらっしゃるのですか?」



どうにもならない場の空気を換えるために、リーシャがフォローを差し出す。話題としても当たり障りないものだったために、全員がそれに食いついた。幼馴染とかも居るのかなと、やや発展した質問内容となっている。

それに答えるハクだが、兄弟姉妹は居ないものの幼馴染と呼べる類の者は3人いるとの回答だ。王女ともなれば孤高かと思っていた一行は、相槌を打ちながら話を聞いている。


3名のうち二人は双子の姉妹であり、ハクの召使として活躍していたらしい。要は専属のメイドであり、現在は王妃ハリスの専属となっているようだ。ハクを真似て髪の毛を伸ばしており、ハクより少し低い程度の伸長に、その白髪にメイド服が映える、とのことだ。

幼い頃からハクに仕えていたこともあり、彼女のことは親以上に詳しいと言っても過言ではないだろう。自分の子ですら満足に世話することができないのが、王族というものだ。



ここまでは特に問題なかったのだが、女子会連中のアンテナにひっかかるワードが出てしまう。残り一人の幼馴染が、男性だったのだ。


王族、禁断の恋、許嫁……など、ありもしない様々なワードから勝手に妄想を膨らませて表情が崩れている女性隊員と、それを見抜いているハイエルフ。どこかで暴走が始まらないかと、気が気でなかった。

一方のハクは淡々と状況を説明しており、またもや驚きの情報が口に出る。この場もそうだが夫であるホークを相手にした時すら敬語を使う彼女だが、その彼を相手する時は、自分でも不思議なものの敬語が取れていると言う。


幼馴染の彼はリャンと言う名であり、王の1つ下、大公の地位を持つ家系の長男坊。今現在においても一個騎士団を纏める実力者であり勉学にも優れ、部下達からの評判も高いエリート中のエリートだ。

例によって容姿から作法まで整っており、このまま王族ですと名乗っても恥じない程だ。欠点を探す方が難しい、万人が認める程のドラゴンである。ちなみに、彼の等級は神龍だ。


実は、彼にとってハクには大きな借りがある。5年前の戦争においては生還した数少ない部隊となっており、ハクが優先して逃がしていた部隊の1つなのだ。

そのために恩義を感じており、追放の決定がケストレル国王から下された際に、最後まで反対していたのも彼である。国のために尽くしてきた彼が珍しく国王相手に食って掛かっていた状況のために、大勢の家臣たちが驚いていたことも事実だ。


追放されてエンシェントが匿っている際にも、彼は何度か訪れている。その際に何かと理由をつけてメイドの二人を連れてきていたりと、気配りも完璧だ。

そうでなくてもハクの容態を確かめたり政略結婚を遠ざける手引きをエンシェントと共に行っていたりと、行動量も凄まじい。日頃の鍛錬と合わせて行っているのだから、自身にかかる負担は猶更だ。


これらの話を聞いているうちに、女性隊員を筆頭に困ったような表情を見せている。ハクもそれに気づき、どうしたのかと問いを投げた。



「……ハクちゃん。言いづらいけどその彼、たぶんハクちゃんに気があるわよ。」

「はい?確かに、普段から彼には良くして頂いておりましたが……。」

「あーもう違う違う、確定じゃん。彼、貴女に好意を持っていたってことよ!」

「……、そうなのですか?」



そりゃ、そうでしょ。とツッコミを入れる女性隊員達だが、全員の意見は同一だ。ハイエルフからしても、口には出せないものの本心は同意見である。

まさかの展開に思わず困惑する彼女だが、今となってはどうにもできない。珍しく驚きと困った顔をする彼女を見て楽しみたい衝動にかられた女性隊員達だが、理由と状況がとてつもなく重いために、好奇心を通すわけにもいかないのが実情だ。


そうこうしているうちに、彼女は自分の中で答えを出す。彼への感謝を忘れるつもりはないものの、当時は元気づけられたことも事実だ。そのために、フーガ国へ足を運んだ際は口に出すべきと判断した。

何を悟ったのかと揶揄われる彼女だが、受け答えもスムーズだ。男女の仲が起こすイザコザが顔を覗かせそうなものの、他の女性陣は、逃げずにまっすぐ前を向いたその答えに感銘を受ける。


口にするタルトのように甘酸っぱさが残りそうな結末が見えているが、これは彼女が進むべきと判断した道である。

イザコザが起こるならば、相手はその程度の男だったということだ。そしてホークも、この決断を否定するような人物ではない。逆に彼女が逃げていれば、やんわりと叱りを入れているだろう。


そんなカッコイイ答えを出した彼女は、リーシャやその知人こそどうなのですかと矛先を変えてしまう。思わぬ流れ弾が命中したハイエルフ一同は、根掘り葉掘りの攻撃を受けることとなった。

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