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異世界で、エース達と我が道を。  作者: RedHawk8492
第8章 様々な欲望
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9話 古参共の晩餐会

ディムースと別れた二人は、道行く隊員と挨拶を交わしながら目的の建物へと歩いて行く。日は既に傾いており、整備されていない道を歩くには日の光が乏しく思える程になっていた。


とはいえ、足元の段差は皆無と言っても過言ではない。二人が今いるエリアは整備が行き届いており、車両が行きかうために関係者以外立ち入り禁止区域となっている。すれ違う人物は、軍服に身を包んだ勤務中の隊員のみだ。

現在の交通頻度は少ないものの、数台のストライカーやL-ATVが行き来している。薄明かりでも目立ちやすいハクの服装も手伝って、運転手も道端に居るのがホークと気づくために最徐行を行うために、排ガスや粉じんの影響は皆無である。


そんな道を400mほど進むと、第二拠点CICが地下に巣を構える建物に到着した。入り口にはHK416を携行した兵士4人が交代で警備を行っており、監視カメラやIR装置による遠隔監視や入り口も一か所しかないこともあって不法侵入は困難を極めている。

もちろん、そんなスニーキングミッションなど行う必要は全くない。建物を守る兵士にID付きの身分証明書を提示し、ホークは本人確認を行っていた。



「ご協力ありがとうございます総帥、承認終わりました。ガルム少佐とメビウス少佐もお待ちです。何事かは存じておりませんが、最上階と聞いております。」

「やっぱりホールか。了解、お疲れさん。」

「光栄であります。」

「おや、総帥。お早いお着きで。」



会話中の背中に声をかけるのは、海軍大元帥のトージョーだ。どうやら彼も第二拠点CICに用事があるようで、ホークに挨拶をしながら警備兵に身分証明書を提示していた。

そうなると問題は、なぜホークが来ることを彼が知っていたかという点である。彼が無線連絡を受けたガルムの言い回しでは、会食は「古参」ということになっていたからだ。


ここでホークは、古参という言葉の意味を履き違えていたのかと理解する。彼個人の認識だが、古参となるとメビウス・ガルム・ホークの3人パーティーを指す言葉なのだ。

もちろんこれは、言い手や受け手によって対象となるメンバーが変わる言葉だ。現にガルムは大元帥クラスの3人にも声をかけており、こうしてトージョーも集まった次第である。



とはいえ、参加人数が増えようが内容に変わりはない。護衛も兼ねた見送りを終えたハクと別れると、ホークとトージョーは多目的ホールへ通じるエレベーターに搭乗した。

目的のフロアに到着すると、警備用の兵士が1分隊ほど配備されている。身内の話にしても随分と大層な警備だなと思うホークは、トージョーが開けた扉を潜り中に入った。



中に居た全員が起立し、己の軍の総大将を出迎える。10人ほどが座れるであろう円卓と呼ぶにふさわしい木製のテーブルの周囲に、先着していた5名の姿があった。

参加メンバーは、ガルム、メビウス、マクミラン、メイトリクス、エドワード。そして今到着した二人の計7名。I.S.A.F.8492を代表する、名実ともに役職と言えるメンバーだ。



ホークが席に着くと、それを確認して全員が着席する。ひじ掛けに手を乗せたホークが一同に目をやると、右横に座っていたガルムが発言した。



「予定時刻より10分程度早いが、始めさせてもらう。飯でも食いながらと思ったんだが……さて。まず皆さん、多忙のなか集って頂きありがとう。今回は俺とメビウスからの頼みになる。ホークには以前軽く話したことがあるんだが、俺たち二人をティーダの町に連れて行って欲しいのが今回の依頼だ。」



相変わらず、彼は思っていることをストレートに口にしている。個人のお願いというよりは、二人をティーダの町へ連れていくための作戦会議を開催しているような内容だ。

とはいえ、その方が作戦行動としての規律に乗っとれるために他の全員としても話が進めやすい。考える手間が省けることもあり、ガルムはこの手法を取ったのだ。


彼の言葉に最初に反応したのは、事情を知っていたホークだった。



「なんだガルム。ティーダの町が云々よりは、エスパーダとか言う奴に会いたいのか?」

「会う会わないと言うよりは、話をしてみたい。戦闘機乗りではないが、奴等は中々の素質がある。」

「その根拠は?」

「勘だ。」



戦い方は違えど空を飛び戦う者として、単に興味が沸いているだけというのが彼の中にある強い意志である。翼竜による戦闘など聞いたことすらないという点が、更に興味を掻き立てている。

互いに感情のある表情は見せておらず、淡々と会話を続けている。ストレートに本音を話す傾向のあるガルムが持っている意志の強さのレベルを、ホークが測っている状態だ。


彼が言っていることは、言い換えれば鳥の存在のネタバレである。それがホークの意図に沿わないものと知りながら発言するとなれば、それ相応の覚悟を持っているはずだ。

会話も終わって「なるほど。」と言いたげな表情をしたホークは、どうやら覚悟のほどを読み取ったようである。仲間内に迷惑をかけると知ってなお、己の意見を通したいと発言しているのだ。



「わかった。各所には、あとで指示をしておくよ。」

「あれ、意外とアッサリ。」

「普段は物静かだからね。自分みたいな下手糞も最前線でドンパチしてるし、勝手な行動禁止の条件付きなら皆も納得するだろうさ。」

「ありがたい、感謝する。」



ガルムは席を立ち、酸味が特徴的なワインをホークに注ぐ。このあとに出てくるサラダや唐揚げの類にも合うよう、炊飯部隊が選んだ一品である。

彼は軽く口につけると、マクミランに視線を向けた。彼もホークの目線の意図を理解しており、解答を口にする。



「護衛対象の増加に対しましては、第二分隊の数名を貼り付けます。装備変更でいくらかはカバーできますが中距離戦闘の火力が減りますので、緊急時はハクさんかヴォルグ夫妻の助力で宜しいかと。」

「やっぱりか。自分も考えてみたんだけど、それしかないよね。」

「ですね。タスクフォース8492関係なしに数人ほど増やせるのでしたら楽なのですが、パーティーや冒険者という管理システムがある以上は難しいでしょう。」

「そうだね。町に入るにしたって、ガルムとメビウスの立ち回りを考えなけりゃならんし……この点は、あとでマールリール辺りに聞いておくよ。」



それが一番でしょう。とメイトリクスが相槌を打ち、会話が終了。マクミランは武器選定、ホークは姉妹への質問内容を考えており、他の者の視線が自然とガルムに向いてしまう。



「飯前に終わったぞ、ガルム。」

「言わんでくれ。」



悲しいかな。前菜が届いたのは、その言葉の直後であった。



========



前菜が届くも、会話が続いているはずの会場は静寂な空気に包まれている。どれほどの重大案件を話し合っているのかと戦慄した炊飯部隊だが、オチを聞いて肩の力が抜けていた。

考え事をしていた二人も、晩餐が届いたために頭の中をリセットする。今回はトップクラスの会合ということで炊飯部隊渾身の調理内容となっており、非常に手の込んだ品々となっている。


ホークがいつもつくる料理とは、工程と工夫の質が違う。手間暇も惜しみなく注ぎ込まれており、ジャンク的なおいしさは一切ない上品な代物だ。

とはいえ、これを作ったのはその道における超エース級。ホーク程度が及ばないのも当然であり、前菜ですら食べるのも勿体ないぐらいの造形美を作り出している。



「最初から力入ってんなー。」

「久々でしたからね、ついつい。」



それにしても上品すぎるだろ、と苦笑する大元帥の面々と、まさかこれほどのものとは予測していなかった空のエース。静まり返っていた場は一気に和むも、ホークは少し残念そうな顔を見せてしまっていた。

その表情に気づいたのは、炊飯部隊の部隊長である。原因も理解しており、すぐさま内容を口にした。



「大丈夫ですよ総帥。ガルム少佐。お言葉通り、ハクさんの分も現場に用意してあります。」

「了解した。」

「ビューティフォー...」

「その配慮は有難い。」



ホークはケラケラと笑いながら、「ハクは食には目がないからな」と彼女をからかう。最近こそ落ち着いてきているものの、それでもホークが作る新作の前では子供のような喜びを見せている。

普段、自分の料理を「美味しい美味しい」と言いながら食べてくれる彼女にも、極めるという言葉がふさわしい料理を一度は体験させてあげたかったのがホークの本音だ。彼としても、顔がほころぶ彼女の姿を見るのが幸せの一部になっている。


その後、料理は予定通りに運ばれる。空軍が続けているハイエルフの捜索も2か所ほどが発見されており、現在は片方が移住を決定している様子だ。運搬に関しては、前回通り陸海軍による合同作戦となる手筈である。

他には佐渡島(仮名)の名前をいい加減に決めることや、各拠点の警備状況が報告されていた。特に大きな問題もなく、ホークも料理に舌鼓を打ちながら聞いている。


問題ではないものの大きな案件としては、陸軍にリトルバードを導入するかどうかの内容だ。


現在の陸軍には、AH-64Dアパッチで攻撃を行うシューター隊、UH-60Mブラックホークにて輸送と攻撃任務に就くノーマッド隊、MV-22Bオスプレイで高速輸送を担うフォーカス隊。そして、丸くて小さなOH-6Cフライングエッグで偵察を行うシャドー隊が配備されている。

形式名がMH-6となるリトルバードは、OH-6の後続として開発された小型ヘリコプターだ。形状はOH-6と似ており、性能においても加速・上昇速度・最大上昇高度など、ほぼ全てにおいて上位互換となっている。


検討中のMH-6M MELBは、グラスコクピットや暗視装置、統合電子システムなど最近ではセオリーとなった電子装備が満載となっており、UAV化もできる代物だ。AGM-114ヘルファイア(空対地ミサイル)、ATAS Block II(近距離型空対空ミサイル)と言った近距離におけるミサイル系統も装備可能で、火力面でも憂いは無い。

シャドー隊はこれらを組み合わせることで、電子支援、輸送、索敵、支援攻撃においてフレキシブルな編隊を組むことを目的としている。何気に長距離化してきたI.S.A.F.8492の空対空攻撃力とは、真逆を行く内容だ。


もちろん、外のヘリ部隊にとってもこれらの兵装は大きな効果を発揮する。最近は陸軍において大規模な増備がなかったこともあり、この計画は承認されることとなった。


その他、各自の進捗状況などを報告し合い、ほろ酔い程度で議会は終了。佐渡島(仮名)からの出張組は、拠点にある宿泊スペースへと歩みを向けていた。

BF3のリトルバード+専属工兵は要塞でしたね…

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