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異世界で、エース達と我が道を。  作者: RedHawk8492
第7章 Faceless Soldiers
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18話 一時帰宅

梅雨はどこへいったんでしょう…

タスクフォース8492を乗せたオスプレイの編隊、フォーカス隊は、順調に高高度を巡航中。夕焼けは星空に変わっており、若干の月明りが地上を照らす闇夜の中を突き進む。


護衛機としてグリフィス中隊とアーサー隊が飛来しており、帰宅途中だったイーグルアイも闇夜の中で対空レーダーの目を光らせていた。

I.S.A.F.8492ではセオリーながらも、最も安全と言える索敵と迎撃システムである。早期警戒の目にエース級の腕前が加われば、ほぼすべての脅威に対処できるというものだ。ホークやマクミラン、ディムースというI.S.A.F.8492においても主要メンバーが乗っている編隊なだけに、空軍も気合が入っている状況である。


そんな護衛を受けた編隊に何か起こるはずもなく、フォーカス隊は無事に第二拠点の上空へと到着する。すぐさま管制塔の許可が下り、着陸態勢に移行した。

ヘリポートに降り立ちローターの回転速度が弱まったことを確認し、航空隊は空域から離脱する。オスプレイ機外の安全が確認されると、ハッチが開いてホーク達は降り立った。



「「「お帰りなさいませえぇぇぇ!!」」」


「……またお前かディムース。」

「バレました?」

「独房、連れて行け。」

「最近お好きッスねそれ!?」

「喜んで。」

「モリゾー大尉!?」



基地のヘリポートに降り立ったホーク達を出迎えたのは、基地の住人ほぼ全て。夜間の遅い時間であったものの、欠席者は子供ぐらいのものだ。相変わらず分かりづらいネタな発言をするのは、ホークの予想通りで彼が原因である。

マクミランに首根っこを掴まれ引きずられていくディムースを横目見ながら、「何か問題ですか?」というハクの素直な心配心に応対する。よもやただのネタ発言に溜息をついているだけとも言えず、ホークは微笑みを返して集団に目を向けた。



「明日の午後からの補給作業を忘れるなよー……ん?」



ふとホークが感じる、微かな違和感。一見すると出迎えメンバーのテンションもいつも通りであり、マクミランに引きずられながらも答えているディムース達も平常運転だ。

しかし、そういう違和感こそ解決したいと思うのが彼の癖だ。彼は総帥としての立場ではなく、集団を見ている第三者の視点から改めて眺めてみると、違和感の理由が判明した。


今までに何度か今回のように集合となった場面はあったものの、その際はI.S.A.F.8492出身者、ハイエルフ組、狐族組とハッキリとしたブロックに分けられて集合していた。

それが今では、ブロックの一部が崩れて混じっている。具体的には男女のペアであり、それは単体ながらもホークも通ってきた道である。AoA時代には無かった光景に、穏やかな表情が顔を覗かせた。



《ホークより総員、出迎えありがとう。しかし夜も更ける頃だ、子供を起こさないよう早急に帰路についてくれ。以上だ、解散としよう。》



敬礼後にワイワイガヤガヤと帰路に就く集団の穏やかな光景がみられるも、仕事となれば彼個人の感情は関係ない。彼らしい挨拶と共に場を散らせたホークも、東の山へと車を走らせた。

海原と森の風景が混じる、独特の視界がそこにある。潮風ゆえに森の香は届かないが、海原に反射する月の光に森が照らされ、幻想的な光景を作り上げていた。


彼がサイドミラーを見ると、排気ガスの当たらない位置を疾走するヴォルグ夫妻。時折だが反射した光に白い毛並みが照らされ浮かび上がり、「野生で出会ったらチビるだろうな」と内心では苦笑するのであった。


ホークが運転するハクを乗せた車両は、山道へと差し掛かる。馬力控え目ながらトルクたっぷりの大排気量ディーゼルターボエンジンと荷物のない車体と相まって、ホークは極端なシフトダウンを行わずに坂道を登っていった。ローギア気味の変速比であることも、低速での力強さに一役買っている。

ハロゲン独特の温かみある光に照らされる闇は物静かで、平和な情景そのものだ。今現在では第二拠点からも離れているために、ディーゼル独特の音が暗闇の中へと木霊している。



「マスター、前方よりハティが道沿いに接近中です。」

「了解、端に寄るか。」



日本人の癖で車両を左に寄せ、彼はアクセル開度を緩めて速度を落とした。ハクと同じくハティの接近に気づいていたヴォルグ夫妻も速度を緩め、己の息子を出迎えることとなる。

なんだかんだで久々な再開となるだけに、やはり夫妻も嬉しいのだろう。犬のように鼻を押し付け合うようなことはしないが、立派な尾がやや持ち上がっている。


サイドミラーでそんな状況を確認したホークは、サイドブレーキをかけエンジンを切り、トラックを下りた。あまり長引かせるつもりはないようで、ライトだけは付けっぱなしである。

そこに浮かび上がるのは、やや灰色ながらも艶やかな毛色の大型の生き物。フェンリル王と呼ばれる伝説的な生き物でありながら、この地ではマスコットキャラクター的な存在だ。



「お帰りなさいませ、主様、ハク様。親父もお袋も、変わらずで。」

「出迎えありがとう。山に住んでるんだね、奥さんは?」

「現在両親の近くに小屋を頂きまして、そこに住んでおります。妻は有難いことに身重でして、休んでおります。」

「おや、そりゃ早く戻らないと。命令だ、先に戻って。」

「承知しました、すぐに戻ります。」



妊娠の件に関しては聞いていなかったホークは、驚きと共にハティを急がせた。フェンリルはともかくイヌ科の妊娠期間など知らない彼だが、どのタイミングで発生していようが、詮索するのはナンセンスの内容だ。

ともかく今現在がオメデタなことに関しては、彼にとっても喜ばしい事象である。どこぞの若者の所詮で「やったね〇〇ちゃん」のフレーズが頭をよぎった彼だが、咳払いでもって振り払った。


その代わりによくよく考えると、伝説レベルの生き物の繁殖環境を整えて問題ないのかと疑問の念が芽生えてくる。とはいえ人間が介入したゆえに生態系が崩れるなど今に始まったことではないために、あまり気にしないよう判断した。

また、ヴォルグ夫妻の息子の片割れ、スコルに関しては未だに情報の欠片もない。以前にハティが戻ってきた際にも「途中で別れた」の旨の話をしていたために、監視することは無粋と思いつつも、今となっては完全に行方不明である。


そのようなことを考えているうちにハティ夫妻の小屋にたどり着き、ホーク達は彼の奥さんに挨拶をする。夜も遅い上に身重なために足早に切り上げ、L-ATVは100mほど先にある家へと走り出した。

カーポートや車庫はないためにバックで家の前に車をつけると、ホークはエンジンの火を落とす。すると微かなディーゼル音の木霊と共に打って変わって静寂さが辺りを包み、足音1つも大きく響いた。


最後まで付き添ったヴォルグ夫妻に別れを告げ、ホークとハクも家の玄関へと歩いていく。「今風」な電子ロックを解除して、親子扉の親側を開いた。



「おや、今日も頑張っているのですね。」



思わず軽く笑みが零れた彼女の目線の先には、土足厳禁のため小上がりとなった居住区側の玄関ロビーを這う分厚い円盤。とあるメーカーの固有名称で言えばカタカナ3文字の名前が有名な、お掃除ロボットと呼ばれるジャンルだ。

家事負担軽減のためにホークが導入した代物なのだが、今となっては彼女のお気に入りとなっている。ホークが理由を聞いてみれば、家の主が不在の時でも時間になればテキパキと己の責務をこなす忠誠心の高さを気に入っている様子だ。それを聞く彼としても、数分ならば眺めていても飽きがこないので不思議な代物である。


軽やかなモーター音を聞きながら風呂のスイッチを入れ、ホークとハクは荷物を置きに部屋へと移動する。マットレスは敷いたままだが布団の類は片付けていたため、彼女はハンディクリーナーを使用して埃を取り除くとベッドメイキングにとりかかった。

今となっては慣れたものの、掃除用具1つに関しても便利なものだなと、彼女は手に取るハンディクリーナーを眺めている。「電気」と呼ばれる力で動いていることは理解しているつもりだが、これを魔法で再現出来たとしたら、どれだけ生活水準が上がるかを痛感していた。



『タスケテー タスケテー』



掃除機のスイッチを切ったタイミングで廊下から聞こえる、電子音。左前の車輪が脱輪してしまったお掃除ロボットが全力で助けを求めている状態なのだが、声の質が質だけに、ロボットに失礼ながらも彼女は笑いがこみあげる。

戦いの中とは全く違う、文字通りの平穏な一夜。洗濯ものの類を整理していたホークも音を聞いて廊下に出てきており、二人して笑いながら無機物の臣下を救助していた。



======



「やーっぱり家の風呂とベッドが一番だ!」

「異議なしでございますぅ~……。」



風呂場では、互いに揃ってキャラが崩壊。ホークはやたらめったらハイテンションであり、彼御自慢の露天風呂に使った途端に顔が蕩けていた彼女は、時間も忘れて長湯してしまっている。

もともと長風呂なホークも最後まで付き合っており、互いに無駄話をしながら冷やしほうじ茶が入った500mlの瓶を奇麗に飲み干していた。風呂場で飲食など聞く人が聞けば激怒な内容であるものの、この家の首席はホークである。ならば、彼がOKを出す事柄の全てが無礼講だ。


誰にも邪魔されない至福の時を過ごした二人だが、生憎と今宵は既に更けている。身体を拭いて寝間着に身を包むと、ホームである充電器に接続して体を休める家臣に別れを告げて寝室へと移動した。

数分は身体が火照っていたものの、不思議なもので冷えるにつれて徐々に眠気が襲い掛かる。マットレスの心地よさも相まって、二人の意識はベッドの中へと沈んでいった。

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