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異世界で、エース達と我が道を。  作者: RedHawk8492
第7章 Faceless Soldiers
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10話 辺境の役目

「っ!?こ、この魔力は!?ロト!」

「西……いえ、南との間の方角です、な、なに、この途轍もなく強大な魔力は!」



その頃、ティーダの町。震度2程度の軽い地揺れが発生したかと思えば、途轍もなく強い魔力が町の南西側に発生していた。

現地に居た各国の実力者は目的は異なれど今回の問題で同一に動揺し、何が起こったのかと互いに顔を見合わせている。少なくとも、彼等が生きている間にて経験したレベルの内容に収まらないことは確かだ。



「尋常じゃねぇぞ……隊長!」

「ああ。状況確認だ、急ぎ翼竜の駐屯地へ!」



口には出さないものの「もしかしたら鳥に関係があるのかもしれない」と考えている一同は、不安の裏で期待する度合いが高まってしまう。しかし、そんな陽気な思考を否定しにかかったのは、彼女たちが持つ直感だ。

今まで戦場で己の身を生かしてきた、直感と呼べる第六感。研ぎ澄まされたその感覚が、この魔力には立ち塞がるなと全力で警告を与えている。


とはいえ、彼等は西の帝国を代表する有名な翼竜騎士のメンバーだ。それが敵前逃亡したとあっては、祖国の名折れも凄まじい。そのために彼女達は、状況確認ということで空に上がることを決意する。

未体験となる魔力の規模に怯える翼竜を宥め、3人は空へと羽ばたいた。瞬間、とんでもない光景が目に飛び込むこととなる。



「ど、ドラゴン!?」



新緑の絨毯を踏みつぶし、胴体だけでも100mはあろうかという鱗を纏った茶色い塊が西南西の方角へと歩みを進めている。機敏さは無いものの図体の大きさゆえに速度は速く、一直線に進んでいた。

空に上がったエスパーダ一行は、アレが魔力の発生源なのだと瞬時に理解する。見た目も分かりやすく、種類の特定も容易な図体だ。しかし、なぜこのような地に居るかまでは推察できないでいた。



「ドラゴンだ、古代龍?ロト、わかるか!」

「か、確信はありませんが……こ、この魔力、古代神龍!?」

「冗談だろ。どっちにしたって、どこに居たんだこんな奴……。」

「まさか、北にあるフーガ国のドラゴン!?」

「いえ、5年いや6年前の戦いで戦力を消耗しているあの国が、このようなことをするとは思えません。やるとしても北邪人国が相手でしょうし、それならばもっと早く気付くはずです!」

「そうだな。とにかく追うぞ!進路によっては国が亡びる、最悪は交戦も心得よ!」



エスパーダ達は高度を取り、上空1500mから追跡を続けている。アースドラゴンは相変わらず進路を一定にとり、何かのもとへ向かうかのように進行していた。



「ん?前方より飛行物体多数……散会しろワイバーンだ!!」



突如として前方より飛来したのは、まさかのワイバーンの編隊、数にして30ほど。理由は不明だが一直線にエスパーダ達の元へと向かっており、味方である気配は微塵も無い。

幸か不幸か過去に襲われたことがあったために、対象を容易に把握することができていたエスパーダ。すぐさまフォーメーションを解除して部下を逃がすと、自身はヘッドオンで群れの中へと飛び込んでいく。


彼女はすれ違いざまに一匹の腹部にランスを突き立てるも別の個体が襲い掛かり、後方に食いつかれてしまう。集団戦では圧倒的に不利と知っているエスパーダは、なんとか個々の撃破に持ち込めるよう翼竜を操ることになる。

しかし数の差は圧倒的で、偶然にもインディとロトに食いついたワイバーンは僅かである。試すなら今しかないと考え、気になっていた1つの技を繰り出した。



「クハッ……!」

「ギャァス!!」



生命において、この機動を行う者は非常に少ない。結果として彼女に重く負荷がかかり、冗談抜きで胃が裏返りそうな感覚が襲い掛かる。Gには強い翼竜も多少の不快感を覚えることとなった。


彼女が試したのは、いつか襲われたときに彼が見せていた戦闘機動の1つ。速度域は全く違うものの、スライスバックと呼ばれる高機動のマニューバである。

機体を130度ほどの角度にロールさせて、その状態から宙返りのような機動を行い、高度と引き換えに速度を得る技である。狭い範囲の旋回を行えるうえに速度を得ることができるのだが、当然ながら負荷の大きさも比例する。


彼女にとって初体験のスライスバックだったものの、なんとか失神は回避していた。そして鳥が見せていた戦闘機動が性能(能力)にモノを言わせたものでなく実践において効果的だとわかり、彼に教わりたいという心の底で眠っていた彼女個人の感情が強くなる。


生き残る。その決意は、一層のこと強いものとなった。



========



《東北東よりドラゴンと思わしき物体が1、歩きなのか不明ですが飛ばずに向かってきております!その上空にも中型の反応3つあり!大尉、引いてください!!》



偵察班の言葉で静止したマクミランは、後ろ向きのまま早歩きで後退した。銃口は常に相手に向いており、ハクもカバー体制に飛び込めるために隙は無い。

直後、魔力と呼ばれるものを感じ取れる面々は、何が起きているのかとパニック状態だ。ヴォルグ夫妻ですら視線を至る所に向けており、引っ切り無し全方位を警戒している。それにつられて、第二・第三分隊も普段より落ち着きがない様子だ。



しかし発言者のニックは、臆することなく歩みを進めている。



「なぜ、君たちが拠点にしたティーダの町が魔物に襲われないか知っているかい?危険な深淵の森が、すぐ隣にあるのに?」



その点に関しては少なからず不思議がっていたホークだが、彼の言い回しで大筋を理解した。襲われなかったのではなく、意図的に襲われなくしていたのだと。

事実あの町は何かを封じており、魔物の類を近づけないようにしていたのだ。世界を揺るがすような大規模な戦闘だったために深淵の森に近い地で戦いが行われ、討伐が不可能と判断した者が封印を行い、悪戯に呼び覚まされることが無いよう処置を行っていた。あの町は、その事実から目をそらすと同時に管理するために作られたものである。


その甲斐あって、好戦的な邪人国も目をつけていないほどに平和な町となっている。失われたとされている古代魔法の類が効いているためであり、例えExランクでも探知できるものは居ないだろう。

それほどのものをニックが知っていた理由は、単なる故・勇者の入れ知恵である。例え古代魔法の類でも、チートの前では話が別だ。あとは己のテイマーとしてのスキルでもって、封印を解いた古代神龍をテイム下に置いたというわけだ。



「知っているはずだ、僕はテイマー。もとより、魔物を召喚して戦う者じゃない。」



言葉の直後、アースドラゴンの姿が見えてくる。彼の能力によりテイム状態になり使役されている、ハクと同クラスである古代神龍の一種だ。距離としては遥か彼方に位置しているものの、図体の大きさと色合いが視認性を高めていた。

偵察映像を見たマールとリールは、それがアースドラゴンと呼ばれる古代神龍であることを瞬時に理解した。かつて激戦が繰り広げられたという伝記が詳細に記録されていたために、彼女達でも判断がついたのである。


タスクフォース8492にも同じ古代神龍のハクが居るとはいえ、アースドラゴンと呼ばれる部類は防御型である。飛べない代わりに防御力と物理攻撃が非常に高く、彼女の攻撃ですら満足に通用しないレベルにある。一行の身近にいる古代神龍だが、それほどまでに抜きんでた能力を持っているのだ。

数秒でそのことを説明した姉妹だが、敵わないことを強く理解しているヴォルグ夫妻やリュック・リーシャ兄妹は、思わず己の主の顔を見た。



場の中で、唯一。やはり彼は臆することなく、正面の空間を見つめている。

卵の賞味期限が1日過ぎていた程度の問題とトイレの個室で紙が切れていた前代未聞の事態の差など、彼にとっては些細なものでしかない。どちらも乗り越えるべきハードルと捉えているだけであり、己や仲間の能力でもってどのように処理できるかどうか、考えを巡らせているのだ。


戦闘レベルの基準がAランク以上しか知らないことも、驚きを抑える材料の1つになっている。現にI.S.A.F.8492出身のメンバーはあまり驚いておらず、ディムースに至っては「これじゃホントのトカゲじゃん」と呑気なことを考えている程である。

とはいえ、対抗できる方法が無いことも事実だ。対戦車ミサイルは数を打てば効力も生まれるだろうが、致命傷は狙えない上に図体と比較すると手数が不足している。どうするべきかと、自然と視線が後ろを向いた。



「……そうか、では各位。あのデカブツとの戦いは、私がケリをつけよう。」



彼はいつのまにか取り出したエンシェント寄贈の黒いコートを羽織っており、目深なフードを頭にかぶっている。だからと言って戦闘能力が急上昇するわけではないのだが、これは単なる顔隠しだ。

彼等との応対にマクミランを出していただけに、ホークに対する印象が疎かになっているのである。マクミラン筆頭に第二・第三分隊の服装がこの世界では奇抜であり、現に彼等は「黒髪で黒服の人族がいた」程度にしか認識しておらず、今となっては一度見たはずの顔すらも曖昧である。



「ふっ……気配遮断のコートか。全員が顔を隠した兵士達の長……どう出るか見せてもらおうか。その前に。」



ニックが軽く呪文を呟くと、空間からワイバーンが現れる。しかしホーク達には向かっておらず、アースドラゴンの上空目掛けて上昇していった。

エスパーダとは知らないものの第三者が接近中であることを知った彼は、迎撃のためにワイバーンを差し向けたのである。30ほどの数であり個々としての能力も高く、集団戦となればエスパーダたちでは手に余る状況となるだろう。



「これで邪魔は入らない。さぁ来なよ、実力差で不利なそっちが先行だ!遺言でもあるなら、一言ぐらいは待ってやるよ!」



両手を広げてWelcomeな態勢のニック、迎撃に向かったワイバーン、そして腕を組み仁王立ちな一番弱い司令官。戦いは、新たな局面を迎えていた。

本文とは関係ありませんが、近ごろは地震が多いですね。皆様、ご注意くださいませ。

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