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異世界で、エース達と我が道を。  作者: RedHawk8492
第7章 Faceless Soldiers
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5話 お礼参り

「さて皆、長距離任務お疲れ様。無事を祝って、乾杯!」



場所は再びティーダの町の西側に戻り、シビックがオークと戦っていた付近である。間引かれたように生える木々のおかげで視界は良好で、森のような息苦しさも感じない。徒歩で林の中に移動したホークは宝物庫からピックアップトラック型のL-ATVを取り出し、荷台で細々と祝賀会を行っていた。

このL-ATVはホークが佐渡島(仮名)で使っていたもので、4輪を装備する多人数運搬用のAoAオリジナルの派生型である。乗車定員数は減っており機銃の類も装着不可能なものの、荷台に人や物を積載できるために何かと便利なカスタマイズ車両となっていた。


細々の表現が示す通り、場に出されているのはノンアルコールドリンクの類と、臭いの出ない摘みが2種類程度である。

原因としては、彼等の宿に一緒に住まうことになった西の帝国翼竜騎士、ロトによる魔力探知の痕跡が残っていたためだ。痕跡を発見したヴォルグとハクレンが警戒すべきと判断し、マールとリールも同調したために逃げ出してきた格好である。偶然にもエスパーダ一行は外出しており、ホーク達も痕跡を残すことなく町から脱出できている。「何故我々がコソコソと」と不満げな夫妻だが、オヤツを与えられて買収されていた。


なお、馬車に残された約一名も無事に合流できている。彼曰く「奇麗な川を眺めていた」そうだが、マクミラン曰く「渡れば楽になれたのに」と相変わらずの厳しいお言葉が浴びせられていた。


その他、雑談も一通り落ち着いてきたころ。ホークは全員の注意を集め、とある決定を口にした。タスクフォース8492における、分隊の編成である。

とはいえ、これは一度指示をしたことがある内容だ。ティーダの町における最初の依頼、薬草を採取した際であり、内容もその時に決定されたものから変化は無い。



「最初の依頼と同じ、ですね。」

「そうだね。マクミラン率いる第二分隊、ディムース率いる第三分隊、自分が隊長の第一分隊だ。」

「ところで総帥。奴等へのお礼参りは、いつやるんですかね。」



自分の顔の前で握りこぶしを閉じたり開いたりするマクミランは、すっかり戦闘モードに入っている。彼なりに、タスクフォース8492を狙った連中を許せないでいるのだ。

一方のホークも「平和維持活動」の名の下に盗賊の排除を計画しており、斥候を追跡して敵の位置は把握している。そのためにお礼参りそのものは実行予定であり、付き合いの長いマクミランやディムースは、ホークの考えをある程度は読み取ることができる。一種のスキルのようなものであり、ここばかりは陰でハクが羨んでいるシチュエーションだ。


マクミランの言葉で、車内に地図が広げられる。場所としてはティナの町を起点に南西に行ったところで、海沿いに切り立った崖と深い木々に囲まれていた。森の中を縫うように一本の道が整備されており、これを辿ると盗賊拠点に着くこととなる。

盗賊拠点とはいえ、相手は強力なことで有名な霧の盗賊。「お抱え」の戦闘員も多数居り、拠点に至っては砦に匹敵するような規模となっていた。木々に囲まれており翼竜騎士では気づかないレベルとなっているものの、I.S.A.F.8492が作り上げた偵察兵器一式の前では丸裸である。



「目標は盗賊拠点の壊滅と、奴隷が居れば奪還となる。今回は、第二・第三分隊での仕事を予定してる。」



人間を嫌っていたリュック・リーシャが居ることや、幼いマール・リール姉妹を筆頭にハクに汚れ仕事をさせたくない意図もあり、彼は戦闘狂2分隊の突撃を選択した。相手が知らない攻撃方法を持つこともあり実戦経験も非常に豊富で、最も効果的な部隊であることも事実だ。

その言葉の直後、むさくるしい当該おっさん'sの瞳に力が入ったのは言うまでもない。その道の最上級戦闘員は、狙撃銃を持つ手に力を入れて返答した。



「お任せください。おい、屋敷の警備はどうなっている?」

「ハッ、お粗末なものです隊長。地元のギャングやチンピラっぽい輩が屋敷を警備していますが、点在しているに過ぎないので穴だらけですね。とはいえ数だけは多いので、ステルスは難しいでしょう。」



その他箇所などの偵察結果を確認した一行は、数秒のあいだ考える。現場的な作戦内容に関するために、ある程度の回答を把握しているホークといえど、その道のプロフェッショナルであるマクミランの決定を待っている。



「そうか。ならば小細工せずに突っ込むぞ、ステルスは不要だ。」

「この手に限る。」



合いの手を入れたディムースは、満足げな表情でマクミランの手刀を受ける。「合いの手で本当のことをバラしてんじゃねぇよ」と追撃する000の数名だが、残念ながら最初からその考えしか思いついていなかったことはホークにはお見通しだ。

追撃もソコソコに、全員が銃器の再確認を行っている。サプレッサーを取り外していたりグレネードランチャーを用意していたりと、マクミランの言葉通りに隠れる気配は皆無である。屋外での戦闘が予測されるために、中距離向けの装備が多い。



「ところで隊長。一応聞いておきますが、ドコから突っ込むんです?」

「裏口なんて無かっただろう、正面だ。」

「やっぱり。それでは正面ゲートから。玄関で、お出迎えを受けなければなりませんね。」



とても戦闘前日とは思えない、陽気な空気で包まれている。ガチャガチャと音を立てて各々の武器のアタッチメントを交換しながら気軽な言葉を発する一行に、この世界出身の戦闘員は不思議なものを見る表情をしていた。

そんな空気に耐え切れず、俗にいうステルスキルの選択肢は無いのかと問いを投げるマールとリールだが、ホークは「これが、こいつらの日常だ」と回答していた。そんな彼もUAVの端末を睨んでおり、どうやら経路を探索している様子である。


経路探索は第二・第三分隊が整備を終える頃に決定され、目標地点までのウェイポイントも設定されていた。どの町や道にも干渉しない野戦ルートを選定し、彼は軽く説明を終えると、さっそく移動車両を選定した。


車両は2つが使用されることとなり、片方はセオリーながらも信頼性の高いM1126、通称「ストライカーICV」がチョイスされている。これも念のためにとホークが宝物庫に放り込んだ代物だが、ここにきて出番が来た展開となっていた。

8輪を持つ姿が特徴的であり、オリジナルの定員は2+9名の11名。しかしながらI.S.A.F.8492の兵器開発部隊は座席配置や配管などを変更させることで、車体後部に+1の座席数を確保していた。


機動力と装甲のバランスが優れており、ベース車両は兵装次第で輸送車両と装甲車両を兼ね備える性能を有している。オリジナルでは14mmの機銃弾に耐える装甲を有しており、I.S.A.F.8492では最高速度の若干の低下と引き換えに16mmほどまでの耐久性を実現している。

兵装に関してはオリジナルと同等程度で、車内から遠隔操作が可能なM153プロテクター、通称CROWS IIのみとなっている。選択兵装はM2重機関銃が搭載されており、ある程度の脅威に対処できるようになっている。


もう一両は、同じストライカーながらも形式が異なる。M1296となる、ストライカー・ドラグーンと呼ばれる車両だ。CROWSによる遠隔操作可能な武器を、なんと30mmのMk.44ブッシュマスターに換装した車両だ。トップヘビーのために運動性能が若干ながら低下するもエンジンは最新型であり、火力の強さも雲泥である。

運用テストをパスした段階でありI.S.A.F.8492においても実戦配備間近な車両だが、砲の火力は凄まじいために様々な脅威に対応することが可能となる。このあたりのバリエーションの豊富さは、宝物庫に放り込むモノにしても手を抜かないホークの性格が表れていた。



ホークがM1296、ディムースがM1126ストライカーの操縦席に乗り込み、他の者も続いて乗車が完了した。お世辞にも広いとは言えず外の視界も最悪なのだが、これは乗員を守るために仕方のない項目だ。

居住性能は微妙とはいえ、整備されていない道にも関わらず、先日まで経験していた馬車よりも明らかに良好な乗り心地である。不思議に思うマールとリールにディムースはダンパーとサスペンションの原理を説明すると、姉妹は目を輝かせるのであった。



=====



高速走行が可能なストライカーのメリットはあまり生かせなかったものの、一行は野宿予定地点のウェイポイントに到達する。目標から15㎞ほどの地点にある「穴場」であり、地形的な問題を主として、普通なら絶対に立ち入る者が居ないスポット的なエリアとなっていた。歩兵戦術を学んだホークが弾き出した、ここぞと言う他にないポイントである。

今回の夜間監視は、戦闘には参加しない予定である第一分隊のメンバーが交代で周囲監視を行うこととなっている。それはホークも例外ではなく、言葉に甘える反面で明日は実戦となるために、第二・第三分隊の者は死んだように体を休めていた。


衛星にて追っていたのか、念を入れてモーションセンサーを周囲に設置していたホークが作業を終えたタイミングでに第二拠点CICから無線連絡が飛んでくる。緊急ではないもののホークが応答すると、ガルムとメビウスが「試験飛行」という名目でホーク達の近くに来るとの内容であった。

単なる暇潰しの可能性が否定できないものの、万が一の護衛と言うことにもなるために、彼は飛来の許可を出した。もちろん鳥の存在は秘密のために、姿は見られないことが前提となっている。


そんな話をしていたら巡回開始時間になったようで、トップバッターながらも一人で受け持つホークはUAVと睨めっこを開始した。ヴォルグ曰くインスタントながらも質の良い結界が展開されているらしいのだが、魔力のないホークには読み取れていなかった。

そして担当できるのはあくまで早期警戒であり、戦闘となった場合は撃退は不可能である。しかしそこは彼らしい読みの鋭さがあるために、致命傷を負うような事態にはなら無いというのが周囲の信頼度となっている。


現に何度か魔物の接近はあったものの、彼は無事に担当時間の警戒を遂行する。時計を確認して振り向くと、ちょうど彼女が出てきたタイミングとなった。


皆が寝静まっているということもあり、互いに言葉は発さない。しかし、互いに言いたいことは筒抜けだ。


お疲れ様と、宜しくどうぞ。

それぞれ1つの意味を持つ拳が互いに合わされ、これからの数時間は、最強の守護神が皆の安全を守ることとなる。実家よりも安心できる状況で、ホークは明日に備えて眠りにつくのであった。

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