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異世界で、エース達と我が道を。  作者: RedHawk8492
第1章 腰を下ろすために
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10話 打合せ

エンシェントは、その日のうちに大陸へと戻っていった。念のため、東側から大陸に戻るよう指示しておく。今後、こちらに来る場合も同様だ。一定の速度と方角、高度を指定しておくことで、彼であることがわかるようにする狙いがある。

もっとも、いかなる場合でも航空隊をスクランブルさせる点については変わりない。ある意味、実践的な訓練だ。



「それでは、シルビア王国の偵察結果を報告致します。」



来客が居なくなった翌日、将校クラスの会議を再開する。まず初めに、空軍大元帥のエドワードが、偵察結果を説明した。


航空偵察の結果としては、女神とエンシェントが言っていることは、ほぼ間違いないと思われるレベルに達している。偵察開始から未だ一日も経っていないというのに、これである。シルビア王国では王宮兵と思われる騎士が放埓に振舞っており、痛めつけられる住民らしき姿が多々確認できた。

被害者が男性ならば、まだマシである。対象が女性の場合は……言葉にするのは止そう。その場合は偵察も打ち切っている。ともかく、下種の言葉が相応しい。いや、放送禁止用語レベルが妥当だ。



「以上の結果より、現在のシルビア王国の情勢は荒野……いえ、無法地帯に等しいと考えられます。」



AoAで行っていた会議のノリで『荒野のウェスタン』とか言い出さなくてホっとした。面子はいつもと変わらないとはいえ、流石にそんな空気じゃない。

これらの報告を得て、勇者討伐とシルビア王国の解放は正式に決定する。その後、出撃予定部隊などの話が出てきた。元々情けをかける予定はなかったが、なんだかオーバーキル気味に話が進んでいくのは仕方ない流れだろう。


2時間ほどの会議の末、書記の兵士が決定事項を纏めてきた。上空偵察の写真をモニターに写し、情報を書き込みながら再度の確認を行っていく。実際の地図を使用することで、全体的な流れも把握できるのだ。第二次世界大戦では中央管制室などと呼ばれていた時と同じ手法だが、現在でも通用する方法だ。



「じゃあ、進軍に向けて地理と作戦内容を再整理する。」



ある程度の内容がまとまったとことで、自分はそう切り出し、決定事項を時間軸に沿って読み上げていく。


シルビア王国は、北側に山脈を抱えた国家だ。地球で言うところの中国とベトナムの国境付近に位置し、付近で一番近い国家は、西側の国だ。距離的には120km程離れている。その国から馬でシルビア王国に進軍となると、早朝に出たとしても3日はかかるだろう。つまり解放に向けた戦闘は、3日以内に終わらせなければならない。とはいえ8492の過去の実績からいくと、解放までに半日もかからないような気がするが。


決まった作戦内容としては、東西と南の3箇所での行動に分類される。王国の東西と南には門があり、南が一番大きい。そこからは大通りが王宮前の広場に延びており、進軍可能なコースとなっている。南門から真南に延びる5kmほどの道を辿ると港町があり道中も付近に森はないため、部隊を隠しておくことは難しい。

勇者が居る王宮は王国の北に位置し、背後は門のない高い城壁が聳えている。山脈との距離も近く、ここに軍を展開することは難しい。そのため、セオリー通り3つの門から入ることにする。東、西、南の順番だ。



■東門

東門の先500mには森林が広がっており、ここならば部隊を隠しておける。距離も近いため、M1戦車部隊30両を配置した。ヘリ部隊を複数配置し、シューター1-1が直々に率いるエース部隊に援護してもらおう。

襲撃の際は先陣を切ってもらい、敵の注意を引き付ける。恐らく、敵の翼竜部隊も上がってくるだろう。翼竜を郊外付近に誘き寄せる事で、街への被害を最小限に留める手はずだ。何処まで上手く行くかは不明だが、被害が減ることは確実だ。


■西門

西門の1km先には森があり、そこから草原を回り込むと南門に到達する。西門の担当は戦車部隊10両と、武装したストライカーによる車両部隊だ。

東門よりは火力が低いが、門そのものが大きくないため、この程度で良いだろう。M1戦車には及ばないが、105mm砲が搭載されている型のストライカーの火力も侮れない。この部隊に第一歩兵師団のブラボー歩兵連隊4,250名を付け、攻略してもらう。


■南門

一番大きい南門の担当は、グリズビー1-1を筆頭としたM1戦車10両と、第一歩兵師団のアルファ歩兵連隊、チャーリー歩兵連隊の合計7,000名。規模が大きい割りに機甲部隊の護衛が少ないが、ここは到達までに一番時間がかかる。そのため、航空支援攻撃の出番だ。

奴等なら15分もあれば制空権を確保しているだろうし、GBU-39を積んだ部隊とA-10も出撃するため、何とかなるはず。15分じゃ無謀だって?ははは、あの化け物二人が居るんだし、その点だけは確約さ。


■タスクフォース000

北西の山脈に、ノーマッド隊からヘリボーン(ヘリからの降下)。狙撃地点を捜索、実行を待つ。




そんなこんなで、各門担当者との細かい打ち合わせも終了。実際の判断は現場指揮官に任せるとして、大まかな流れは共有した。


実際の戦闘では、現場指揮官が状況を判断する。全員が優秀な元プレイヤーであり、安心して任せられる。判断力と実力の両方が高次元で備わっていることもあり、詳細な作戦内容までは指示しない。その方が、彼らの能力を最大限に発揮できるからね。

特に空の連中は、その傾向が強い。自分等のような将校クラスでは、思っても見ない方法で攻撃を行うことが多いのだ。



こうして、今のところ自分ができる準備も全て終了。基本プランのみだが、情報共有も完了した。

タスクフォース000は本日の深夜より出撃。山間部にて潜伏、狙撃地点の確保が任務だ。連絡が入り次第、第一歩兵師団、及びストライカー輸送部隊が出撃。いつものヘリ部隊と、50の車両数からなるグリズビー戦車大隊も同時に出撃する。


輸送に関しては海軍の輸送部隊に任せるのだが、輸送後の戦車部隊の潜伏場所は協議中である。偵察隊からの資料では、あまり良さそうな場所がない。戦車部隊に戦いを挑む動物は居ないのだが、この世界では動物ではなく魔物である。いつ何時襲われ、位置が露呈するとも限らない。

そうなれば、勇者の暗殺は難しくなるだろう。それだけは、絶対に避けなければならない結末だ。



========



完全に日が落ち、日付が変わる頃。自分はヘリポートにて、部下を激励していた。

周りには数人の隊員がいるが、大手を振って送り出す雰囲気ではない。



「……気をつけてな。」

「……ええ。己の命を最優先とし、必ず攻撃目標を暗殺します。」



ヘリポートで短く言葉を交わし、タスクフォース000は、ノーマッド輸送隊と共に空へと消えていった。

いつもは遠足へ行くノリで送り出していたが、今回だけは状況が違う。必ず目標を達成して欲しいし、必ず生きて戻って欲しい。




これで、賽は投げられた。自分も自分なりに、できることを進めよう。昨日も同じことを思ったが、何時も通り、毎日やっていることだ。


目標達成の日まで、そう長くはない。

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