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異世界で、エース達と我が道を。  作者: RedHawk8492
第6章 ランク:E
126/205

16話 侮った結末

《(今更ですが)今日は俺の誕生日だ。勝利をプレゼントしてくれ。》

とネタで事前に書いていたのですが、まさかの勝利以上のプレゼント……

近接戦闘のやべー奴、ハクのイラストを頂戴致しました!


本話の最後と、後ほど設定資料の方に記載致します。絵師様(ツイッターID:a_0159様)、本当にありがとうございます。

*本当に偶然ですが、カタカナ平仮名の違いはあれど本話で登場するキャラクターと絵師様のハンドルネームが被っております。しかし、全く関係はございません。


また、本日を持ちまして1周年を迎えることとなりました。ここまでこれたのも読者の皆様のおかげです、ご愛読の程本当にありがとうございます。

拙い文章ではありますが、今後ともよろしくお願いいたします。

【視点:3人称】


「リーダー、こいつら―――」

「チッ、どこで入違った……厄介なのに出くわしたな。」



盗賊の一人が確認がてらに呟き、リーダーと思われる人物が舌打ちする。焦りからか盗賊の全員が腰をやや屈めて前傾姿勢になっており、前にも後ろにも瞬時に動ける姿勢を取っていた。そんな盗賊集団の目線は無骨な灰色の鎧に身を包む一人の騎士を捉えており、次に行われる行動を注視している。

直感的に剣を抜いていた騎士は囲まれる前に突撃しようとしたが、まさかの相手に3歩目で足が止まってしまっている。霧の盗賊団が掲げる文様は彼も知っており、その文様を持つ集団が目の前に展開しているのだ。実力は非常に高く勢力や襲撃方法すらも情報が乏しいために、迂闊に護衛対象のもとから動けない。


その騎士の名は、アルツ。体格も良ければ貴族出身であり、20歳後半ながらも剣の道一筋であるカタブツだ。ベース顔ながらも例によって鼻筋が通っており顔のバランスも良く、中性的とはかけ離れているが男前のイケメンである。

Sランク冒険者に匹敵する実力を持つと言われている騎士であり、鳥が出現した報告を受けて、商人の護衛を表向きな理由としてティーダの街へと歩みを進めていたのだ。「あわよくば鳥と同盟の類を結べれば」と国王から全権を託されている、文武ともに優れるエリートかつエース級である。しかし何分カタブツのために一抹の不安を国王以下外交担当が抱えているのは、人知れぬ秘密となっていた。


ちなみに彼の仕える国は、現在「シルビア王国」となっている。エンシェントドラゴンの指示の下で進軍したディーノという国お抱えの、凄腕騎士だ。ホーク達が解放してしばらくした後、シルビア王国へと配置転換されていたのだ。

義に厚く、性格は冷静沈着。それでいて剣も弓も馬術でさえも国内トップ、かつ世界屈指の能力を持つ。見てくれも大柄で堀が深く、まるで神話に出てくる勇者を具現化したような存在だ。



実はこの男、性格だけを見れば特定人物以外に接する時のメビウスによく似ている。彼をホークに会わせて10分後に感想を言わせれば、「戦闘機に乗れなくて剣持ってるメビウスじゃん」と言いかねないようなレベルだったりする。

互いの戦場は、大空と大地。戦闘機乗りを「騎士」と表現するエースパイロットも居る程だが、戦闘機が武器であり乗り手が兵士である以上、2つを似通って表現しても違和感がないのだろう。



そんなことはどうでもいい盗賊からすれば、目の前に居るのは襲う予定の無い馬車である。ホークが警戒して馬車をわざと遅らせたことにより出発と通過の順番が逆転しているのだが、盗賊と騎士がそれに気づく切っ掛けは皆無となっていた。ギルドの計らいで同行した馬車がおり、結果として騎士が守る馬車が2台あったことも、カモフラージュ率を上げる要因となっている。


内心慌てふためくそんな盗賊もまた、冒険者換算でAランクに等しい者が集う有名かつ実力を伴う集団だ。元勇者軍が滅ぼされた西側を警戒しつつ、また手付かずだった地域の多い東側に勢力を伸ばそうと侵攻してきているのである。

この地域は金目の物こそ少けれども、農作物の類は豊富にある。換金の手間が面倒な彼等からすれば、「仕事」の一定割合にこのような地域を含めたいことは道理となっていた。


出立順番を把握して計画を練っていた盗賊だが、襲撃が予知されたことはこれが初めてである。加えて予知された時の対応など想定にしておらず、襲った相手が有名なSランクの騎士とくれば、混乱度合いの高さは猶更だ。



「―――わかってるな。」

「ええ。」



戸惑いは隠せないながらも、いつまでも膠着してはいられない。このままでは均衡が続き、やがて第三勢力が現れかねない。その勢力が自分たちに味方する可能性は低いため、盗賊一行は戦闘陣形を作るべく展開した。

盗賊リーダーが考えている戦闘方法は、一斉突撃。一番に確実性がある反面、この状況ではそれ以外に考えられない戦術だ。

元より情報を残さない故の強さを誇るために、撤退の二文字はあり得ない。相手の強さに脅え屈することがあれば、霧の盗賊団と恐れられる仲間の名誉が消滅するのだ。



相手の気迫はアルツ達にも通じ、騎士の一行は正念場がきたと身構える。隊長格のアルツも剣を握る手に力を籠め、馬車前方の広いエリアを警戒することとなった。Sランク故に広域を担当するものの数の暴力を相手には手数が厳しく、手数不足と言う最悪の状況下ではどの攻撃を通すか、瞬時に見極めようと表情にも力が入った。


対峙する盗賊団が一斉に剣を抜き、構えを取る。あとは数秒後に放たれるリーダー格の合図でもって、ソード同士による近接戦闘が開始されることになるだろう。相手が突撃してくるであろうタイミングを計ったアルツは、瞬発力を生むために一層腰を低くした。



風船の破裂するような音と共に盗賊リーダーの頭部が粉々に砕け散ったのは、その瞬間である。相手も一流と思われる防具を身に付けているものの、そのような防御は関係ないかのごとく結果を晒しだしている。

騎士達の目の前で起こったソレを確認してから一人を除き全ての相手が倒れるまで、数秒程度しか経っていないだろう。盗賊の頭部が次々と、文字通り風船のように炸裂し、残った胴体が地面へと倒れこむ。


自動装填機構により弾丸が装填されるM82とM14EBRの利点、そして己の腕前を生かし、8492において最強の狙撃主二人が連続で長距離射撃を実行したのだ。


通常ならば600mの距離となると照準を再調整しなければならないが、二人にとっては至近距離に等しい程。トリガーを引く度に左右上方へと暴れる銃口やストック越しに肩へと伝わる射出の反動を腕力と腰の重心移動で調節し、毎秒3発という高レートにて弾丸を発射している。射出後の銃身がどこにブレるのかと最大ブレ幅を経験則にて理解しており、己の身体を動かすことで照準の補正を行っているのだ。

よって4-5秒もあれば盗賊全員を壊滅させることは可能なのだが、彼等は盗賊のうち、わざと一人を残した。ホークの指示に有った内容で、襲撃された騎士が情報を聞き出すためである。攻撃側からしてもあっというまに孤軍奮闘となった盗賊が武器を投げ捨てたことを確認すると、二人はスコープから顔を離し、リロード動作を行った。


その顔は、攻撃前と変わらない。射撃時に息を止めていたためにやや深めの呼吸を行う動作こそあったものの、その表情は「当たり前」と言いたげだ。



掩護射撃を受けた騎士達一行は、これが何者かによる攻撃であることは理解できた。しかし炸裂音が銃弾の着弾音であることは理解できず前代未聞の出来事であり、手法や該当勢力は予想することすら不可能である。

放心状態ながらも残った盗賊を拘束する騎士の部下だが、先ほどの攻撃が自分たちに向けられれば壊滅は必死である。すぐさま馬車を全速力で移動させ、隣町までの旅路を急ぐのであった。



======



ダンジョンの時とは違ってサプレッサーがないために、本来の銃撃音が山々に木霊する。森林に囲まれている状況だというのに、その音は力強く木霊した。

戦闘機が奏でる轟音とは、また志向が違う類の轟音だ。耳をつんざく点は変わらないが、炸裂音と同時に謎の黒い杖からは薬莢が排出され、地面へと落下していった。


その間、僅か3秒程度。マクミランのM82はマガジン内部の弾薬を1発残して全て掃き出し、ロボットアームばりの速度と精度の動作で行われるリロード作業を受けることとなった。装弾数が多いディムースのM14は更に残弾があれど、リロードに関しては同様である。



「グーンナイッ。」

「攻撃終了。ディムース、報告を。」

「イエッサ、キル・コンファーム。ターゲット群を排除、1名残して頭部損失を確認。それにしてもEBRと同じ発射レートとは、流石ですね大尉。」

「お前もだ、ディムース。マクミランもそうだがよくやった、流石に朝飯前だな。」



二人はリロード後に再び構えをとるもホークの攻撃終了報告を受けて構えを解き、セーフティーをかけた。同時に部下がマガジンと念のために薬莢を回収し、完全に交戦体制が解かれている。

狙撃手は互いに右手拳をあわせ、その後、ホークや隊員達とも同様の動作を行った。ちゃっかりノってきたハクやハイエルフ兄妹とも同様のことを行い、後にヴォルグ夫妻ともコミュニケーションを行っている。その顔に人を殺した罪悪感はなく、苦悩の色は見られない。



UAVの画面を見ていたものの、何が行われたのか分からずポカンとした表情をしていたマールとリール。とりあえず、「攻撃」が終わったことは理解できていた。その結末だけは、素人の二人が見ても明らかである。

自分達の知識などまるでアテにならない、息をするように行われる前代未聞の攻撃。明らかな味方ながらも恐ろしい感情が芽生えると同時に掛けるべき適切な言葉が思い浮かばず、とりあえず姉妹は拍手で応答するのであった。


そんな姉妹の状況を見たホークは「今更だけど、実は自分も同じ感想なんだ」とは言うに言えず、隣町までの作戦を練っている。彼にとってはこのような神業も「当然」の部類に収まっており、いちいち気にしたり驚いて居られないのも実情だ。



誰一人として帰らないことを察知した霧の盗賊団が斥候を派遣し作戦失敗を知ることや、その報告を聞いたワーラが更に怒り狂うこと。その斥候を送る戦術をホークに読まれており、結果としてアジトの位置が露呈してしまうこと。

世界で初めて霧の盗賊団の一味を生け捕りにしたSランク相当騎士のアルツが、襲撃してきた盗賊一行を討伐し一人を拘束するというヒーローにでっちあげられるのは、近い将来の話である。

*イラストは設定資料集へ移動しました*

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