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異世界で、エース達と我が道を。  作者: RedHawk8492
第6章 ランク:E
119/205

9話 鳥を訪ねて...三千里なんて近所です

【視点:3人称】

ホーク達がティーダの町からティナの町へと物資を運搬するために、日の出と共に出発してしばらく。入れ違いでティーダの町郊外へと着陸したのは、1日おきに町で休憩しつつ大陸横断飛行を行ったエスパーダ隊の3人と随伴の5人だ。最後は夜明け前に出発して4時間ほど飛行し、到着となっている。

数々の町を中継となると方位決定が重要となるが、この世界においては初期の方位磁針とそれに基づく地図及び航路情報が軍用化されている。箱の中で棒状の磁石を吊り下げている程度のために静止状態でなければ使い物にならず、尾びれを付けても高性能とは程遠い。それでも宿などで使えば北と南の位置ぐらいは割り出すことができ、町と町の移動においては十分なスペックだ。いつかホークたちが探知した大陸中央で行われている謎の会合の移動にも用いられており、数年後には一般に普及する気配を見せている。


そんな技術を駆使して長旅を終えた一行は門の外にある草原に着陸するも、突然の襲来にティーダの町を警備する兵士達は大いに困惑していた。ホーク達を送り出した老兵を筆頭に、「まさか翼竜騎士を派遣する国があるとは」と、驚きの表情を隠せない。


それもそうだ。翼竜騎士とは、この世界で言うところの最新鋭兵器。邪人国が開発した機竜があるものの、それでも一般兵からすれば雲の上の存在だ。割り当てられるのは文字通りのエリートであり、連動して社会的な階級も非常に高い。

そんな存在が8人も来た上に、文様は有名な西の帝国。抱える事情の大変さはこの地方の人間でも知っているほどに有名であり、そんなところから重要な戦力を8人も送り込んでくる本気度合いに、老兵一行は恐れ戦いていた。


この光景を見て開いた口が塞がらないのは、他の国からの使者も同様である。各々の目的は偵察だったりエスパーダと似通っていたりと様々だが、翼竜騎士を送り込むほどの覚悟ではない。もちろん、それには然るべき理由があった。

ホーク達で言うところの、軍隊の派遣に近いのである。8人では到底軍隊とは呼べないものの、他国にて戦闘機で活動を行うようなもの。政治的な根回しも国のトップレベルで必要である上に、一歩間違えれば、そのまま戦争が始まってしまう危うさも兼ね備えている。


実のところ、今回の場合は彼女たちの行動が早すぎてティーダの町の役人への連絡が間に合っていなかったりする。

後にこの点は大いに改善され、手順が見直されることになったのは結果としてお笑い種だ。



皇帝陛下からは立ち振舞いに関して特に何も言われてはいないものの、自らの行動の危険さを実感しているエスパーダ一行は、地上に降りて翼竜と共に門の元へと歩み寄る。乗ったままで眼前に着陸しない点は、警戒を緩めてもらうためだ。

そして、互いの集団が接近する。門兵たちも全員集合の様子を見せており、ホークが来た時のような光景が作り上げられていた。



「お、おい。あの赤髪、まさかあのエスパーダか!?」

「馬鹿野郎呼び捨てすんな、他国の騎士様だぞ!」

「す、すいません。いや、ホンモノを見るのは初めてでして……。す、すげぇ美人だ。」

「だからその気安さを捨てろっての!!」



こういう場に慣れていない地方の若い兵士は、緊張と驚きのあまり思ったことを口にしてしまう。咄嗟に上司らしき中年兵士がお叱りを入れるものの、言葉と言うものは取り消しができないために質が悪い。

そして厄介なことに、このやりとりは恐らく彼女に聞こえている。相手方が静かだったこともあり、どう返されるものかと、内心冷や汗ものだった。万が一でもクレームが入れば、彼等は何かしらの罰則を受けてしまうことになる。



「美人とは嬉しいな、お褒めに預かり光栄だ。私はエスパーダ、知っての通り西の帝国から派遣された翼竜騎士だ。後ろは私の部隊と同業だ、8名暫く世話になる。」

「は、はぁ。」

「国内での飛行、行動などは我らがエラルド皇帝がそちらの国王と協議済みだ。追って連絡があると思う、ややこしい取り決めは報告を見て把握してほしい。」



エスパーダがこのような発言を行ったのは、警備兵一行が難しい話を判断できる状態ではないと感じたためである。加えて彼女自身も政の絡む話は苦手であるために、この手の話は早々に切り上げたかったのだ。


また彼女たちを運んできた翼竜も、連続飛行と言うことはないがスケジュールを詰めに詰めた日程だったために、疲労困憊が目に見えている。とはいえ8頭の翼竜もこのような極東の地に来ることは初めてであり、西端とはまた違う景色や気候に目を輝かせていた。

それも一段落した時、誰となく、ふと疑問点を呟いてしまい全員が同意する。「来たって事は帰りもあるってことじゃん」と絶望に暮れる翼竜一行は、各々の主に見られぬよう頭を垂れるのであった。



==========



「なーんか所々に知った顔があるな。どこの国も、考えは似たようなもんか。」

「当然だろう、あのシルビア王国を開放した謎の集団が久々に姿を現したのだ。興味があれば、自然とこの町にやってくる。」



視察もかねて町を見渡す一行だが、鳥目当ての使者の中にはエスパーダ達が知る他国の者も何名かが居るらしい。当然逆も然りで、彼女たちを見た当該人物は「なんで居るの」とばかりに驚いた表情を見せつつ会釈していた。


なんとか翼竜の駐屯地を確保した8名は、挨拶がてら町長と冒険者ギルドを表敬訪問。まさかの人物の襲来にどちらも慌てふためくのはテンプレート通りであり、オモテナシをどうするかの会合が緊急で開催されていた。

一番の問題であった肉不足を解決した上で、新たに発生した物資輸送に関しては期待のタスクフォース8492が担当しており、彼等を追いかけるかたちで、ティナの町の町長も先ほど門をくぐっていた。村としては、増え続ける来客と言う名の各国の使者達をどうもてなすかが即急の課題となっている。


ホーク達が来た時もそうだが、そもそもこの町には宿が少ない。加えて来賓が泊まるような豪華な宿は皆無であり、普通の宿に関しても既に満員御礼の状況だ。会合に出席している中間管理職年代の人員は頭痛に頭痛を重ねており、今回でトドメを刺された形である。政治的にも実力的にもヤベーやつが、最後にヒョッコリと現れた状況だ。

誰かが、深いため息をついたタイミング。これにより一度思考回路がリセットされたのか、ある一名が打開策を思いついた。



「そうだ、タスクフォース8492が泊まっている宿だよ!あそこなら3部屋の空きを使えば9人は宿泊できるし、料理の腕も見違えて上がってるじゃないか!」

「おお、空き部屋に関しては把握していないが料理に関しては同感だ。それが我々にできる最善だろう、説明すれば納得してくれるはずだ。」

「これで文句言われたら、流石にこっちの国王経由で苦情を入れてもらいたいもんだぜ。田舎町に騎士の集団様、どうしろってんだ。」



まったくだ。と全員が一致団結し、苦笑がてらに準備を進める。宿泊部屋の準備に関してはすぐに整い、時計などないものの時刻は11時30分と言ったところ。旅路の疲れを癒すとのことで、さっそく料理が振舞われることになった。

オモテナシに関する事情を説明されたエスパーダ一行だが、「押しかけたのはこちらだ構わない」との言葉を従業員に掛けている。融通が利く人物ということで安堵した宿の店員は、さっそく配膳作業を行った。



「む?」

「おっ?」

「おや?」



配膳作業も終了し料理を口につけたタイミングで、翼竜騎士一行はレベルの高さに驚いた。押しかけたとは理解しつつも心のどこかで「所詮は田舎町の民の宿」と思っていたところに、不意の一撃を食らった状況だ。

俗に言う「旨いもの」を食べ慣れている騎士階級の彼等でも、この一手間は未知の味となっている。食材そのものに関してはどうしても庶民感が顔をのぞかせるものの、美味と言う上品な言葉では言い表せないおいしさを、しっかりと感じ取っていた。


幸いにも店主がホークから学んでいたのは、疲れが溜まった肉体労働の冒険者の渇きを潤す料理。ようはスタミナ回復系の肉料理なのだが、濃いめの味と塩気が疲れた体に染み渡るのは階級関係なしに共通のようである。


言葉数少なく料理を堪能し平らげた一行は、さっそく部屋に入って休むことを決断する。疲れが溜まっているところに先ほどの料理が出されたために、料理をエネルギーに変換しようと、身体が休憩を欲しているのだ。こうなると、部屋への移動もダルく感じてしまうレベルである。



「あれ?」



とある部屋の前に来た時に違和感を覚えたのは、魔法を得意とするロトだ。見た目は何の変哲もなくただの木のドアがあり、宿の一室と分かる程度の感想しか生まれない。ランスにて戦うエスパーダとインディも、何事かと問いかけた。



「あ、いえ。ほんの少し、魔力の流れに違和感がありまして。気のせい程度です。普通と言われれば普通のような気も……。」

「……そうか。だがロトが言うのだ、何かしらあるのだろう。店主、この部屋は?」

「ああ、そこですか。タスクフォース8492というEランクの冒険者パーティー様が宿泊している部屋の1つです。珍しいことに2頭のホワイトウルフ連れでして、そのウルフ2頭が宿泊している部屋ですね。」

「ホワイトウルフ?ということはテイマーが居るのか、それほどの者は珍しいな。」

「でもよ、なんでホワイトウルフを飼ってる程の奴がEランクなんだ?」



さぁ?と答えるエスパーダだが、その回答は本心だ。チラっと店主を見るも、「最近、冒険者になられたばかりのようで」程度の回答しかなく、詳細までは謎となっている。訪問客増加のために消費が加速しているラールキャトルの件は伏せており、この功績が彼女たちに知られることはなかった。

店主が説明するタスクフォース8492という集団は謎が多いものの、聞いているだけでも怪しさも満載だ。見たことのない服装のむさ苦しいオッサン集団に交じるホワイトウルフとエルフ、狐耳の亜人。どう見ても通常の集団には該当せず、エスパーダの好奇心を掻き立ててしまっている。



「まさか、鳥と関係があったりしてな。」



笑いながら呟くインディと、つられて笑う翼竜騎士一行。流石にそこまで都合の良い話は無いだろうと考えを否定してしまい、それぞれの部屋で体を休めるのであった。

P.S.

いつも誤字脱字報告ありがとうございます。とても助かっております。

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