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異世界で、エース達と我が道を。  作者: RedHawk8492
第6章 ランク:E
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8話 入れ違い

明日はSteam版エスコン7発売日ですね!特権に対してやや高値なのが気になりますが。。。

【視点:3人称】

「みんなおはよう。いや、こんばんわ かな?」



各々の用意が終わり、日付は翌日。おはようと言うにはまだ早い、朝日が昇る気配も無い時間帯。

ホークの挨拶に返答するタスクフォース8492のメンバーの顔色は、通常通り。睡眠不足という表情をした者はおらず、深夜2時ごろから偵察任務を行っていたメンバーにも疲れの色は伺えなかった。



「偵察班は夜勤明けお疲れさん、その他はよく眠れたかな?」

「総帥、偵察部隊に関してもご心配なく。こいつらは交代で4-5時間は寝ていますよ、問題ございません。」

「そうか、了解だ。それじゃ、まだ暗いけど出発前の打ち合わせを始めるよ。」



まだ日も登らぬうちに、一行はホークの部屋に集合していた。

LED特有の人工的な光が部屋を照らし、太陽光ではありえない不自然な影が出来上がっている。最初はそんな光景に慣れなかったこの世界の出身者も、今では違和感なく受け入れているようだ。


いつもの調子でホークの前に陣取る一行は、ホークの軽い敬礼に対し同様に応える。唯一横に並ぶハクを除いて、彼は全員の表情を確認した。



「昨日も言った通りだけど、今日からは遠征任務だ。内容は資源物資の輸送、行きと帰りだね。例の懸念事項もあるから、何かあれば躊躇なく意見を言ってほしい。」



襲撃される可能性に関しては、例の事項ということで共通の隠語となっている。本来ならば「らしい」隠語になるのだが、不慣れなメンバーが混じっているために、この言葉で落ち着いていた。



「荷物用の馬車と人員運搬用の馬車は、それぞれ冒険者ギルドが用意している。それじゃぁこっちも、出発前に準備状況の確認だ。まずは偵察、どうだろう。」

「報告します。偵察用グローバルホーク2機、上空17000メートルにて旋回待機中。偵察映像やDASシステム共に異常なく、いざとなれば偵察衛星も使用可能です。しかし総帥、少し離れたところに3機目のグローバルホークが居るのですが……。」

「あ、ゴメンあとで言おうと思ってたんだ。個人的に呼んだだけだ、気にしないで。」

「イエッサ。」



どうやら予定にはなかった3機目のグローバルホークが居るようだが、システム面においてはオールグリーンで問題なし。偵察用の2機は編隊を組んで安定した低速飛行を見せ、肉眼では確認できないが、ホークたちの上空を旋回している。


通常のカメラのほかに、ハイエルフ救出作戦でホークが要請した歩兵スキャンを実施するための生命反応探知装置やIR系統、暗視装置も充実しており、非常に細かい偵察活動が可能となる。高度1万メートル以上の上空から、眉間のシワの数をカウントできるほどだ。

その代わりに、攻撃に関する装備は一切無い。防御用にフレアとチャフの装備がある程度だが、この世界においてはそれも役に立たないだろう。


ホークの予測が正しければ帰路において盗賊が仕掛けてくることになっているが、居たとしても、まさか上空2万メートル付近から監視されているなどとは微塵にも思わないだろう。この世界における常識外の偵察も、せいぜい翼竜が飛んでいる3000メートルが関の山だ。

更に加えて盗賊が目標とするであろうタスクフォース8492の中にExランクの匹敵する人員が複数いるなど、輪をかけて想定されていない内容だ。手を出せば瞬時に蒸発してしまう相手だとは、ギルド職員を含めて敵も味方も全く想定にしていない。


そんな桁違いの戦力を持った一行は、通常運転そのものである。会話内容はさておき、調子としては、旅行前の打合せとほとんど変わらない様子である。

リュック・リーシャ兄妹とマール・リール姉妹がやや緊張した面持ちを見せているものの、こればかりは仕方のない話だろう。住めば都ということにはならないが、慣れが出てくれば肩の荷も下りるはずだ。



「続いてマクミラン、火器による迎撃態勢はどうかな。」

「ハッ。長距離は俺とディムースが受け持ちます、武器選択はいつも通りです。中距離ではHK417が2分隊、残りが短距離をヴェクターで受け持ちます。偵察担当は、緊急時にP320を使用する予定です。その他、対戦車ロケットなどは適宜装備しております。」

「うん、8492の定石だけど一番いいね。さてハク、残りの皆はどうかな?」

「はい。近接距離による戦闘は私とリュック・リーシャ、ヴォルグ・ハクレンで受け持ちます。マールとリールはそれぞれの馬車の操作です。ヴォルグとハクレンはホワイトウルフで通っているので、基本として攻撃しない手筈です。」



了解したホークがそれぞれの目を見ると、全員が軽く頷いて同意した。これにて一応、各々の役割は確定である。

しかし一名、通常ならばネタに走る人物は気になる点が出てきてしまう。空気が重くなりすぎたこともあり、疑問点に対する回答内容とそれに対する全員の反応も予測できたために、彼は疑問点を口にした。



「ちなみにですが、総帥は?」

「飯担当。」

「「「「「異論ありません。」」」」」



このような場面において、「司令官」と返さないのがホーク流である。ディムースの発言の意図を読み取っているからこその発言だ。


そしてあまりにも揃った同意の言葉で、ワンテンポ置いて場がどっと笑いに包まれる。人による程度の大小はあれど張り詰めた空気になっていた場面は、これにより解消された。I.S.A.F.8492らしい軽さであり、緊張からくる判断ミスを阻害するノリである。

この世界の基準からすればあり得ない光景なのだが、タスクフォース8492のメンバーはこのテンションに慣れてしまっている。まだ慣れきっていないマールとリールも、互いの肩の荷が下りたのを顔を合わせて実感していた。



「いい空気なんだけれど時間だね。それじゃ、今から作戦開始だ。総員、警戒態勢。」

「「「「「ハッ。」」」」」



和気藹々のままだとチャラけた連中だと受け取られてしまうために、表情だけは引き締めて、一行は冒険者ギルドへと進んでいく。ホークの命令により、全員が警戒態勢だ。

道行く道路、人物、そして物陰。パーティーメンバーを除くすべての要素に注意を配りながら、全員がホークを護衛し列を成す。


以前にオークキングを発見したDランクの冒険者も隊列を見たのだが、一行が並大抵ではない鍛錬を積んでいることは理解できる。ラーフキャトルの討伐など、今までに与えていたイメージの影響もあり、アレが本当にEランクなのかと脳内で疑問符を巡らせた。

とはいえ以前ホークが言ったように、EだのDだのという冒険者ランクは資格のようなものである。ランクアップには厳格な条件があり、現場権限での例外措置は行われていないのだ。



そのために、条件を満たさなければ、どれほど強かろうが当該のランクとなる。いっそ最強のFランクを目指すのも面白そうだなと悪魔心に火が付きかかったホークだが、悪目立ちを避けるためセオリー通りランクアップし、Eランクになることで落ち着いていた。

実際のところ、彼等の年齢でFランクと言うのは馬鹿にされがちなものである。Eランクでもその傾向は残るため、本来ならばD-Cあたりで落ち着くのが理想的だ。もちろんこれには実績が必要のため、おいそれと達成できるものではない。


そのようなこともあり、今回の任務は輪をかけて失敗するわけにはいかないというのがマールリール姉妹の考えだ。ランクどうこう以前に己のメンツがあるために失敗する気のないオッサン一行も引き連れたホークは、日の出と同時に冒険者ギルドに到着した。

外には朝早くから見物人もチラホラと姿を見せており、タスクフォース8492の見送りを行おうと雑談に花を咲かせている。


ギルド内部には、依頼を受けたとき以上の人が揃っていた。ホークが敵と疑っているティナの町の町長も並んでおり、表向きはタスクフォース8492の見送りを行っている。声援を背中に浴びて、ホークたちはギルドをあとにした。



この町一番の馬を采配して用意したと言う荷馬車と人員運搬用馬車を預かり、門をくぐる。人員輸送車と言っても貴族御用達のドア付きのモノではなく、皮ホロ付きの荷馬車のような代物だ。分類するならば、キャラバンと呼ばれている仕様となる。2台の簡単な相違点は、中に乗っているのが人間か物資かというだけだ。


この街にやってきた時に出迎えてくれた老兵も、激励をかねて見送りを行っていた。彼もこの街出身であるために、ホークたちの働きに期待しているのである。



そんな期待と朝日を浴びている一行は問題無く出発できたものの、予想外の事態に陥ったのは荷馬車を引く2頭の馬である。「駿馬と呼ばれるほどの脚を持つ俺が何故荷馬車」と疑問を持っていた彼等だが、そんなプライドはどうでもよくなってしまうような集団の中に放り込まれたのだ。

馬視点でも色々とツッコミどころのあるパーティーだが、一番の問題は白い狼である。門番の連中はホワイトウルフと言っていたが、そんな生やしいものでは断じてない。


類は友呼ぶわけではないが、駿馬はその正体をフェンリルと見破った。正確にはフェンリルと言う名称までは理解していないものの、「関わったらヤベェ」と言う類の対象と見抜いたのだ。無論、指示に対する反抗や敵対しようなどと言う感情はもっての外で既に捨て去ってしまっている。

その瞬間から足取りが明らかに変わっており、ホークが「体調不良か?」と心配したほどである。流石のホークも、馬の行動パターンまでは読めても心境までは読み取れない。


一方のヴォルグ夫妻は馬の怯えに気づき、「兎にも角にも真面目に歩け」とガンを飛ばす。逆らった瞬間にどうなるかわかったものではない駿馬は、真面目に大地を踏みしめるのであった。



「おや?これって……。総帥、1時方向距離8000。複数の飛行物体です、編隊を組んでいます。」

「了解、判別できる?」

「はい、翼竜と騎乗者ですね。進路からして目的地はティーダでしょうか、接近中です。」

「可能性は高いね、鳥の情報をかぎつけたかな。」



時刻的には、短針が8に差し掛かった頃。偵察班の言葉で右斜め前の空を見る一行の視線の先には、ティーダの街へと向かう翼竜の編隊が見えていた。高度1000m、時速200㎞と言ったところで、双眼鏡でも見て取れる。

ホークもさっそく双眼鏡で確認すると、奇麗な編隊飛行を維持する様子がうかがえる。「おぬしやりおる」的な感想を抱いたホークは、「この世界の空にもエースの血筋はあるのだな」と内心考え口元を緩めた。


そして倍率を高めると、彼の目に留まったのは、先頭を飛行する翼竜騎士。赤く長い髪を靡かせながら、視線は街がある一点を見据えていた。

いつかの記録映像で見た、ガルム達が出会った翼竜騎士によく似ている。他人の空似ということもあり得るが、彼は自分の直感を信じて、同一人物だと判断した。


たかが出現情報だというのに翼竜騎士の編隊を派遣するとは、西の帝国の本気具合が読み取れる。これは本気度合いを他の国にアピールするという政治的要素も加わっており、国ではないものの、ホークも例外なくその覚悟を受け取っていた。



それと同時に、彼は1つの事象に気づいてしまった。



彼女とガルムが出会ったのは、俗にいうヨーロッパ。そして彼女は、西から東に飛行していた。


大西洋を横断する技術がないのだなと理解すると同時に、文字通りの大陸横断飛行を行ってきたであろう翼竜のメンタルを考え、同情してしまうのであった。

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