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異世界で、エース達と我が道を。  作者: RedHawk8492
第6章 ランク:E
117/205

7話 馴染みか汚染か

【視点:3人称】

空軍一行が会場に到着すると、ハイエルフと狐族も含めて多数の人が慌ただしく準備の最終段階を進めている。大きめのお立ち台を含めてソコソコの規模であり、第二拠点総出と言っても過言ではないだろう。

陸軍がメインとなりここぞとばかりに存在感を発揮する炊飯部隊も全部隊が出撃しており、実戦さながらの戦場風景だ。炊飯車両にて、野戦にしては手の込んだ料理をこしらえている。


そんな彼等を横目見ながら先頭を歩くガルム達を見た兵士のなかで、いくらかの人数は彼らに向かって会釈する。その大半が、日ごろの航空支援の恩恵を受けている機甲部隊だ。

彼等にとっては、最強の名を欲しいままにするガルム達は天使そのもの。敵からしたら鬼や死神以外の何者でもないのだが、立ち位置が変われば評価も変わる。彼等が上に居るだけで、文字通りの「勝ち確」なのだ。



そんな天使たちのなかで頂点に立つ二人は、実のところお祭り騒ぎは苦手である。それでも招待しないわけにはいかないので、最前列から離れた後方に席が用意されていた。エドワードたち大元帥クラスも、同等の位置に構えている。

父親の如く、後ろから見守るのがいつもの彼等だ。とはいえ全く楽しんでいないということもなく、時が経つにつれバカ騒ぎする隊員を横目見ながらチマチマと酒を飲むのがセオリーとなっている。


今回の催しも例外ではなく、乾杯の音頭と共に各々が雑談に花を咲かせていた。ハイエルフや狐族と話し合う隊員も多く、互いの壁は至極低く見て取れる。そのうち何人かは、ガルムやメビウスたちにも酒を注ぎに来ていた。

しかしガルムが持つグラスへ注がれる量は少なく、メビウスもそれを気にしていた。どうやら彼は、いつも以上に飲むペースが遅いようだ。



「どうしたガルム、ワインは苦手か?」

「飲めなくはないが、好んで飲むものでもないな。ホークご自慢の日本酒を楽しみにしていたんだが、ワインはよく知らんぞ。」

「ツマミに合わせてワインにしたようだが俺は好きだな、このクラッカーにはよく合うぞ。年代物の有名なビンテージだ、たまには楽しんでみろ。」

「出されたものは飲むが理解できんな、どのへんがビンテージなんだ?」



ガルムはそう言いながらワインの瓶をチョイと持ち上げると、ラッパ飲みの仕草をしてみせる。実際に口に付けることは無いのだが、メビウスから「洒落にならん」とお叱りを貰うこととなった。

実際に彼が貯め込んでいる金額からすれば3桁万円のビンテージすらお小遣い程度なのだが、ワイン好きからすればビンテージをラッパ飲みなど論外どころか冒涜だ。それこそ日本酒をビールジョッキに入れようものなら、鬼神本人がモルガンに乗って出張ってくるだろう。



「まったく。相変わらず時たまジョークが入るな、お前は。」

「オマツリだろ?多少は許せ。」



鼻で笑って返答するガルムだが、その表情もすぐに収まる。その理由は、メビウスも薄々感じていた内容だった。



「それにしても総帥達は任務中だってのに、なんだか背徳感が芽生えるな。どうだメビウス、こんど訓練がてら空から見てみるか?」

「悪くないな。機体も変わったことだし、飛行時間が多いに越したことはない。」



話慣れている内容がスタートすれば、基本的な決定事項も矢次のごとく決まっていく。互いにその道のスペシャリストであるために、決定漏れの項目は皆無となっていた。

どうやら二人は、表向きは偵察ということで任務内容を提案するらしい。飛行コースを見た瞬間に裏側が読み取れてしまう内容だが、I.S.A.F.8492としても現在は忙しくないために実行許可が下りるだろう。



「実をいうとなガルム。偵察飛行よりも……俺も一度、地に足を付けてこの世界を見てみたい。」

「ほぅ?」



時折気が抜けるガルムだが、今回は珍しくメビウスが心境を口にしている。色々とハードルの高い内容ではあるものの、心の片隅ではガルムも興味を惹かれていた内容だ。



「活動となると、冒険者登録でもするのか?」

「悪くないが、したところで万年Eランクが妥当だろうな。」

「戦闘機も武器で使えると言うのなら、Eが指すものはEliteってところか。」

「Eランクで留まるならそれも面白いな。とはいえ、赴くとしても移動手段をどうするか……タスクフォース8492に追いついく手筈で戦闘機で向かっても滑走路が問題だ。着陸直前に地上高度30㎝で完全停止してハリアーみたいに降りれば、頑張れば滑走距離50mぐらいで着陸できないかね?」

「んな無茶な。推力がゼロになる瞬間に機首上げとエレベーター操作を行えば瞬間的に空中停止できるんだが、どう頑張っても機首が上がり過ぎる。イーグルの予備機でトライしたことはあるが、着陸ギアが衝撃で真っ二つだ。」

「ちょっと待て無茶ってそっちかよ、実践済みとは恐れ入った。それでもグリペンでも使えば、草原にでも着陸できるかもしれん。おっと忘れていた、F-35Bならば余裕か。」

「乗る気にならん。」

「差別反対。どうにもならんな、これこそホークに相談するか。」



「困ったときのホーク総帥」とは誰かが言い出した言葉だが、今回ばかりはメビウスもそれを選択する。要望レベルではなく相談レベルに抑えたうえで、「それでも却下されたら諦めるか」とほくそ笑んでいた。


そのような冗談も交えて雑談が進む二人だが、ふとしたタイミングで照明が暗くなる。前方のステージがライトアップされ、陽気なBGMが流れ出した。

「何か始まったぞ」と顔を向けながらも、二人はワインを手に動く気配は無い。基本としておとなしく仏頂面の二人は、遠くからステージを眺めていた。



E.E.(イイ)E・L・F(イーエルエフ!)!  E.E.(イイ)E・L・F(イーエルエフ!)!』



その位置でもソコソコ大きな音量で聞こえてきたのは、女性の声である。エルフという単語をBGMに合わせて独特の区切りで発する出だしは、二人ともどこかで聞いたことのあるスタートだ。元々は、爽やかなイケメン男性がボーカルを務め、特徴的な振り付けを持つダンスが有名な歌である。


元歌はさておき、始まったのは、まさかの女性ハイエルフ達によるコンサートである。特別な衣装は用意していないものの、彼女たち伝統の民族衣装は、一流モデル並みのスレンダーな肢体を際立たせるには十分だ。

露出範囲は多目ではあるものの個所としては二の腕と太もも程度であり、隠すところはしっかりと隠れている。それでも短めのショートパンツと、体のラインがシッカリと浮き出ており備え付けの胸部装甲の頂点から腰回りへと張り詰める服の内部で何かが揺れることを目視できる衣類は、逆に男の本能を刺激するには十分だ。被弾対象に酒が入っている上にモデルのレベルが高いために、攻撃力は猶更である。


イントロが流れる中、酒の入った男性隊員は野次馬のごとくステージに詰め寄っている。むさ苦しい連中に美形のハイエルフ男性陣が混じっており、異色の空間が作り上げられていた。

同時にビラを配り始める隊員も発生し、そのうちの一人がガルムの元へとやってきて手渡しした。彼はそれを受け取ると、メビウスと共に内容を眺めている。



「曲名、E.L.F.(イーエルエフ)って捻り無しか。ユニット名……ELF334?いささかネーミングセンスが時代遅れな気もするが、そもそも300人も居たっけか?」

「性別年齢を無視すれば100人ぐらいと聞いていたが、どうだろうな。超弩級のオタクでも、メンバー全員の判別は無理だろう。ついでに数字からして、考えたのは恐らくディムースだ。α(連隊)の連中が裏で手を引いている可能性が高い。どんなネタが仕込まれているか分からんぞ、奴らに汚染されていなければ良いが。」

「見事な推察だメビウス。が、内容のせいで真顔で言うとアホらしいな。」

「……違いない。俺も、リーゼントヘアーを真似するか。」

「髪形に規制は無いが、ヘルメットが入らんぞ。」

「それもそうか。」



ポリポリとクラッカーを口にしながら肯定するメビウスは、ガルムと共にいつもの調子だ。相変わらずローテンションで雑談を交えながら、右手を振り上げるI.S.A.F.8492男隊員の背中を流し見ていた。

数秒後、なぜだか無線から会話が聞こえてくる。どうやらテンションの上がった連中が、無線交信を始めてしまったようだ。管制塔と更新する周波数ではないものの、ガルム達の携帯無線もそれを拾っている。



《E.L.F! E.L.F!》

《俺達も行くぞ!E.L.F! E.L.F!!》

《Omega-11, engage.》

『だけれど私たちはエルフ人~♪』

《Hi!,Hi!》

《イイイイイイヤッフゥゥゥゥゥゥウ!》

《Bチームより支援要請!前方の炊飯部隊が邪魔だ、航空隊は排除してくれ!こっちはフランス革命の気分なんだよ!》

《了解した。イエローから各機、5機で合わせるぞ。同時に応援するんだ。》

《た、隊長……。》


「イエロー13まで何やってんだ……どうした、アイツこんなキャラだったか?」

「恐らく注がれすぎたな、どう転ぶか分からんぞ。とはいえイエロー4からの鉄拳は確定か、恐ろしいな。」



盛り上がりをよそに一定の超低空飛行テンションで仏頂面のまま会話を続ける二人は、文字通り蚊帳の外だ。チラっと横目で大元帥チームを見るも、そちらも似たようなものである。



『ハーブの見方をTeaching!』

「英語が含まれているとなると歌詞を考えたのはαの連中だろうが、さっきから無駄に歌詞が出来上がってるのが腹立つな。」

「ひどい言いがかりだ。歌詞はさておき、このチーズクラッカーに使われているハーブも、どうやら彼等の製造らしいぞ。」

「ほぅ?」



ガルムにそう言われ、メビウスはクラッカーをつまんで顔の前で眺めている。お気に入りの味であり先ほどからチマチマとつまんでいるのだが、ハイエルフ産のハーブがアクセントになっているとは知らなかった様子だ。

感心してステージ上を見るも、ダンサー一行はE・L・Fのリズムに合わせてお尻を軽く突き出し、両手でハートマークを作る仕草の振り付け真っ最中。恥ずかしそうに顔を赤らめながら歌い続けるハイエルフだが、α連隊と男ハイエルフが報復を恐れながらも作り出した決死の振り付けも、残念ながら鬼と死神には届かないようだ。



「露骨だな。」

「露骨だねぇ。」



とはいえ、酒におぼれている連中は話が別。会場のボルテージは、この瞬間ピークに達した。



《イエローが鼻血を吹いている!誰がやったんだ!?》

《今、俺のハートを撃った奴を確認してくれ。ちょっ、どうしたイエロー4……》

《くそっ、イエローと俺が恋の360mmで撃たれた!ボルテージを下げろ2番機、脳震盪を起こすぞ!》

《ネガティブ-メイデイメイデイメイデイ!こちら2番機、イジェクトする!!》

《Omega-11, I'm ejecting!》

《砲塔に着弾、戦車長がやられた!》

《衛生兵、衛生兵ー!》



「楽しそうだなオイ。」

「楽しそうだねぇ。」



彼等曰く露骨な演出により、二人とは対照的に酔っ払い連中のボルテージは最高潮。地上で行われる無線交信にて阿鼻叫喚の地獄絵図が発生しており、通常勤務中の隊員はそれを聞いて笑い転げていた。

のちに報告を聞いて「何やらせてんだ」と呆れると同時に1つ疑問が沸いたホークだが、催しそのものは大絶賛の中で無事終了。一行は交流を深め、いつ来るか分からない戦いに備えて息抜きを行うのであった。

今流行りの良い歌ですね、妙な中毒性があります。

個人的にUSAと言えば集団で左手を掲げているAAを思い出します! U.S.A!U.S.A!!

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