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異世界で、エース達と我が道を。  作者: RedHawk8492
第5章 タスクフォース8492
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14話 二人の休日

【視点:3人称】


宴から一夜明け、タスクフォース000の隊員の一人が目を覚ました。日はとっくに昇っており、起きるにしては随分と遅い時間である。

それでも他の隊員の半数は未だに夢の中であり、彼が目覚めた時間は早いほうだ。



「よう、随分と苦しそうに寝てたぜ。」

「うっぷ……まだ腹の中に油が残ってる感じだ。そういうお前も、食いすぎましたって顔だぞ。」

「まったくだ、人のこと言える口かよ。あと総帥から連絡があったんだが、「昨夜の調子だと何人か潰れてそうだから今日は休み」とのことだ。」

「本当ですか大尉。流石総帥だ、そりゃありがたい。」



タスクフォース000の隊員二人が、HAHAHAと軽口を叩き合う。作戦行動中には有り得ない気の抜けた空気であり、この場面だけ見ると、彼らもただのオッサンである。最強の歩兵小隊と恐れられた気配や威厳は、微塵もない。



「お前等は食べすぎなんだよ。ディムースも今朝はくたばってるらしいが、アルファの連中の騒ぎ様は天下一品だったな。」

「たまには良いじゃないッスか隊長、昨日今日って第一機動艦隊が見張ってくれているんでしょ?安心して騒げるってもんですよ。」

「そういえば隊長。さっき艦隊から定時連絡がありまして昨晩の宿周辺の騒ぎ具合を聞かれたので、総帥お手製のメニューを伝えておきました。そしたら通信兵一行、発狂してましたよ。」

「中々にエグいことするなお前……。」

「ははは、そりゃ死刑宣告だ。奴等からしたら、残念極まりないでしょうね。」



000の隊員が言うように、先日に出航した第一機動艦隊が南方の海域で演習を行っている。ホーク達一行の見張りついでの演習なのだが、中々に内容の濃い演習となっていた。



「ところで、総帥はどちらです?晩飯のお礼に挨拶だけ行きたいのですが、自室ですかね。」

「いや、俺も見ていない。おい、誰か聞いてるか?」

「あ、はい。本日はハクさんとお出かけとのことです。夫婦らしくて良いことです。」

「そりゃ邪魔したら悪いですね。ところで街に肉が補充されましたし、食い倒れになりませんかね?」

「それはそれで、らしくて良いじゃねーか。」



ハクの食に関する関心の高さは全員が知っており、隊員2名はそれに関する冗談を口にしている。マクミランは聞き耳半分に愛銃の手入れを続ける一方で、000の隊員の間で、再びHAHAHAと軽い笑いが沸き起こった。



「ハクシュン!クシュン!」

「ハクション!ハーックション!」



しかし数秒後、言い出しっぺの二人は盛大なクシャミを炸裂させる。

風邪でも引いたか?と不安がる彼等だが、その真相を知る由は無い。



=======



「むっ。」

「どうしたハク、敵か?」

「いえ。敵ではありませんが、誰かに陰口を叩かれている気が……。」

「陰口か……。陰口ってほどじゃ無いと思うけど、どうせ000の連中だろ。ディムース達は朝からくたばってたし、自分やハクをいじるとしたら奴等だな。どうせ「食べ歩きに出た」とでも言ってんだろ。」



ハクと共に横並びで商店街に差し掛かるホークは、彼女が感じた気配の真相を見抜いていた。これにより先ほどの隊員2名が盛大なクシャミを行っているのだが、もちろんその真相を知る由は無い。



「噂話をされていることが事実だとしたら失礼な。屋台を楽しむことが目的の1つであることは正しいですが、主目標ではありません。」

「あー、否定はしないのね……。」



彼女の言葉に苦笑したホークだが、彼も屋台巡りなどの食べ歩きは好みの部類である。彼の場合は料理の参考になるという側面もあるため全く同じではないものの、根底としては同一だ。

波長の合う二人だが色々と途中過程を省略した結婚ということもあり、気分としては恋人の域を出ていないのが正直な感想だ。そのために1つの食品を分け合うなどの動作が出ているのだが、端から見れば恋人にしか見えていない。


片や真っ黒、片や白ベースというコントラストも相まって、住民の評価は揃って「お似合い」である。ホークいわく「容姿は全くつりあっていない」のだが、気にしている住民は少数だ。

そんな評価を受けている二人が食べているのは、補充を受けて活気を取り戻した肉の商品が中心だ。串焼きのレシピが幅を利かせており、店ごとに特有の味付けとなって目玉商品となっている。


とはいえ昨晩が肉祭りだったために、おなかに優しいものが欲しくなるのが人情だ。二人は1つの屋台の前で、止まり、メニューらしきものを眺めている。その内容に、彼女は驚きを隠せない様子だった。



「棒状に加工された野菜のサラダ、ですか……あまり見ない発想ですね。」

「そうか。自分もたまにこの手の物を作るけど、なかなか食べやすくて仲間内のパーティーとかでもいい感じに食せるよ。ただまぁ、品が求められる場所だと、ね。」

「なるほど、仰るとおりです。」



この地域特有の商品らしいのだが、ホークが見た感想はスティックサラダ以外の何モノでもない。大小2連となっている容器の大きい方にスティック状の野菜が入っており、小さい方にはドレッシングが入っている。

とはいえ使い捨て容器は無いために木製であり繰り返し使用する運用となっている。そのため価格は高めであり、容器を戻せばその分をキャッシュバックと言う合理的なシステムが導入されていた。


野菜も地産地消が主であり、形は歪なれど値段としても安い部類である。果実に関しても同様のことが言えるのだが、そのために栄養価が偏りにくい環境が整えられていた。

外からの輸入が少ない故に災害が発生したときの危うさはあれど、自分達で使うものは自分達で作るという発想と根性は、田舎街故の光景だ。自分たちのことは自分達で行うというそんな姿勢は、ホークが好んでいる情景である。



「よーぉホークの兄ちゃん!こっちのも買っていってくれよ!」

「こっちの野菜もお願いよー!タスクフォースの人たちが買ってくれると、みんな買ってくれるのよー!」

「おい待て、それ言っちゃダメだろ!」

「あらヤダ、ホントだわ。」



新手の漫才張りのコントを聞いて苦笑するホークだが、悪い気は皆無である。その気分はハクも同じであり、二人で目線を合わせ苦笑していた。

そして、そんなことを言われては買わないわけには行かないのが人情である。特にお国柄でその気が強いホークは、ホイホイと足を進めてしまうのであった。



=======



「ふー、買い食いが予想以上だったな。ハクも結構食べたろ、昼飯どうする?」

「恥ずかしながら、お昼はそこまで……。軽いスープなどで済ませられれば、問題ないかと思います。」

「あ、それ賛成。とは言っても昼にはまだ早いから、どこか探索を続けようか。」

「賛成いたします。ちなみに、ご予定は?」

「1つあるかな。宿でも魚が出てきたけど、港を見に行ってみようと思う。ハクが第一拠点に来た頃に漁を見たことが無いって言ってたし、丁度いいんじゃないかなと思ってさ。」

「それは是非、参りましょう。」



二人並んで他愛もないことを喋りつつ、海の方角へと足を進める。田舎街故に、すれ違うとしても数人程度で、穏やかな空気が広がっていた。


しばらくすると、小さな港のような施設が見えてくる。魚の青臭い臭いが微かに鼻を掠め潮風に上書きされる感覚が、それっぽい雰囲気を作り出すのに拍車をかけていた。

ハクに船や漁を見せるためにやってきたホークだが、彼は彼で現地の船舶の航行方法や動力源に興味を持っている。二人の顔はこの街において顔パスができる程に有名であり、ホークの質問に対して住民が応対していた。



「なるほど、たまに動力を魔石から得る具合か。」

「ええ。帆だけですと難しいところがありますので、魔石による動力確保の技術には感謝しています。魔石だけで運行できるようになれば楽なのですがね。」



結論から言うとこの世界の船は木造帆船であり、補助力として魔石による推進力を発生させるらしい。先のダンジョンで魔石を知っていたホークは「高額じゃないのか」と訪ねたが、どうやら充電電池のような具合で使用できるようだ。

そのため、一般市民が持つ指先程度の大きさ程度ならば、1日1回は所有者自身で魔力を充填することが可能なのである。一応ながら得意不得意の差があるとはいえ、随分と燃費のいいハイブリッド技術だなと、ホークは静かに感心していた。



同時に、ダンジョンで得た頭大の魔法石に関しても、のっぴきならぬ事情の時意外は封印が決まった瞬間である。



とはいえ、木造故に全長は10mほどで船舶そのものの防御力は皆無に等しい。魔物の影響もあるために、一般的に言う遠洋漁業のようなものはありえなく近海のみでの活動となっているようだ。

軍事目的に作られた戦闘艦ならば遥かに巨大であり、ソコソコ沖合いに出ても問題が無い設計や戦闘力になっている。それでも、8492の第一機動艦隊が現在自由に航行している海域へは逆立ちしても到達できないのが実情だ。



と、その話が一段落した時。一人の男が、血相を変えてやってきた。

のっぴきならぬ事情が発生したことは明らかで、ホーク達も話を止めて聞き入っている。



「たいへんだ!沖合いに仕掛けた網に、ホールフが絡まっていた!!」

「なんだって!?」

「なんとか網の固定部分は外したんだが、暴れた上に網ごとそのまま沖合いに動いていっちまって、どうにも……。」



告げられた一言は、ホークとハク以外の人々を忙しなくさせる。混乱とまでは行かないものの、そこかしこで意見を言い合う声が一帯を支配した。


そもそもホールフとは何ぞやという話を持ち出したホークだが、住民いわく、海をゆっくりと泳ぐ大きな魚とのこと。主に遠洋に居るらしいが、時たま近海にも姿を見せるようだ。

もしかしてと彼のセンサーが反応したのだが、話を少し掘り進めると、どうもクジラと同等である様子が伺える。網に絡まるというトラブルも、珍しくはない人間とのトラブルだ。


そしてホールフとは、この街のシンボルとなっている生き物でもある。住民達は「どうにかしなければ」と騒いでいるが、情報ではホールフは沖合いへと進んでいるために彼等では手も足も出ない状況だ。

うろたえる住民を見て、目線を合わせたホークとハクは仲間の待つ宿へと足を進める。移動中も、タスクフォース8492としてではないものの、作戦行動を計画していた。

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