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異世界で、エース達と我が道を。  作者: RedHawk8492
第5章 タスクフォース8492
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12話 パーティーの下準備

ブクマ200、総合600ポイントありがとうございます。

励みになります。これからもよろしくお願いします。

【視点:3人称】


「どけどけー!肉と共に、英雄タスクフォース8492のお帰りだー!」

「おおっ!?おい、ほんとにラールキャトルじゃねぇか!久々の肉がコレかよ、マジかよ!!」

「だから言っただろ!タスクフォース8492さまさまだぜ、輸送の邪魔するなよ!」

「おにいちゃーん、おにくありがとうー!」



日が沈みかけた中でティーダの街の門をくぐる警備兵は、浮つき気味に声を張る。その対象は、肉の到着を待ちわびて門に集った住民たちに向けられていた。

各々が歓迎の声を上げ、既に軽くお祭り騒ぎとなっている。初日にホークと対峙した老兵がタスクフォース8492を出迎え、代表として彼等の行動を労った。


もちろんながら、彼等がダンジョンの1つを制圧してしまったことなど誰も知らない。半年前のオークキングはこのダンジョンから生れ出たものであり相当に危険なダンジョンだったのだが、今となっては無力なものである。


大きな牛を2頭まで重ねて乗せることができる人力荷車が連なる先で、歓喜の声を受けるタスクフォース8492の面々は鼻高々だ。ヴォルグ夫妻とハイエルフ兄妹は後方に就いており、念のための警備を行っている。



「こういう戦闘目標ってのも、悪くないもんですね大尉。」

「そうだな。とは言っても獲物の質に影響しやすい銃撃は、限定されたものになりそうだな。」

「問題はそこですね……。」

「総員、気を抜くなよ。冒険者ギルドまでこれを届けるのが、依頼を受けた内容だ。」

「「「イエッサ。」」」



やや緩みかけた空気を、ホークは締めなおす。もちろんこの程度で彼等の気が緩むことなどないことは彼も承知しているのだが、今の発言は一般に言う形式美というやつだ。

一行は冒険者ギルドへと足を向けており、今回の依頼を終えようとしている。到着後に解体作業が始まるのだが、どうやら街を上げてのイベントになったらしく職員が夜通しで作業を行うようだ。


今からの解体開始となると、流石に夕飯時には間に合わない。そのため引き取りは明日とし、ホーク達は宿へと足を向けた。

その途中から、何やらイイ香りが一行の鼻を刺激する。それは彼等が宿泊する宿から放たれており、「明日は肉祭りなので」ということで揃えられた魚料理を堪能しながら、エース達の夜は更けていくのであった。



=======



そして翌朝、日の出と共に早めの朝食を取った。このことは昨晩に従業員へ伝達済みであるため、特に支障なく対応も行われており食事の準備も万全である。

朝が早いこともあり、内容としても軽いもので容量もやや少なめ。機械的な作業ではなく気を使っていることを感じ取れる、暖かい気配りだ。



「それにしても、ホーク様ご一行はすっかり街の英雄です。私としても、そのような皆様のお世話ができて光栄です。何かご要望がありましたら、遠慮なくお申し付けください。」」



その言葉で、ホークは手を口に当てて考える。特にコレと言って重要なことも無いのだが、何かないかと考えていた。



「あ、そうだ。なら店主、今日は昼から厨房……料理場を借りたい。」

「料理場を?構いませんが、火事だけはご注意願います。かまどは5つありますが、食材も含めて足りないものは準備願います。」

「5つか……了解した、借り受ける。占領するため夕飯を作れなくなるけど、そっちの分も作るよ。」

「承知しました、楽しみにしております。」



返事を返したホークの後ろで、タスクフォース8492の一行はヒャッホウとハイテンションだ。

そんな連中を見て、店主の頭の上はクエスチョンマークで埋め尽くされる。とはいえ単に調理場を貸すと言っただけでコレなのだから、疑問がわくのも無理はない。


とはいえ、それを聞くのも無粋である。文字通り頬が落ちそうなものが出てくるとは予想だにしない従業員は、はて何だろうなと考えをめぐらせながら仕事に戻るのであった。



「総帥、メニューは決まっているのですか!?」



その一方、隊員の一人が耐え切れず、ホークに対して問いを投げる。しかしながら「メニューはお楽しみが一番」と考えていたディムースは、その問いに対して声をやや荒げるのであった。



「ばっか、食事の直前まで秘密って選択の方が楽しみがあるだろう!」

「ですが隊長ー!」

「そうですよディムース少将、聞くだけでしたら迷惑はかかりません!」

「ハクさんまで!?」



隊員はともかくハクまで出てきた現状に、ディムースも意地になって「なんですか」と問いを投げている。しかしホークは、あまり表情が宜しくない。

理由は単純で、彼等だけで25人+2名分の食事を作るのに、かまど5つでは不足しているからだ。とはいえ宝物庫という料理人にとってはチート級のスキルを使用できるため、それを駆使したレシピを考えているのである。



「献立なんだけど、解体が終わった肉を見てから決めたい。なのでまだ決まってないんだけれど、自分に任せてもらっても良いかな?匂いで分かるかもしれないけど、結果的には出てきてのお楽しみになるね。」

「無論ですマスター。事前に知ることができないのは残念ですが、楽しみにしております。」

「ええ、総帥のレシピに外れ無し!何でも受け入れ可能です!」

「じゃぁ大自然を堪能ということで、ディムース君は生肉な。」

「ヒョッ!?」



照れ隠しの条件反射で放たれたホークの冗談で、場が笑いに包まれる。頑張れよとマクミランに肩を叩かれたディムースは、チクショーメーと叫びながら部屋へと消えていった。単なる装備の補充なのだが、もちろん理由は隊員の全員が理解している。

その一方で、食い気のある人員は感情が露骨である。ハクレンと楽しみを分かち合うハクを見ながら、ホークは何を作ろうかと悩んでいるのだった。


朝食を終えると、一行は行動を開始する。行動と言っても解体済みの獲物を受け取りに行くだけであって、戦闘行動はお休みだ。

それでも、総帥であるホークを守るのが普段の各々の役目である。病院で行われる院長回診宜しく、一行は編隊を組んで冒険者ギルドへと足を進めた。



「おはようございますホークさん、皆さん。昨夜に持込んで頂いた魔物の解体は終了しております、こちらにどうぞ。」



一行を待っていたのは、受付嬢とCランク冒険者のシビック。その他、ギルド関係者と思わしき面々だ。タスクフォース8492として登録を行ったときとはうってかわって、大勢の人で賑わっている。

全員が歓迎ムードであり、タスクフォース8492は人ごみを割って進んでいく。その後ろからイソイソと数名が後を追うのだが、これは肉を求めている商人である。是非とも売って貰おうと、タイミングをうかがっているのだ。


解体現場に到着すると、12頭分が綺麗に並べられている。うちホーク達の分である2頭分はリアカーに乗せられており、すぐに持ち帰りができる状況だ。

問題は、残り10頭の分配である。後ろについてきた商人達は、口をそろえて「是非私に」と言いたいところなのだ。しかし、ダンジョンを紹介し成果を確認した手前により、従業員に対するホークの答弁が中々に重みがあるため厳のある空気となっており、おいそれと口に出せない状況が作られている。


昼頃からブロック単位の解体が始まるため、購入できれば明日の朝には店に並べることができる。混乱防止と面倒なことを丸投げしたいホークは「ギルドが買い取ったのだからギルドが分配を決めてくれ」と台詞を残し、夜用の食材を大人買いして仲間と共に宿へと戻っていった。



===============



そして昼。「ブロックからの解体は今日の昼からなので、お肉祭りはまだでした」と早とちりを言い訳する店主が出した料理を食べたホークは、夜を楽しみにしておけと言葉を残して厨房に入った。

メニューは既に決まっており、例によってお肉祭りとなる。第二拠点で肉を食べ慣れていたハイエルフ兄妹も肉祭りに対して支障はなく、今となってはむしろ楽しみにしているぐらいだ。



「えっ?総帥、こっちの素材だけで作れるんですか?」

「いつもと同じレベルは無理だろうけど、近づけることはできると思うよ。調味料は流石に全部は無理だけどね。」

「流石です総帥、夜が楽しみだ。」



そんな会話をするのは、作業中のホークと護衛の兵士2名である。野菜や調味料に関しても名前は違えど適任のものがあり、一通りの購入は終了していた。

なお、万能調味料みりんや醤油の代わりは無かったため、調味料に関しては例外として使用する。どちらかと言えば食材よりも調味料のウェイトが大きいのが料理というジャンルなのだが、おいしいものを作るためには仕方のないことだ。



「何作ってるかはたぶん匂いですぐに分かるけど、楽しみだったらキッチリと警備頼むぞー。まず間違いなく宝物庫を使うから、店員にそれは見られたくないってのがメインだけど……意見具申とか言いながらツマミ食いする、ホークとか言う奴の妻も居るからな。」

「ちょっ、ご自身の奥さんじゃないですか、何とかならないんですか?」

「メシが絡んでるから、多分無理だろうなー……なので、ドアの向こうで止めてくれ。」

「総帥それ厳しいですって、メシでも戦いでもラスボス級じゃないですか。」



ある意味で的確な表現により、3人は談笑しながらもホークは手を進めた。ギルドから受け取った肉は既にアルファ部隊が小分け済みで、ザックリとした下準備は整っている。

種類もロースやヒレ、筋肉などが一通り揃っており、「面倒だから焼肉でもいいんじゃないかな」と言う思考が頭を過ぎったホークだが、本人の妻の笑顔を思い出すと、ある程度は凝ったものにしようと気を引き締めるのであった。


お湯を沸かすついでにかまどの火加減調整を練習すると、さっそく肉をカットし始める。包丁がまな板を叩く微かな音を聞きながら、いよいよ始まったなと、警備担当は気分を高揚させるのであった。


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