第8節 中盤と後半戦、リザルト
ダウンから復帰した俺はすぐに相手と距離を取る。 深追いして下手に攻撃を食らっては元も子もない。 同じく相手も距離を取り、マシンガンからガトリングガンに持ち替えていた。 こちらもロープリングに持ち替えて、牽制に一発撃っておく。
当然だが当たる直前で横にステップされて回避される。 追尾武装は当たる直前で避けられると当たらない。 追尾武装に限らないけどな。 撃ったのはあくまで牽制だ、当たってたら御の字だったが、相手との距離を離すなら一発で充分。
敵と離れて後ろを見ると、海呂が敵と交戦中だったのだが、海呂の様子がおかしい。 武器を構えては下ろし、別の武器に持ち替えて、武器を放つが上手く武器を使いこなせていない。
・・・・・まさかあいつ、さっきからずっとあんな戦い方してたのか?
不安と疑問を持ったので、インカムから海呂に向けて通信を送る。
「どうした? 海呂。見てると動きがぎこちないぞ?」
「ああ、飛空かい? 油断したよ。ショットガンのカス当たりだと思って反撃しようと思ったら武器の特性を変えられてさ。直るまでに少し時間がかかったから。あれが多分クラッキングショットガンの本当の力なんだろう・・ね!」
どうやら対人中だったらしく、そこで途絶えた。 クラッキングショットガン・・・・ 武器の特性を変えられるって言ってたな。 どう変わったのか後で聞かないと対策が取れない。 変わる特性がランダムならまた別だろうが・・・・
こっちもそんなことは言ってられないか。 まだ少し体力に余裕があるからこっちから行ってみるか。
「複数集まってないのは・・・ そっちか。」
ミニレーダーを確認して、移動を開始する。建物の上からあまり動いていないように見える。 多分周りの警戒をしてるのだろう。 ならば取る方法はひとつ。
ブーストを使って敵の後ろに入る。 相手はボウガン持ちだったか。警戒をしているようだが、こちらには気づいていないようだ。 やっぱり光学迷彩って便利だな。 また透明になりながら近づいているので、すぐには気付かれない。
光学迷彩銃のトリガーを戻して、相手が気づいて後ろを向くがもう遅い。 そのまま流れるように、スパークガンを放つ。
「ぐっ・・・・ぁ・・・!」
感覚を麻痺させているので急には動けない。 麻痺が解けるのも面倒なので、そのまま相手に近づき、蹴りで上に相手を上げた後、剣を抜き、相手の真上から振り下ろす。兜割というものだ。 本当の兜割は斧などもっと重たい武器でやるらしいが、細かい事は気にしない。 どっちかっていうと幹竹割りになるのか? まあいいや。
ビルの上にいたので相手はそのまま地面に向かって落ちていく。 バーチャルの世界のため、高いところから落とされても悲惨な事にはならない。 追いかけられると困るので、今いる場所から離れる。
その時目の前にハンドガン持ちが現れてびっくりしてしまった。 弾を何発か放ってきたので、咄嗟に看板の影に隠れる。
「ガンガンガン」と弾が看板に当たった音がした。
看板から離れると看板越しに爆発音が聞こえた。少し後ろを見て、目に止まったのは、武器を構えた紅梨の姿だった。 どうやら「エクスプロードボム」を使ったらしい。
当たったのかは定かではないが、少し別メンバーと合流したい。 近いのは紅梨以外だと・・・白羽だな。 お、見えた見えた。 白羽に近づいていく。
「飛空さん! 今は来ちゃ・・・・っ!」
警戒をしてくれたのだが、こちらもゲージ切れで着地してしまう。 横目で白羽の向いている方を向くと今まさに、電気のようなものを帯びた布のようなものがこちらに向かって振り払われていた。 マズい!避けられない!
そのままダメージを食らう・・・・かと思ったが。周りに青い壁が見えた。
「もう。だから駄目だって言おうと思ったのに。」
頬を膨らませて白羽がそういう。 彼女の広範囲防御壁が守ってくれたのだ。
「悪い。交戦中だとは思わなかった。 貴重な防御壁を使わせちゃったな。」
「いえ、それは大丈夫なんですけれど。 孤立気味でしたので、どこかで合流したいと私も思っていたので。あ、飛空さん、回復・・・・」
「ん。大丈夫だよ。気持ちは受け取っておくよ。」
チラリと戦力ゲージを見ると、こちらの戦力が半分を切っていた。 どうやら海呂がやられてしまっていたらしい。
「ホントにごめん。クラッキングがまさかあんなに面倒だとは思わなくてさ。追いかけ回されちゃったよ。」
そう海呂から通信が入った。 隙をかなり付かれたみたいだな。 クラッキングだけには警戒しなくちゃ。
「でも相手の方も1人落とせたよ。 ほぼ同時に落ちたって感じかな。」
相手の戦力ゲージも6割を切っていた。 そう思ったら、ゲージが減った。 相手のってことは紅梨が倒してくれたのかな?
「やっと落とせたわよ。 体力が、やばくなったらとことん逃げるんだもの。 追いかけっこは疲れるわ。 それで飛空、これからどう動く?」
投げるなよ。まあでもこうなったからには、作戦は変更だな。
「とりあえず体力が少ない俺は前に出る。 白羽はこの後は生き残ることだけ考えてくれ。 無理に回復しろとは言わないから。 海呂は遠距離キープ。 俺と紅梨で場を荒らしてやる。」
「今度は無理に近づかないようにするよ。」
「私のサラマンダーが火を吹きますよ!」
「底力見せてやるわ!」
やる気だなぁみんな。 なら行きますか。
白羽と別れて、俺はほぼほぼ敵陣ホームに突っ込んでいく。 もちろん注目を俺に集めるためだ。危険になったら下がればいい。 落ちる事も視野に入れてるしな。
相手も作戦をかえてきたらしく、体力の残っているメンバーを前線に出し、残りのメンバーで支援するというスタンスらしい。
一対多はこの武器では苦手中の苦手なんだよね。左の武器を構えているので右に回避する。
左手の甲に当たってしまったその瞬間左手が宙に持っていかれた。何事かと見たら赤色の吊り革のようなものが左手から出ていた。
しまった!ビームフックだったのか! しかし動かないのは左手だけのようでそれ以外は動くので、1人をスパークガンで痺れさせる。 もう一人のビームフックを撃ってこなかった人物と距離を一度取るがやはりフックがあるため移動距離は限られる。
相手はビームショットガンを撃ってきて、弾幕が張られるが中央部から放射状に放たれているのでむしろ好都合だ。
後ろに下がっていたのでフックの反動を使ってターザンのように相手に近づき、そのまま相手に両足蹴りを食らわす。
相手を飛ばすように蹴ったので自分も宙返りして体制を取り直す。 ちょうどそのタイミングでフックが千切れたので一度地面に着地し、ゲージを回復する。
少しその場を後にした瞬間に辺りが火の海に包まれた。 上空を見ると、白羽が火炎放射器を持って空中で漂っていた。
あ、薄紫・・・・ 見えてしまって罪悪感を感じてしまってそのままその場を離れる。
・・・・・・なんというか助けに来てくれたのに仇で返したような感覚になっちゃった。 胸にしまっておこう。 うん。
気を取り直していこう。町並みはところどころ崩壊していて、本来乗れないところにも乗れるようになっていた。
段差が増えるということは、ゲージの回復する場所も多くなるということだ。 目線の先に海呂が見えたが、どうやらハンドガン持ちと交戦中のようだ。 しかも海呂の方がピンチだ。 ここは助太刀に入ろう。
ブーメランチェイサーに持ち替えて、相手に浴びせる。 ブーメランチェイサーを当てると相手が少しだけ止まる。ヒットストップってやつだ。 そのヒットストップを利用して海呂がマシンピストルを浴びせる。
「大丈夫か? 海呂」
「大丈夫だよ。飛空 もうちょっとアサルトライフルを使いこなさないとね。」
そうだなと言おうとした瞬間に胸に衝撃がはしり、見てみると槍が刺さっていた。 そしてこちらの戦力ゲージが減った。 どうやら俺が倒されたようだと感じたのは、量子化した時だった。
一度画面がブラックアウトして、次に目を開けた時は、ステージの上空が映っていた。 そして青い円がいくつかあり、そこから降りれる様になっている。俗に言うリスポーンと呼ばれるものだ。
上から見た時に左から右にかけて青い線が見えた。 紅梨がエネルギー砲を放ったようだ。それに巻き込まれたようで、1人倒してくれたようだ。グッとゲージが減ったので、コストの高い相手を落としたようだ。
相手はもう誰も落ちれない位のゲージになっていた。紅梨の近くの円から入り、紅梨の方を見ると、俺と紅梨との間にレーザーマフラーを構えながら紅梨に向かっている相手の姿が見えた。
危険だと感じたが、距離が空いているため、チェイサーは使えない。 なのでロープリング持ち替えて放つ。
すると相手の足に絡まりそのまま地面に着地させられる。いきなり足を拘束された上に地面についたのでかなり動揺してしまっている。
「なにこれ!? 動けな・・・・・・きゃぁ!」
かなり激しく動いていたので前のめりに倒れてしまい、その勢いでショートスカートがめくれ、パンツとガーターベルトが丸見えになってしまった。
ちょっ・・・・・・!! またかよ!! しかも優等生っぽい感じなのに黒のアダルティなの履いてんの!?
あまりの恥ずかしさに彼女も気づいて隠したがもう遅い。俺含めて一部の男子に見られてしまった彼女は真っ赤な顔と涙目でこちらを向いていた。
ほんとにすみません・・・・・・まともに相手の顔を見ることが出来ない。 追い討ちか出来ないでいると、紅梨がエネルギーブラストで彼女の体力を持って行ってゲームセットになった。
・・・・・・勝ったはいいのだが、スゲェいたたまれない。 彼女からビンタなりグーなり甘んじて受けよう。 それだけの事をしたんだ。当然だろうなと思う。
みんな最後に集められて、最終対戦結果、リザルト画面が表示される。
アタックポイントはもちろん紅梨がトップだ。あれだけの火力をたたきだしたのだ。当然だろう。
次にサポートポイントだが、どうやら俺が一番になった。基本的に俺の武装はサポート武器になるらしいので、必然的にサポートポイントに組まこまれるようだ。
ハイリスク、エイムは相手に軍配が上がった。
「どうしたんだい?なんか浮かない顔をしてるけど。」
どういう顔をしているのか分からないが、心配しているような質問を海呂がしてきた。 なんというか気にしてる観点が違うというか・・・・ まあ抱え込んでも仕方ないので吐いてみる。
「いや、なんていうか。 決着前にさ・・・・・ 相手の彼女にめちゃくちゃ申し訳ないことをしてしまったなって。」
「あたしは助かったけど、なんかすごい修羅場みたいになってたから終わらさせてあげたのよ?」
「うん。それに関してはありがとう。 多分あのまま長引いてたらほんとにいたたまれないというか、罪悪感半端ないというか。」
そう言って白羽を横目で見てまた視線を戻す。 白羽は「?」という感じだったが説明はしない。
「あの子の報復というか制裁は甘んじて受ける。 なにやられても逃げない所存なんだ。」
「よく分かりませんが腹は括れてるってことですね。」
出た後が怖いんだけどな。