第82節 的当てと生徒会始動、戦線予告
「・・・・・・・・・」
ダミーに向かって弾丸を当てていく。
「・・・・・・・・・」
弾丸を撃ち込んでいく
「・・・・・・・・・」
撃ち込んでいく。
「・・・・・・・・・」
撃ち込んで・・・
「飛空。」
声がしたので撃つのを止める。 振り返ると海呂がいた。
「どうした?海呂」
「それはこっちのセリフ。 なにをそんなに必死になってるのさ。」
授業の一環で照準を合わせる訓練をしていた。 武器は固定だが弾は無限にあるので、思う存分弾を撃ち込める。
「それにしても随分と撃ち込んだね。 一体何発撃ち込んだのさ?」
見てみるとダミーが穴だらけになっていた。 無意識に何百発も撃ち込んでいたようだ。
「・・・でも急所を避けてるあたりは別の意味で流石だね。」
改めてダミーを見直してみると、両肩から先、膝から先に集中して狙って撃ち込まれている。 人の急所という急所にほとんど当てていない。 普通の戦いなら当たる方が難しい所である。
「それだけ急所を外しているとなると・・・やっぱり「ブラッド」が関係しているのかな?」
「ブラッド」、やつは少なくとも俺を敵視している。 他人事では無くなったにしろ、現実世界での迎撃体勢は作らなければならない。 だが現実的に無理な以上はここでやる他ないのだ。
「でもダメだよ飛空。 こっちから動くような事をしちゃ。」
向こうから来なければこちらからは動かない。 仕掛けてこなければこっちも仕掛けない。
「飛空。 そっちはどう? うわ、ダミーがボロボロじゃない。」
そう声をかけたのは紅梨だった。後ろからは白羽も来ていた。
「凄い、撃ってます、ね。」
白羽も蜂の巣になったダミーをみて驚いていた。
ピーンポーンパーンポーン
チャイムがなったので、今日の授業は終了だ。
「明日は他クラスとの合同練習だからしっかりと取り組むように。」
そういって解散をする。 今日はこの後に生徒会の仕事があるので生徒会室に行く。
入口の前で夭沙と合流するが、どうも落ち着いていない様子だ。 理由は俺の宣言のことだろう。
「飛空君、あの、えっと・・・」
「言いたいことは分かってる。 分かってるけど俺も全てを許せるほど許しのいい人間ではないからさ。 だからせめて暴走しないようにだけ、見ていてくれないかな。」
「うん。 私も「ブラッド」は許せないから。」
そう会話をかわして生徒会室に入る。
「来たわね。 早速だけれど今回の課題に入るわよ。」
いつになく真剣な志摩川先輩の覇気にみな息を飲む。
「今回の議題は最近ニュースになったいる「ブラッド」の件よ。
我々の学校から被害者が出た以上見過ごす訳には行かないわ。」
志摩川先輩からのまさかの発言であった。
「私も「ブラッド」に関して許せない事が出来たのよ。 こんなバーチャル世界っていうものがあるのにも関わらず、現実の人間に対して実害を出した。 それだけなら確かに警察沙汰だわ。 でもね、うちの学校の生徒、しかも転校してきたばかりの子に被害を出した。 もしこれでトラウマになってしまったら、とてもじゃないけれど目も当てられない。 我々の目的は学校の平穏と技術の向上。 それを阻害するなら私たちとしても害になるわ。」
どうやら「ブラッド」は今回大きすぎる組織と相手になってしまったようだな。 同情する気は無いが。
「飛空君。 あなたは「ブラッド」と面識があるそうね。」
「・・・ありますけど、どこからその情報が入ってるんですか・・・」
「悪いわね飛空君。 これでも私、顔が広いのよ。」
「僕の知人にね、警察関係の人がいてね。 その事で愚痴が入ってね。」
「なによぅ志狼君。 せっかくカッコよくキメたかったのに。」
「愚痴が入るのは分かるのですが、何故そこで俺の名前が?」
「理由は簡単、君が事件関係者だから。 そして重要人物だからだよ。 先程会長が言ったように君は「ブラッド」を知っている。 つまりそこから人物像が割り出せるかも知れないって事さ。」
なるほどね。 警察としても一刻も早く逮捕したいのね。
「でも相手はフードをしてましたし、暗かったのとこちらもいっぱいいっぱいだったので、そこまで詳しく語れるか分かりませんよ?」
「その辺は大丈夫。 入院中の彼女の体から取り出した弾丸からどんな銃を使ったか割り出して、そこから芋づる式に犯人まで持っていくつもりなんだって。」
それよりも長楽の肩に弾丸が残ってた事に驚きだったのだが、つまりあの時の長楽は盲管銃創状態だったって事かよ。 ほんとに危なかったな。
「そんな訳だから警察のつても使って我々も「ブラッド」の所在を追うわよ。 もしうちの生徒の1人だったら目も当てられないからね。」
確かにそれは信用問題に関わる。 それだけは避けたい所だな。
「彼女が戻ってきたら改めて聞くつもりなんだけど、飛空君、彼女からなにか聞いてないかしら?」
「こっちもお見舞いに行くだけで詳しい話は聞いてないですし、その場にいた俺でも曖昧な事が多いんですよ。」
「それでも構わないんだとさ。」
優遇されてんなぁ。 しかしあれだな、1人でやろうとしていたことをこうも大事にされると、なんだか自分が小さく見えるな。
「もちろん今まで以上に警戒は必要になるからその辺も気を引き締めてな。」
「が、学校が絶対の、あ、安置じゃないからね。 し、しっかりと戸締りはするのよ。」
「私としてもぉ。 そんな殺人鬼さんとはぁ。 会いたくないですぅ。」
「き、緊張感の、な、ないやつね。」
「だが気を張りすぎるのも良くないぞ。 適度な緊張と何にでも対応出来る柔軟性が今は大事だ。」
これは柔軟性と言うのだろうか? とは言うものの奴も真正面から啖呵を切るような馬鹿ではない。 なら奴にとっての最善手は俺が1人になった瞬間を悟られずにやること。 だかそんな簡単に1人になることは早々にないこの現状。 なにをしてくるかだけは可能性を増やしておかなければならない。
「ではこれにて今回の生徒会は終了。 飛空君、奴が少しでもこちらに干渉してくる素振りを見せたら容赦なく牢屋暮らしに送ってやりなさい。」
その一言でみな解散する。 その後に志狼先輩の所へ一度向かう。
「志狼先輩。」
「言わなくても分かってる。 彼の動向だろ? それとも警察が知っている限りの情報かな?」
それどっちも「ブラッド」関係だって言いたいんですよね? 無意味な選択肢を述べられたが、仕方なく後者を選ぶ。
「まずは正体は分かっていないんだけど、特徴的外見を言うと、身長は160cm、 ちょっと痩せていて、なにより驚きなのは歳は15歳の中学生だと言うんだ。 しかし夜に行動する事が多く、君のように第三者の介入は基本的に無かったから、かき集められた限りの情報とも言えるね。 たまたまその姿をみたとか、そんな感じ。」
「じゃあ容姿までは分かってもどこの某までは分かっていないって事ですか。」
「そういう事だ。 もっとも中学生だということは早々に分かってた見たいらしいけどね。」
「それはどうして?」
「送られてきたプラカードなんだけど、手書きで妙に文字が丸かったらしいんだ。 で、常用漢字があまり使われていなかったことから傾向的に中学生に結びついたんだそうだ。 ま、推測らしいんだけどね。」
それだけでも充分ではないか? まあなら最悪でも平日の昼間は仕掛けてこないと考えていいのかな? いやどうだろ? 潜伏先が分からないからそれも慢心か。
「ま、少なくともうちの学校に攻めてこようものなら一対多で圧倒的に倒すまでだからね。」
そんな無鉄砲っぷりはないだろうから何かしらの策は巡らせてくるつもりだろう。 何も起こらず、そのまま犯人逮捕まで言ってくれればそれでいいんだがな。
そして寮に帰ると何人かの生徒がいたが俺が来るなり掲示板に集まってたのだろう。 そこに道を開けてくれた。 掲示板に貼られていたものをみて俺は目を見開いた。
「我の計画に水を差した者に告ぐ。 汝は我の逆鱗に触れた。 次の汝が我と会う時は汝が守った者の鮮血を我が浴びていることだろう。 しかし汝にこれを止める術がないのは我は確信しておる。 汝の絶望の顔が目に見えるぞ。」
というプラカードが貼られていた。 予告の傾向から「ブラッド」であることは容易に分かった。 しかしそんな事はどうでもいい。 やつはもういちど長楽を狙っている事だということに腹が立っている。
「どうやらこれはやつを捕らえるチャンスと言ってもいいだろうね。 このプラカード、貰っていくよ。」
そういって志狼先輩がプラカードを持っていく。 去り際に、
「君は明日から授業が終わったら退院するまでは長楽さんのお見舞いに行ってあげてくれ。」
そう志狼先輩から小声で囁かれた。 そうだ、これはやつを成敗出来る機会なのだ。 奴には敵にしてはいけない敵だったと思い知らせてやろう。 それが俺がやつに出来る最大の配慮だと考えた。
盲管銃創についてわからない人の為に説明しますと、普通銃から放たれた弾丸は回転をしてるため、人間の体では貫通するのですが、その弾丸が貫通せずに体に残った状態が盲管銃創となります。 あくまでも分かりやすく説明したのでもっと詳しくは違うと思いますが




