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別世界で俺は体感バーチャルTPSの才能がとてもあるらしい。  作者: 風祭 風利
第9章 新学期に漂う不穏な空気
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番外編 気になる彼への想い。 (イバラ、青坂編)

今回はちょっと話の内容を考えるのにつまづいてしまったので、すこし方向転換をと思い、番外編にしました。

 私はイバラ、前の名前は弦舞 蜜音。 15年前の事件を境に肉体が無くなって、この寮の地縛霊のような存在になった。


 私は前の記憶がなかった。 自分がここにいる理由も、なんでこんなことになってしまったのかも、最近まで忘れていた。

 もしかしたら思い出したくなかっただけかもしれない。 それだけ今の私は複雑な存在になっていた。


 ここに来ていた生徒の人達は私が見えていなかった。 最初は寂しかった。 でも何回も繰り返しているうちに私は触れることも喋ることも諦めた。


 そんなことを覚えてないくらい繰り返した辺りだろうか。 誰もやらなくなった花壇にホースを使って水を与えていると


「あの・・・」


 と声を掛けてきた男子がいた。 これが私と飛空の初コンタクトだ。 当然記憶もないし、声をかけられたこともなかったので私は


「・・・・・・貴方は?」


 そう聞いた。 今を振り返るとあんなぶっきらぼうに返さなくても良かった気もしてきた。 でもそんなことを気にする様子もなく飛空は話をしてきた。 名前を忘れた私に名前もくれた。 花壇を手入れしやすいように道具を買ってきてくれた。 それが何よりも嬉しかった。 あの体になってから誰かから貰い物をされることがなかったからだ。


 その後服を買ってきてくれて着替えたら後から来た2人の女子、紅梨と白羽が私が見えると言っていて、私も飛空も驚いた。


 その時の紅梨や白羽なは感謝している。 久しく誰かと話す事がなかったので、女子トークというものが楽しかった。 飛空の事にも

 色々と聞かれたが変なことは言ってないはず・・・だよね? あの後の飛空、大丈夫だったかな?


 それから私を知る人が来たんだっけ。 あの時はさすがに忘れ去られてるかなって思ってたから、感動のあまり名前を呼んだけれど、まさかあの時に見えるようになってるとは思ってなかったから、私の事を色々と聞いたりもしたっけ?


 夏休みに入って、人がいなくなっちゃったからとてもつまらなくなっちゃってたけど、それでも飛空は定期的に私に会いに来てくれた。 だから寂しくはなかった。


 夏休みの最後は私にとって1番忘れたくない日。 機械的だったけれど、地面に足がついた。 半ば諦めていた事を実現してくれた矢萩学院の人にはとても感謝している。 彼女らがいなければ私はもう大地につくことはなかったと思っているから。


 でも、そんな地面につくことはおろか、電脳体となって他人には見えなかった存在だった私を見つけて、こうやってもう一度人として(もちろん厳密には人じゃないけど)の生活を取り戻させてくれた飛空。 彼にはとてもじゃないが感謝だけでは表せない感情が芽生えている。


 今まで触れることはおろか話すことも出来なかった私を、喋れるようにしてくれたのも、触れれるようにしてくれたのも、全部全部飛空のおかげなのだから。


 アンドロイドとして入れた私は彼と触れることを多くした。 ここまで出来たのも彼のおかげ、だから彼の体温を直に感じていたい。 機械の体だからかそれがよく伝わってくる。 心臓のない体だけれども胸の奥から込み上げてくる思いは紛い物なんかじゃない。


 私は飛空の事が好き。 だけど、飛空の周りには色んな女の子がいる。 彼女達は私のライバルとなる存在かもしれない。 でも私は彼女達と飛空の事で争いたくはない。 それは飛空が誰よりも望んでないことだから。 飛空が他の人と付き合う事になってもそれは「私はアンドロイドだから」で済む話なのだから。


「でも私も飛空と一緒にいたい気持ちは同じ。」


 今は誰もいない寮長室でただ生徒の、飛空の帰りを待っている時にそんなことをポツリと言った。


 ――――――――――――――


「瑛奈、なんか夏休みにあった?」


 学校の中で唯一話をしている友達にそんな曖昧な質問をされた。


 どこまでのことを言っているのかたまに分からないくらい話の幅があることを聞いてくる私の友達に当然の質問をした。


「なにか・・・って・・・何?」

「いや、なんていうか最近の瑛奈、なんていうか入学当初よりも少し明るくなったように見えてさ。」


 そんなに私は暗く見られてるの? 確かにそんな感じだからなんか気の強いグループには当然弱い所だけ見られる。 それはとても嫌なこと。 辞めて欲しいけれどそうやって言える勇気がない。


「私は・・・なにも変わってないと・・・思うけれど?」

「いーや、私には分かる! 貴方とは中学からの付き合いだから今までのあんたからしても変化が見られるわ!」

「そこまで・・・かな?」

「私が言うんだもの、自信を持ちなさい。 それで? 何があったの?」


 そうグイグイと聞いてこようとする友人だが、私もそれは分かっていての友達なので、そこは嫌じゃない。


「夏休みなら・・・お祭りに・・・行ったかな?・・・後は・・・海水浴に行ったり・・・も・・・したかな。」

「えーっ!? なにそれ!? 1人で夏休み満喫してんのよ!! 私も誘いなさいよ!」


 だって誘えないほど予定入ってたじゃん。 何度電話をかけたか分かんないよ?


「1人じゃ・・・ないよ。 交流会の時に・・・知り合った人と・・・行ったんだよ。」


「それってあんたと同じ部屋になった男子?」


 その言葉に肩が「ビクッ」ってなった。


「いいなぁ。 男子から誘われるなんて、なによ。 私よりも先に抜け駆けしちゃって!その男子と出来ちゃったの!?」


「ち、違うよ!? 飛空さんとは・・・そんな関係じゃ・・・」

「へぇ。 飛空さんって言うの。 私「同じ部屋の男子に誘われたの?」って間接的に聞いただけなんだけどなぁ。 そういう所でボロが出ちゃうよねぇ瑛奈って。」


 ハッと思って口を抑えるがもう遅い、こういうことをしてくる子だと分かっていたのについ口にしてしまった。


「あ、でも1年の一部では噂になってるよ? 瑛奈のこと。」

「・・・な、なに・・・? 噂って・・・?」


「3日目の朝食の時に男子とくっついていたそうじゃない。 しかもベッタリって話じゃん? これはうちの学校の噂も本当になるかもねぇ。」


 そう言われてあの時の行動を思い出して顔が一気に熱くなる。 あ、あの時の私はなにを・・・


「ねぇ。 私にだけでも教えてよ。 これは絶対に言わない、っていうか言ったら絶対に妬むやつがいるから言わないって約束するから。」


 そう言われたが何度も確認して、ようやく話そうと思った。


 交流会の時、私は人の多さに圧巻されて、元々人見知りが激しかった私にとってはこれだけの人の波に押し潰されそうになって、縮こまっていた。 みんなで部屋に泊まる時も部屋の端で蹲ってしまっていた。 そんな私に声を掛けてきてくれたのは飛空さんだった。 お互いに初対面だったけれど、飛空さんはどこか暖かな雰囲気があった。 まるで昔から飛空さんを知っているかのようだった。


 その次の日の朝に飛空さんの寝てる場所に入ってしまうという今までの自分では絶他にやらなかった事をしてしまったのも、今を思い返せば夜中に目が覚めて、どこか心細くなってそれを埋めようと飛空さんの所に入ったのかもしれない。 でも飛空さん、優しい感じがしてそのまま眠りに落ちちゃったから朝ほんとに大変だったよね。


 交流会が終わって、連絡先を交換したけれど、携帯という媒体を使わないと声も聞けないと思うと胸が締め付けられた。


 だから夏祭りの時はほんとにもう一度会えるとは思ってなくて、私の想いを伝えるのはここしかないと思った。 それなら夏祭りの雰囲気と勢いに任せて告白もしてしまった。 でも私に後悔はない。 もちろん他の人に取られてしまう可能性が高いけれど、それでもしっかりと、彼には伝えたので、私は満足なのだ。


「・・・・・・・・・・・・・」

「えっと・・・話は終わり・・・なんだけど・・・えっと。」

「・・・・・・あぁごめんね。 なんかここにいる女子の誰よりも女の子してたから唖然としちゃったわ。 いや悪口言ってるわけじゃないのよ?」


 なんとなく言っている理由は分かる。 ここの人は男子というものに飢えているせいなのか、どこかこう肉食な感じがある。


「なるほどねぇ、世の男は肉食よりも草食の方がいいのか、そっかそっか。」

「・・・私を参考に・・・しないでよ。」

「いやぁ、私も乙女だからさぁ。欲しいのよ私も。 ねぇねぇ、もし良かったらその人に男紹介して貰えるように取り繕ってよ。」

「・・・そんなキャラ・・・だったっけ?」


 紹介かぁ。 して貰えるとは思うんだけれど、次はいつ会えるかな? どんな理由であれ、もう一度会えたらいいなと少しワクワクしながら、彼にメールを送ることにした。

いかがだったでしょうか?

イバラはアンドロイドになった後、授業中は誰もいないので寮長室に一人でいるシーン。 青坂は新学期での昼休み中の時間で考えています。

これから飛空はどうしていくのかも見ものだと思います。

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