第7節 新たな説明と対戦、前半戦
そういえばあの時は武装しか説明されなかったからな。 ぶっちゃけた話、格闘についても何も触れられてないからな。
「マズハ耳ニツケテイルインカムデスガコチラハ「通信機」トナッテイマス。 コレデ味方ト通信ヲ行ウコトガ出来マス。」
インカムだからそれくらいは無いとな。
「続キマシテ武装ニツイテモウスコシ詳シク説明シマス。 アナタ達ノ武装ニハ「コスト」トイウモノガ存在シマス。 コノコストノ奪イ合ウノガコノ試合ノ目的デス。 チームノ総合コストは5000トナリマス。 コノ総合コストガ0ニナッタ時 チームノ敗北トナリマス。」
なるほどこの戦いは総合コストの取り合いだったのか。
そう言って自分の武装のコストを見ると「800」と書かれていた。 これがこの武装のコストの様だ。
因みに他のメンバーは、 海呂が「900」、紅梨が「850」、白羽が「700」となっていた。ここからコストを計算して、やられる前にやる。というのがいいらしいな。
「デハ最後ニ、検討ヲ祈リマス。」
クーリエからの声が消えた。 ブリーフィングでやる事がひとつ増えたな。
「さてコストの話をされちゃったね。 どうしようか?」
「みんなのコストの合計が3250になるわけでしょ? これってどうなの?」
「総コストは5000だったからもう1人は落ちれそうだよ? 紅梨ちゃん」
「多分これ落ちる順番によっては全員が1回ずつ落ちても、2人分はなんとかコストを確保出来そうだな。 コストの事は今は考えないで置こう。 2人がやられたら考えていこう。」
ブリーフィングが終わろうとしている。 その後向こうのチームの武装が開示された。 左側から
「浜 力」コスト750
ショートスタイル左右
「リボルバー式ハンドガン」
セミロングスタイル
「マシンガン」
ロングスタイル
「ガトリングガン」
「草彅 正義」 コスト950
ショートスタイル左右
「小型ガトリング」
セミロングスタイル
「ビーム兵装ショットガン」
ロングスタイル
「バリスタ砲」
「長友 佐奈」コスト550
ショートスタイル右
「ビームマグナム」
ショートスタイル左
「ビームフック」
セミロングスタイル
「クラッキングビームガン」
ロングスタイル
「ビッグメイス」
「山本 鮎」 コスト700
ショートスタイル右
「レーザーブレード」
ショートスタイル左
「小型シールド発生装置」
セミロングスタイル
「レーザーマフラー」
ロングスタイル
「レーザーガトリングガン」
正直どんな武器なのか想像がつかないのが度々見られる。武器の射程距離は大体分かるが見慣れぬ名前ばかりでどうにもこうにもと言った感じだ。
向こうのチームもこちらの武器を見て、把握しきれていない感じの雰囲気だ。 特性を知られる前にある程度コストを減らしておかないと厄介だな。
ブリーフィングルームが光り始め、目の前にいたはずの敵チームも消えた。 次に見た光景は、様々な高さのビルが並ぶ「都心部」という言葉が似合う場所だった。 どうやらここが戦うステージらしい。
「Will you select DEAD or ALIVE?」
それが掛け声のようで、試合が開始された。 一応制限時間があり、210秒以内に決着が着かなければ引き分けとなってしまう。
まずは相手の様子見からだな。 表示されているミニマップには自分たちのチームは青、相手チームは赤で表示される。 四角い表示は建物を示す。 基本的には中には入れないため、四角の上に表示されているアイコンは建物の上にいることを示す。
「相手は四方に分かれた。 こちらも前と左右で三方向から相手の様子を伺おう。 どこに誰がいるかは大体は相手の武装を見て、わかるとは思うけれど警戒は怠らないで。」
「じゃあわたしは最初にみなさんを回復しますね。」
白羽からの回復銃で回復を貰う。
最大体力値からさらに体力が上乗せされた。 その分白羽の体力が減ってしまうので注意よくみんなの体力を見なければいけない。 忙しいな。
地べたと並走してダッシュをして、ビルとビルの間のろじせ路地へと一度入り、使った分のゲージを回復させる。 ダッシュやジャンプをするとゲージが減り、その後なにもしなければ自然に回復する。 警戒しながら歩を進める。
「もらい!」
上から声がして大きめのメイスが飛んできたので、前にステップを踏む。 そしてその感性のまま、セミロングスタイルの「ブーメランチェイサー」を相手に構え、トリガーを引く。 相手は後ろに引くが無意味だ。 そもそも対面してる相手にバックステップは狙ってくれと言っているようなものだ。 背をむけなかっただけでも良いとは思ったがゲージが切れたのか、地面に着地していた。 ブーメランチェイサーはそのスキを見逃さない。 追い討ちとばかりにブーメランが発射されて、相手に突き刺さる。 光景は痛々しいが血のエフェクトが出るだけで本物の血ではない。体全体にブーメランが残っており、ダメージ量も相まって、相手がダウンした。 しかし体力は残っているため、すぐさまに起き上がり、その場を離れていった。
「ん、賢明な判断だよ。」
いつの間にこちらに来ていたのだろう。 海呂が突き当たりの角から出てきた。
「こっちに来てよかったのか?」
「様子見だったんだけどね。 あの様子じゃ出るに出れなかったよ。 もしもの時は助太刀するつもりだったのに。」
「そりゃ悪いことしたな。 さて激戦区に戻るぞ。」
「了解。」
路地裏から表通りに出てきた。 ちょうどその時右上から凄い勢いで紅梨がこちらに向かってきた。 お腹の辺りに槍が刺さっており、槍の速度そのままにこちらに飛ばされた事はすぐに理解出来た。 飛んできた紅梨を抱きとめ、勢いを殺すためその場で一回転する。
「大丈夫か? 紅梨。」
「え? あ、ありがとう、大丈夫よ。」
なんかダンスしてるみたいな恰好になったので、少し恥ずかしい。 紅梨が飛んできた方向を見ると、空中でボウガンを構えている男子が見えた。
あれが「バリスタ砲」か。 あのボウガンから放たれた槍が直撃すれば先程のように飛ばされてしまう。 ヘタをすれば孤立してしまうこともあるだろう。 そう考えていると2発目を放ってきた。 素早く回避し、それぞれの方向に散った。
「あのバリスタ砲は気をつけろ。 当たった瞬間にすっ飛ばすだろうから、バリスタ砲を構えたら注意しながら攻撃をするんだ。」
みんなに伝達をした後に右手足にピリピリとした衝撃が入った。
「ってっ!」
当たった方向を見るとガトリングガンを構えている女子と目が合った。 その後すぐにもう一度ガトリングガンから弾が発射された。 青白く細長い光線の様なものが俺めがけて飛んでくる。 あれがレーザーか、っととレーザー名だけあって速いな。
「感心してる場合じゃないか。」
少し建物の影に入り、相手の様子を見る。 近づいてこないところを見ると、近距離は苦手の様だ。 さてとどちらから出るか・・・
上、左右どちらかからしか出られない為少し考えて、
「いくか!」
俺は建物を背にして左側から現れた。 相手もこちらを見る・・・が出てきてない事に動揺が見られた。 どうやら相手は読みが外れたと思ったらしい。
「勘は鋭いみたいだけど俺の武装をよく見ていなかったみたいだね。」
そう俺はちゃんと左側から出ていたのだ。
透明になりながらだけどね。
光学迷彩銃で姿を消し、出て来たのだ。消えているとも知らずに目線を逸らした相手に語りかけ、そのまま空中でスパークガンを放ち、相手を痺れさせる。
「なにこれ・・・痺れ・・・」
言い終わる前に腰の刀を抜き膾切りをする。そして相手を切り抜けて鞘に刀をしまい、最後は「バチッ」という音と共に相手にダメージが入る。 ・・・・・決まった。 心の中でそう思った。
「こちら飛空、状況どうなってる?」
「こ・・こちら白羽・・・ ちょっと狙われ過ぎて・・・きゃぁ!」
その声とともに俺達の青ゲージが減少した。総コストが4300になってる所を見ると、どうやら白羽が落ちてしまったらしい。
「白羽が戻ってきたら一度合流しよう。 その後で体力のあるものと無いもので状況を合わせよう。 誰が落ちるべきで誰が残るか。」
状況に寄っては戦況は変わるが、これ以上なにもしないでいるよりはマシだろう。 白羽が戻ってきたので全員合流する。
体力管理に関してだが、白羽は戻ってきたばかりなので満タン。 海呂も自分の得意な射程距離で戦っていたのか、ほとんど体力が減っていない。
俺は先程レーザーガトリングガンを食らったせいもあって半分近くの体力になっていた。 紅梨が1番体力が少なく、見ると体力表示の部分が赤くなっていた。
「これから俺は紅梨の援護に入るが、白羽は海呂の回復に専念してくれないか? 海呂は一対多になった時は、無理に戦わずに逃げに徹してくれ。 紅梨は申し訳ないがそのままの体力で戦ってもらって、なるべく相手の均衡を崩してもらいたい。 もちろん無理にとは言わない、反対意見は聞く。」
「わたしは賛成です。 無理に延命させるよりは倒されて体力が完全な方が、今後に有利になると思うんです。」
「あたしも反対しないわ。 それにこの体力なら根性値がのるしね。 あんたの言う通り荒らしてやるわ!」
根性値とは体力が残りわずかの時に、身体能力が上がるシステムだ。 聞いた話では根性値が乗ると攻守が普段の1、3倍上がり、ダッシュするためのゲージの減少量が少し減るとか体力が減っても諦めるなとの暗示がかかっているようだ。
「ここまで賛成を推されて、僕が反対する理由もないね。みんなに落ちる回数は譲るよ。」
「・・・無理難題を言ってるように思えたけど、みんなホントにいいのか?」
「飛空さんの作戦を聞くとなんだかやれそうな気がするんです。」
「そうそう。 それでやる気が出るのよね。 あたしが倒れた後も頼んだわよ。」
「リーダーを任せて正解だったみたいだね。 僕じゃ多分そこまで考え付かないよ。」
・・・・なんだか申し訳ない気持ちになってきた。 結構即席だったんだけどな、この作戦。
「信頼されてますね。」
ヘッドホンから女神様の声がする。 信頼してくれてる仲間がいるなら俺もその意気込みに答えないとな。
「じゃあ、作戦開始だ!」
作戦通り俺と紅梨は前にダッシュする。 後ろでは海呂が白羽から回復を貰った後、 白羽と海呂、別々に動いた。
2人を届けた後、敵が出てきた。 相手も2人か。
実弾持ちとレーザー兵装持ちだ。
対面をして、俺はブーメランチェイサー、紅梨はエネルギーブラストとリフレクターを構え、 相手もレーザーブレードとシールド、ハンドガンを構えた。
レーザーブレード持ちが俺に向かって撃ってきた。 発射されたと同時に左に体を傾けてチェイサーを連射する。 しかしダメージを受けまいとシールドを貼ってきた。シールドにブーメランのエフェクトが表示される。その間に相手はもう一度レーザーブレードを放った。火力がある分反動が大きい。これが武器における特徴だ。流石に2発目は避けれない・・・・・な!
「ぐはっ!」
薙ぎ払うように銃を動かしたので横一文字に当たった。 痛ってぇ!!! これが痛みなのか!? 苦しくなる! でもこっちだってただではやられないぞ。 当たる寸前までチェイサーを撒いていたので相手のシールドの耐久力が無くなり、相手がよろける。
もちろんそのスキを見逃す訳がない。
紅梨がすぐさま向き直り、エネルギーブラストを直撃させる。
根性値が乗っていたせいもあって、レーザーブレード持ちの体力を0まで持っていった。
うへぇ、スゲェ火力、敵じゃなくてよかった。しかしハンドガン持ちに向き直ったのだが、相手も集弾率の高いマシンガンに持ち替えており、紅梨に全弾当てて倒した。
「あたしはやられちゃったけど、ここから巻き返しましょ。」
量子化する前に紅梨がそんなことを言う。
そう、ここまでは作戦通りなのだ。
さてここから反撃の開始だ!