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別世界で俺は体感バーチャルTPSの才能がとてもあるらしい。  作者: 風祭 風利
第8章 異世界での夏休み
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第72節 組み立てと本題、憑依

「飛空、今日は早かったね。」


 今俺がいるのは曜務学園の寮の前。 花壇のある場所に俺はいる。


 海水浴から2日後、矢萩学院の電脳科のみんながここに集まる事になっている。 俺はいち早く現場に着いてそれを待っているのだ。 そこには今回の主役とも言えるイバラがいる。 もっともイバラは今は俺しか見えていないため、対話は俺にしか出来ない。 しかし彼女は電脳体、もしかしたらと今回の実験には必要不可欠な存在ではある。


「イバラの為でもあるわけだから失敗しないことだけは願いたいところだけど。」

「複雑な気持ちだね。」


 それをイバラに言われてしまってはおしまいな気もしたが、気にしてもしょうがない。


「飛空君、待たせたわね。」


 そう思いを馳せていると、木崎さん、柊をはじめとした矢萩学院電脳科の面々が来てくれた。 もちろん学校側には俺から許可を申請した。


 そしてその面々を見てみると同じような白い鞄を7、8個持っていた。


「その中にパーツが入ってるのかい?」

「そうよ。 それと制御盤に装置を動かすための機械が入ってるわ。」


 それって結構な重さになるよな? それをみんな持ってるって事はみんなそれなりに


「細身でも力持ちな男子だっているでしょ? それと同じ。」


 まあそうだよな。 よくよく考えればこの世界の人間は電脳世界で戦っているとはいえ何かしらで身体を動かいているんだ。 それに武器だってものによっては重たいものもある。 一概には言えないよな。


「さて、これからみんなで組み立てていくんだけれど。」

「なにか問題でもあるのか?」

「ちょっと組み立てと起動に時間がかかるだけよ。 そのために早めに来たんだから。」


 なら大した問題ではないな。 それならと手伝うと言ったら「素人はあまり触らない方がいいわ。」と言われたので今はみんなと離れたところで突っ立っている。


「なんかみんな、凄いスピードで組み立ててる。」

「これから実験に入るし、なにより成功を願ってるからな。」


 当の本人も少しながら責任感を持っているようだ。


 そんな感じで組み立てから起動状態に入るまでに1時間。 時間がかかると言っていた割には早く終わっていたのだが木崎さんは

「うん、次はあと5分は短く組み立てられるかな。」なんて言っていた。 向上心逞しい人だ。


「・・・・・・ん? 前に見たよりもコンパクトになってない?」

「あ、気づいた? 実はね今回持ち運びをするという事で、サイズの縮小化と軽量化に成功したのよ。 その代わり挙動がかなり制限されちゃったからそのままじゃ可哀想だったから、動きのモーションを追加するデバイスを付けさせてもらったけどね。」


 そういって頭の部分に指を指す。 そこにはヤギのような渦の角がついていた。 これがデバイスになる訳か。


「今はそのデバイスも兼ね備わって、ある程度なら無線で行動を指示することが出来るんですよ。」


 パソコンを構えている女子がそう言ってくる。 だけどその必要はあまりないんじゃないかなって考えてる。


「さてここまで準備をしたんだから、なにをするのか教えてくれないかしら?」


 柊がそう本題を急かしてくる。 ま、そりゃそうだよな。 ここまでやってもらって何もありませんよじゃ、不完全燃焼も良いところだ。


「じゃあ本題を言う前にまずは話を聞いてくれないかな?」


 そういって俺は人差し指を立てる。


「冗談半分で聞いてもらって構わない。 俺が聞いた話をちょっと共有したいと思ってね。 話は15年前に遡るんだけど、ある少女の活躍によってこの世界の電脳世界は飛躍的に伸びていった。 しかしその代償はその少女の肉体だけを残すという、あまりにも悲惨なものだった。」


 その話を黙って聞いている矢萩学院の生徒の皆さん。 茶化されなくてありがたい。


「だが話はこれで終わらない。 その少女は肉体だけを残した。 屍となってしまった彼女は名誉ある死として供養された。 では切り離された魂は一体どこに行ってしまったのだろうか。」


 敢えてオーバーにリアクションをとってみせる。 ただ語るだけでは観客は引き寄せられないからな。 そして再度落ち着いた様子に戻る。


「そして話は現代になる。 俺はある日記憶を無くした少女にであう。 しかしその少女は他のものには見えない存在であった。 記憶を徐々に取り戻した少女の正体はなんと、15年前に肉体を無くしたその人ではないかと。 彼女は電脳体となりながらもこの世界をさまよっていたのだ。」


 一度イバラを見る。 悲しい顔をしていたがもう少しの辛抱だと思って耐えてくれないか?


「まさか、その少女が近くにいるの?」

「ああそうだ。 今俺の後ろにいるんだ。」


 矢萩学院の生徒の疑問に答える。 ここからが俺の考える本題だ。


「今から行うのはその電脳体になってしまった少女の魂をそのロボット、もうアンドロイドと呼んだ方がいいかな? それに憑依出来るかの実験がしたい。」

「確証が無さすぎます!」


 俺の本題に首を突っ込まれた。ま、そりゃそうだよな。あまりにも非科学的過ぎて思考がついていけてないんだからな。


「電脳体を憑依って・・・そもそも今のこの状況がギリギリだったりするんですよ? 成功確率が低いにも程がありますよ!」

「だから「出来るのか」と言ったんだよ。 誰も成功確率100%な事を言ってないだろ?」


「・・・・・・やってみましょう。」

「木崎さん!?」

「忘れた訳じゃないでしょ? 彼の一言があったからこそ、ここまでやれたのよ? ならその人の意見を反映してみないと。」


 ありがとう木崎さん。 これで準備は整った。


「イバラ、心の準備はいいか?」

「・・・大丈夫だよ。 飛空。」

「もし一瞬でも無理だと思ったらすぐに止めるんだぞ?」

「分かった。」


 他の人からは俺が虚空に向かって話してるようにしか見えない。

 俺の見えているイバラはアンドロイドの方へと行くと、覚悟を決めたように右腕をアンドロイドの中に通す。 次に左腕、足、頭、最後に身体の全体を入れる。 暫く沈黙が続いたが、アンドロイドがゆっくりと俯いていた顔を上げて、閉じていた瞼が開かれる。


「機体に異常は!?」

「・・・特に問題なく動いています・・・ というよりも機能を起動させるよりも滑らかに動いています。」


 ふぅ、どうやら第一段階はクリアみたいだな。


「イバラ、俺が分かるか? 俺がちゃんとその眼で見えてるか?」

「・・・・ヒ・・・ソラ・・・。 ワ・・・カルヨ・・・。 チャン・・・ト・・・ミエ・・・ル。」


 ちゃんと見えてはいるようだがその割には喋り方がぎこちないというか、なんというか声が聞き取りにくいというか。


「ふーむ、喋れる機能までは手が回ってなかったから次はそこかしらね。 でも、それくらいなら機器のある本校の方がやりやすいわね。」


 それならまあ仕方ないことか。 とりあえず実験である憑依には成功してるし、技術の改良は向こう側に任せるか。


「ありがとうイバラ、そこから出ることは出来るか?」


 そういうと首を縦に振ってその後すぐに電脳体のイバラが出てくる。 その瞬間に電源の入っていなかったアンドロイドが急に倒れそうになったので慌てて駆け寄って受け止める。


「ナイスキャッチ。」


 そりゃどうも。 木崎さんの一言でホッとする。


「とりあえず出入りが出来るみたいだからまたなにかあれば矢萩学院の生徒に任せればいいのかな?」

「それがいいと思う。 私じゃ構造が分からないから。」


 それは俺も同じなんだよな。 さすがにそこは産みの親である彼女らに・・・ってなにを驚いているんだ?


「嘘・・・ロボットから人が出て来た・・・」

「し、しかも足があるのに浮いてる・・・」

「あ、あれが電脳体? 初めて見た・・・」


 矢萩学院の生徒の一部がそうチラホラ聞こえてきた。 え?イバラが見えてるの? そうイバラを指を指すとみなコクリと頷いた。 マジで?


「・・・もしかしてアンドロイドに憑依したことによってみんなの認識が出来たって事か? いや、イバラの存在は知れてもこの状況まで認知出来るのは、やっぱりなにか関係してるのか?」

「飛空君。 これからアンドロイドは回収しちゃうんだけどいいかしら?」


 柊がそう聞いてきたので片付けて貰うことにした。


「電脳体の存在。 そしてアンドロイドの滑らかなる動き。 これを上手いこと使いこなせればほんとにアンドロイドの量産も夢じゃないかも!! 飛空君。 あなたの夏休みを私たちにくれないかしら?」

「それは構わないけれど、俺がいなくてもイバラが見えるなら本人に頼めば・・・」

「私たち以外の反応と意見が聞きたいのよ。」


 そう言われては仕方ない。 こりゃ別の意味で長い1週間になりそうだ。 というか俺の夏休み終わらね?


 そう思いながらイバラを見てみると、久々の地面に足がついたことが相当嬉しかったのだろう。 とても興奮気味だった。 そうこれはイバラの為の実験だ。 本人が乗り気なら乗ってあげるのもいいだろうと思った次第だった。

中途半端に終わりってしまった感じがありますがこれにて夏休み編終了となります。 次回からは新学期へと突入します。

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