第6節 モニターと観戦、考察
番号を呼ばれたメンバーは先生の所に行く。 そして二つのドアにそれぞれのチームが入る。 その間に上からモニターが出てきた。小さいのが8つ、大きいのが真ん中に1つと言った感じに。
「これから少ししたら戦いをモニタリングすることが出来る。 小さいモニターが各生徒の武装や体力を見れるモニター、大きいのは全体のモニターだ。」
先生がモニターについて説明をくれる。
「君達もこれからの戦いの参考にしてもらえるように配慮した。 なおこの戦いは上級生も観ているため、手の抜くことの無いように。」
新入生一同、緊張が走る。 そうこうしているあいだに互いのチームが戦場へと出てきた。
うわぁモニターが凄い事になってる。
小さいモニターにそれぞれの人物の名前と体力、武装と装弾数が表示されていた。 ここまで見えるのか。
ステージは最初にみた摩天楼だ。細かい障害物があるため隠れながら戦うのがセオリーだろう。だがこの戦いには空中ジャンプがある。当てるのは容易ではない筈だ。
試合が開始された。最初はもちろんぎこちなかったが、慣れてくればさっさか戦いになっていった。 おおっ。なかなかにいい試合になっているな。 右側のチームの1人のショットガンをモロに受けた相手のチームの女子だったが、ただでは倒れなかった。 着地地点に機雷を置いていたためショットガン持ちにダメージが入る。 別の所ではライフルの撃ち合いをしていた。 そこにお互いのチームのメンバーが助太刀に入り2対2の状態になった。
こうやって一つ一つ相手を観ながら自分たちの戦い方にも役立ててほしいと言うことだろう。
そう思っていたら試合が終わった。左側チームのかちだ。
終わった後にモニターが消えてドアから先程戦っていたチーム同士が出てくる。
「最初のデモンストレーションに利用して済まなかったね。 このような感じで最後までやっていくぞ。 次の対戦は3番と22番」
続いて呼ばれた番号のメンバーが入っていく。 次のステージは商店街の一角だった。 高さの違う建物を利用して奇襲を出来るかが勝負だろう。
しかし試合は始まりこそ良かったものの、試合が終わりに差し掛かるにつれて、どちらのチームにも荒さが見えていた。
「やっぱり最初の作戦のままで戦ってるから、予想外の展開には弱いみたいだね。」
「ダメージまで頭に入ってなかったんだろうな。多分ダウンするダメージ量しか考えてなかったんじゃないか? うちのチームみたいにヒーラーはどっちもいないし。」
「ホントあんた達の観察眼はそういうところまで見れるのね。」
「・・・ちなみに私達はどんな風に立ち回りますか?」
「教室で説明した通り、スイッチスタイルで行こうと思う。 相手に動きを悟られないようにしつつ、体力調整を考えて場面を変えていこう。」
作戦に関しては他のチームに聞かれないように小声でいう。
そう言っていると2試合目も終わった。 出てきた両チームとも険悪ムードになっている。 全員思い通り動けなかったから頭にきているのだろう。
「チーム戦がどれだけ重要な事か改めて考えてもらいたい。 では次 17番 12番」
こうして次々と戦いが始まっては終わっていった。 いい試合もあれば見てられないような酷い試合もあった。 中には一方的な試合もあったが、それはそれでいい経験になっただろう。
「では次、28番、7番」
次のチームが呼ばれた時に、7番のチームで見慣れた人物をみた。
「あ、見て、輝己と啓人だよ。」
「お、ホントだ。これは見ものだぞ。」
「なになに? 2人の知り合い?」
「寮で同じ部屋なんだよ。」
桃野姉妹に2人の説明をして、モニターを見る。 ステージは・・・ 鉄塔の中で戦うみたいだ。 かなり不安定な足場で上下どちらからでも敵が見えてしまう。 気の抜けないステージだな。
「あの2人の武器、かなり両極端っぽいよ。」
そう海呂に言われて2人の武装欄を見てみると、かなり目に止まる武装があった。
輝己はショートスタイルの右の武器がかなりゴツいものだった。 なんだあれ! マジもんの鉄球じゃねぇか! いっ・・・・いくら電脳世界とはいえ、あんなのまともには喰らいたくないな・・・
一方啓人はロングスタイルに目がいった。 なんといってもスナイパーライフルだったからだ。 しかも弾はビーム式だ。 ビーム式は装弾数こそ少ないものの撃っていながらリロードがされていく仕様になっている。 一発ずつのリロードだけどな。 後は啓人は昨日伊達だと言っていたメガネをかけていない。 あれが啓人のスタイルなのか。
啓人と輝己の試合が始まった。 2人の武器は両極端、残っている枠の武装はどちらも自衛用のものと推測できる。 しかし自分の特性を活かした武器だからだろうか、鉄塔という不安定な足場の中でもかなり優勢的に戦っていた。
「啓人君ってメガネを外すと相手の行動を先読みしちゃうって言ってたけど、スナイパーなら合点がいくよ。」
確かに、いくら対人とはいえかなりの頻度でスナイパーライフルでダメージを与えている。 しかも上空有利を取ってしまえばヘッドショットも訳ない。 ただしそれ以外の武装が強くない為、近づかれればかなり厳しくなるだろう。
「あのスナイパーの子、めちゃくちゃ動き回ってるんだけど、 スナイパーって相手を遠くから狙えるから、動かない方がいいんじゃないの?」
紅梨の意見も最もだ。スナイパーライフルと言うものは軌道がブレるだけで質はかなり落ちてしまうもの。だがこのTPSにおいては話がまるっきり変わってくる。
「敵にも味方にも自分の位置が把握されているこの戦いにおいてはそのやり方はむしろ狙ってくれと言っているようなもの。 それに本物の戦場でも、歴戦の戦士になると弾道だけでスナイパーの位置を把握させる可能性がある。 スナイパーが動くって言うのは間違っているようで実はあっているんだよ。」
啓人の話をしていて輝己を見ていなかったので輝己を見ていく。
相手に距離を詰めたと思ったらショットガンでダウンまでとって近づいてきた敵には鉄球を当てる。 後ろに鎖みたいなものが見えたので、星球武器の様なものだろう。 鎖は自動的に回収されるのでまた違うのかもしれないが。 そんな武器二つで相手をダウンさせた後は距離を取り、マシンガンの弾をばらまいていく。
「当てては離れて、近づいて当てて、また離れての繰り返しだね。」
「ヒットアンドアウェイって感じでしょうか。 一撃を確実に当ててる辺りは、相当訓練されてるように見えます。」
ヒットアンドアウェイ・・・ ボクシングをしていたと語っていた輝己の事なので、ストレートよりはジャブの方が得意な感じだろうか。
試合は啓人がリーダーとして引っ張っているようで、なかなか鋭い判断で舵を取っていて、それに合わせて輝己が攻めている感じだ。 おかげで戦況は7番チームが有利である。 有利ではあるのだが・・・・・・
「同じチームの女子が2人ともサボってるように見えるね。」
「ありゃほとんど動いてないぞ。 銃を構える素振りが全然見えない。 あ、今攻撃チャンスだったのに見送ったぞ。」
「ねぇ紅梨ちゃん、 あの子達同じ部屋の2人じゃない?」
「あ、よくみたらホントだ。 そういえば2人でなにか夜に話し合ってたけど、今の試合の状況に関係しているのかしら?」
「「戦わずして勝つ」と「戦わないで勝つ」は意味が全く違うぞ。 あ、敵を倒した。」
「でもあの相手だってほとんどが輝己が体力を取ってたよ。 漁夫の利を狙ってやってるみたい。」
どっちかっていうとハイエナじゃね? しかしあれじゃ組まれた輝己と啓人が報われないぞ。 可哀想に。
そういう感じの雰囲気が滲み出ていたのか、後ろの3人も同じような反応があった。
「同じ部屋の子だけど、あんまり友達としては見たくないわね。」
「なんか、人を使い捨てにしてる気がする。あの子達」
「正直あまり関わりたくはないよね。」
「激しく同意。 ろくな付き合いが出来ないと思うわ。」
そんなモニターの向こうの人物の会話をしていると、試合が終わった。 勝ったのは啓人率いるチームだった。 最後にスコアが全体に表示されて順位が付けられるのだが、やはりというかなんと言うか、啓人と輝己でワンツーを独占していた。 それもそのはず、1位の啓人の敵に対する命中率が、なんと7割5分、 4回弾を撃って3発当たっているのだ。 動いている敵に対してスナイパーでそこまで撃てるのはそうそういないと聞く。 ましてや足場の悪い鉄塔、動くことを強要されるゲームシステムでここまでやれるのは最早常人ではない。
一方輝己はハイリスクポイントが異様に高かった。 ハイリスクポイントとはいかに敵に見られていたか、ヘイト(憎まれ者)を稼いでいるかで味方への負担を減らすというものだ。前に出ればそれだけ見られるし、後ろにいても常に誰かに見られているとヘイトが重ねられる。
しかし逆を言えば、それだけ2人が動いた訳ではなく、むしろ残りの2人が動いてないという事になる。
「あれだけ暴れればそりゃヘイトは稼げるだろうが、負担がかかっている事にも繋がるからあんまり1人を突っ込ませるのは得策ではないな。」
「集中攻撃を受けなかっただけマシなんじゃないかな? 少なくとも3人以上に囲まれてたら手に負えなかっただろうね。」
「あたし達もそういう立ち回りにならないようにしないとね。」
「私がいるから、まだそんな事にはならないとは思うけれど、気をつけて戦うようにします。」
意思がみな固まった所でそれぞれのチームが出てきた。 輝己達のチームはやはりというかあまりいい雰囲気ではない。 というか輝己と啓人はともかく、なんで女子2人まであんな機嫌悪いんだ?
「よしそれじゃ次の対戦は・・・・11番と9番」
それから2、3試合続いた。 なかなか自分の番にならないが、もうそろそろ呼ばれるような気がしてくる。
「それじゃあ次は・・・25番、19番」
お、やっと自分たちの番になったか。
「それじゃ行こうか。」
自分たちの番になり、先生にインカムを渡されて部屋の奥に通される。 部屋に入り暫くしていると部屋が暗くなり、明るくなったと思ったら、電脳世界に入っていた。
「昨日ブリデスネミナサマ。 「バトルアシスタント クーリエ」デゴザイマス。」
インカムから声がした。 そっかバトルアシスタントだから、サポートもしてくれるのかな?
「ココハ「ブリーフィングルーム」デス。 コチラデ調整ヲシテカラ対戦相手ト戦ッテモライマス。」
青い光にチカチカするが、どうやら準備室らしい。
「ココデ昨日説明シナカッタコトヲクワシク説明サセテイタダキマス」