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別世界で俺は体感バーチャルTPSの才能がとてもあるらしい。  作者: 風祭 風利
第8章 異世界での夏休み
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第62節 お古と夏祭り、花火

『せっかくの夏休みやし、近くでお祭りやるみたいやからみんなで回らへん?』


 そう昼頃に輝己からお誘いが来た。 夏休みが開始してから3日間、これでもかと言うくらい個人課題に明け暮れていたが未だに高評価になるための突破口が見えない。 タイムは少しずつ伸びてはいるが、どこかで足止めをくらう。 今は自分の中での最低目標、2分半の耐久に力を添えている。 しかしいい加減心が折れそうになっている所のこれだ。 確かに夏休みらしいことを全くしていないので、こういうので気分転換を図るのも学生の務めだ。


「俺は構わんぞ。 場所はどこになるんだ?」


 そう返信をする。 あ、そう言えば甚平みたいなの今無かったよな。 今夜みたいだし買ってくるべきかな? そんな事を考えながら買い物に行こうとした時、


「飛空、おいで。」


 母さん(仮)に呼び止められた。 何事かとリビングに行くと一つの浴衣の様なものが机にあった。


「これからお祭り行くんでしょ? お父さんの古着だけど、良かったら着てみて。」


 そう言ってくれた。 確かにこのまま買い物をして出費するよりはお古でも貰えるものは貰っておいていいかもしれない。


「ありがとう母さん。 父さんにもありがとうって言っておいて。」

「せっかくの夏休みなんだから楽しんでらっしゃい。」


 そう言えば元の世界だったらこんな事言われなかったかもな。

 早速着てみることにする。 昔の世界のような浴衣ではないので帯がない。 まあ帯の結び方知らないから楽でいいんだけど。

 着てみると浴衣と言うよりかはやはり甚平に近いだろう。 青を基調に所々にラメ加工が入っていて綺麗な模様になっている。

 そんな風に着替えていたら携帯が鳴った。 輝己から返事が来たようだ。


  『場所は四間駅の祭りや。 規模はそんなに大きくないが割と楽しめるで。 という訳で飛空、いっちょお前さんの力で女子誘ってくれへんか? わいの連絡網に女子入れとらんねん。 ほな5時頃に四間駅に集合な。』


 そんな感じでメールが届いた。 言い回しが完全にチャラ男だぞ輝己。 つーか俺を連絡網代わりにすんなや。

 まあいい。 とりあえず桃野姉妹と山本姉妹に連絡入れるか。 後は夭沙繋がりで生徒会の人たちも誘ってみるか。 あ、ミステリアスサークルの人たちも呼んでみよ。 来るかな?お祭り。

 とりあえず準備を整えていると連絡が入った。


『誘ってくれたのは嬉しいけど、私達今は出掛けてるからそっちまでは行けないわ』(紅梨)


『私は務と回るから誘いには乗れないわ。 後多分他のメンバーも参加出来ないと思うわよ。』(志摩川会長)


『我々も行くつもりではあるが、かなり遅くなるから誘ってくれた時間には行けないよ。 ごめんね。』(二川先輩)


『私達は構わないわよ? ちなみに飛空君は浴衣着てくるの?くるの?』(鮎)


 という訳で参加するのは山本姉妹の2人のようだ。 と言うよりもなんで鮎はそんな事を聞きたがったのか分からなかったが、とりあえず着ていくと言っておく。


 時間が過ぎ、4時になる。 そろそろ出掛けなければ時間に間に合わないな。


 家を出て最寄り駅に行き、電車に乗る。 所々に浴衣や団扇を持ってる人やお子さん連れが見える。 やっぱり夏休みの風物詩だよな。夏祭りは。


 電車に揺られること15分、四間駅に着くまでにめちゃくちゃ人が乗ってきて押し寿司状態になったが、四間駅に着くとみんな一斉に出ていった。 はー苦しかった。 改札口を出てとりあえず待ち合わせのため改札口を出たところで待つ。 すると団扇を配ってる人が団扇をくれた。 と言うよりもその人に見覚えがあった。


「もしかしてバイトですか? 関先輩。」


 そう、団扇を配っていたのはミステリアスサークル所属の関先輩だった。


「おや飛空君。今日はお祭りだからね。 楽しんでくるといい。 私の他にも知り合いが屋台をやってるから、もしあったらよろしく言っておいてくれ。」


 それ関先輩の知り合いですよね? 俺のこと知ってるんですか?

 そう思っていると、


「あ、お姉ちゃん。 あれ飛空さんじゃない?」

「あ、ほんとね。 おーい!飛空君!」


 声をかけられたのでホームの方を向くと、黒の浴衣を着た夭沙と緑を基調とした浴衣の鮎がこちらに向かって手を振っていた。


「うっ・・・・・おっ。」


 2人とも学校での衣装とはまた違う雰囲気があって、簡単に言えば可愛いというより美しいといったものに近かった。


「おやおや両手に花かい? 君も罪な男だね。」


 関先輩にニヤケ顔でそう言われてしまった。 うーん気恥しいな。


「どう? 飛空君。似合う?」


 そういってその場でくるりと回る鮎。 対照的にもじもじとする夭沙。


「2人ともとても似合ってるよ。」

「ふふん。ありがとう。 飛空君も似合ってるわよ。」


 夭沙も言葉では示してないが嬉しそうだ。


「おう、もう揃っとるな。」


 改札口から別の声がする。 そこにはタンクトップ姿の輝己と普段着の啓人がいた。


「全く、祭りなのにそんな格好で来ないでよ。 祭りの真ん中でやってる太鼓の人じゃないんだから。」

「ええやんか、楽しんだもん勝ちやで。」

「気合い入れて着替えてきた俺らに謝れ。」


 その格好で来られたら馬鹿みたいだろうが。


「まあまあ、とにかく行きましょ?」

「人が多いですね。 はぐれないように気をつけて行きましょう。 」

「今年は花火もやるみたいだから更に混みそうだよね。」

「最悪の事態を避けるためにどこかではぐれたら集合出来るようにしようぜ。」

「ならここにしよ? わかりやすいやろ。」


 そう決めたところで祭りの人混みの中に入る。 出店の列もあって人混みが半端ない。


「うわぁ。 ここの祭りも凄いな!」

「なにか食べましょ? あ、綿菓子あるわよ!」

「私ベビーシナータ食べたい!」

「あのフランク美味しそうじゃない?」

「おおー色々と美味しそうやなぁ!」


 やっぱり祭りは楽しまなきゃな。 ちなみにシナータとはカステラのようなスポンジ菓子らしい。

 みんなそれぞれ食べたいものを買ってきた。ちなみに俺はクンティ焼きという、簡単に言えばイカ焼きである。


「お、射的あるで? あ、でも曜務学園はやれんようやで。残念や。」

「まあまあ、ほら輪投げなら出来るし。」

「あ、あれやってみません?」

「ホントだ、面白そうだね。」


 おいおいおい! みんな離れ離れになったらこの人混みじゃわかれちゃうだろ! や、やばい誰かの手でも繋がないと! 近くに見えた白い手を掴む。 この際誰でもいい! 誰の・・・・


「・・・・・えっと・・・・飛空・・・・さん・・・・?」


 引き寄せた手の先にいたのは一緒に来たメンバーではなく軟瑠女子校の青坂 瑛奈だった。


 桃色の浴衣姿で金魚を持っていて凄く可愛らしい風貌になっていた。


「えっと・・・・どうしたん・・・・ですか?」

「え? ああごめん。 うちのもんと別れないために手を握ったら君の手を握ってしまったんだんだよ。」

「あ・・・そ・・・そうだったん・・・・ですか。」


 このままここにいても迷惑だと思い、移動をする。


「1人で来たのかい?」

「はい・・・・今まで・・・来たことは無かったんですけど・・・。」


 来たことが無かったのに急に来てみたくなったなのかな?


「人混みは・・・苦手・・・ですけれど・・・楽しい・・・・です。」

「それは良かったね。 でもなんで急に?」

「それは・・・飛空さんのおかげ・・・・だと思います。」

「俺の?」

「飛空さんと・・・・会って・・・勇気を・・・貰いました。 少しずつでも・・・自分から・・・・動けるように・・・頑張って・・・行けたらと・・・思って。」


 なるほど。 心境の変化か。 人の成長を見るのはいいものだな。


「あ、花火もうそろそろじゃないか?」

「そう・・・ですね・・・。 あ、あの・・・折角なので・・・いっしょに・・・行きませんか?」

「そうだね。 どうせ見るんだから一緒に行こうか。」


 携帯で他のみんなに「花火会場に直接行くからそこで落ち合わせよう。」とチャットを送り、移動を始める。


「またはぐれるのも困るから。」


 そういって青坂に手を差し伸べる。 そんな行動に青坂は困惑をしていたが、俺の手を取り歩き出す。


 花火会場には多くの参加者がいた。これ見えるかな? それなりに身長の高い俺でもこの状況だ。 青坂の背丈では余計に見えにくいかも。


「もうちょっと離れて見るか。 青坂さん少し離れて・・・青坂さん?」


 いつの間にピッタリ付いていたのだろうか。腕にものすごく近くに青坂がいた。

「あ、ご・・・ごめんなさい・・・すぐに離れて・・・」

「いや、とりあえず少し離れたところで見ようか。」

「あ、は、はい。」


 少し離れたところに木があったのでそこまで行く。 意外と人がいない。 ここなら見えるな。


 そう思っていたら花火が始まった。

「おー、やっぱり迫力が違うなぁ。」

「そう・・・・ですね。」


 2人でしばらく花火を見ていた。


「あの・・・飛空・・・さん。」

「うん?」


 静かに見ていた青坂が話しかけてきた。


「先ほど・・・こうやって・・・祭りに来れたのは・・・飛空さんの・・・おかげだって・・・言いましたよね。」

「うん。 言ってくれたね。 ちょっと照れくさいかな。」

「それで・・・私・・・思ったんです・・・。」

「思ったってなにを?」


 花火の光に写った青坂の顔はどこか赤く染まっていた。


「私・・・あなたの事が・・・好きに・・・なっちゃったかも・・・しれないんです!」


 その決意に満ちた青坂の発言にとても驚いている。 最初に会ったときはここまで、言える子だとは思っていなかった。


「えっと・・・あの・・・」

「あ、やっと見つけた! んもー、どこに行ってたのよ!」


 何かを言おうとした青坂を鮎が遮る。


「あら? あなたは青坂さん?」

「ああ、たまたま見つけてな。せっかくだから一緒にって思って。」

「ならそれでもいいやん。 一緒に見ようぜ。 ええ場所見つけたな。飛空。」


 みんなで花火を見ることにした。


「私は・・・待ってます・・・よ。」


 何を待つのかは分からないが、今は花火を楽しむ事にした。

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