第49節 負ける理由と観客席、試合前のいざこざ
「僕が勝てない理由だって?」
「まず第一にお前はこれが団体戦だということを忘れていた事だ。 今の戦場をミニレーダーで見てみろ。 お前以外のメンバーは方法は様々だが、連携をしている。 単独で動いているのはお前だけだ。」
「お前だって1人で動いているじゃないか! 自分の事を棚に上げるなよ!」
「それが二つ目だ。」
そういって俺は右手の人差し指と中指を立てる。
「お前、仲間というものを信頼してないだろ? だから孤立しても助けに来ないし、助けを要請もしなかった。 多勢に無勢とは言うが、戦術としては間違いじゃない。」
「僕1人でも戦えるんだ! 僕にはこの武器があれば充分なんだよ!」
「それが三つ目、 武器を1つに絞りすぎだ。 何のためにスタイルが三つあると思ってるんだ。」
「お前のような奴に言われる筋合いはない! お前みたいな奴に、負ける僕じゃない!」
「なら四つ目、俺の挑発に乗りすぎだ。 今お前の現状が把握出来てるか? 姿を現し、お得意の武器のタネも割れた。 今のお前に俺に対して真正面から戦うのは不利の一言だと思うけど?」
「関係ないんだよ・・・・・僕にはこのマグナムがあれば・・・・お前なんか・・・・」
あーあ、ありゃ完全に頭に血が上ってますわ。
しょうがない。 正気に戻させてあげますかね。
「そして最後に」
その瞬間、二つの弾丸が菫の持っているマグナムのダイヤルめがけて放たれてダイヤル部分が破損する。
「なっ・・・・・! 僕の武器が・・・!」
「お前は、その武器の性能に、頼りすぎた。 もう純粋な力では俺には勝てない。」
そう告げたあと集落の屋根の方へとグッドサインを出す。
先程撃たれた弾丸は啓人のスナイパーライフルの狙撃によるもので、ある程度タネが分かった辺りで狙撃を出来るようにしてもらうために、通信をonにしていたのだ。
「さぁどうする? 試合は終わってないからその状態で続けなきゃいけなくなったけれど。」
中途離脱が許されていないこの現状、そして人を見下していた奴のやることと言えば
「ふふふふふふ・・・・ そうだよ。 まだ試合は終わってない・・・ たかがダイヤル壊した位で、勝った気になるなぁ!!」
そういって菫はマグナムを乱発する。 ま、こういう輩は戦意喪失か狂ってヤケクソになるかのどっちかだったから予想通りではあったがな。
「さてと、このまま続けると級頼高校に失礼だからチャチャッと終わらせるか。」
「貴様に級頼高校を語らせる筋合いはない!」
おうおう口まで悪くなってやがる。 こりゃほんとに終わらせないとな。
その後の流れを軽く説明しよう。 いや、これ以上無いくらいにあっさり終わらせちゃったもんでどうなったかだけでもと思ってさ。
ダイヤルの壊された菫はそれはもう照準がブレブレで、多分元からエイム力なんてものが無かったんだろう。 そこそこ近くても当たる気配が無かった。 そんな菫をあっさり1人で倒して、鮎や雪定と一緒に戦いながら試合をしていたのだが、ことごとく菫が入ってきて、敵の俺らにはともかく司などの味方にも撃たれる始末で、ひとりで暴走してるにも関わらず、味方からも見放された菫はもうどうする事も出来ず、級頼高校はそのまま流れるように敗北していった。 ミーティングルームに戻った時に、
「どうしたの? 勝ったのにそんな顔をして?」
と、鮎に指摘されてしまった。なんというか釈然としないんだよなと思ってしまっているわけで。
そんなことを考えていて外の世界へと出てくると、
「お前なんか、お前なんかぁ!!」
そういって菫が特攻を仕掛けてきた。 うぉい! リアルファイトしようとする奴があるか!
俺が驚いていると二人の女子、志摩川先輩と増本先輩が間に入り、菫の顔面に二人分のラリアットを決める。 突っ込んできた菫がそれをモロにくらい顔をテコにして頭から落ちる。 うわぁ痛いなあれ。
「こいつか?級頼高校での不正改造をしたのは?」
「どうもそうみたいよ? まあ証拠のものは壊しちゃってるし、停学止まりになるでしょ。」
「あ、あれ壊さない方が良かったんですか? あのままだと戦いにくかったから壊してしまったんですけれど。」
「いや、むしろ上出来よ。 あの証拠が残ってたら退学待ったナシだったし。」
「折角の交流会なのにそれではしまりが悪い。 まあ、こいつにはそれなりの罰は受けてもらうがな。」
そういってのびてしまっている菫をズルズルと連れ去っていった、と思ったら。
「飛空君。 せっかくだから大きめの観客席で観戦しなさいな。 時間になったらアラートがなるからそれまでに次のチーム決めておいてよ?」
志摩川先輩の配慮だろうか? しかしここは遠慮なく受け取ろう。
観客席に行ってみたはいいものの果たして席があるだろうか? そもそも知り合いに会えるかも若干不安だ。 啓人や雪定、鮎は先に観客席に行ってしまって会うことが困難な気がするし。 かと言って次の試合を立って観るのも
「あれ? 飛空じゃない。」
名前を呼ばれたので振り返ると紅梨がそこにはいた。
「どうしたのよ。 生徒会の仕事は?」
「志摩川先輩が観客席で観戦する許可をくれたからせっかくだからと思ってな。」
「そっか。 次の試合は後1時間はあるし、席は確保してあるわ。 と言うよりも広すぎるのと半分近くがフリーバトルで交流戦をやってるから席があまりに余ってるのよ。」
想定よりも多く作ってしまったのか。 何その持ち腐れ感。
そんなことを話していたら席に着いたようだ。 そこには白羽も座っていた。
「あ、飛空さん。」
「たまたま廊下ですれ違ってね。 席が無さそうだったから誘ったの。」
「次の試合の観戦がてらね。」
次の試合は健湾男子高校と軟瑠女子高校の戦いだ。 映し出されているモニターにはそれぞれのチームの戦いの記録が流されている。
しばらくその映像を観ていたら、
「ねぇ。あんたはどっちが勝つと思う?」
「真剣に観ていました、もんね。 どうですか? 飛空さん。」
そう双子から質問された。
「まあ、相性の問題があるけれど、もうどっちが勝つかは一目瞭然かな?」
「え? ほんと!? ねぇねぇどっちだと思うのよ!? 教えなさいよ!」
「教える! 教えるけど! ちょっとその前にちょっとお手洗い行かせてくんない?」
朝から用を足してないのを体が思い出したようで、次の試合前には行きたいと思っていたのだ。
場所を教えてもらい、用を足して戻ろうとした時、
「悪い事は言わん。 バーチャルの世界とはいえ痛みは感じたくなかろう。 早期に棄権をしたまえ。 曜務高校とは我々湾健男子高校が引き受けよう。」
「そんなの願い下げよ! 私達だって曜務高校とは戦いたいの! 勝手な言い分はやめて!」
そう男女がいがみ合っていた。 男子の方はガタイのいい、目測でも2mはあるんじゃないかと思わせる体格と茶髪のオールバックだ。女子の方は猫目で白い髪のポニーテールが特徴の感じだった。男子とは明らかに身長が釣り合わない。
話を察するに次の試合について話をしているようだ。 でもあれじゃ一方的だな。 一応止める義務はないんだが、見てしまった以上は仕方ない。
「おい、そんな風に強制するのは良くないだろ。」
二人の間に入る事にした。
「なんだ? 君には関係が・・・・・ おや君は曜務高校の・・・ これは失礼した。 俺は湾健男子高校の鬼山 浩二だ。 よろしくな、飛空君。」
先程までの態度とはうってかわって好青年のような感じになった。というか湾健高校の代表だったのかよ。
「で、そっちは軟瑠女子高校の人ってことでいいんだよな? 話をちょっと聞いていたけど。」
「あ、私は翁 霞美。 軟瑠女子高校の代表になったの。」
あんたも代表だったんかい。 いや話の流れ的にはそんな気もしていたけれど。
「ところで飛空君、モニターに映し出されていた我々の勇姿は見てくれたかな? 我々なら君を満足に試合運びが出来ると思うのだが。」
「ちょっと! なにもう勝った気になってるのよ! 勝手に話を進ませないで!」
「しかし君たちの戦い方ではいささか弱いと思うんだがね。 それでは彼に対して失礼だよ。」
そういって俺を指すが、あまりいい気分ではない。 むしろ馬鹿にされているようで、気分は悪い。
「そんな事言ってると、足元掬われるぞ?」
「掬われないように耐えればいいだけの話さ。」
だからそれが足元を掬う・・・・ っても分かって貰えない様だな。
「ま、あんたらの試合はじっくりと観て そこからどうするか考えるよ。」
「ああ、我々も君と戦えることを楽しみにしている。」
ほんとにもう勝った気でいるんだな。 翁のほうはもう泣く寸前だ。 正直このまま立ち去っても良かったが後味が悪いので、立ち去る前に言っておこうと思い、
「いつも通りの戦い方で構わないぜ? だけど」
そういって俺は鬼山に対して少し威嚇の表情をしながら振り返り、
「湾健男子高校は軟瑠女子高校には勝てないぜ? 相性の悪さとその傲慢さでな。」
そう言い放ち、その場を去った。




