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別世界で俺は体感バーチャルTPSの才能がとてもあるらしい。  作者: 風祭 風利
第5章 始まりは唐突に
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第37節 強引な誘いと買い物、決意の告白

「飛空さん。」


 学校に戻ってきて早々に夭沙に止められた。 明日も休みなのだが、正直気疲れしてしまったので、部屋に戻って一度寝たいと思っていたのだが。


「明日、私と付き添ってもらいます。」


 え? どういうこと? 明日は夭沙とどこかに行くって事か?


「それは別に構わないけど・・・・・なんで急に?」

「理由なんて今はいいのです。 とにかく明日は予定を入れないでくださいね。」


 なんか強く言われてしまったので、引き下がるのはおかしいと思ったのでそのまま条件を飲む。


 みんなが寮に戻っていくのを呆けていると、


「あの子凄く怒ってたね。」

「うーん、俺も何がなんだか・・・・」


 聞こえてきた声に反射的に返したが、振り返るとイバラがそこにはいた。


「飛空、あの子の言う事、明日は嫌だって言っちゃダメだよ。」


 いや、そもそも夭沙がなんで急に明日に付き添うのかがあまり理解できない訳で。


「飛空は試合の時は冴えるみたいだけど、色事になると、とことん鈍感。 それじゃ可哀想。」


 イバラの頬がぷっくり膨らませてそんな事を言う。 可愛いのだがそれに関してイバラが怒ってる (?)理由もあまり分からない。

 夭沙の怒りは・・・・・・・・まあなんとなく分かる。 そりゃいきなりあんなロマンチック展開、好きな人でなきゃあんな風に・・・・・・「好きな人でなきゃ」? あれ? 今なんか不思議な事を言った気がするんだけど。 つまりそれは夭沙は俺の事を・・・・いやいやそんなまさか。 でも仮にそうだとしたら・・・・・


「飛空?」


 イバラの声に我に返る。 考えすぎかな?


「すまないイバラ、今日はもう戻るよ。」

「うん、そうした方がいい。 飛空、なんだか疲れてるみたい。」


「みたい」って言うかほんとに疲れてるんだけどね。ちょっと今日はダメだ。 色々と心の整理が出来てない。 今日はやること済ませてとっとと寝ようそうしよう。


 それから朝までの記憶がすっぽりと抜けたようにかなりぼんやりとしながら起床した。 それだけ疲れていたのだろうか、それとも単純に考えるのをやめたからなのか。


 理由はともあれ次の日の朝を迎えた。 携帯を見ると一つのメールが届いていた。 送信者は当たり前だが、夭沙である。


『おはようございます飛空さん。 早速なのですが、朝10時に寮の前で会いましょう。』


 長くもなく短くもない文で大体の今日の予定がついた。


 時刻は7時半、珍しく・・・・は無いな。 元の世界でも何も無い時はとにかく寝ることが多かったからなぁ。 とりあえず色々と準備しますか。


 朝食を済ませ、出掛ける準備をして、正直ここまでで準備は終わりなのだが、最近思うのが、朝早く起きてまでそんなにやることがあるのだろうかと、疑問に思い始める。


 時刻はそれでも9時前、うむむどうするか。


 とりあえずイバラと話しておこう。 彼女なりのアドバイスをくれるかも。


「それは飛空自身で考えなくちゃダメ。」


 キツいお言葉ありがとうございます。 まあこれは言わば個人同士の問題。 流石に第三者の介入はおかしいか。


「とにかく彼女の機嫌を損なわない事が一番だと思う。 だから逆らうのは極力避ける。 それが一番の近道。」

「逆らえない状況にならなければそれでいい・・・のかな?」

「でも飛空だって悪いところはあったはず。 そこは謝るのも一つの手。」


 んー。 そのことに関しては俺からじゃないからなぁ。 根本的に。


「ちゃんと来てくれたんですね。」


 来てくれたもなにもそっちが呼んだんだし、予定も無かったから来たんです。 なにを言っても言い訳っぽくなるから何も言わないでおこっと。 イバラの姿は消えてる。 そう言えば消えてる間でもイバラはこっちが見えてるんだよな?


「では行きましょうか。」


 そう言って俺の腕を引っ張る夭沙。 後ろを振り返ると手を振っているイバラが見えた。 まあとにかく彼女の動向を探るとして。

 最初に着いたのはイバラの服を買った洋服屋だ。 やっぱりオシャレに気を使うとなると、服とかアクセサリーとかは必要だよな。


「まあ今の恰好も充分可愛いんだけどな。」


 夭沙の格好はボーダーシャツにサロペットと呼ばれるズボンと服の前部分が一体化して背中部分を太い紐の様なもので止めたもの (オーバーオールって言った方が早いか)を着ていた。 プライベートらしい恰好で俺は好みだ。


 そんな声が聞こえたのだろう。 夭沙がこちらを向いて、


「ふふ、ありがとうございます。 でも褒めてもなにもありませんよ?」


 ご機嫌気分でそう言った。 機嫌が良くなるのはいい事なんだけど、どうも若干引っかかるのは性だろうか?


 2人で服を選び始めるとまず自分の服よりも相手の服を最初に選んで、次に自分の服を選ぶ。 お互いに「自分より他人なのか」と思うところがある。


 その後はすんなり決まって、小型のスーパーに寄って、食糧調達ならぬおやつ調達タイムに入る。


「そう言えば、夭沙はお菓子はどういうの食べるの?」

「やっぱり甘いものでしょうか。 でも甘しょっぱいものも好きですよ。 ほら良くあるじゃないですか。 レモネード味とか。」


 あれ甘しょっぱいものだったっけ? でも言いたいことは分からんでもない。


「俺もブルーベリーとか味としては好きだなぁ。」

「ブルーベリー?」


 ありゃ、ここにはないのか。 そう思って果物売り場に行くとブルーベリーを発見した。 なんだ、あるんじゃん。


「それは「パルト」ですね。 青い見た目とは反してとても甘い蜜がでてくるんですよ。」


 こっちと元の世界の果物事情は違うようだ。 せっかくだし買ってこうかな。


 その後買い物を終えると、お昼過ぎになっていたので、近くの露店で買い食いする。 見た目はカレーパンのように見えたが、噛むとジュワッと肉の旨みと肉汁が口の中に溢れ出た。 小籠包を揚げたようなものかというのが感想だ。


 食べ終える頃には別の目的地に着いていた。 着いたのは本屋だった。 そう言えばこっちの本ってどんな本があるんだろ?


 店内の案内標識を素通りしつつ見ていると、夭沙が止まった。 そこは漫画コーナーだった。


「へぇ、漫画読むんだ。 ちょっと意外かも。」

「姉もよく読むので、姉は恋愛もの、私は冒険ものって感じでしょうか。」


 それもまた意外というかなんというか。 性格的には逆だと思ってたんだけど。


 本屋も適当に2人で回った。 夭沙の方は読んでる本の新刊があったのでそれを買い、俺は気になった小説があったのでそれを買う。そんな事をしていて、寮に戻る頃にはすっかり夕方になっていた。


「飛空さん、この後プライベートルームへと来てください。 話したい事があるので。」


 これ以上何を・・・・と思ったが敢えて言わないでおく。 理由はともあれ多分表沙汰では出来ない話なんだろう。

 その後色々と準備をし終わったあと、装置をつけて、一つの部屋に入る。 すると (作った本人なのだから当たり前なのだが)夭沙がそこにはいた。


「飛空さん、今回は買い物に付き合ってくださってありがとうございます。」

「それはいいんだけど、あんな回りくどい事しなくても・・・・・」

「そこに関してなのですが。」


 夭沙は何かを決意したかのような目でこちらを見ていた。


「私自身も最初は飛空さんに迷惑かなって思ったんです。 そもそも私たちはそんなに知り合ってる仲ではないし、つ、付き合ってたりする訳でもありません。」


 そんな事は百も承知なのだが、なんか今日の夭沙は煮え切らない所が所々見られる。


「でもあの時、芥川さんと、キ、キスを、しようとした時、いや正確にはしてるんですけれど、あ、いや唇同士ではないにしても、その、ほっぺに唇をつける行為がその、キス、ということになるのかならないのかその所もまた、」


 なんか文と文に脈絡が無くなって来たな。 どう返せばいいか分からん。 そう思っていると、夭沙は深く深く深呼吸を始めて自分自身を落ち着かせた。


「私はあの時、芥川さんに対する嫉妬があったんです。 それで、今日こんな形で買い物に付き添って貰いました。 私も頭が真っ白になっていた部分もあるのでそこも。」


 そこまで言うと夭沙はもう一度深呼吸をする。 そして意を決する顔をして、こちらに向き合う。


「こんなに回りくどい事を言ってももう意味がありません。 私はもう、ハッキリと言います。」


 その言葉に俺も固唾を飲む。


「わ、私は、あ、あなたの事が、す、す、」


「好きなんです!」「夭沙? 何してんの?」


 多分一番大事な部分であっただろうセリフは、ドアの開く音と鮎の言葉にかき消された。


「全く、1人で部屋立てて、特にやることも・・・・・ あら飛空君。」

「お、お姉ちゃん!? いつの間に!? って言うかもう戻ってきたの!?」

「やることもないし、仕方ないから戻ってからなんかしようかなと思ったんだけど、なんか切羽詰まった感じ?」


 切羽詰まったどころか肝心な部分全部持っていった感じなんだけど。そうして、俺と夭沙を交互に見た鮎は、


「ふーん。 今の私はお邪魔虫かしら? それじゃあ、また後でって事で。」


 そう言って鮎は退室していった。


 去っていった後俺と夭沙はお互いを見合って、押し黙る。 さてどうしたものかと。


「えっと、その、も、もう一回って駄目ですかね?」

「それ夭沙的にはいいの?」

「そうですよね。 ・・・・・・ちょっとしゃがんで目を瞑って貰えますか?」


 まあ断る理由もないので従う。 すると左頬に冷たい柔らかい感触が伝わった。


 目を開けると顔を真っ赤にした夭沙がそこにはいた。


「と、とりあえずこれは受け取って、下さい。 そ、それでは!」


 そう言って部屋を出ていった。 柔らかい感触を思い出しながら、俺も部屋を出た。

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