第35節 待ち合わせと円商高校の面々、申し出
イバラの事が少し分かった3日後、俺は生徒会の仕事として、これから「円商電信専門高校」の生徒会と話す為、その送り迎えをしてくれる校長先生と他の生徒会メンバーを待っている・・・・・・のだが、流石に早すぎたようだ。
まあ、出発が11時なのに、3時間前に来るなんてなんとも馬鹿らしいよな。・・・・・・一旦部屋に戻るか。
そう思い、寮の扉を開けると、イバラの姿があった。 今は週末なので、少々大胆に出ても、気にする必要は無い。
あれから明石さんと共に寮母室を使っている。 彼女は今でこそ食事もしているが、俺に存在が認知されるまでは、それをしないでもなんとかなっていたようだ。 明石さんの言うように彼女は今、「電脳世界と現実世界の狭間の存在」であるため、身体的苦痛は今の所は感じにくいらしい。
「おはようイバラ。 今日も花壇いじりかい?」
「おはよう飛空。 渚はまだ寝てるから、やること無くて。」
「そう言えばあれから、明石さんとはなにをしているんだ?」
「カードゲームが多いかな? 渚強い。」
まあルールを覚えたての新人相手に玄人の人がそんなに大人気なくていいのか。
「あれからどう? なにか詳しい記憶でも思い出せた?」
「ううん。 取り戻したって言っても真理恵が教えてくれたくらいの事しか。」
知ってる人間から記憶を生成し直すのは決して間違ってはいない。 変なことを教えてる様子も無かったし、あの人から少しずつでも記憶を共有出来ればそれでいいのかも。
「しかし、せっかく名前を突きとめたのに、俺はイバラって呼ばなきゃいけないのがなぁ。」
「むしろ飛空はそっちで呼んでくれないと私がむず痒くなる。」
んーそんなものなのかな?
「そろそろ植物に水をあげなきゃ。」
「おっとすまんな。 止めちまって。」
「んーん。 気にしてない。 飛空と話すだけでも嬉しいし。」
そう言ってくれるとこっちもむず痒くなるな。 そういって、寮から出て、手入れをするイバラを1時間ほど見ていた。 なんで、正確な時間が分かるかって言うと、
「やあ飛空君。 キミも早いんだね。」
「おはようございます。志狼先輩。 そんな時間ですか?」
「いや? まだまだ時間はあるよ。 後1時間近くは先だ。」
「え?じゃあなんで来たんですか?」
時計を見ると、9時半をさしていた。 この人も待つタイプだろうなとは思っていたが、どういう事だろうか?
「外で君が外に出ているのが見えてね。 君と話をしようかなと思っていたんだ。」
はぁ、それはまた。 確かにまだ誰も来ていない状態でただ待ってるのもあれだもんな。 せっかくだし色々と聞いてみよう。
「ここでの生活は慣れたかい?」
志狼先輩のそんな言葉に一瞬俺がこの世界の人じゃないことがバレたのかと思ったが、すぐに寮生活での話だということが分かった。
「ええ、まだまだ学ぶことが多いですがとても楽しいです。 みんなでミッションに行ったり、買い物したりと、とても電脳世界での生活も充実しています。」
これはかなり本音だ。 前の世界では絶対に味わえない感動を今俺は体感している。 これ以上に嬉しい事があるわけが無い。
「そうかい。 やはり君はいい人間だな。」
「悪い人間が生徒会に入れないと思うのですが。」
「確かにそうかもね。 力が全てじゃない。 最小限の力を最大限活かす方法を考える。 これは現校長先生のお言葉だよ。」
あの校長先生がそんな事を言っていたのか。 入学式の時はかなりぶっきらぼうな人かと思ったが、考えてる所は考えてるようだ。
「君と夭沙君はなにか興しそうな勢いがあると僕は睨んでいるんだ。 もちろんいい方向でだ。」
「随分と俺達の肩を持ちますね。」
「それだけ君達は信頼されているということだよ。 志摩川先輩も幸坂も生徒のことをしっかりと見ている。 君たちの戦いっぷりは彼らからスカウトされるのに匹敵したってことでもある。」
「あの最初の一試合だけでですか?」
「見る人はしっかりと見るんだよ。 君にもいずれ分かると思うよ。」
そういうものかね? 人を見る目か・・・・・俺には無いような気がするんだけどな。
「おはようございます。志狼先輩、飛空さん。」
「おはよう諸君、早いのはいい事だ。」
そう志狼先輩と話していると、夭沙と幸坂先輩が来た。 噂をすればなんとやら。
「今の所はこの4人か、相変わらず早いな朝塚は。」
「でもこの場所に一番乗りは飛空君なんだけどね。」
「いい心がけだ。 誰よりも早く来るとは、相当やる気があるように見えるぞ。」
「ええ、この交流会の話、失敗したくはないので。」
「その心意気や良し! 期待しておるぞ! 生徒会諸君!」
第三者の声がしたので振り返ると、そこには黒い乗用車をバックに腕組みをしている、稲畑校長先生と同じく白の乗用車で登場した、錦戸先生がそこにはいた。
「おはようございます皆さん・・・・ではないようですね。 他の方々は?」
「まだ出発まで1時間近くはあるので、それなりに準備をしているのかと。」
錦戸先生の質問に志狼先輩が答える。
その後は一人、また一人と集合して、最後に歌垣先輩が来て、出発することになった。 ちなみに男子は校長先生の車、女子は錦戸先生の車に乗ることになった。
円商高校 (みんながそう言っていたのでそう略すことにする。)
に着くまでに色々な話をして、ある一つの山に差し掛かった時車が止まった。
「どうしたんです? なにかトラブルが?」
「飛空君は初めてだったね。 この先の道を見てみなさい。」
言われた通り見ると、岩肌が出ていて工事のされていない山道が見えた。
「この先に円商高校があるんだ。」
「え? この先ですか? これじゃあ車は通れないし、ここから歩くんですか?」
「飛空、アンチグラビティシステムは授業で習ったな?」
「ええっと確か、重力に従わないで、電磁波を利用した反重力を取り入れたプログラムの事ですよね?」
「概ね合っている。 ではそれが可能な物とはなんだと思う?」
「え? ええっと電磁波を利用するから・・・・」
「金属反応を人工的に電磁波反応として応用し、地面の電磁波と逆の電磁波を流すことで電磁浮遊が可能になる。 つまり、金属の付いたもの、タイヤのフロントのような大きな金属でも役割は果たせるんじゃよ。」
「・・・・・・・それってもしかして・・・・・!」
「この2台の車にはアンチグラビティシステムが搭載されておるのじゃ。」
そういうと、車内がフワッとした感覚に陥り、そのまま前へと進む。 スゲェ!! まさか車が宙に浮く日が拝めるとは!!
「後もう少しじゃな。ちゃんと捕まっとれよ。」
その後はものの数分で円商高校の門に着いた。 そこで何人かの先生と生徒がお出迎えしてくれていた。 降りると早速
「お待ちしておりました曜務電脳統合学園の皆様。 私は円商電信専門高校校長轟 焔と申します。」
校長先生と同じくらいの歳で若干老けた感じの方がそう説明する。
「これはこれはご丁寧に。 わたしが曜務電脳統合学園校長 稲畑 竜です。 どうぞよろしく。」
お互いに手を差し伸べて握手をする。
俺達も車を降りて、生徒会であろう向こうの生徒と顔を合わせる。
「ん?」
そんな中で一人、左後ろにいる、黒の芝生頭男子に何故だか見定められてるように見られていた。
「立ち話もなんですし、どうぞ中へ。」
円商高校の中は少々古い感じもしたが、雰囲気はそれっぽい。 あの学園に慣れすぎたせいか、普通の学校の感覚を忘れていたようだ。
そう周りを見ながらものの数分で、「会議室」と書かれた部屋に招かれてお互い向かい合うように席に座った。
「では今回の交流会について話し合いましょう。」
「今回の交流会の発案者の志摩川 円香です。 今回の交流会において、お互いの学校の技術と信頼を深く、より強固にするため、今回の企画を発案しました。具体的には交流戦という形にはなりますが。」
「円商電信専門高校 生徒会会長増本 名雪よ。 その発案にはこちらも大いに賛成だ。 だが我々だけでやるのも少々気が引ける。 と言うよりも、視野の広がり方がまだ狭いと考えた。」
「どうするおつもりで?」
幸坂先輩の質問に俺も緊張が走る。
「先程申された交流戦。 これを大規模にやろうと思っている。
我々の考えは「学校対抗戦」だ!」
「なるほど、確かにその方が視野の広がり方はグッと上がる。」
「我々の学校でもいくつかの学校にアタックをしている。 これが成功すれば、より良い技術の発展が生まれると信じている。」
「ではここからは我々校長のみの話としましょう。」
「そうですな。 生徒会諸君、曜務学園の生徒会の皆様に学校を案内してあげなさい。」
「かしこまりました。」
そういうと、俺達生徒は会議室を後にした。
「あなたと少し話がしたいので、校内を案内した後、1人になれる時間を作っては頂けないでしょうか。」
その声に反射的に振り返ると、1人の背の低い、青いポニーテールの女子がいた。 先に出たはずの円商高校の生徒会の人からいつの間に俺の後ろに? そう思ったが、戻っていってしまったため、何も聞けずにただただついていくだけだった。




