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別世界で俺は体感バーチャルTPSの才能がとてもあるらしい。  作者: 風祭 風利
第5章 始まりは唐突に
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第34節 イバラの今後とミッション2回目、女神に質問

「まさかほんとに存在してるとわね。」


 日の落ちた花壇とイバラ、そしてイバラと思い出を話す須藤さんを見て、明石さんが呟く。


「俺も最初は驚きましたよ。 目の前に人がいるなって思ったら明石さんが来た時に消えるんですもん。」

「でも今は私にも見えてるわ。」


「やっぱり「認識してもらえる。」って言うのが、彼女の存在を見えもらえるための条件なんですかね?」

「そういうことなんじゃないかな? ちなみに君と私たち以外に彼女が見える人は?」


「後は桃野姉妹だけです。 あの時はイバラに今着てる作業着を着せたら見えるようになったみたいです。」

「もしかして今彼女は、現実と電脳の狭間にいる存在なのかも。 だから服を着せたら見えるようになった。 そう考えられるわね。」


 でもそれで済むような話ではないだろうと、俺は思う。 もっと詳しい条件があるはずだ。


「で、彼女どうしますか?」

「どうもこうも無いでしょ。普通の人には見えないで、尚且つ害がないならそのままでも問題は無いわよ。 でもあのままって訳にもいかないのがねぇ。」


 そう、まさにそこなのだ。認知出来る人間が増えればそれだけ、イバラが不安定な存在だということを知らしめてしまうことになるのだ。


「今の所は打開策がないから。 とりあえずは様子を見ましょう。」

「そうですね。」


 そう話を切り上げると、イバラ、もとい蜜音さんがこちらに寄ってきた。


「話、終わった?」

「ああ、イバ・・・・・・蜜音さんももういいのかい?」

「イバラでいいよ。 飛空のくれた名前、気に入ってる。」


「そう言えばこの子、君に異様に懐いてるようにみえるんだけど、なにかしたの?」

「まあ、見つけてくれた事とか、服とか道具とかをあげたりしたくらいなんですけど。」


「あんたそれ他の女の子にやる時は気を付けなさいよ? 痛い目を見るわよ?」


 なんか女神様と同じこと言われてる気がする。


 そう聞き流していると、須藤さんが息を荒くしてこちらに駆け寄ってきた。


「津雲君。今回の事はありがとう。 ほんとに彼女の思いが残ってて良かったわ。」

「こちらこそありがとうございます。 イバラの過去を教えてくれて。」

「私はこれで帰るわ。 蜜音。またお話しましょう?」

「うん、またね。真理恵。」


 そう言ってお互いに別れる。 須藤さんは思いっきり手を振りながら学園を後にしていく。


「じゃあ、私たちも戻りましょうか。」

「そうですね。 友人をかなりの時間待たせてるので、早く部屋に戻らないと。」


 そういって俺と明石さんは寮へと入る。そこで明石さんが疑問に思ったようだ。


「蜜音さんは入らないの?」

「入らないと言うよりは入れないと言っほうが・・・・・・今はどうなんだろ?」


 俺はイバラに手招きをして、寮へと誘導する。 すると、前回は入れなかったイバラが今回はドアをすり抜けて入ってこれるようになっていた。


「寮に入れた・・・・今まで入れなかったのに・・・・」

「認知度の問題かもな。 認知出来る人間が増えたからこうして入れたのかも。」


 その後物は試しと、イバラにあげた園芸一式を持ってきたがイバラが持ってもすり抜けてこなかった。どうやら直接密着している服は通るが、物など間接的なものはダメなようだ。


「でも入れただけいいじゃない。 どうせほとんどの人には見えなから、寮母室に来なさいな。」

「ありがとう、明石。」

「あら? 私には名前で呼んでくれないの? 津雲君は名前呼びなのに。」


 ニヤニヤしながら明石さんがそうイバラに聞く。 紅梨にも言われたが、俺が特別なんか? いや今の所男で見えてるのは俺だけなんだけども。


「じゃ、じゃあ渚?」


 イバラが困惑していらっしゃる。ある意味レアだな。 そんな様子を見てか明石さんは「よろしい。」と言わんばかりに指を突き出した。


 あれからイバラは寮母室に入り、しばらくは明石さんといるようだ。 多分募る事を話したいのだろう。 そして俺は俺で部屋に戻ると、装置を着けた3人の友人を見ながら、自分も装置を着ける。


 あれだな。本来なら異様な光景だと思えるんだけど、慣れるとそうでもないって感じるのはこっちに慣れ始めてるからなのかな?

 プライベートルームに入り、部屋番号と同じルームに入る。 すると今はミッション中らしく、その様子がモニターに映し出されていた。


「あ、話終わった?」


 ミッションが終わったようで、ここにみんな戻って来たみたいだ。


「あぁ、話はな。」

「なんや? その微妙な返事は?」

「・・・・・飛空も来たけど今日のミッション軽めにしようか。」

「お?おお。 別にかまへんが・・・・どうしたん啓人?さっきのミッションでくたびれたんか?」

「うん。 ちょっと目を酷使しすぎたみたい。」

「それは良くないね。 ごめん飛空。 ミッション内容ちょっと変更してくるよ。」

「あ、ああ。」


 そう言って海呂がミッション選びの場所に向かう。


「輝己、ついて行ってあげてくれる? 輝己が好きなミッション選んでもいいから。」

「そうか? なら行ってくるけど。」


 輝己を送り出したあと、啓人がこちらに語りかけてきた。


「他の人にはあまり話したくないことでしょ? 敢えて僕も聞かないけれど、そんなに悩んでいるのは君らしくないよ。」


 どうやら見抜かれていたようだ。 もっとも聞いてこないあたりは優しさを感じる。


「悪いな。 少しばかり落ち込むような事があってな。」

「下手に顔を取り作らなくてもいいよ。 悩む時は悩めばいいんじゃない? 僕らじゃ解決出来ないかもしれないけれど、それでも君は信用出来る人間だからね。」

「そりゃどうも。」


 ミッションを選び直してきた海呂と輝己が帰ってきて、とりあえず適当にミッションを流す。 流すと言っても、ほとんど俺の出番が無かったと言った方が早いのだが。


 近距離では輝己のヒットアンドアウェイ戦法が活かされたし、逆に遠距離は啓人のスナイパーが輝いていた。 そうなると俺と海呂はサポート中心になるのだが、俺は足止めをするだけで、ほとんどは海呂に取られてしまった。


 申し訳ない気持ちでいっぱいだったが、啓人が「悩み事がある時に前線なんか任すことできないよ。」との一言で納得した。


 その後はもう装置を外して、みんなで頭痛薬を飲んで眠る。


 目が覚めるとなんだか定まらない夢が出てきた。 自分にとっては3回目の「女神様が作り出した夢の世界」に来たのだ。


「お久しぶりですね。 飛空さん。」


 女神様の声を聞いて、対面を果たす。


「聞きたいことがあったから作ってもらったけれど、大丈夫なんですか?」

「一応神の作ってる空間ですが、ほとんど影響はないので、大丈夫ですよ。」


 そうなのか。 てっきり夢の管理人みたいのがいるのかと思ったが、思い過ごしみたいだったようだ。


「それで、聞きたいこととは?」


「聞きたいことは一つ。 この世界に電脳世界へと入るようになったのは7~8年前の事だって授業で聞いた。 でもイバラが電脳世界へと入る実験をしたのは15年前だ。 このインターバルはなんだ? 神様が全部知ってるとは思ってないけれど、それでも技術的進歩は元の世界にいた時よりも飛躍的だ。 イバラが報われるまでのこの期間に、なにがあったんですか?」


 この世界にきて半月近くしか経っていないが、それでも何があったのかは知る権利はあるはずだ。 女神様の目をじっと見る。


「・・・・・・・・敢えて言うなら、大きな災害があったんですよ。 その知りたがっている時代に。 これ以上は言えません。」

「神様なのに嘘を言ってもいいんですか?」

「知るべきか知るべきでないかと言われると、知るべきではない事象です。 これを知ってしまうとあなたは、あなたで無くなってしまう。 信用してるしてないの問題ではないです。 これはあなたの知らなくてもいい事なのです。 だから・・・」


「・・・・・・そこまで言われたら聞きたくなくなりますよ。 でも前にも言いましたけど、ちゃんと教えてもらう所は教えてもらいますからね。」


 そうやって女神様に強く言っておく。 このまま知らないのは自分の中に何かがないようで気持ちが悪い。


「そう言ってもらえるとありがたいです。 ほらほらこんな所で私と話してる場合ではないですよ。 寝てるとはいえ私と話してるから脳は動いているのですよ。」


 うーんそれは困った。明日の頭痛が酷くなる前に寝直さなくては。


「それではおやすみなさい。」

「おやすみなさいです。 飛空さん。」


 今日は色々と疲れたのか目を閉じて次に目を開けた時にはもう日が昇っていた。 相当疲れてたのかな? まだ体を起こす気にならなかったので、しばらく布団にいながらみんなが起きるまで、寛いで過ごした。

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