第333節 対面と変身、神の攻撃
最初が迷路、次が問答無用のボス戦。 ボス戦の事を考えると、今までのボスが出てきてもおかしくはないが、奴の性格から考えると、そこまで手が回すかと言う意見が頭の中で反復する。 ここまでくれば奴がどう動くか分かりそうなものだが、生憎と俺は奴とそんなに長い関係でも何でも無かったので、行動が読めてない。 実際俺達がこうして近付いてきているにも関わらず、変化と言う変化を見せない。
いや、ほとんど投げやりなのだろう。 奴は最初からそうだった。 作ってはとにかく放置、そんなことの繰り返しで、全く自分からは動かない。 だからこそ奴は・・・
「やぁ、我が理想の世界を破壊せんとせしものよ。」
そこに鎮座していた。 そういえば聞こえはいいが、奴は座っていただけだった。 なにかを愛でたりしていること無く、ただ座っていた。 そういうぐらいしか奴を表現できなかった。
「よぉ、1年かそこらぶりか? 忘れてた・・・なんて言わないよな?」
「愚問と言えような。 我が計画の一端を水泡に帰させたのだ。 お前さん達はただ踊らされていれば良かったのだよ。」
やっぱり神の処遇としてなにかを履き違えているこいつは代わり無いようだと認識を改められた。
「さて、私の前に現れたと言うことは君は私を敵として認識するわけだが。」
「和解だの配下になれだのって言うのは無しにしようや。 流石に分かるだろ? そんなことが無意味なことくらい。」
「お互い考えていることは一緒か。 憎たらしいものだ。」
憎たらしい・・・か。 それは奴の表現か、それとも本気か。 いずれにしても和解交渉は無理だということだ。
「じゃあ互いにやることは一つじゃないか?」
「そうさな。 私自ら動きたくは、本当に無かったんだがなぁ。」
そういって座っていた椅子から立ち上がり、俺達の方に歩いてくる。 イサリヤとユナは一歩身を引いてしまっているが、俺はそんなことはない。 そもそも奴は自称神なので、その辺りも俺には効かないのだ。
「やはりお前はいてはいけない存在だ。 私という崇高な存在に対し、一切の感謝や崇拝の念が感じられぬ。 私は創造の神なのだぞ?」
「従属神だからそんな高い能力の持ち主じゃねぇだろ? 後作るだけ作って、はいサヨナラしてたらなんにも意味がないだろ。 しっかりと監視はしとけ。 創造の神だというのなら投げやりになるんじゃねぇよ。」
「ふっ、やはりお前とは分かりあえないようだな。」
「元々分かり合うつもりなんかねぇっつーの。 さっさと始めてくれよ。」
「死に急ぐことを後悔させてやる!」
世界が暗転、そして戦闘のフィールドになる。 奴は先程までの人に近いものとは違い、羽が生え、天使の輪のようなものも頭についた。 だがそんなことをしても神の威厳は保たれない。 むしろ天使のようで自分から位を下げているような気もする。
『アシスターが立ちはだかった!』
「まずは小手調べといこうぜ!」
『ヒソラの交互撃ち!
アシスターに60のダメージ!
アシスターに95のダメージ!
アシスターに63のダメージ!
アシスターに96のダメージ!
アシスターに62のダメージ!
アシスターに94のダメージ!』
火力が低いのがベレッタ92、高い方がデザートイーグルの火力だ。 しかし名前が出てきて分かったが、こいつは多分神として上にたつ素質は元々無かった可能性すらある。 まあ名前だけで判断してはいけないんだがな。
『イサリヤのドラゴンウイング!
アシスターに40のダメージ!』
イサリヤら竜の翼を繰り出し、それをアシスターに当てるが、翼事態には天使の加護を付けていないので、火力も落ちてしまう。 しかしこれであるのと無いのとでの差が激しいのが分かった。
『アシスターの神々しい光!
ヒソラに44のダメージ!
イサリヤに32のダメージ!
ユナに71のダメージ!
ヒソラは目を開けていられない!
イサリヤは目を開けていられない!
ユナは目を開けていられない!』
アシスターは飛び上がったと思ったら、太陽を背に背負い、その光を浴びせられ、一気に視界の眩しさに目を痛めてしまった。 ユナに取っての一番の弱点をわざわざ使ってくる辺りはさすがと言うべきか。
『ユナのサモン!
最上級魔導師を召喚した!』
『最上級魔導師の状態治し!
ヒソラの状態異常が取れた!
イサリヤの状態異常が取れた!
ユナの状態異常が取れた!』
ナイスな判断だユナ。 ここで下手に攻撃して当たらないよりは、1ターンでも早く治す方が先決だ。
「厄介な物を召喚したものだ。 お主は吸血鬼であろう? ならば今の一撃で灰になっていなければ、世界が成り立たない。」
「吸血鬼と竜人族がいる時点で世界は既に成り立ってねぇよ。 それぐらいは気付け。」
『ヒソラの一点集中!
アシスターに300のダメージ!』
悪態を付きつつも俺は奴の心臓部分に狙いを定め、デザートイーグルを発砲する。 ダメージは高いもののクリティカルで無いところを見ると、弱点ではないのかもしれない。 まあ神と名乗っているのなら弱点は基本的に無いだろうと思うがな。
『イサリヤのラッシュクロー!
アシスターに88のダメージ!
アシスターに87のダメージ!
アシスターに88のダメージ!
アシスターに86のダメージ!』
イサリヤは爪を突き立て、ラッシュを繰り広げる。 ちなみにイサリヤ自身の爪ではなく、武器として使用する鉤爪の方で攻撃しているため、天使の加護が付いているので、ダメージも伸びたというわけだ。
『アシスターの脱力の羽毛!
ヒソラに22のダメージ!
イサリヤに25のダメージ!
ユナに41のダメージ!
最上級魔導師に11のダメージ!
ヒソラの力が奪われた!
イサリヤの力が奪われた!
ユナの力が奪われた!』
アシスターは天使のような翼を広げたかと思うと思いっきりこちらに向かって羽根をとばしてきた。 それだけならばまだ良かったのだが、脱力の翼というだけあって羽根に触れた瞬間に何故か疲れが押し寄せてくる。 おそらく俺達の気力を削いだのかもしれない。
「これは・・・状態異常じゃない・・・から・・・魔導師の力でも・・・治せない・・・」
ユナが途切れ途切れに喋っているが、かなりの気力を持っていかれているのかも知れない。 ユナの顔は青ざめており、かなり危険な状態だ。 元々弱かった身体に吸血鬼の力が備わったことで、体力を補っていた部分もあるので、それを考えれば、俺やイサリヤよりも消耗が激しいのは必然的だった。
『最上級魔導師の息抜きの風!
ヒソラは気力を取り戻した。
イサリヤは気力を取り戻した。
ユナは気力を取り戻した。』
魔導師も普通の状態異常じゃないと気が付いたようで、別の対処をしてくれた。 だが完全に回復したとは言い難く、まだ足の震えが止まらなかった。
「はっ。 こうしないと俺達の頭を垂らさせる事も出来ないってか。 随分と信仰心の薄い神様なこって。」
「そのような安い挑発が出来るのも今のうちだ。 それに信仰心がないだと? 笑わせてくれる。 誰がお前達の信仰が欲しいと言った? 星の民はいくらでもいる。 そのほんの一部の信仰でも私は力を保てるのだ。」
星の民? なんだか怪しげな表現だった。 星というのはおそらくここのゲームの世界の人間ではないだろう。 とすれば別の星・・・
「・・・まさかお前・・・」
そう結論づいたとき、後ろから急に窓のようなものが現れる。 このゲームの世界と現実の世界を繋げる為の出入口であり、俺の唯一の脱出手段でもある。
『津雲君!? 聞こえてる!?』
「志摩川先輩ですか!? どうしたんです?」
『完全にやられたわ。 今各国で小規模な暴動が始まったらしいの。 『創造の神のお導きと共に』ってね。 その目の前にいる神?の信者達だと思うわ。 各国と連携を結んでなんとか小規模のままに持ちこたえさせるけど、どこまで持つか分からないわ。』
そう志摩川先輩からの通達に、自称神 アシスターの方を見る。
「クックックックッ。 無駄だ小娘。 私も学んだ。 どれだけ労を割こうが実行できなければ意味がない。 それをしたまでだよ。」
『とにかくこっちの事は気にしないで、そっちに集中しなさいよ!?』
そういって通信が切れた。




