第332節 強制戦闘と脱皮、雄叫び
『ビビックトロールが現れた!』
世界が暗転し、そして戦闘システムに入った。 どうやら話し合いなどはなく、お構い無しのようだ。 まあ、こちらとしてもわざわざ敵として入っているのに和解して先に進めるとは到底思っていなかったのでこれはこれで好都合だ。
「ま、あいつと戦う前の準備運動にはかなり手強そうな相手だがな。 相手にとって不足はないな。 前哨戦としては丁度いい。 行くぞ! イサリヤ! ユナ!」
「了解しました。」
「はい!」
『ヒソラの武器変更!
左 エンジェルレイピア
右 ライトロードブレード』
『ヒソラのスピードエッジ!
ビビックトロールに70のダメージ!
ビビックトロールに70のダメージ!
ビビックトロールに69のダメージ!』
俺はまず相手の様子を伺うのと、動きを鈍くするために自分の位置から三角を描くように走りながら足元を切っていく。 今持っている武器は天使達が普通の剣やレイピアに光の加護を付けられた武器だ。 単純そうな補正にも見えるが、この加護は一度付ければ天使達に言わない限りは取れない使用になっている。 なので、他の武器にも付与されているのだ。
『ビビックトロールの「振り下ろし」!
ヒソラに106のダメージ!』
ぐぅ! やっぱり見た目と同じ様に、力はそれなりか!
『イサリヤの『コークスクリューブロー』!
ビビックトロールに150のダメージ!』
む、クリティカル判定なしてその威力か。 となると斬るよりも殴る方が攻撃が通りやすいって事か? それともこれも光の加護のお陰か?
『ユナのサモン!
ヒーリングスライムが現れた!』
『ヒーリングスライムのヒーリ!
ヒソラは78回復した!』
ヒーリングスライムはピンク色のスライムで、回復魔法を駆使する。 その分攻撃に関しては乏しいので、敵としては真っ先に倒しておきたいモンスターではある。
『ヒソラの一点突き!
ビビックトロールに176のダメージ!』
ふむ、どうやら拳による攻撃が通りやすいって訳じゃなくて、一点に攻撃を集めることによる集中攻撃が有効なだけか。
『ビビックトロールのクラブストンプ!
ヒソラに120のダメージ!』
「主様!」
攻撃が俺に当たったことでイサリヤから声がかけられる。 しかしさっきのヒーリが無ければ俺はもっと不味いことになっていた。
『イサリヤのコークスクリューブロー!
ビビックトロールに166のダメージ!』
もしかしてとは思うが、このモンスターのステータス、攻撃に振りすぎて他のステータスが貧弱になってるとかないよな?
・・・いや、それはないか。 それならイサリヤよりも先に行動が出来るとは思えない。 素早さが関係しているならば、この時点で先手を取れるのは俺しかいない。 あの巨体でかなり早めに動けると考えると、あながち相手もただの力任せという訳ではなさそうだ。
『ユナのダーキ!
ビビックトロールに70のダメージ!』
魔法が通りにくいか。 これはさすがに痛いかもしれないな。 ユナはこの戦いにおいては一番弱点が多い。 トロールが俺やイサリヤに向いている分にはまだ大丈夫だが、ユナは魔法特化になっているので、物理攻撃的にはあまり狙われたくはない。 例え狙われても一発は耐えれるだろうし、イサリヤの『かばう』があるので、簡単にはやられないのは分かってはいるが、なるべくならここは3人が1回も死ぬことなく突破はしたい。
『ヒーリングスライムのヒール!
ヒソラは150回復した!』
そのためにも定期的な回復は必要だ。 この方法はあまり取りたくは無いが、ヒーリングスライムの魔力が枯渇した場合はヘイトをあげて貰って、またユナのサモンを使うしかない。 今のところはそのルーティングで奴は攻略が出来るし、こいつが裏ボス一歩手前の奴にしてはお粗末すぎる。 確実に何かしら仕掛けてくることだろう。 なんとか早めにその動きを見せてほしいものだ。
5ターンほど同じ行動を繰り返したが正直に言えば変化がない。 ビビックトロールには大分ダメージは与えた筈だし、このゲームのダメージ算出量ならばそろそろ1500は行っている。
『ビビックトロールのなぎ払い!
ヒソラに58のダメージ!
イサリヤに44のダメージ!
ユナに69のダメージ!
ヒーリングスライムに66のダメージ!』
攻撃が全体攻撃に変わってはいるがほとんど変化にならない。
『イサリヤのコークスクリューブロー!
ビビックトロールに170のダメージ!』
まだか・・・。
『ユナのダーキ!
ビビックトロールに75のダメージ!』
まだか・・・!
『ヒーリングスライムのヒーロング!
ヒソラは66回復!
イサリヤは65回復!
ユナは69回復!
ヒーリングスライムは66回復!』
『ヒソラの一点突き!
ビビックトロールに169のダメージ!』
『う、ううううう・・・』
おっ、ようやく変化が現れた。 さて、やられるか、第2形態に入るか。
『オ、オデは・・・オデ、オデ・・・』
頭を抱えながらオデオデと繰り返している巨体。 その巨体の背中からなにかが現れる。 まず見えたのは羽、しかも明らかに天使ではなく悪魔の羽。 それが広げられ、体が現れる。 かなり細身の黒い体、そして空に飛んで長い尻尾を出した。 そして降り立った姿はこの天界で最も相応しくない姿だった。 そしてその者は俺たちを見つけるなり、方向を出して・・・戦闘が再開された。
『ナイトゴーントの風おこし!
ヒソラに88のダメージ!
イサリヤに55のダメージ!
ユナに55のダメージ!
ヒーリングスライムに170のダメージ!
ヒーリングスライムは倒れた!』
俺達は強い強風に煽られて、踏みとどまるのがやっとという状態だった。 しかしナイトゴーントだって? 神話は神話でもあっちの神話を持ってきやがったか! 不味いな・・・あっちの神話なら別の意味で危険な存在だ。 ここでなにがなんでも、確実に倒しておかなければ、このゲーム世界の人間が確実に滅ぶ。
「イサリヤ! ユナ! 今は手を抜く必要はない! こいつは、全力で戦って、確実に仕留めるぞ!」
「了解しました!」
「分かった!」
『イサリヤのドラゴンクロー!
ナイトゴーントに105のダメージ!』
ちっ! 装甲はとりあえずは固いか。
『ユナのエレカ!
ナイトゴーントに66のダメージ!』
ならば魔法はと思ったが、あまり聞かないようだ。 まあそちらに精通している神なので、そのような魔法ではまず倒れないか。
『ヒソラの武器変更!
左 ベレッタ92
右 デザートイーグル』
『ヒソラの集中砲火!
ナイトゴーントに99のダメージ!
ナイトゴーントに98のダメージ!
ナイトゴーントに98のダメージ!
ナイトゴーントに96のダメージ!』
俺は動きを鈍くするため、左翼を集中的に狙うことにした。 だが聞いているのかいないのかまではハッキリとしない。 じり貧だけは勘弁したいが、その前に奴の攻撃をどこまで凌げるかにかかってはいる。 焦りから回復手段を1度断っているため、それが命取りにもなりかねない。
『ナイトゴーントの遠吠え!』
・・・待て、ナイトゴーントって鳴くのか? そもそも攻撃にもならないこの行為に何があるんだ?
「主様、先ほどのあれは何をしたと思いますか?」
「分からん。 だがもしかしたら仲間を呼んだ可能性がある。 回復の時間が無かった分これはいい凌ぎが出来た。 ここで体勢を立て直すぞ!」
「「はい!」」
『イサリヤのドラゴンクロー!
ナイトゴーントに103のダメージ!』
『ユナのサモン!
召喚 ヒーリングスライム』
『ヒーリングスライムのヒーリング!
ヒソラは82回復!
イサリヤは81回復!
ユナは83回復!
ヒーリングスライムは81回復!』
『ヒソラの集中砲火!
ナイトゴーントに99のダメージ!
ナイトゴーントに96のダメージ!
ナイトゴーントに96のダメージ!
ナイトゴーントに97のダメージ!』
こちらはある程度整った。 このままの状態ならすぐに決着が着きそうなものだが、どうなるだろうか。
『ナイトゴーントは空へと飛び立っていった!』
・・・なに? なにもしてこないで去った・・・だと?
「お兄様、これは一体・・・?」
「・・・分からない。 こればっかりは俺にもわからない。」
あいつは何がしたかったのだろうか? 経験値を落としていっただけで、特に何かするわけでもなかった。
「このままあの上に行って、なにが待ち構えているのか・・・」
あの去っていったナイトゴーントがそのままなにもしてこないとは思わないが、今は上がろう。 モニュメントに触り、さらに上に行くのだった。
ちなみに本物のナイトゴーントはもっと恐ろしい∃として語られているので、こんなに潔く去ったりはしません。
そもそも普通では会えません。




