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別世界で俺は体感バーチャルTPSの才能がとてもあるらしい。  作者: 風祭 風利
第26章 従属神に誘われ
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第331節 認識阻害と透明な迷路、反響定位

「あそこが彼の入っていったモニュメントになります。 光が上に伸びているので、恐らくはここよりもさらに上にいるかと。」


 不可侵領域を開けて貰ったその先に、異様に神々しく光を放つ像があった。 なにかの神の像なのか、それとも最初からああしていたのかは分からないが、とにかく存在していた。


「お兄様。 ここの神の人達は、私達が入ってきたことに気が付いていないのでしょうか?」


 ユナが周りを見渡して、そんな感想を述べる。 勿論俺とイサリヤにも見えていることなので、言っている意味も十二分に分かっている。 不可侵領域が神自らの手で開けられ、本来入れないはずの人物がこうしているのにも関わらず、興味すら抱こうとしないで、ただただ歩いているのみだ。


「もしかして見えていないのでは無いのですか? それならば見向きされないのも納得が出来ますが。」

「いえ、貴方達の事は見えていますよ。 ただ私達が見ているのは容姿などではなく、その周波数で見ています。」


 周波数か。 そりゃ全員のそれを見るならそっちの方が分かりやすい事もあるか。


「ん? なら尚更俺達は周波数が違うから余計に見逃せないんじゃないか? 天使や女神、神様達じゃないわけだし。」

「それは貴方達が装備している「天使達の羽衣」をしているからです。 今のあなた達は言わば天使の端くれ、ということに認識が変わっているのです。」

「へぇ、あいつからの攻撃を防ぐだけじゃなくそんな効果が備わっていたのか。」


 とは言えそれが他の場所で使えるのかと言われると少々難しい問題ではある。


「それよりも、あの先にあの神がいるというのは間違いないと判断して構わないのですね?」


 イサリヤが例の彫刻を指差しながら質問する。


「私はあれを使って上に登るのをこの目で確かめています。 それに仮になにもなかったとしても、不自然なことには変わりありません。」

「そんな不自然なもの、普通なら疑問に思うだろ。 気が付かない理由は、俺達のこれと一緒の理屈か?」

「そのようですね。 私は疑問に思ったので認識できていますが、他の神々は気が付いていないのか、気付かないふりをしているのか、とにかくあのモニュメントに対して無反応ではあります。」


 認識阻害は意外と厄介なものってことか。 バレないのならむしろ好都合かもな。


「それでは俺達は進みます。 奴がこの上にいるのならば、行くしかないのですから。」

「ヒソラ、私がサポート出来るのはここまでになります。 自分自身の手で、道を切り開いてください。 それと、イサリヤ、ユナ。」


 2人は名前を呼ばれて女神様の方を向く。


「あなた達は本来であれば私が作り上げた架空の存在。 ヒソラが願わなければあなた達を作ることもなかったことでしょう。 ヒソラの命はあなた達の命。 必ずヒソラの最大限の力になってあげなさい。」

「当然であります、我が創造の女神。 この身を授かったのはあなたからでしたが、今は我が主、ヒソラの命で生きています。 私に生きる意味をくれたヒソラ様は、この身が朽ち果てようとも、必ずお守り致す所存です。」

「私も全部が全部、女神様のお力ではないけれど、こうしてお兄様に会えて、旅をしてきて、いろんな事が出来ました。 そんなお兄様を良く思っていない人がいるのなら、それは私たちにとっての敵なのです。 悪魔だろうが神様だろうが、私には関係ありません。」


 心強くもあり、少しむず痒い気持ちになりながら、俺はモニュメントに触る。 すると足が地面から離れ、宙に浮き始めた。 とはいってもそんなに驚きはしない。 元々から似たような体験はいくつもしてきた。 この程度では普通だと感じてしまう。 ・・・そうなってしまうのはおそらく良くないのだろうが、地球の世界には戻らないと決めたのだ。 もう「人間離れしている」などとは到底思わない。


 そして目の前に触っていた筈のモニュメントが消え、辺りを見渡してみると一面に雲と空があるだけで後はなにもない。 空間もへったくれもないただの雲の上といった具合だ。


「なんか拍子抜けな気がするな。 女神様を信じない訳じゃないが、本当にここを通ったのか些か疑問にも思えてきたぜ。」

「主様。」


 イサリヤに呼ばれて、イサリヤが指差す方向を見るとそこには先程のモニュメントと同じ様に光っている場所があった。


「どう思われますか?」

「・・・敵影は無し、気配すらもない。 舐めているのか誘っているのか。」


 どちらにしても奴と対面するには行くしかない。 そう思い足を進めると「ガンッ」という音が俺の額から聞こえた。 額がヒリヒリしてくる。


「主様!?」

「心配するな。 ちょっとぶつけただけだ。 ちっ、あの野郎、作るのが面倒だからって透明にしやがったか。 シンプルだが効果的な策だな。」


 今度はぶつけぬように腕を前に出して、壁のようなものに触れたことを感じる。 これで分かるのが、どうすればあそこまでの道のりが分かるかと、距離感覚が鈍るという事だ。 近くて遠い、そんな錯覚を利用している。


「いかが致しますか? 私の咆哮や主様の武器での破壊などがありますが。」

「透明だと材質が分からない。 ガラスでもそれは危ないかもしれないし、もっと有害なものならば破壊しない方がいいとまである。 これがもし迷路だと言うのならば左手の法則なら時間はかかるが確実だろうな。」


 しかし左手の法則は時間がかかる上に、内側に目的地がある場合はおそらく使えない可能性がある。 あれがある先が外だとは限らない。 透明である以上印を付けるのも不可能だ。


「お兄様、イサリヤお姉さんの咆哮を使えばなんとかなるのではないですか?」

「む?・・・そうか、反響定位(エコーロケーション)か。」


 反響定位、コウモリなんかが良く使う、人には聞こえない超音波で壁や床を感知する方法だ。 確かに今回の場合は迷路だとするのならばおそらくは使えるだろう。


「だがイサリヤの咆哮は正確には超音波じゃなくて、声帯から大きく声と風を乗せて飛ばしているから、この透明の壁が実は脆い素材、ガラスとかで出来ていたらさっきも言ったけれど、こっちが危ないんだ。」

「申し訳ありません。 お役に立てずに。」

「イサリヤが悪い訳じゃないさ。 ユナのアイデアを使うには強すぎるってだけさ。 だからユナ、「サモン」を使ってバットーを呼び出してくれるか?」

「分かったよ、お兄様。」


 そう言ってユナはバットーを呼び寄せて、バットーになにかを命令させた後、バットーは息を吸うモーションに入り、そして思いっきり声をあげた。 あげたといっても実際は超音波なので、聞こえている訳ではないが。


「ふーむ。 振動は分からないが、反響してるのは分かるな。 だけど一発で分かる訳じゃないからな。」

「主様。 私の耳をお使いください。」

「ん? 今のでどんな感じか分かったのか?」

「半径は5m程ですが、この辺りは分かりました。 こちらになります。」


 そう言ってイサリヤは歩み始める。 透明の壁を触りながら、俺とユナはイサリヤとその後ろにいるバットーの後ろを歩く。



「どうやらここがゴールみたいです。」


 あれから何回かバットーが超音波を放ちながら、透明な迷路を歩くと、そのまま昇るためのモニュメントへとたどり着いた。 敵なんかは一切あっていない。


「ここまであっさりと来れるなんて・・・」

「・・・誘ってやがんのか?」


 こういった所に敵を配置しないということは、こういってはなんだがゲームとしては面白くはない。 奴がなにを考えているのか分からないが、ここまで来るとむしろ怪しさすら覚える。


「・・・罠?」

「かもしれないけれど、これ以上下がる気はない。 行こう。」


 もうなにが来ようが関係ない。 俺達はモニュメントに手をかざし、上階に昇る、そこで待っていたのは・・・


「む、敵が、来た。」


 明らかに神とは名ばかりの巨体が俺達を見てきた、

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