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別世界で俺は体感バーチャルTPSの才能がとてもあるらしい。  作者: 風祭 風利
第26章 従属神に誘われ
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第328節 変化の無さと別の天使、お目当て

「へぇ、天界と天国ってやっぱり一緒のくくりではないんだ。」

「よく誤解はされちゃうんだけど、天界は天使が住む・・・って言い方もおかしいんだけど、似たようなものだし、天国はその名の通り天の国だから色んなものがすんでいるって感じかな。」

「もの、と言うのは人以外にもいるという解釈で宜しいのでしょうか?」

「そうだよ。 人間だけが行けるのが天国ではないからね。 下界で無くなった生物の魂は皆平等に扱われるからね。」

「閻魔大王とかはどうしているんだ? こう言った場合だと良くあるんだよ。 閻魔の裁きで天国か地獄かを決めるってやつ。」

「閻魔様は確かに存在するけど、僕らのような天使が会うことはほとんど無いよ。」


 ローランと共に天界を案内されつつ、この世界、まあゲームの世界なのでそこまで詳しくなる必要は全く無いのだが、色々と聞いてみたくなったのだ。


「さて案内を任されたのはいいものの、あまり見所の無い場所でありますからねぇ。 人間さんに対して、なにを見せればいいのやら。」

「なら自分達が今まで住んでいた(仮定として)何か変化のあった場所はないか? 些細なものでも構わない。」

「いえ、今はこれと言っては変化はないのです。 今目の前に見えてる噴水から半径15キロ圏内でもなにも起きていないのです。」


 まあ、その辺りはそうだよな。 そもそも作られたのがごく最近だと仮定するならこの質問に意味、もしくは必要性が感じられない。 あいつが作った世界ならば、それはそれで色々と問題点も生まれてくるだろうしな。


「それじゃあ人は? 天使だけが住む場所なら、見慣れない人とか、新しく入ってきた天使とかは?」


 視覚的観点を変更を試みたのか、ユナが聞いてくる。 しかし疑問に思わないと言えば嘘にはなる。 本当に些細な変化が、今後を大きく左右するのだ。


「うーん。 天使になった人って言っても、天使になるのはごく一部の、神様が認めた限られた存在だしねぇ。 そんなにポンポンとは増えないよ。 ちなみに減っていたとしても、全員が知っている人物だからまずあり得ないし。」


 そうかと思いつつ、少しばかり焦り始めた。 つまり今の時点では、奴の場所に行くとこすら出来ないと言う事になる。 それに準備するにしてもなにを揃えればいいのかさっぱりだ。 奴への有効打が見えてこない。


「ここにはしばらくいるんでしょ? ならば食べ物とか寝泊まりする場所は用意しないとね。」

「え? いや、そこ迄しても貰う必要は・・・」

「まあまあ、天使からの施しなんて下界では数人しか受けられないから君達は随分と恵まれているよ。 ちょっと待ってて。 他の天使達と相談してくるから。」


 そう言ってローランは噴水広場の方に行ってしまった。 ここまでされておいて何なのだが、天使と共存出来るのだろうかとゲーム内ながらも不安になってしまう。


「こんな事がいつ崩れるか分かったものじゃないと考えると・・・ 幸先がいいのはなにかの前兆か?」

『あんまり思い詰めすぎるのも良くないわよ津雲君。 今は今、未来は未来。 なるようになるしかないとは言わないけれど、深く考えすぎると、目の前の事が見えなくなるわ。』


 外から志摩川先輩の声がして、天界に出来た窓をみる。 そこには当然志摩川先輩の姿がある。


「まずは天使達とコミュニケーションを取るのよ。 友好度が上がれば、それだけでもかなり価値のあるものになるわ。」


 その友好度がチャラにならなければそれに越したことはないが、正直あいつがこちらの動きに気がついた時、そこになにが待ち構えているのか、想像が全く出来ない。 今のこの状況も見ていないのか、見てみぬフリをしているのかの判断も付かない。 仮に奴が今こちらの様子を見ていないのならば、天使達と友好を築くのも悪くはない・・・


「あ、そうか! まずはそうしてもらうのも有りか!」

「お待たせしました・・・って! 急に声をあげてどうしたんですか!?」


 急に声を荒げた事と、ローランが帰ってきたタイミングが同じだったので、驚かれてしまった。


「ああっとすまない。 なあローラン。 さっきは神様に会ったことは無いって言ったよな?」

「え? ええ。 ですがあれは定型文の話ですし、あまり当てにしないで貰えると・・・」

「会えない訳ではないんだろ?」

「それは・・・はい。 神様と一言で言っても色んな神様がいますから。」


 それは百も承知だ。 約2年間でそれは嫌と言うほど教えて貰ったしな。 しかし会える可能性があるというのならば話は変わってくる。


「今の状態でどんな神様でもいい。 会ったって言える天使はいるか?」

「それなら確か・・・あそこにいる緑の長髪のカミーユが会ったことがあるって言ってた。」


 また男か女が分かりにくい名前でつけられたものだな。 名前の事で馬鹿にしたら鉄拳制裁が来そうだから言わぬが花という奴だろうが。


「でもなぁ・・・」


 これからそのカミーユの所に案内して貰おうと頼もうとしたとき、ローランは渋り始めた。


「どうしたんだ?」

「いやぁ、天使としてこう言ってはなんなんだけど・・・あいつは内心信用できないんだよね。」

「天使が信用の問題を語られると反応に困るな。 というか、そんだけの事を言うんだ。 理由はあるんだよな?」

「うん。 カミーユの話を聞いても、あまりピンと来ないというか・・・とにかく信用するための素材が少なすぎるんだよ。」


 なるほど、あまり公になっていないだけに信憑性がないのか。

 だが話を聞かないことには俺たちも真偽を計れない。 というわけでカミーユのところに出向くのだった。


【おや、人間の皆さん。

 自分になにかご用ですかな?】

「カミーユ。 普通に喋っても大丈夫だよ。 彼らもここの人じゃないから。」

「む、そうか。 私がカミーユだが、用事があるのだろう?」

「あんたが会ったっていう神様について知りたくてね。 どんな神様だった?」

「ふーむ、どんな、と聞いてきますか。」


 ん? 間違ったことは聞いていない筈だが? これから話すことが彼らにとって不得手になるとしても俺は聞き出さなければならない。 罰当たりだと言われようが、神を侮辱していると言われようが、俺には知らなければならない理由があるんだ。


「まず容姿で言えば女性で髪は下ろしていた。 性格は大人しい、これはあまり参考にはならないですな。 神が忙しないようでは見る目も当てられませんからね。」

「会ったのは女神だったのか。 それでどこであったのかまでは言えるか?」

「口止めをされていることもないのでお教えしますよ。 我々天使には不可侵領域という場所が存在しているのを知っています。 知っていると言うだけで近付きたいとは思わないですがね。 そこで私はその神様に会いましたよ。 もちろん不可侵領域に入らないようにするバリケードよりも奥には行ってはないですがね。」

「つまり「会った」と言うよりは「見た」と言った方が早いのか?」

「別に僕自身は「会った」とは一言も言ってないんだ。 勝手な解釈のせいだよ。 ちゃんと聞いて貰えればあんなに大事になんてならなかったんだ。」


 天使達にも誇大妄想というか早とちりというか、天使だってそこを考えると人間と変わらないのだなと感じた。


「それじゃあその会ったって言ってる場所に案内してくれるか? 後は俺達で考えるから。」

「分かった。 ついてきて。」


 カミーユが手招きをするように俺達を案内する。 俺の見立てが間違っていなければ、もしかすると・・・


「あれだよ。 あそこが不可侵領域になる。」


 歩いて数十分。 俺達は先程までマッピングしていた場所とは全く違う空間領域にいた。 正確に言えば本来俺達のような人間にはまず見つけることの出来ない階段があり、そこでローランとカミーユの力を借りて、その階段を五感で感じられるようにしてもらったのだ。 天使の能力なのかゲームのシステムなのかまでは定かではないが、追求しても仕方がない。


 そんなわけで俺達は天界のもう一段上の空間域にいる、という勝手な解釈のもと、歩いていた。


 そしてカミーユが指差す場所にはお世辞にもバリケードには見えない柵が立っていたが、今までの経験上、ああ言った柵はただの注意喚起。 本当に先に進ませないための措置は絶対にある。


「一応確認しておくけど、あれば不可侵領域。 僕らですら入れないから、人間さんにも入れないよ。」

「いや、神様がいるかもって情報だけでもありがたい。」

「僕らもついておってもいいかな?」

「お目付け役としてならどうぞ。」


 そう言って俺は不可侵領域のバリケードの前までやってくる。 その向こう側は見えない。 当然見えたら困るものが向こうにはあるからだ。 それを承知の上で俺は目の前に立つ。 すると


「ヒソラ!? 何故ここにいるのですか!?」


 どうやらお目当ての人が俺を見つけてくれたようだ。

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