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別世界で俺は体感バーチャルTPSの才能がとてもあるらしい。  作者: 風祭 風利
第26章 従属神に誘われ
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第324節 天界への階段と休憩所、シースルー

『どうですか? まだ先は長そうですか?』


 画面の向こう側から夭沙が、そんな質問をしてくる。 それも無理もない、俺達が階段を登り始めてから15分ほど歩き続けているが終わりどころか敵すら出てこないで、ただひたすらに登り続けているのだ。 変化が無いことがこれほどまでに恐ろしいと思ったのは今が初めてだ。


「ま、そんな簡単には会わせてくれないよな・・・腐っても神様な訳だし? そもそも天界が必ずしも真上にある訳じゃないんだ。 こんだけ長くなっても当たり前と言えば当たり前だよな。」

「主様、逃避したいお気持ちはお察し致しますが、今はなにぶん堪えてください。 この様なところでへばってしまっては神から嘲笑を受けてしまいますよ?」


 それは・・・ムカつくからやだなぁ。 イサリヤの一喝で気力を振り絞った俺は、まだ続く登り階段の先をまだ登り続けるのだった。



「ふぅ・・・ふぅ・・・ じ、地面・・・じゃねぇや。 なんでも良いから足はちゃんとついているか? 浮いてないか?」

「心配ご無用です主様。 私達はちゃんと階段を登りきりましたよ。」


 あの後も滅茶苦茶長かった階段をようやく登り終え、息も絶え絶えに天界と呼ばれる場所に辿り着いた。


『なんというかあれやなぁ・・・RPGの登場人物ってそう言った階段をなんの苦もなく登っていくやん? そう考えると飛空が貧弱なんやなくて、ゲームのキャラがおかしいことが窺えるわ。』

『ゲームの方は半分はリアリティーを捨ててるからね。 そう思うと、飛空がとてもかわいそうに見えてくるよ。』


 画面の外では俺の今の境遇について輝己と啓人が色々と考えてくれているようだ。 ありがとうよ、そこまで考えてくれてよ。


「お兄様、あそこに休憩所がありますよ。」


 そう言ってくるユナはまだ頑張れる様子だった。 それに関しては恐らく種族的な問題もあるのだろう。 俺は(散々人間離れしたような事になっているが)普通の人間の体なのに対して、ユナは吸血鬼だ。 ちょっとやそっとじゃ簡単にはへばったりはしない。 それは竜人族であるイサリヤも同じで、使える筈の竜の翼を使わずにわざわざ俺と同じ様に歩いてきてくれた。 ありがたいことではあるが、せっかく翼を使えるのなら・・・ いやそれで最初から敵対されるよりは安全だと思ったのだろう。 俺とユナを乗せた状態では回避も上手く出来ないだろうし。


「お察しして頂き、感謝致します。 主様。」

「従者の考えを読み解けなきゃ、主失格だからな。 だがまずは休ませてくれ。 散策するにもこの疲労感じゃ、やる気が起きねぇ。」


 そう言いながら俺は完全に動かなくなる前に足を動かして、休憩所に向かうのだった。 足、ガタガタなんだよ・・・


『しかしそんな聖域、公式サイトならともかく裏サイトにも載っとらんかったで? それにそのゲームが発売されて2年は経っとるし、なにより新作が出とる。 今さらそんな隠し要素を運営が追加するとはおもえへん。』

「それじゃあ、ここは完全にオリジナル、というかむしろ未知の中の未知って事か。」


 輝己に何かあるのかと思ったが、どうやらその一縷の望みも断たれてしまったようだ。 となると完全攻略には自分の勘や知識を駆使しないと先には進めないという事か。 なんとも面倒な事をしてくれるものだぜ。


『それでどう? なんか天界に変化はある?』


 文香が聞いてくるも、特にこれと言った変化は見えない。 まだ俺達が休憩所にいるからなのだろうが、少なく今のところは襲ってくる様子はない。


「これって実質どこまで奴の手が回っているかに掛かってるなぁ。 時間的な問題を考えると、現実時間なら軽く20日はこの世界にいるからな、あいつは。」

『だけど急に入ってきたのと、ゲームのプログラムの都合で上手くいってないのかも。 輝己が言ったように完全に新しい場所なんでしょ? 普通なら誰かしらが問題改善の為に手を入れるんだろうけど、今回は急造で拵えてるから、もしかしたら向こうも予期せぬ不具合が起きる可能性もあるよね。』


 リョウが言っていることもかなり的確だ。 詳しいことは分からないが、普通ならゲーム上の不具合やら進行上の問題やらは、開発者の中で徹底的に改善をするのが常識だと感じる。 だが今回のようにろくに実験もせずに入れたパッチならばどんなバグやら不具合やらが起きてももはやおかしくはない。


「どちらにしても、奴を倒しきって、そっちの世界に戻るまでは、油断出来ないって訳だ。 っあー。 そろそろ行きますか。 まずは身辺調査からだろうかな。」

『それじゃ、この携帯ゲーム機は我々電脳科が預かっておきます。』


 そう声を挙げたのは志摩川先輩だった、というよりも。


「え? もうそんな時間ですか?」

『時間の感覚を忘れちゃったのかしら? なんだかんだ昼過ぎよ? とはいっても電脳科で預かる理由は主に2つ。 1つは異常事態になった時に迅速な対応を行うため。 もう1つは万が一こっちの世界に従属神が現れたとしても君が戻ってくるか、戻ってこれなくてもこちらで捕縛、もしくは鎮圧をするのにうってつけだから。』

「出来れば鎮圧の方でお願いします。 あいつになにか聞こうとしても口は割らないと思うんで。」

『随分と非人道的じゃない? そこまで酷かったかしら?』

「元凶を残しておいても良いこと無いですし、今後も無いようにしたいだけです。 百害あって一利なしなんで。」


 あんなやつ生かして、まあ神様だから生かすって言い方は違う気がするが、とにかく蔓延らせる訳にもいかない。 因縁的でもなんでもないが、終わらせるならここしかない。 俺は決意を新たに休憩所を出た。


「さて、情報収集と言ってはみたものの、どこから始めるか・・・」


 天界と言っても敵の本拠地と刺し違えない場所にいる。 こう言ってはなんだがまさか神様を殺すために来ている、なんて言った日にはこの天界事態にいられなくなる可能性も否定できない。 ゲームの世界だからとかそんなのを抜きにしても奴の手元から離れるのだけは避けたい。


「まずはこの天界について調べてみるのはいかがでしょうか?」


 ふむ、それなら天界の民に聞くよりはある程度の情報は得られそうだな。


「じゃ、まずは地図の作成からだな。 どこになにがあるか位は把握しておかなきゃな。」

「うー、雲の上にいるからさすがにローブが暑いよぉ・・・」

「太陽で焼けて死にたくはないだろ? 我慢してくれ。 とはいえ紫外線を遮断するものも無いしなぁ・・・」

『あら。 なにかお困りかしら?』


 俺が困っていると画面の向こうにいる志摩川先輩が声を掛けてきた。


「実はユナがローブを暑がっちゃって。 でもユナは吸血鬼なので肌を晒すわけにもいかないんです。」

『要は紫外線を体に浴びないようにしたいわけね?』

「まあ、簡潔に言えばそうなります。」


 とはいえ長袖長ズボンを着させる訳にもいかないしどうしたものかと迷っていると、


『津雲君。 画面のそっち側から腕を伸ばしてもらえるかしら?』

「はい。 あ、両手の方がいいです?」

『そうね、両手の方が落ちないかも。』


 そう言われたので俺は両手を元の世界に伸ばして、少し待っている。 こうしていると手を水の中に突っ込んでいる感覚になるのだけれど、本来はそんな生ぬるいものではないんだよなぁ。 そう思っていると手元になにか感触を感じた。


『いいわ。 そっちの世界に持っていって頂戴。』


 そう言って手元の物と一緒にこっちの世界に持ってきた。 色々と制約があるのではないかと思ったが、すんなりと物を持ちながら腕が戻ってきてくれた。 そして手元の物を確認すると、なにやら黒い布とブーツが用意されていた。


『それならユナちゃんの肌も守れて涼しさを感じられる筈よ。』


 そう志摩川先輩に言われたので、休憩所で着替えさせる事にした。 日傘も用意されていたのでこれで光を浴びること無く着替えることも出来る。 ユナは早速と言わんばかりにローブを脱いでスポーツブラとパンツ姿になる。 俺がいるにも関わらずなんの恥じらいもなく着替えるのは流石にどうかと思うぞ?


『変な気は起こさない方が己とためだと思うわよぉ?』

「なにを言ってるんですか志摩川先輩。 そんなんじゃないんで。」


 そんな感じで呆れていると、ユナが着替え終わっていた。 着ていたのは薄い素材で作られているシースルーと呼ばれるワンピースに身を包んでいた。 勿論それだけでなく、深めの黒い日除け帽子にブーツ、薄手の手袋とまさしく吸血鬼の為に作られたんじゃないかと思われるような格好になっていた。


「お兄様! この服気に入りました!」


 嬉しさを表現するようにユナがピョコピョコ跳ねていた。 その様子に俺もほんわかする。 しかしそうなってくると思う節がいくつかあって。


「なんで普通の服が入れれたんでしょうか?」

『私だって確証があった訳じゃないのよ? ただ、津雲君の着ている服を見てピンと来てね。 物は試しとやっただけよ。』


 好奇心剥き出しの先輩らしいやり方だ。


『さ、問題は解決したし、探索でもしなさいな。』

「了解です。 しかしみんながいないとなると不安な部分が出てくるんですよね。」

『あら、その心配はいらないでしょ。』


 先輩の声に「何故?」と首を傾げる。


『あなたの彼女達は、あなたが思っている以上に強いって事よ。』

次回は少し飛空からの視点から離れます。 ずっとそっちの視点だと飽きるでしょうし

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