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別世界で俺は体感バーチャルTPSの才能がとてもあるらしい。  作者: 風祭 風利
第4章 静けさの後には
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幕間話 ファッションと元の経緯、ロシアンルーレット

「せやからこっちのコーデの方がええって言うとるやろがい!」

「いーや僕はこっちの方がいいと感じるよ。 雰囲気だって醸し出される。」

「雰囲気なんか戦場じゃああんまり役に立たんわ! それなら機能性のある方がしっくりくるやろ!?」

「少しでも自分の事を魅せることは決して悪い事じゃないでしょ。 否定するつもりは無いが、ここばかりは譲れないね!」


 週末も夕方に差し掛かった頃。俺達はプライベートルームのコーディネートルームにいるのだが、2人は今仲違いをしている。 そもそもなんでこうなったのか。 時は昼まで遡る。


 ――――――――――――――――――――


 昼ごはんを食べ終えた俺はやることが無くなってしまったので、花壇の方へ、外の空気を吸いつつイバラの方へと行く。 最近花壇の手入れに精が出てきたのか、イバラの花壇での作業が様になってきていた。


「イバラ、なにか手伝うか?」

「大丈夫、もう少しで終わるから。」


 それなら待っているか。ものの数分もしないうちにイバラが手入れを終えて俺の方へと駆け寄ってくる。 服を含めて全身泥まみれだが、イバラが楽しそうなのでそれでもいいと思える。


「お疲れ様。 ん?どうした?」


 一直線に来ていたイバラの足が止まったので疑問に思った。


「飛空はいつも服が似たり寄ったり。」


 え? そうか? 自分の恰好をみると、フード付きパーカーにTシャツ、ジャージという恰好なのだが、そんなに同じに見えるかな?


「私にはお洒落をさせたのに飛空がお洒落をしないのはおかしい。」


 うーん。 そういうもんか? 思わず首を傾げるが、やっぱり自分にはお洒落の感覚は無いなと感じる。


「白羽や紅梨に着る服を選んでもらえばいい。」

「それは恥ずかしいから却下で。」


 正直異性に服を選んでもらうって相当気を使うんじゃないかな? そんなことは思わないのだろうイバラは「?」と言わんばかりに首を傾げてしまった。


「お、飛空やん。 なにしとんねんそこで。」


 振り返ると輝己がこちらに対して声を掛けてきた。視線を元に戻すとイバラの姿は無かった。 まだまだ扱いの難しい子である。


「紅梨達が見えるようになったのはやっぱり服装を変えたからなのか? それともなにかが見えるようになるトリガーがあった?」

「なに1人でぶつくさ言っとんねん。」


 そう輝己に指摘されたので、「悪い」と平謝りした。


「なあ、バーチャル世界は服は色々とコーディネート出来たよな?」

「お? おう。何を今更確認しとんねん。 バーチャル世界なら服は選び放題、危なっかしい服でもお咎めもあらへん。 まあその代わりポイントは必要になっては来るがな。」


 ポイント、つまりバーチャル内で戦闘をしたり、最近分かったことだが、先生達が戦闘の感覚を忘れさせないために、戦闘トレーニングというものを設置しているらしい。 それをクリアするとポイントが一定だが貰えるんだそうだ。


「いや、なんだ。 現実だとコーディネートするのは難しいからバーチャル世界だけでもお洒落したいなと思ってな。」

「ほーん、なんやお前さんがそんなことを言うなんでな。 無頓着やと思ってたわ。」


 まああながち間違ってないがイバラの意見を聞くとなんだか気が気でしょうがなくなってな。


 ――――――――――――――――


 そんなこんなで部屋のみんなが早く帰ってきたので、そのままバーチャル世界に入り、コーディネート、もとい新しい服を選ぼうって話になり、今に至る。


 どちらの服も決して悪くは無いのだが、両方を選ぶのは流石に無粋かなと思う。


「そこは、飛空の感覚でいいと思うんだけどね。 そもそも飛空の為に選んでくれてるわけだし。」


 海呂の指摘も最もである。どっちを選んでもおかしくはない。 故にどちらにしようか迷うというものだ。


「飛空が決めれんようなら俺らで決着つけんといかんな。」

「そうだね。 あまりしたくはなかったけれど。」

「ちょっ! ちょっと待て! 確かに優柔不断な俺のせいでもあるが、なにもそこまでしなくても・・・・」

「2人が決めてくれてるのになにか不満でもあるの?」


 海呂に指摘されグッと口ごもってしまった。


「・・・・・分かった。 決着はそっちで付けてくれて構わない。 だけど、もっと温厚な決め方にしてくれないか?」

「じゃんけん程度じゃ温厚にはならないけれど?」

「ああ、だからこの世界らしい決着の付け方をしてもらおうじゃないか。」


「「「この世界らしい決着の付け方?」」」


 3人揃って同じセリフがハモった。 そんな思いも突っぱねて俺は一つのリボルバー式のハンドガンを用意した。


「それをどうすんねん。」

「リボルバー式でもリロード方法は自動だけど、今回は手動でリロードをするように設定した。」

「それでどうするのさ。」


 なんか結構前のめりにみんなが見てくるのでやりたい事を言ってしまおう。


「この世界らしい決着の付け方。 現実だととても危険な遊びだが、反面ギャンブル要素とスリリング感は最高潮の大人の遊戯。 それがこの「ロシアンルーレット」だ!!」

「ロシアン・・・・」

「ルーレット・・・・」


 全員驚いたように後ずさりするがまだピンと来ていないようだ。 それよりもこの世界にロシアンルーレットって言葉が存在していないって事に驚きだったりする。


「ルールは簡単、このリボルバーに弾を1発だけ入れる。 そしてリボルバーのシリンダー部分を思いっきり回して止まったら、お互い「撃つ」もしくは「パス」のどちらかを宣言する。 撃つと宣言した人物は銃口を頭に付けて引き金を引く。 弾が入っていなかったらゲーム続行。 弾が入ってたら頭を撃ち抜かれて負けっていうゲームだ。」

「でも弾は本モンなんやろ?」

「大丈夫だよ。 分かりやすいようにダメージは最小限に抑えてあるから。」

「両者がパスをしたらどうなるの?」

「最初にパスした人物の番になる。それでもまたパスするなら相手に渡す。 でもそれじゃループが発生するからお互いパスは2回まで、両者2回とも使ったら審判が別の場所に向かって撃つこととする。 的はあるしね。」

「ほーん なかなか面白そうやないかい。 それで決着着けたるわ。 わいこれでもギャンブルは好きやねん。」

「ギャンブルだけじゃなくて相手との駆け引きも必要になって来るのか。 気を抜いた方の負け。 戦場と同じだ。」


 どうやら両者の了解が取れたのでリボルバーを海呂に渡す。


「俺だと贔屓する可能性があるからな。 審判は任せたぞ。」

「自分が面倒なだけじゃ?」


 そんなことはないぞ。 そう思っていながらも海呂は弾を1発だけ込めてシリンダーを回して、銃身に入れる。


「ルールはさっき言った通りだ。 さあ死の淵を彷徨うような、恐怖を味わいながら引き金を握るがいい。」

「お前さんこの状況1番楽しんどらんか?」


 え?そう? 意外と傍観者側も悪くないかなって、あれ? 俺は当事者になるのか?


 この後の試合結果なんだが、1回目は5発目に入っていて、2人とも2回パス宣言をして、ダミーに当てたところ、当たり判定が出たので、2回戦目に突入。 今度に入っていたのは3発目。 「ここは男見せたるわ!」って言った輝己が引き当ててしまった。 よって啓人の勝利になった。


「くっそー! 意気込んでやったせいで恥かいてもうたわ!」

「今回は僕の勝ちだね。 でも戦場の緊張感を忘れない、いいゲームなんじゃないかな?」

「そうだね。 見てるこっちもドキドキだったよ。」


 三者三葉いろんな解答が来た。 楽しんでもらえたなら良かったかな?


 で、勝者の啓人が選んでいた服が赤のキャップ帽、自分の体より大きめのカッターシャツに黒のストール、青の長ズボンというスタイルだった。 なんか前の俺のコスチュームと似たり寄ったりだが、まあ敢えて言わないでおく。


「しかしほんまおもろいな。 このロシアンルーレットって遊び、この緊張感、ゾクゾクするで。」


 輝己は大層気に入ったようだ。 本来はパス=賭け金の上乗せっていう俺の認識なんだが、危険が少ないこの世界ではそんなふうに賭け事もしないだろう。


「せっかくだし僕らもなにか選んでこようよ。 飛空だけって言うのもあれだし。」

「そうだね。自分の士気向上にも繋がるかもしれないしね。」

「せやなぁ。 ほな飛空は待っとき、ちょいとわいらも選んでくるわ。」


 そういって3人は行ってしまった。 これなら俺も勝手に選べば良かったかな?


 その後の話になるのだが、しばらくは「両者の意見が決まらない場合はロシアンルーレットで決めよう。」というどこでこのやり取りを嗅ぎつけたのか分からないが、学校中で流行り、そのうち生徒の1人がその遊びに関する親に話して、現実でロシアンルーレットを出来るように改良して売り出した後大反響したらしく最初の発案者である俺にいくらかこちらの世界のお金がマージンされるようになったのだが、それはまた少し先のお話。 なにが当たるかホントに分からんもんだな。

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