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別世界で俺は体感バーチャルTPSの才能がとてもあるらしい。  作者: 風祭 風利
第26章 従属神に誘われ
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第300節 境界線と闇、吸血鬼

 俺達はサキュバス戦の後、傷を癒すためにしばらく半壊したレイジストのアジトで休暇を取ることにした。 1日分休めばとりあえずは回復できるのでとにもかくにも、今は休むことを優先した。 休み終えたときに聞いたのだが、今回は休むだけだったので元の世界での時間は一瞬だったようだ。


[それじゃあまたなにか

 あったら連絡をくれ。

 一応あちこちに私の部下は

 いる。 私の名前を出せば

 すぐに用件は分かってくれる

 だろう。]

[ありがとうございます。

 そちらの再建もままならない

 状態でそんなお願いを

 聞き入れてくれるなんて。]

[あんなものを見せられたら

 こちらも信じざるを得なく

 なったからな。 しかし

 本当に2人でいいのか?]

[問題ないですよ。 こういう

 のは少数の方が悟られないですから。]

[そうか。 我々の力を

 存分に使ってくれる事を

 願うよ。]


 そう言って半壊したレイジストのアジトを去った。


「本当に良かったのですか?」

「俺が人を駒のように扱わないのは知っているだろう? だから下手に戦力を増やすよりは、俺達みたいに少数で地道に行くのがいいのさ。」


 砂漠の真ん中を北上しながら先程までの見解を話していく。 確かに今後の事を考えれば戦力の1人や2人くらいならくれただろう。 だがそれは意思のないNPCを使うことになるのは少々面倒だと思ってしまった。


『しかしその判断は間違ってないと思うで。 なんてったって次に行くのは普通の人間じゃあ、感覚が狂っちまうような場所やからな。 これに関しては変な話、ゲームの世界とはいえ、生きている人間には確実におかしくなっちまうな。』

「平然と俺を普通の人間じゃないみたいな扱いをするんじゃねぇよ。」

『十分普通の人間じゃないよ飛空。 別の世界から転移してその1年後にいろんな国に行って、今度はゲームの世界に入っているのは普通の人間じゃ出来ないことだよ。』


 海呂にそう悟られて、なんだかやけくそな気持ちになった。 あぁそうだよ。 どうせ俺は普通の人間じゃないですよ。



「なんというか、分かりやすいくらいの境界線だな。」


 あれから砂漠を横断し、恐らく次のエリアのところまで来たところでとんでもない違和感を目の当たりにする。


 今俺たちが立っている側はまだ晴れている。 正確に言えば太陽が昇っている。 だが、向こう側に広がる景色は全くの逆。 太陽が当たっているであろう場所ですら()に覆われているのだ。 こんなのを見せられた時点で気が狂ってしまいそうになる。


「これは感覚が狂わないように夜まで待つ方がいいのか?」

『そんなの関係ないで? これから行くのは明けることのない街「ダクロイ」。 どんだけ宿泊施設で寝ようが夜は明けねぇ。 かなり時間が狂うことになるわ。 気ぃ付けや。』


 よく言ってくれるぜ全く。 俺はゲームの人間じゃ無いんだっての。


 そう思いながら境界線を抜ける。 すると急な暗闇が襲い、視界が遮断される。 明るいところから急に暗いところに入ったので光の調節がうまくいかない。


「イサリヤ、君は大丈夫か?」

「ご安心下さい主様。 竜人族は適応力に優れております。 これくらいの暗闇、訳ありません。」


 さすがは異種族最上位の種族。 これくらいならビクつかないか。

 目が慣れてきたところで少し歩いていると、足元の感触が変わった。


「ん。 この道から舗装されてるな。 街が近いということか?」

「主様、あちらになにか見えます。」


 イサリヤが指差す方向に目を細めると、確かになにかが見えるが詳しくは見えない。


『飛空、おまえさんの召し使いが言ってる場所こそが次の目的地「ダクロイ」やで。』

「あれがか? でも明かりがついてないぜ?」

『それも当然やで。 ま、理由は着いたらすぐにわかるわ。』


 輝己のやつ、焦らしやがって。 目的地って言うのだから行くしか道はないわけだが、せめて何があるか位言ってくれたって問題はないんじゃないか?


[ようこそいらっしゃい

 ました。 ここは闇夜で

 覆われている街

「ダクロイ」でございます。]


 街の門に着いた辺りで立っていた人物に声をかけると、そのような返答が返ってきた。 しかしその人物は明らかに普通の人間じゃなかった。


 日に当たっていないから肌が白いのは分かるのだが、明らかに白すぎるのだ。 


 舞妓さんが白粉を塗ったくらいに白いので、体調が悪いのではないかと錯覚するが彼は至って健康そうだ。 なにより普通の人間じゃないことを明らかにしたのは口から見える牙。 人の犬歯の形をしていなかった。


 さて、どのような場所なのかはそれなりに理解できた。 ここは吸血鬼の街と言っても過言ではない。 外で声をかけた人物はスーツ姿ではあったが、街を歩いている人、吸血鬼と知った今ではその表現も正しいのか分からないが、とにかく行き交う人達の格好はスーツやドレスなど、かなり高貴な服装をしている。


『吸血鬼は貴族のような種族って設定の話が多いけれど、やっぱり設定に忠実なのかね?』

『でも血を吸うことには変わらないんじゃない? ほら吸血鬼っていろんな動物に化けれるからさ。』

『その辺りはどうなの? 輝己。』

『まあ敵として認識するのは早いと思うで。 とりあえずは宿と聖堂にいきや。』

「こんなところにも聖堂はあるんだな。」

『でも多分祀ってるものは違うんじゃないかな? 吸血鬼だし、祀る神も違うでしょ。』


 とにもかくにも今は拠点となる場所を考えなければいけないなと感じた。 そもそもここに来たのはいいが目的が無さすぎるしな。


[迷える者よ。 今回は

 どのような悩みを

 お持ちになられたので

 しょうか?]

「あなた、そういう神様じゃないよね?」


 聖堂に向かって祈りを掲げて女神様を呼び寄せたらそんなことを言われた。 ギャグのつもりなのだろうか?


「雰囲気と言いますかノリと言いますか。 あまり意識しないで下さいませ。」

「はぁ・・・」

「女神様、今回我々はこの場でどのような目的を果たせばいいのでしょうか?」

「そうですね。 吸血鬼には古くからの儀式があるようで、あなたたちはその儀式の最中に出くわすこととなります。」

「その儀式ってのはなんなのさ。」

「死者を吸血鬼として迎え入れる儀式。 血液循環による吸血鬼の誕生と言ったところでしょう。」


 確かに吸血鬼には噛まれるとその者も吸血鬼になる。 もしくは眷族になるという話は当然聞いたことがある。 興味本位でこの世界にも伝承的な話がないかと探してみたら案外あっさりと見つかって、前の世界となんら変わらない伝承の伝わり方をしていた。


 だがしかし、俺が思ったのは決してその部分ではない。


「・・・死者を吸血鬼として迎え入れる?」


 当然と言えば当然だが死者を簡単に蘇らせようとするのは禁忌の理である。 呪文でもそれなりの代償は払う。 もちろんそれはあくまでも()()における場合の話ではある。


「ご安心を。 確かに死者をとは言いましたが、この場合は寿()()()()()()ではなく不慮の事故、もしくは

 病弱による衰弱が該当します。 主に後者が多いのですが。」


 安易に吸血鬼を増やす方法じゃなかったことにそれはそれで安心はしたが、問題としてはまだまだ残っている。


「そもそもこの街に吸血鬼以外に人がいるのか?」

「この街というよりは隣街にと言ったところでしょう。 夜にしかならない街。 正確にはこの辺り一帯はある意味では人も暮らせるのですよ。」

「裏社会みたいな話になってきたな。」

「意外とそうでもないですよ。 普通に別の街に行く人もいますので。 今回の場合はその儀式についての話を聞き回るところから始まりますね。 聞きたいことは以上ですか?」

「あ、それともうひとつ。 従属神の動きになにか変化はあった?」

「これといっての変化は。 それではまた。 神のご加護をあらんことを。」


 そういって去っていく女神様。 警戒すべきは吸血鬼か従属神か。 本当に無事に帰れるように設定されているのだろうか? その辺りはもう考えてもしょうがない。 今はやれることをやるしかないのだから。

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