第29節 召集と新たなメンバー、見たことない武器
二回目の週末を迎えようとしていた頃、「サークル ミステリアスウェポン」から召集がかかった。 どのみち週末は寮にいるので、なんの問題もなくOKを出した。
その夜、みんなが帰省した後、プライベートルームに入り、「ミステリアスウェポン」と書かれたルーム名に入る。 するとそこには二川先輩がいた。
「やぁ、久しぶりだね。 呼んでおいてなんだが、メンバーが揃うまで待っててもらえないかな?」
「構わいませんよ。 話は全員が揃ってからですか?」
「そうなる、と、言いたいところだが。」
思わせぶりな発言の後に「ガチャ」という音が後ろからした。 どうやら誰かが入ったようだ。
振り返るとそこには他の先輩方ではなく、 赤髪で短髪猫目の少年がたっていた。
「どうやら彼が先に来てしまったみたいだね。」
「彼は?」
「紹介しよう。 彼はここのもう1人の新サークルメンバーの槌谷 雪定君だ。 雪定君。 彼が前に紹介した 津雲 飛空君だ。」
「あぁ彼が・・・ 初めまして槌谷 雪定って言います。 雪定で構いません。」
「初めまして、津雲 飛空です。 こっちも飛空で構わない。」
「いやしかし、飛空と会えるとはなかなかに幸運だな僕は。」
「どういう意味だ?」
「君は知らないかもしれないけれど、あのレクリエーション戦闘以来、君の評判は1年の間じゃかなり良くてね。 君の戦い方を学びたいって思ってる新入生は沢山いるんだよ。 その分逆に妬む人間もいるけどね。」
相当期待値が上がってしまったらしい。 ちやほやされるのは正直好きではない。 まあ、なにも無いことだけは祈っておこう。
「お、2人とも揃ってるね。」
「これで正式に全員集合って事になるかな。」
「これで全員って言うのもなんか寂しいものだけどね。」
あ、残りの先輩達も来たみたいだ。
「では改めて正式に新人を紹介しよう。 こちらの彼は津雲 飛空君。 先程槌谷君が言っていたようにとても有能な潜在能力を持っている。 それに武器も実に興味深い。 そしてもう1人が槌谷 雪定君だ。 彼も我々のサークルに入れるような武装を兼ね備えていたため勧誘をした。 2人とも、改めて自己紹介を。」
「あっと、津雲 飛空です。 こういったものは何気に初めてなので、少し緊張していますが、 仲良くしてください。」
「同じく1年の槌谷 雪定です。 まさか自分の武装を見てもらえる事があるのだなと実感しました。 これからよろしくお願いします。」
俺と雪定の挨拶が終わり、先輩達に色々と質問をぶつけられる雪定を横目に、サークルの現状について少々聞いてみたいことがあった。
「八ツ橋先輩、少し聞きたいことがあるのですが。」
「なんだい?」
「基本的にサークルってこの学校に置いて管理されてる立場なんですか?」
「うーん。サークルを作るのは自由だし、特にどこの管理下にも置かれてないよ。 なんでまた急に?」
「先日生徒会であるサークルと少々いざこざがありまして。 もし管理している組織などかあればそういう事も起きないのかなとふと思いまして。」
「そうか君は生徒会に入ったんだったね。 とは言っても生徒会だって全部を見れるわけじゃない。 そんなに落ち込む事は無いだろうよ。 悪事があったら原因を探り、お互いに納得できるように取り繕う。 それでいいんじゃないかな?」
それだけでいいのだろうか。 上に立つ者の感覚なんか分からん。 元の世界だと上に立っていたものが下に対してなにか強く影響を与えたとあまり思えない。 感覚の違いなのか、そういう経験が無いだけなのか、どっちにしろ使う人間よりは使われる人間のほうがしょうに合ってる気がするし。
「ほらほら、そこ2人。辛気臭い話はやめて、話に交ざりなよ。 まだ2人の武装を見合いっこしてないんだから。」
そういって糸門先輩が俺と八ツ橋先輩を無理矢理輪の中に入れる。 そういう強引なのは好きではないがまあ仕方ない。
「ではお互いに武装を紹介していこうか。 とは言っても僕らはそれぞれの武器は知っているから知らないのは君たち2人だけになるがね。」
知るに越したことは無いのでまずは俺からと言った具合で、スパークガン、光学迷彩銃、ブーメランチェイサー、ロープリングの順でそれぞれ説明していった。
「へぇ、君の武装は全部特殊な武器なんだね。 それで勝てるとは・・・ほんとに素晴らしい事だよ。」
なんかイマイチ誉められてる気がしないが彼なりの誉め方なんだろう。
「後は僕の武器だけだね。」
そういって雪定はオリンピックなんかで見る形のした槍を取り出した。大きさ的にはロングスタイルに属するだろう。
「この武器は「スティングニードル」って言って、地面や壁に刺すことで効果を発揮するんだ。 ちなみに僕はこいつを「ヘッジホッグ」って呼んでる。」
やっぱり武器に名前を持つと愛着が湧くんかな? 白羽も火炎放射器を「サラマンダー」って呼んでたしな。 っていうか武器の愛称の意味ってハリネズミって事になるけど、それならもっとこう、刺々しいって言うか。 そんなことはあまり気にしないで、武器の特徴について疑問を持った。 「刺して効果を発揮する」? 単発では使えないのか?
「飛空君が分からないって顔をしてるから実践して貰えるかな?」
「はい。」
二川先輩がそう雪定に促すと、雪定はその業物を地面へと刺した。 すると明らかに鉄で出来た槍はぐちょぐちょに溶けて、床へと染み込んでいった。
「今さっきまで見ていたものは半径5cmの円を描いて地面に潜ってる。これが見えるのは使用者、つまり僕だけにしか見えないんだ。」
なるほど、設置型トラップって事か。 確かに今までそんなのを武器にする人は見てないな。 まあ今まで会ってきた人物でって話だが。
「これは僕の所にはミニレーダーでも確認出来て、発動も僕のタイミングで出来る。」
そういって雪定が指を鳴らすと、地面から鉄の円柱が出てくる。こんなのが勢いよく出てきた時にはタダじゃ済まない。
「だけど当然ながら人には使えない。 対人だとタダの刺突武器になっちゃう。 それでも十分な火力は出るけどね。」
遠距離ならトラップを設置、近距離なら槍としてって事か。 なかなかに汎用性のある武器だな。
「でもそれだけなんだよね。 この武器が出来るのは。 後は普通の武器のスタイルだし。」
そう自負している雪定の話を聞きながら考察していた。 設置型トラップ・・・・ 出る時は円柱・・・・ 地面に溶ける・・・・
「なあ、それ他の場所から属性みたいなのを付与出来ないか?」
「・・・・どういう事? 飛空」
「ふと思ったんだよ。 それはトラップとしては優秀だし、ダメージも入る。 だけど、それは相手を足止めするにはいかんせん役不足な感じがするんだ。」
「確かにそれなら回りくどい事をしないでも普通の武器で対抗すればいい。 種が割れば対策は容易いだろう。」
八ツ橋先輩が話に続いてくれる。
「で、俺のこのスパークガンなんだけど、相手を痺れさせるし、闇討ちにはもってこいなんだ。 試合中でも何回かやってるしな。 だけど、こいつの弱点って火力の無さと射程の短さなんだよ。 かなり近づかなきゃ当たんないんだ。 そのため光学迷彩銃とのコンボかあるんだけどな。」
「そればかりは基本的に特殊武器は能力がある代わりに火力を落とされてるからね。」
関先輩が納得するように語ってくれる。
「でももしこのスパークガンとそのスティングニードルがお互いの短所を無くしつつ長所を引き出せるとしたら?」
「・・・・・やって見る価値はありそうだね。」
考えが分かったのか二人してニヤける。 ものは試しと早速やってみることにした。
スティングニードルの条件が、地面や壁に「刺さった」状態なので、まずは雪定には何も無い、上に投げてもらい、その次に俺がスティングニードルにスパークガンを放つ。 するとスティングニードルは雷を纏いながら地面へと刺さり、地面に溶けた。
「へぇ、属性が付くと円が大きくなるみたい。 さっきは半径5cmくらいだったけど、今度は半径8cm位になったよ。」
そこまで広がるのか。
「さてこの後はどうなるやら。 飛空、そこは危ないよ。」
そう言われたので、その場から離れ、雪定が指を鳴らす。 すると、先程は鉄の円柱だったのが今度は雷の円柱になった。 ただし先程はそこそこの高さがあったが、今は俺の腰あたりまでしかない。 円が広くなった分高さが無くなったようだ。
「属性の付与、か、今までにない発想だね。」
「すごいすごい! 私の武器にも出来ないかな!?」
「多分ああいうのは媒体がしっかりしてないと出来ないんじゃないかな? 後は手に触れていないタイプの武器じゃないと使用者本人が傷を負う事になるって事かな?」
「属性付与なら私の武器なら簡単に出来るね。」
先輩方から色々な意見を貰った。 これで戦略の幅はグッと広がることだろう。
「飛空、なかなかない体験を出来たよ。 君とはこれから長い付き合いになりそうだね。」
雪定が手を差し伸べて来たのでこちらも手を出して握手で返す。
「俺もなんとなくそんな気がしてきた。」
その後は関先輩の属性付与を色々と実験して1日が終わった。
もしかしたら前の世界じゃこんなこと出来なかったかもしれないな。 そう思いながら、別世界に来たことを少しだけ良かったなと思えた。
本来はここでこの章は終わりなのですが、あまりにも章と章の間が短いので、番外編を少しやろうかなと。




