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別世界で俺は体感バーチャルTPSの才能がとてもあるらしい。  作者: 風祭 風利
第4章 静けさの後には
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第27節 事件と犯人、粛清

「生徒会長! 事件です! 事件ですよ!」


 別世界での休日を過ごして数日経ったある日、放課後になり俺は生徒会にて授業の課題である「自分の武装が対面して戦いにくい相手の武装について」の作文を作成していたところ、生徒会室のドアが勢いよく開き、1人の女生徒が何やら慌てた状態で来ていた。


「なにがあったか聞く前に羽嶋さん。まずは服装を整えてくれないかしら?」


 羽嶋さんと呼ばれたその人は、スカートやらブレザーやらメガネやらが色々と乱れている事に気づき、慌てて直す。


「すみませんでした。 3年4組、羽嶋 蓮華(はじま れんか)、生徒会に事件として報告に参りました。」

「そこまでかしこまって欲しいわけじゃなかったけど、まあいいわ。 それで事件とは?」


 志摩川先輩が似つかわしくない位の声のトーンと表情で話を切り出す。 俺も作文を作成しつつ話を聞く。


「はい。教室棟の一部にスプレーの様なもので落書きをされているのを確認致しました。 おそらく犯人は前回と同様の人物かと。」


 その話を聞いて志摩川先輩ともう1人、隣で生徒会宛の書類を整頓していた幸坂先輩が大きくため息をついた。 前回って事は前にもあったのか。


「ありがとう。その依頼受託するわ。 引き継ぎ変化がないか、観察お願いね。」

「分かりました! 偵察委員会、尽力を尽くして・・・・」

「そういうのはいいの。 でも頼んだわよ。」


 そういって羽嶋さんは生徒会室を去っていった。 忙しい人だ。


「さぁ。 仕事をするわよ。 総員準備をしなさい。」


 志摩川先輩が気だるそうに宣言をする。


 ちなみに生徒会の仕事なのだが具体的には3つある。


 1つ目は先程幸坂先輩が処理していた書類整理。主にサークルの現状報告や生徒会に承認してもらいたい案件をまとめた資料を片っ端から目を通し、やる仕事である。


 2つ目は企画案。 どうしたら学校生活をよく送れるか、イベントを考える事である。 基本的にはこちらが中心の立ち回りになる。


 そして3つ目はこういった学校内のトラブルシューティングだ。 学校だって全てを管理してる訳では無い。 なので無論そういった輩が出てくる。 それを先程の羽嶋さんを主軸とした「偵察委員会」が見れる範囲で見てそれを報告をする。今日はこのトラブルシューティングに1日使うことになるだろう。


「先輩、先程羽嶋さんが「前回と同じ」と言っていたのですが、前にもあったんですか?」

「ええ、飛空君と夭沙ちゃんが入る前の事なんだけどね。 今回と同じように校舎の壁に落書きした馬鹿がいてね。 同一犯の可能性がかなり高いの。 反省してるようには見えなかったからね。」


 ならもう一度懲らしめないといけないって事か。 全員準備が出来たようで、現場に移動する。


 移動先の校舎の壁を見てみると何かしらのマークが転々としていた。


「これはまた・・・・・まあ同一犯なのは間違いないわね。何でって」

「そのマークは我々! 「サークル ミストマスト」のマークだからだ!」

「知ってるっつの、ったく相変わらず仰々しいわね。アンタは。」


 突如現れた人物に呆れている志摩川先輩、対面しているのは、緑髪で角刈り、肌は日焼けしており、運動できる程度に鍛えている体をしていた。


「前回の反省が活かされてないみたいだね。 もう1回ペンキ塗りがご所望かい?」

「ふん、貴様ら生徒会のように頼まれて動く人間にはなりたくないのがこの俺、岩佐 暁(いわさ あかつき)の生き様だ!」

「や、やっていい事と、悪い事の、く、区別くらいは、つ、付けなさいよ。」

「なよなよしく言ってもなにも聞こえないぞ?夕暗嬢よ。 ハキハキと喋りたまえ。」

「はん! その感じやと、まーた俺たちにコテンパンにされたいようだな。 学習能力もないんかねぇ。」

「あの時はあの時だ。今とは違うことを教えてやる。」


 志狼先輩、夕暗先輩、倉俣先輩の言葉を怒涛のように返していく岩佐。 そこまでの返しが出来るとは流石だ。 そんな風に見ていたらこちら側に目線を合わせてきた。


「今年も1年が入ったようだが、場馴れしていない新人を導入するなど・・・・・・いや。」


 先程まで見下していたような顔をしていた岩佐だが、夭沙を見るなり興味の示す顔になった。


「生徒会でもこのような娘を入れれるようになったか。 ここにいる女達よりは強気な性格がありそうだ。」


 好奇の目を向けられてあまりいい気分になっていない夭沙と岩佐の間に入る。 しかしそんなのはお構い無しに岩佐は語り始める。


「どうだ?娘、生徒会などやめて我々のサークルに入る気はないか?」

「おいおい、勝手に勧誘してんじゃないよ。そもそもサークルと生徒会は別だし、もう夭沙は別のサークルに入ってる。 現状今のサークルを辞めない限りは他のサークルには勧誘すらも出来ないはずなんだけど?」

「貴様には聞いていない。 ふん、話題の1年だと聞いてどんなのか見てみたかったが、あのような非戦闘武器でよく戦えるものだよ。 あんな戦い方、俺には理解出来ん。」


「・・・・・あ゛?」


 なんだろう。 ここまで自分の事を棚にあげて馬鹿にされるとほんとに腹が立つな。 あんな戦い方理解出来んだぁ?


「上等だよ。 あんたが売ったその言葉、俺が」


「私が買ってあげるわ!」


 俺の言葉を遮って今度は夭沙が間に入った。


「・・・・・・まさか後輩に啖呵を切らせてしまうとはな。 だが決意は同じようだ。」


 幸坂先輩が後ろから補足と言わんばかりに話に入る。


「我々生徒会は貴様達「サークル ミストマスト」に校則に反する事を行った行為に対し、謝罪の猶予を与える。」

「謝罪をする気は無いな。」


「なら前回と同様、電脳世界での戦闘による粛清を行う。 我々が勝ったら貴様らは連帯責任として、前回同様壁の修繕をしてもらう。」

「なら我々が勝ったらこの娘を我がサークルに勧誘させてもらう。」

「・・・・・一個人を賭けの対象にする場合、本人の承認が必要になるが・・・・ 山本、それでもいいか?」

「覚悟は出来てます。」

「交渉成立だ。 戦闘は4対4だからお前達のサークルに時間をやろう。 15分後に電脳室に来い。」

「いいだろう。 我が後輩の力を見せつけてやる。」


 そう言い残し岩佐は戻っていく。 俺達も電脳室へと向かう。

 職員に戦闘許可をもらい、電脳室へと入る。


「いやぁ、しかしまさか夭沙ちゃんが自ら前に出るとはねぇ。」

「そうですよぉ。 私ヒヤヒヤしちゃったんだからぁ。」


 これから戦闘だというのにこの先輩は緊張感というものが無いのだろうか?


「チェッ、今回は戦闘無しか。 あいつらまたボコってやろうと思ってたのに。」

「生徒会の、ルールだし、あ、諦めなさい。 今は向こうのチームに負けないように応援する、だけなんだから。」


 ふてくされる倉俣先輩と少々ホッとした様子の夕暗先輩の会話を横目に俺は志狼先輩と共に夭沙のところに寄っていく。


「ほんとに良かったのかい? 正直あんな要求は本来受け入れられないんだけれど。」

「・・・・私でも分かんないんです。 なんであんな事が出来たのか・・・・」

「・・・・・・もしかして頭に血が上って冷静な判断が出来ていなかった事か?」


 そう俺が指摘すると、夭沙はコックリと頷いた。なんというか、かなり危ない事をした気がする。 頭に血が上ると周りが見えないタイプって事か。


「いえいえ、あなたは冷静な判断をしたと思うわよ。 いくら相手が理不尽な要求をしてきてもね。」

「どうしてそう言えるんです?」

「あら?気づかない? 他でもない貴方のために動いたっていうのに。」


 志摩川先輩がそう言い放つ。俺のために? そう思って夭沙を見ると、夭沙も流石に分かっていないようだった。


「無意識でそれをするとはおいそれいったわ。 いい?まず岩佐の馬鹿に夭沙ちゃんが狙われた。 それに対して飛空君は庇った。 で、今度は飛空君が馬鹿にされると夭沙ちゃんが啖呵を切った。 ここまで言えばもう分かるでしょ?」


 お互いがお互いの事を思って行動したって事なのだろうか。 だけどあそこでちょっと怒りをぶつけてしまったのは、自分に我慢強さが足りないのだろう。 反省。


「まあどのみちあいつらには壁の修繕をしてもらうがな。」

「そうよね。 というか前回もだけど本来ならあいつだけでやらせればいいのに、連帯責任になってしまっては流石に可哀想に見えてくるのよね。」

「そもそも「サークル ミストマスト」ってなんのサークルなんです?」


 1番の疑問をぶつけてみる。 答えてくれたのは志狼先輩だった。


「「サークル ミストマスト」はミスト、つまり霧状に弾が分散する武器を得意とする集団でね。 近距離、遠距離、どちらにも対応出来る武器を主体に戦い方を考えるサークルなんだ。」

「話を聞く限りですと僕の所属する「ミステリアスウェポン」と変わらないですね。」

「そう。サークル自体は真面目なの。 あの馬鹿が勝手に騒いでるだけなの。 全く、いくら消去法とは言えあんなのをサークル副長にしちゃうとはね。」

「え? あの人がサークル長ではないんですか?」

「あそこのサークル長は良くも悪くも真面目な人よ。 多分みたらほんとにあの馬鹿の諸行が分かるわよ。」


 こちらとしてはただただ会ってみないと分からないのであちらのサークルが来るのを待った。

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