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別世界で俺は体感バーチャルTPSの才能がとてもあるらしい。  作者: 風祭 風利
第25章 年始から大忙し
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第268節 作成とデジカメ、イベント

「こほん、先程「テレポーター」の設計図を確認した。 これなら3日のうちに作成が出来るだろう。」


 玉座に座り直して、一度咳払いをしてからそう話すアウステラ姫。 その顔はまだ赤みを帯びていた。


「しかしテレポーターの設計図を見せただけでそれだけの期間で出来るとは・・・・・・ やっぱりこの国の人の技術は凄いものだな。」

「ま、まあな。 外の事を知るためには必要なことだったんだ。 これも先人の知恵から来るものだ。」


 ああいっているがその表情は満更でもないようだ。


「我々の国のテレポーターも作成が間近になっている。 これで少なくとも我々は曜務、ソルトラ、ツクラド間での移動は可能になるわけだ。」

「曜務と繋がれれば他の国にも行けるように手配するぜ。 というかテレポーターの役割はそこにあるからな。」

「ということは我々の国にも来ることがあると言うことか・・・・・・」

「心配すんな。 悪く言う奴は俺がぶっ飛ばしてやる。」


 また堕ちモードに入りそうだったので、すんでのところで、フォローを入れる。 地上の人々がここの住人をよく思ってないのではないかと言う被害妄想があるようだ。 そうならないためにも、まずはこの国の事をよく知らなければならない。 俺の今回の仕事となりそうだ。



「私は先にソルトラの方に戻るが本当にいいのだな? 津雲殿。」

「大丈夫だって。 失敗した例も今のところは無いし、ソルトラの情報が入っている端末も持ってる。 ツクラドでテレポーターが出来次第、そっちに顔を出すよ。 そっちも後半日から一日かければ出来る程度にまでは作成が出来ているんだ。 後少しの辛抱だって。」

「そこまで言うなら・・・ ではすまないが、後のことは任せたぞ。」


 そういって潜水艦に入り、そのまま沈んでいく。 さてと、テレポーター作成が進んでる間に、俺は俺で動かないとな。



 そしてテレポーターが出来ると言われた3日目の朝。 俺も戻る時になったのでアウステラ姫の所に向かう。 すると


「うっ・・・わぁ。 すげぇ。 ここまでのものは初めてだぞ。」


 部屋に入った瞬間に見えたのはもちろんテレポーターだ。 だがその大きさが尋常ではなかった。


 元々テレポーター自体は人一人分の運用しか出来なかった。 というよりもそれ以上の人数は同時に処理できないと考えていたのだが、ツクラドで創られたテレポーターは明らかに3~4人は入れそうな位の大きさで設置されていた。


「どうだ? これなら1人ずつ出はなく複数の人間が様々な国に行けるようになるぞ。」

「いや、それは確かに凄いが、これだけの膨大なものを作ったら、オーバーヒートを起こしてすぐに熱が出る・・・」


 そこで俺はあることに気が付く。 ここは氷が自然に生成できる位温度の低い場所。 つまりこの国の外は常に冷凍庫のような世界。 しかもここは氷で創られた城であるため、ちょっとやそっとの熱では溶けないほどの強固な氷が全体にある。 つまり電子機器の使いすぎによる熱暴走の心配はまずないのだ。


「・・・なるほどな。 そりゃ技術力が発展するわけだ。」

「ところで飛空よ。 その手に持っているデジカメはなんだ?」


 アウステラ姫が指差したのは俺の手に持っているデジカメ。 この世界でもカメラなどはあるのでそんなに珍しいことではないのだが、なぜ持っているのかと言う話だろう。


「これは資料提供のために必要なのさ。」

「資料提供?」

「簡単に言えば雑誌に取り上げるための写真を撮ってたのさ。 折角の来たのにこの景色を写さないのは勿体無いだろ? 俺はあんまり撮るのは得意じゃないから、これを見せてその手のプロに頼めば、この国に来てもらえるようになるだろ?」

「な、なるほど。 そこまで我々の事を思って・・・・・・」


 アウステラ姫は感心しているが、これの目的はもうひとつある。 それは「この国は地上の人に知らせる必要が無い。」という過小部分を失くすためでもある。 少しでも魅力的なものが存在すればそれにより人は少なからず釣られてやってくる。 それを軸にもっと国自慢が出来ればと考えたのだ。


「そんじゃあ俺はこれで。 また機会があればお話ししましょう。 つってもすぐにまた会うことになるだろうけどな。」

「飛空!」


 もう迎えに来ているであろうソルトラ行きの潜水艦の元へ行こうかと踵を返したとき、アウステラ姫に呼び止められたので顔だけを向けて、その呼んだ理由を聞く。


「その・・・我々の国の事を良くしようと考えてくれたことに感謝・・・」


 そこまで言ってアウステラ姫は首を振り、そして


「ありがとう。」


 そうクールながらの笑顔を見せてくれた。 それが見れただけでも十分な成果なので、俺は同じく笑顔で返して、歩みを進めた。



「では、始めるぞ。」

「最初だから緊張するよな。 俺もこんなんだったなぁ。」


 ソルトラの方でも完成したテレポーターの試運転がてら俺はツクラドから持って帰ってきた情報端末を挿入口に入れる。 するといつものゲートが現れる。


「こ、この中に入ればツクラドに着くのだな?」

「正確には通り抜けたらだけどな。」


 この際細かいことの言い合いっこは無しだ。 早速サーレンは恐る恐るといった様子でまずは両手を入れる。


「おお、確かに両手に冷気が感じられ・・・うおわ!」


 そう悲鳴をあげたと思ったらテレポーターの中へと吸い込まれていった。

 察するに向こうでアウステラ姫が引っ張ったのだろう。 そう思い俺もテレポーターへ顔を突っ込む。


「やぁ、飛空。 また会ったね。」

「ああ。 ソルトラのテレポーターの試運転にちょっとな。」

「しかし本当にすごいな。 これなら潜水艦要らずになってしまうな。」

「おいおい、それは観光用の奴として残しておけばいいんだよ。」


 そんな会話を繰り広げながら、俺は自分の国、曜務へと帰るべく曜務の情報端末をツクラドのテレポーターの挿入口へと入れて、テレポーターから帰る。

 大臣と少し挨拶を交わしてから、国会議事堂を出ると風が髪をなびかせた。


「多分ノイズ風なんだろうが、俺にとっては関係がないな。」

『こっちも冬だが、これぐらいの冷たさならツクラドで経験した寒さに比べたらどうってこともないな。』


 飛怒羅の言葉に苦笑しながらも本当にそうだなと思ってしまう。



「行っては帰って行っては帰っての繰り返しだから、なんか新鮮味が薄れると言うかなんと言うか。」

『それは仕方のないことだろ。 慣れちまったもんはしょうがないって奴さ。』

「その慣れも、正直どうなんだろって思ってたりなかったり。」


 曜務学園の正門を見て、そんな風に会話を繰り広げる。


「まあ、後のことは周りの大人がやってくれると思うし、しばらくは曜務で過ごしたいよ。」

『そうなるように願ってればいいと思うぜ? それが叶うかは知らないけどな。 ふっふっふっ。』


 ・・・なんと言うかこうしてもう一人の人格のやりとりをしていると、本当にこれがもう一人の自分なのか? と疑問に思ってしまう。


 戻ってきた時刻としては日が暮れかかっている夕方に帰ってきたので、食堂に行き、本当に久しぶりの食堂のご飯を食べる事にした。

 席について早速ご飯と味噌汁を飲む。 うん。 本当に懐かしい。


『この微妙かつ複雑な味付けが不思議と恋しくなるよな。』

「そんな褒めてるのか分からないような感想は要らねぇよ。 というかお前も味は分かるのか?」

『言っただろ? 五感は共有してるってな。 だから触れた感触も分かるし、匂いだって分かるさ。 もちろんお前と交替しているときも、お前も同じように感じ取れるぜ。』


 なるほど、情報は常に共有状態にあるわけか。 よく二重人格者にある「片方の行っていた事の記憶がない」なんていうことはないわけか。 わざわざ説明をしなくてもいいのはとても助かる。


『それにしても・・・飛空。 気づいているか? この異様な空気に。』


 飛怒羅の質問に「あぁ」と短く答える。 この時間になっても食堂の利用者は少ない。 いや、それ事態はこの学校の自然の摂理の内にあるのでそこは気にならない。 問題はその食堂を利用している生徒の様子がおかしいのだ。 具体的にはみんななにか落ち着かない様子なのだ。 その割合は男子の方が圧倒的に多い。


「なんだ? またなにか事件でも起きたのか?」

『分からねぇ。 あいつらならなんか知ってっだろ。 近くにいないのか?』

 飛怒羅に言われて辺りを見渡すがそれらしき人物はいなかった。

「まあ、部屋に行けば誰かしらはいるだろ。 今は食べちゃおうぜ。」

『焦らずともいいってな。 ま、ゆっくりしようや。』


 そう思い、再度ご飯を食べ始めた。



「お、今回はやたら早かったな。 どないしてん?」


 部屋に戻ると輝己がシャドーボクシングの構えで待っていた。 啓人と海呂はバイザーをつけていることから、おそらくプライベートルームにいるのだろう。


「今回は向こうが準備できる国だっただけだよ。 それよりも、このざわつきはなんだ? なんか妙にみんな落ち着きがないというか。」

「あぁ、実はな今年からある会社がイベントを起こしたんねん。」

「イベント?」

「その名も「この想いを甘さに載せて届けよう」って企画らしいねんて。 それを曜務全体でやることになって俺らみたいな高校生から大人までみんなソワソワしとんねんて。」


 なんだろう、そのようなイベントを前の世界で知ってるような・・・


「一応詳しく教えてくれないか? そのイベントについて。」

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