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別世界で俺は体感バーチャルTPSの才能がとてもあるらしい。  作者: 風祭 風利
第25章 年始から大忙し
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第267節 一喝と変化、一心同体

「つ、津雲殿! 一体どうしたというのだ! そんな罵声を浴びせるような・・・」

「サーレン、お前は少し黙ってな。 さすがにここまでの分からず屋は放っては置けないんでな。」


サーレンには悪いが、こちらの話を聞いて貰うために、少し威圧的に押し黙らせる。 サーレンもその高圧的な言葉にグッと口を紡いだ。


「言っていることが良くわからない。 我々にはそれぐらいしか出来ないのだぞ? それは事実だ。 それ以上でもそれ以下でもない。」

「俺が言いたいのはそういうことじゃねぇよ。 お前は外の景色は見たことがあるのか?」

「あぁ、生まれてこの方何度もな。」

「・・・・・・なるほどな。 だったら見飽きてるって可能性はあるか。 だがなぁ、他人が見たら、この国のことを初めて知った人間ならあの景色は幻想的に見えるんだぜ。」

「だがそんなのは一時的なものだ。 それにここの民は地上に出たいとは・・・」


「別にこの国の人がどう思ってるのなんか今はどうだっていいんだよ!」


アウステラ姫の的外れな事を喋るのでそれ対して一喝を入れる。


「俺が言いたいのは、なんでそんなにこの国の民を見下すことが出来るかって事だ! 仮にもお前はこの国の長だろ! 他人に認められるかなんてそんなもんは後で見極めりゃいいんだよ! 今はてめぇの国の民を信じることから始めやがれ! 氷だけであんだけ作れる技術やそれを留まらせる技術だって、普通の国の人じゃ絶対出来ない事なんだよ! それがこの民の自慢なんじゃないのか!?」


その言葉にアウステラ姫は「ハッ!」とする。 もしかして今まで自分達の事を良く言ってくれる人がいなかったんじゃないか?


「この国の民の技術が上の世界で通じないからってなんの関係がある? 地下暮らしの人間が卑下になるのは良く分かるぜ? だが自分達の技術に誇りくらい持ったってなんら不思議じゃないだろ!? その国にいる民はその国の人間でしかないんだからよ! 無理して他国と同調なんて図らなくていいんだっつんだよ!」


氷の城なだけに氷柱が俺の声の振動で揺れて落ちてくる。 まぁ小さいものだから気にはしないがな。


「それに俺たちは同盟を組みに来たんだ。 居心地の悪さなんか関係あるか。 俺はここの国の技術力の高さを買ってんだ。 それでも見下すようなやつがいるなら俺が締めてやる。 今まで通り住んでくれりゃそれでいいんだ。 なにも難しいことじゃねぇんだよ。」

「・・・・・・・そうか。 確かに私の認識の甘さに反吐が出そうだ。 分かった。 ツクラドは曜務との同盟を組もう。」

「同盟ってなったら必然的に他国とも繋がりが出来るんだかな。 交渉成立だ。 サーレン、これはお前の国でも作ってる「テレポーター」の設計図と情報端末に入れる情報の一覧だ。 俺は一度席を外す。 あのお姫様に渡しといてくれや。」

「あ、ああ。」


サーレンに数枚の資料を渡して、俺はこの部屋から出ていった。


誰もいないことを確認した後、近くの氷の壁を見る。 そして鏡写しのようになっている自分の顔に向かって声をあげる。


「よっしゃ。 これで俺も自由に精神を出入り出来るようになったぜ。」

『まああれぐらい言わないと分からなかった訳だし、感謝するよ。』


()()()()目の黒い飛空は自分の体を操っている()()()()()飛空に声をかける。


「お前の場合はたまに優しすぎるときがあるからなぁ。 言うときはガツンと言わないといけねぇや。」

『それもそうだな。 それで体の方はあれで良かったのか?』

「あぁ。 十分だ。 出し入れのタイミングはお前に託すぜ。」

『それはいいんだけどさぁ。』

「なんだ?」

『いや、そっちが表に出てるときに、なにか分かりやすいようにしたいなって思ってな。 今回みたいに唐突に変わっていちゃ、口調が強くなったくらいでほとんど変わらないから。』


精神だけが入れ替わっているなど普通の人には全く分からないことだ。 実際にエレアも唐突に変わって、困惑していたようだし。


「なるほどなぁ。 じゃあこうしてみるか?」


そういって現実世界の飛空は目を瞑って、再度目を開けると、瞳の色が赤く染まり、目尻の部分から瞼の部分にかけて赤い模様が写し出される。


「こうすりゃ多少は分かるだろ。 ま、目元なんてそんなにはっきり見ることなんて無いかもしれないがな。」

『変化がないよりはましだ。 あと名前どうにかしないか? どっちも「飛空」じゃややこしいだろ。』

「それもそうか。 なら俺の方は怒りを持ってるって意味で「飛怒等(ひどら)」なんてどうだ?」

『「と」に濁点をつけただけじゃないか。』

「いいんだよ分かれば。 それじゃ、体を返すぜ。」

『あぁ、こうして自分を見るってなんか変な気分になるな。』


そういって俺は()()体を入れ換える。 すると先程まで氷越しだった自分の体に力が入ったようにすぐに動かせれるようになる。 代わりに目の前の氷越しの自分は目尻に赤く染まった模様が出ていた。


「これで俺たちはある意味一心同体になったわけだ。」

『そういうこったな。 あぁ一応言っておくと、お前が見たり聞いたりする情報はこっちにも伝わるからな。 困ったら俺にも意見を言ってくれて構わないぜ。』


それはありがたい話だ。 使う脳が2つになると考えると、疲弊が凄いことになりそうだが、なにも答えが出ないよりは断然いい。


『それじゃあ、そろそろ戻るとしようぜ。 大分いい時間になっただろ。』

「そうだな。 あまり待たせるのも良くないだろうしな。」


そういって俺は先程来た道を戻り、大きな扉の前に立つと、


『・・・おい、中からなにか聞こえないか?』


飛怒等が体の奥からそう聞いてくる。 どうやら人格が2つあることで五感も2人分になっているようだ。 俺には聞こえなかった辺り、多分集中力が足りてなかったのだろう。 ドアも氷で出来ているので直接聞き耳することは出来ないが、聞き取れるくらいまでの距離まで近づく。


『だから大丈夫だと言っているだろ? 津雲殿だって本当に怒っていた訳ではないし、この国のための事を思って言っていたに過ぎないのだから。』

『だが、あの飛空の形相は凄まじいものを感じたぞ。 あそこまでの怒りを見たのは初めてだ。 両親はあのように叱ってくれたことはなかったから、尚更な。』

『しかし津雲殿を信じる気にはなっただろ? ステラ。』

『あぁ。 サーレンには感謝せねばならないな。』


どうやら2人でなにか話し合っているようだ。 というかサーレン、アウステラ姫の事を「ステラ」って・・・


『なるほどな。 あいつらは顔見知りどころかそれ以上の関係になっていたんだな。』

「分からないぜ? 俺がいたから遠慮していたのかもしれないぜ? サーレンは話し合ってみたらあんな感じだったしな。」


そういって俺は遠慮なくドアを開ける。 そこで俺はドアを開けた先の光景を見て驚くこととなった。

てっきり玉座と床での対話かと思っていたら、アウステラ姫はわざわざ玉座の場所から降りて、サーレンの胸の中に頭を埋めるような体勢になっていた。


「サーレン、私はそこまで民の事を思っていなかったのだろうか?」

「そんなことはない。 ステラは頑張っているさ。 ただ外の世界と感性が違っているだけの話さ。 私も津雲殿に言われなければこのように同盟を組むことはおろか、話すら聞かなかっただろう。 感性は国の人それぞれだ。 そこから外を学んでいけばいい。 そうだろ?」

「・・・そうだな。 私も泣き崩れている場合ではないな。 だが今はこうさせて・・・・・・・・・」


そこでアウステラ姫は部屋に入ってきていた俺に気が付いたようで、冷静さが売りだった筈の彼女の顔はどんどん赤くなっていく。 それもそうだ。 威厳高い人間の気の緩んだ所など、ましてや他国の人間と抱き合っている姿など誰が見せたいだろうか。


「・・・あー、済まない津雲殿。 帰ってきているとは思わなかった。」

「気にするなサーレン。 俺も同じような境遇に何度もあったことがあるから冷やかすつもりは毛頭ない。」


その俺の返しにサーレンもアウステラ姫も(顔を赤くしながら)首を傾げた。 これは実際になったものにしか分からない境遇だって事で。

今回の話から飛空もしくは飛怒等の会話は分かりやすくするために括弧の形を変えています。

今回は別のところでも使われていますが、それは聞き耳の内容です。 彼らの会話ではありません。

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