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別世界で俺は体感バーチャルTPSの才能がとてもあるらしい。  作者: 風祭 風利
第24章 騒々しい年末
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第256節 産まれと今後、目覚め

今回の会話はどっちも飛空の会話なので、2人いるという状況下で上手く読み取ってくれると幸いです。

 目の前の自分はそう自己紹介をした上で不敵に笑う。 自分でもやった記憶が無いが、あんな顔出来るんだな。 しかし解せない事もある。


「それで? お前は何者なんだ?」

「おいおいさっきも言っただろ? 俺はお前・・・ってそんな事を聞きたい訳じゃねえよな。」


 さも分かっているかのように語ってくるもうひとりの自分。 それに関しては同意出来る。 なにせ自分自身の事、心を読む読まないではなく本人の写し身の様なものなのだからわかって当然なのだ。


「さてと、どこから話そうか・・・・・・ まずは俺が産まれた理由から言っていくか。 半年前だったか? あの球体に触ったときの事を覚えてるか?」

「半年前・・・・・・ 球体・・・・・・ グラジオスで触れたあれの事か。 あんな衝撃があったんだ。 忘れたくても忘れられないさ。」


「そいつは良かった。 あの球体からお前の中に流れ込んできたもの。 それは走馬灯のように今までお前が歩んできた記憶が写し出されていた。」

「あぁ、でもその後に体に電流が走って気を失ったんだ。 俺はあれは記憶を膨大に入れたことによる副産物だと思っていたんだが。」

「ま、それもあるな。 脳が情報処理を行いきれずに頭の中でオーバーヒートしたから気を失った。 だが、それでは電流が流れる程の痛みなどこない。 それも分かるな?」


 その問いにコクリと頷く。 頭痛が起きるのならばまだ説明はつくが、全身を蝕んだあの感覚は脳だけの信号ではない。


「そこで俺は作られた。 まあ、あのときの俺はここまでの形は無かったがな。 そしてあの獏のねぇちゃんによるお前のリミッター解除。 そこで俺はお前の「怒り」の部分を見ていた。」


 確かにスリームさんが俺の付いていた糧を外したあの日から、かなり感情的に動くようになったと思う。


「で、俺と言う個体が出来た極めつけが、お前を苦しめたあの風だ。」

波紋電気(リプル・エレキ)・・・・・・」

「そうだ。 いくらノイズ風に耐性のあるお前ですら苦しめたあの風。 だがそれのお陰で俺はこうしてお前の精神世界で生成されたと言うわけだ。」

「お前は・・・・・・俺のもう1つの人格ということか?」

「それはまた違う。 俺は確かにお前だが、正確に言えばお前の「()()」を司る感情を象ったもう1つの精神体って事だ。」


 精神体・・・・・・ 不透明さを見るならイバラの電脳帯と似ているが、圧倒的に違うのはイバラはアンドロイドという媒体があってこそ今は地についているが、目の前の俺は、俺を媒体にした上で俺の感情を取り込んで、さらに偶然で出来た依代で構成された、言わば()()()()()というものだ。 つまり・・・・・・



「あの球体には別人格を生成させる力がある・・・・・・?」



 そんな推測をポツリと呟くと一瞬の沈黙の後に大声で笑い声が響いた。 目の前のもうひとりの自分が爆笑しているのが分かる。


「違ぇよ。 今回のこれはお前だから出来た芸当なんだよ。 この世界の常人じゃあ、そもそもあの電撃に耐えることすら出来ねぇって。 だからお前は特別なんだよ。」


 どうやら憶測は外れたようだ。 しかしそうはいっても目の前の存在には対処しなければならない。 それは今後の問題としては最優先に解決しなければならない。


「それで、お前は俺をどうするつもりだ?」

「乗っとる気じゃないかって思ってるんならそれは思い違いだ。 さっきも言ったが俺はお前の怒りの部分を大々的に受け継いでいるだけだ。 元々外に出たいとは思ってないさ。」


 その答えにポカンとしてしまった。 こういう「もうひとりの自分」とあった時は、てっきり「俺がお前になるんだ!」とか意気込んでくるかと思ったのだが。


「他と一緒にすんな。 ただ俺も消えたい訳でもない。 だから1つ提案をしようと思ってな。」

「提案?」

「あぁ。 と言ってもこれは感覚的にそうなるんじゃないかって確証のもとにする提案でもある。」


 確証出来る保証が無いのが若干引っ掛かるが、聞くことにした。 どうせこれは()()自身の問題なのだから。


「俺はお前になりたい訳じゃない。 だがこのまま隔離状態というのもむず痒いものがある。 そこでだ、お前の精神に結合をしようと思うんだ。 なに、主導権はお前のままだし、あくまでも俺は「側にいる」って形にしてぇんだよ。 悪い話じゃねぇだろ?」

「それは方法を聞いてから判断する。」

「疑り深いのはいいこった。 単純な話だ。 あと一回だけ、どんなタイミングでもいい。 俺に体を預けさせればいい。 簡単な話だろ?」


 確かに言っていることは簡単である。 だがそれをいざ実行する機会が来るのだろうか? 今の俺には理解が出来ない。 しかし向こうから突っかかってこないのはむしろありがたい話ではある。 それは考える猶予があるということなのだから。


「分かった。 その条件を飲もう。」

「利害の一致が分かってくれて助かるぜ。」

「だが、これだけは言っておく。 そう約束した以上は勝手に俺の体を使うんじゃないぞ? 分かったか?」

「へいへい、なにも無しに「消す」って言わない辺り、お前は本当に優しい奴だよ。」


 くっくっくっと笑うもうひとりの自分。 こいつだって俺なんだ。 こうなることは予測済みだっただろう。 そう思うとなんだか、少しばかりムッとする。


「というかそろそろ起きたいんだが? 外の世界の現状を知りたいんだよ。」

「お前って本当に働き者だよな。 少しくらい他人に任せたらどうだ?」

「そういう性分じゃないのも知ってるだろ?」


 最もらしい意見を言われるが、その言葉の半分に心が籠ってなかった。 つまり言っても無駄だと言うことはよく知っていると言うことだ。


「まあ、よく考えて俺は出しな。 お前の怒りの使い方は場所次第では毒にもなるし、薬にもなる。 適当な場所で出さなくていいからな。」

「分かったよ。」


 そういって暗かった筈の空間に一筋の光が差し込んできた。 どうやらあそこが現実に戻るための行き先のようだ。 その光に行くと共に、遠くなっていくもうひとりの自分の姿を見守っていた。


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――



 目を瞑っているはずなのにいやに明るく感じたので、恐る恐る目を開けてみる。 細目から見えたのはきらびやかに彩られた天井。 光に光が反射しあって、無茶苦茶眩しい。 とはいえ俺が記憶しているのを思い返せば、ここは屋内なのは至極当然な回答になるわけで。


「ん? おぉ、飛空。 ようやく起きたか。」

「・・・・・・・・・・・・エレア?」


 その声とともに覗き込むように顔を見せるエレア。 そこで少し疑問を抱く。 俺は今どこで寝かされているんだ? ベッドにしてはエレアが高いし、布団にしては距離が近い。 それに心なしか後頭部が暖かいような・・・・・・


 その状況を脳が認知し始めた辺りで体を急いで起こそうとしたとき、エレアが俺の肩をグッと押さえ込んだ。


「まあまあ、もう少し休んでおれ。 お主はこの後に少しばかり忙しくなるのだ。 こういう風に寝転がっても誰も文句は言わんさ。」


 いや、そういうことじゃなくてですね、エレアさん? 確かに休むのは結構なんだけど、もう少し場所を考えさせてくれませんかね? こちらとしては少々ばかり恥ずかしさを覚えてるんですわ。


 俺が慌てる理由は、何気なくエレアに膝枕をされている状態にあることだ。 誰にも見られていないからいいものの、事情を知らない人が見たらどう思われるか想像もしたくない。


「安心せい。 今この場におるのはわらわたちのみじゃ。 他のものは別の準備をしておるよ。」

「・・・・・・そうだ! 結局俺が眠ってる間に、戦場はどうなった!?」

「我が軍の勝利で終わったよ。 負傷者はおるが誰も死ぬことなく戦いを終わらせてしもうたよ。 飛空が出る幕でもなかったわ。」

「そうか・・・・・・」


 その言葉にホッとしたのか、身をそのままエレアに委ねてしまった。


「ふふ、飛空もそうやって甘えればよいのじゃ。 お主は頑張りすぎる癖があるからの。 わらわたちは別の意味で心配ぞ。」


 それは本当に申し訳ないな。 しかしこれだってこの世界のためだと思えばあまり休んでもいられないのさ。 でも今は戦争も収まったんだ。 今くらいは休んでもいいか。


「皆宴を楽しみにしておるからの。 飛空が動けるようになったら皆に顔を出そうぞ。」


 宴かぁ・・・・・・ そういえば今年も残すところ後わずかなわけか。 去年以上に色々なことがありすぎてどこから思い出そうか迷うところだ。


 まぁ、それもその宴で笑い話にするのもいいか。 そんなことを考えながら、もう一度眠りに着くのだった。

もし読みにくいと思われたら、報告ください。 対応致します。

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